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日常の崩壊

眠い。

 



私が朝食を食べ終わると、兄が階段から降りてくる。不機嫌そうに私を睨むとそのまま鞄を持ち、何も言わずに出掛けて行った。


 うん。謝る機会を逸したな。まぁ……帰ってから謝ればいっか。


「雷、終わった。学校行こう……」


 私がテレビに夢中の雷の肩を軽く叩くと、一瞬ビクッとしながら、ゆっくりと振り向いた。


「………あっ……終わったんだ~。じゃあ行こうか~?」


 二人で玄関に向かうと、母が兄の後ろ姿を見送って居た。


「あら~?夜ちゃんと、雷くんも行くのね?行ってらっしゃい~!」


 母はそう言うと、私たちの頬にキスをした。

 毎度の事だが、これいるのか?多分不機嫌な兄にもやったのだろうが、父だけで良いのでは?


 以前にそう言ったら、本気で悲しそうな顔を母にされたので、もう口に出しては言わないが、腑に落ちないのだからしょうがない。


「「行って来ます」」


 私と雷は並んで歩き出した。



 私たちが通う高校、その名も微睡み学園は、私の家から徒歩30分の場所にある。


 雷とノンビリ話ながら向かうのが、いつもの事であり、今日も話ながらゆっくり歩いていると、進路を塞ぐ3人組が居た。


 邪魔だな。こんな狭い道幅で、横に広がって立ち止まるなぞ、バカのすることだぞ?


 私は邪魔な3人組の横を、雷と共にすり抜けようとしたその時、3人組の真ん中でふんぞり返っていた少女が、私の腕を掴んで来た。


「ちょっと!お待ちなさいなっ!」


 えっ?何?誰?制服は私と同じ微睡み学園の制服だけど、見たことが無い顔だ。

 だが高校に入学してまだ間もないのだ……顔なんてクラスメイトすら覚えきって無い。


「何ですか?というか、誰ですか?」


 私のこの言葉が不味かった。


「なっ……何ですって?貴女……クラスメイトの顔すら覚えていらっしゃらないの?」


 ん?あれ?どうやらクラスメイトだったらしい。

 全く覚えが無いのは、何故なのだろうか?


 首を傾げる私に雷が教えてくれる。


「ああ~あれだよ。自己紹介の時に、1番目立ってた子だよ~」


 1番目立ってた…子?

 そう言えば……居たような?居ないような?

 私がまた首を傾げると、更に雷が情報をくれる。


「ほら~どこかの社長令嬢で、色んな自慢話を織り混ぜて喋ってた子だよ~」


 あっ!ああ、居たな。やっと思い出せた。


「そう言えば……居たな。何か私とは生きてる世界が違いすぎて、今後関わることは無いと思ってたから、忘れてたよ」


「まあ…そうだねぇ~。僕らには関係無いと思ってたよね~?」


 雷とうんうん頷き会っていると、令嬢はブルブル震え出し、私の頬を叩いてこう言った。


「失礼にも程が御座いますわっ!この華京院紫織、ここまでコケにされたのは、初めてですわっ!!」


 初体験おめでとさんっ!


 で、それと私の頬を叩いたのに、何の関連性が?

 育ちの良い人の唐突さには、着いて行けん…。着いて行きたくも無いが。


「うわっ!うわわっ……。夜、頬が真っ赤だよ~。大丈夫?」


 自分の事は気にしない私に、変わりに雷が泣きそうな顔で、オロオロしている。


「雷、落ち着け。私は大丈夫だ」


 雷の頭をよしよしと、撫でてやる。こんなの私と雷にとってはいつものスキンシップ程度だったのだが、令嬢が驚きの声を上げる。


「いやっ!!勝手に雨宮くんに触れないで欲しいですわっ!!」


 今度は雷の頭を撫でていた手を、振り払われた。

 一体……なぜ?私が雷の頭を触るのに、令嬢の許可は要らないだろ?あれっ?許可制にでもなったのだろうか?雷に聞いてみるか。


「雷よ……お前…私の知らぬ間に、触るのは許可制になったのか?」


 私の質問が理解できないのか、目の前で起こった事が理解できないのかわからんが、雷は驚いた表情をしながらも、答えてくれた。


「えっ……えっと?許可……?よく分からないけど、無いと思う~」


「だよねぇ?」


 私と雷はお互いに確認し会うと、令嬢の方に視線をやると、何故か令嬢は俯いきながら、モジモジしている。


「あれっ?どうしたんだろ~?」


 雷は男だから、分からなかった様だが、私には察せられた。


 令嬢は………そう、女の子の生理現象を我慢しているに違いないっ!


「雷よ……ここは彼女の尊厳を尊重してほっといてやるべきだ…」


「えっ?尊厳って?だって気分が悪いのかもしれないよ~?」


 全く分かっていない雷に、こっそりと教えてやる。


「ほら、その………トイレを我慢してるんだ」


「ええっ?トイレをっ!?むぐぐっ……」


 うげっ!こっそりと教えてたのに、出かい声をだすでないっ!


 咄嗟に雷の口を手で塞ぐが、遅かったみたいで、令嬢の顔は真っ赤に染まり、ワナワナ震えながら口をパクパクさせている。


「………っ!もう、許しませんわっ!!」


 再度令嬢が殴り掛かって来るが、流石に今回はもう喰らわない。

 私は避けながら令嬢の振り上げた腕を掴み、捻り上げた。


「あうっ…!痛いっ!!」


 ふん。人を殴ろうとしたのに、反撃されることは考えて無かった様だ。


「お離しなさいっ!この………慮外者がっ!!」


 バタバタと暴れるけど、私の方が令嬢より腕力があるらしく、一行に外れない。


 すると、やっとこの状況で令嬢の後ろに控えていた二人の女の子達が、待ったを掛けてくる。


「申し訳御座いませんでしたっ!紫織さまが全て悪いのですが、放しては頂けませんでしょうか?」


「そうですっ!紫織さまの醜い嫉妬から、このような暴挙に及んで、すみませんでしたっ!」


 二人の女の子は、そう言うと私に頭を下げた。


「えっ?いや、貴女達に謝って貰わなくても……」


 驚く私とは反対に、令嬢は怒鳴り散らす。


「小百合っ!?蘭子!?何を言うのかしらっ!このっ……この裏切り者ぉぉぉ~!!」


 いや、裏切り者やないやん。あんたのために頭を下げてるのに……。

 ムカついた私は、令嬢に一言言ってから、腕を放してはやろうと思ったその時、頭の中に誰かの声が響いた。



【見付けたっ!!!】



 その声が響いた次の瞬間、私の身体は浮上した。


「はっ?」


「きゃっ!」


 ゆっくりと浮かび上がる私………………と、令嬢。


 物凄いスピードでどんどん地上が離れて行く。


 ポカンとした表情でこちらを見上げてくる、雷を含んだ3人組。


 意味の分からない状況に、黙り混む私と令嬢であったが、上に上がるにつれ段々視界が霞んで行き、私は気を失ったのであった。





在り来たりな王道展開ですね。小生は大好物です。

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