表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/20

恥ずかしい…マジで恥ずかしすぎる

お久方ブリッツ!

 



 うう~ん……自分から追い払っておいて、直ぐにイフラフトを呼ぶとなると、結構ハードル高いな。


 まだあの部屋でスフィーが寝てるし、大きな声は出せないので、私の方から探しに行った方が良いだろうね。


 勝手知ったる他人の家よろしく、スタスタと廊下を進んで行くと何処からともなく芳しい薫りが漂ってくる。


 その食欲をそそられる匂いに誘われて私はフラフラと、とある一室の前まで誘導される。


 コッソリ室内を覗いてみると、予想通りに食べ物が沢山あり、窯ではグツグツとスープの様なものが煮込まれていた。


 たが、直ぐには室内に入らない。だって……誰も居ないんだよ?おかしくね?料理途中なのに、料理していた人物はどこに消えたのか?あれは……単純な罠なのではと考えた。


 釣りみたいなもんだよ。旨そうな餌をぶら下げておいて、獲物がかかったら捕まえてしまおうって感だろうか?


 物凄く怪しい……怪しい事この上ないのだが、腹の虫が鳴り響くほどの空腹のお腹へのダイレクトアタックには、どうやら負けてしまいそうだ。



 クソッ……。魔獣の癖に美味しそうな匂いのスープを、作りやがって………お腹が空きすぎてスルーなど出来そうに無いし!


 私は本能に突き動かされる様にテーブルの上に並べられた器とスプーンを手に取ると、味見だ……そう、ただ私は味見がしたいだけなのだ!と、自分に言い訳をしながらスープを掬って器に流し込んだのであった。


「ふふふっ……いっただっきま~~~………」


 最後まで言いきらずに、スープにむしゃぶりつこうとした私であったが、失敗する。


 なぜかって?手に持っていたスプーンが、消失したからだよ。


「ほえっ?えっ?えっ???」


 私の頭はクエスチョンマークで一杯になった。周辺を見回したが、私以外は誰も居ない。


 えっ?ホラー?幽霊とかはもう勘弁してほしい。以前のは私の勘違いだったけど、今回は高確率で本物じゃないかな?


 ブルブル震えながらも、私はもう片方の手に持っているスープの器は放さない。


 これだけは死守せねば。

 幽霊めっ!どうせあんたは食べれないでしょうがっ!脅かしたいだけならば、食後とかにしてくれまいか?


 そして抱え込むようにスープの器を守っていたので、段々と恐怖よりも空腹が辛くなってきてしまい、守ってるフリをして器から直接、スープを飲んでしまったのであった。


 ズズ~~…………‥。


 プハッ…‥!し…静かに飲んだつもりだったけれど、以外に啜る音が響きますな!それにこのスープ……めちゃくちゃ美味いんですけど!?



 ズルズル……ズズズ~……ゴクゴク……ズルズルズズズ~ハグモグモグ……。



 ふと気付いたら器の中にたっぷり注いだスープは空になっていた。ええっ?ど……どうして?一体何が起こったの? また消失したの?


「幽霊かっ?幽霊の仕業かっ!随分と意地汚い幽霊が居るだなっ! きっと!」


 プリプリ怒りながら立ち上がった私の後頭部を、衝撃が襲った。


「ぐぎゃっ!!ゆ…幽霊の奴め! ぶ……物理攻撃までしてくるとはっ!? それってもう、無敵じゃない? 狡くない?」


 そう私が叫びながら後ろを振り向くと、見知らぬ青年が仁王立ちしながら、怒声を浴びせかけてきた。


「なぁ~にが幽霊だよっ!! 人様の家に上がり込んで勝手に飯を食っている盗人風情めがっ!! このラギスタル様が成敗してやるぜっ!!」


「なっ……盗人ですって? 人聞きの悪い事を言わないで欲しいわね? 私はただ、お腹が空いたから一口だけスープを飲んだだけなんだよ!」


 エッヘン!ラギスタルとか言う闖入者に、優しい私はちゃんと説明してやる。


「はあっ!? 一口だけ……だと?嘘を付くなよ!俺は最初から見たんだからな?お前が鍋にたっぷりと入っていたスープを全部飲み干すところをな!」


 あん?何だと?私が全部飲んだって? そんなバカな……一口だけ飲んだだけだ。全部飲んでは居ない……はずだ。


「ふ、ふんっ! 証拠はあるのかしら?私がスープを全部飲んだという証拠が」


 ふんぞり返りながら私がそう言うと、ラギスタルは自信満々に私の一部分を指差しながらこう言った。


「おいおい、証拠はお前自身が暴露しちまってるんだぜ?気付かなくてもしょうがないが、お前のその、口の周りにベッタベタに付きまくったスープの痕は、どう説明するつもりだ? 一口飲んだってだけならば、そんな風に口の周りが汚れまくる事は無いだろうが!」


 はうあっ!!!


 何ですって? 私の…口の周りですって?一口だけしか飲んでないのに、口の周りにスープの痕など付くはずが無い。失礼しちゃうわね!


 私は口元に手をやる………と、ヌルリと指が滑った。


 ええっ?な、何故……?滑るの?


 急いでもう片方の手で今度は自分の頬を触ると、先程同様にヌルリと滑った。


 ちょっと……ちょっと落ち着こう。口元だけじゃなくて、何故頬までもがヌルヌルなんでしょうか?


 こ…これではラギスタルの言う通りでは無いか。確かに一口だけ飲んだにしては、ガッツキ過ぎた証拠が私の顔中に付着してしまっている。おまけにあんなに辛かった空腹もだいぶ治まっている様な………。


 って事は……私は無意識に全部自分で飲んだ上に、勝手に幽霊の仕業にしてたって事!?

 うぎゃぁぁぁぁ!!そ、それってマジで痛すぎるぅぅぅぅぅ……!!!



 恥ずかしさの余り私はその場で膝を抱えて踞ってしまったのであった。




そう、スープを空にした犯人はヨル本人だったのです。


ただし、スプーンを消失させたのはラギスタルです。


次回はイフラフトも出てきてワイワイかな?

ははは。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ