悪巧み?いえ、違います。皆やってる事です。
取り合えず書けた。
手直しはします。ええ……。
勢いよく振り下ろした私の拳は、イフラフトにはかすりもしなかった。
そりゃあそうですよね?イフラフトと私の身体能力は天と地ほどの差があるのだから。
分かってはいるけど、避けられると悔しい。
「イフラフト! 避けないでっ!!」
「は? それって黙って殴られろということ?流石にそれは嫌だな」
ぐぬぬ……当たり前の事を言い返されて、グゥの音も出ない。
「もう良いっ! イフラフトは向こうに行ってて!」
シッシッと、追い払うジェスチャーをすると、イフラフトは不満そうな表情をしながらも、部屋から出ていってくれた。
はぁ……。流石魔獣……女の子の恥じらいとか、全く分かって無いな。
私はブツブツとイフラフトの文句を言いつつも、勝手知ったる他人の部屋よろしく、部屋の内部を物色した。
おっ?ふわふわの布を見付けた。これは身体を拭いたりと、色々使えそうだ。
キョロキョロ部屋を見回すが、足下でスフィーが鼻をヒクヒクさせながら目を瞑っているのみだ。
しめたっ! 私は高速で布を、作ったばかりのツギハギの袋の中に突っ込んだ。
えっ? 泥棒じゃないかって?しょうがないことなのだよ。これから1人でか弱い女の子が旅をするんだから、これぐらいは失敬しても致し方がない事に分類されるでしょ?
大丈夫大丈夫! 某勇者だって民家の壺や棚からイロイロ失敬してるし、ましてや私はか弱い女の子。問題ない………うん、問題ない。
他に旅に必要な物って何だろう?水を入れておく水筒的な物と、携帯食は必須だよね?
後は……小金?う~ん……人間の世界のお金なんて魔獣の集落には流石に無いだろうし……。
まぁ帝国に着いたらその日のうちに住み込の仕事でも探せばいっか。
そして遂に私はこの部屋から出て、外を見回ることを決心する。
この部屋での物色もほぼ終わって、手に入ったのはふわふわの布のみといった状況だったからだ。
手始めに隣の部屋に潜入を試みる事にする。
現在居る部屋から顔だけ出して確認して見るが、この部屋以外に有るのはひと部屋のみだった。
左右を確認しつつ、私は忍び足で部屋から出ようとすると、目を瞑って静かにしていたスフィーが、激しく吠え始める。
「ワンワンッ!ワンワンッ!ワンワンッ!!」
私は急いでスフィーの元に座り込むと、吠えるスフィーの口元をギュムッと手で掴み黙らせる。
「シーッ!スフィー、良い子だから静にして?」
「クウ~ン…………………ワフン?」
私のお願いを理解してくれたのか、直ぐに大人しくなたスフィー。 従順な愛い奴め。
「これから私は隣の部屋に行ってくるから、吠えないで大人しく待っててくれる?」
「キャンッ!」
う~ん……。多分理解してくれたと思うことにする。
スフィーの気持ちを正しく理解することは、現時点で私には無理だからね。
スフィーもイフラフトみたいに、人語を喋れるようになれば楽なんだけどねぇ。
今度は部屋から出ても、スフィーは吠えなかった。
どうやら私がお願いした事を理解してくれたみたいで、ホッと胸を撫で下ろすと部屋から外に出る。
忍び足で廊下を歩く私の後に、トテトテと可愛らしい足音が続く。
後ろを振り向くとスフィーが一緒に部屋から出て来てしまっており、私の後を静かに付いて来る。
あらら? スフィーは私が先ほどお願いした事を、理解してくれてはいなかった模様。
でも特に吠える訳では無いので、私はスフィーの好きなようにさせる事にした。
隣の部屋の中に入ると、色々な物がところ狭しと置いてある。
どうやら物置部屋なのだろう。さっきイフラフトが持ってきてくれた帝国兵の鎧や兜、剣や槍などが大量にゴロゴロしている。
ゴソゴソ辺りを物色するとお目当ての物をゲットできた。
ジャラジャラ魅惑的な音を立てて出てきたのは、小さなメダル……ではなくて、程々の大きさの硬貨であった。
う~ん…この世界の貨幣価値って分からないから、この手のひら一杯の硬貨で、一体幾ら位なんだろうか?
まぁ、硬貨はあればあるほど良いに違いない。
一緒に持って来ていたツギハギの袋に、遠慮も無しに次々と硬貨を投げ入れ、パンパンに膨れ上がったツギハギの袋に私は大満足だった。
そしていざ背負うとした時に、やっと自分の失敗に気が付いた。
はうあっ!?
重すぎて背負え無いのだ。しかも硬貨がゴツゴツして、背中が痛い上に私が適当に作ったツギハギの袋は、今にも破けてしまいそうだった。
そのため、私は泣く泣く袋を硬貨で一杯にするのを諦めざるをえなかった。
チェッ。
硬貨は何種類かあったので、なるべく金色の硬貨を選んで袋に入れ直した。ゲームとかでは定番の硬貨の色だが、私としては金色=高価なイメージがあったため、この色を選んでみた。
後は簡単な武器だね。もちろん自衛のためだし、その武器を使って悪いことなどしませんよ?
剣や槍は私の身長では長すぎるし、大剣などは重いので最初から選ばないと決めていた。
私がが手に取ったのは小振りのナイフだ。
ナイフをケースから取り出すと、握って空に振ってみる。
うん。軽くて扱いやすいし、刃こぼれや錆びなども無い様だ。これに決めた。
後で制服のベルトに紐で引っかけておこう。
残すは当座の食料だな。これは流石にイフラフトに聞かねば分からないので、大人しく元居た部屋に帰ることにする。
またスフィーにイフラフトを呼んで来てもらわねばな。
一緒に来ていたスフィーを捜すと、床に置かれた鎧と鎧の間で丸くなっていた。
静かだと思ったら、どうやらまた寝てしまっていたらしい。
気持ち良さそうに眠るスフィーを、無理に起こすのは可哀想なので、私はスフィーをこの場に残してイフラフトを呼ぶために、外に出る事にした。
長い目でみてやって下さい。
ポンポン話が進むのが好きな人には合わないです。




