結局……行くのか行かぬのか?
ていっ!
私はハインツ帝国の王都に向かうことに決めたのだが、この世界の地理には当たり前だが弱い。
現在地からどうやったら王都に辿り着けるのか、定かではないため、イフラフトに道のりを確認することにする。
「ねぇ、イフラフト?ハインツ帝国の王都へは、どうやって行くの?後、どれぐらい掛かるの?」
「本当に行くのか?」
「もちろんよっ!」
異世界で働くって、なんかロマンがあるじゃない?まぁ、私はどちらかと言うとリアリストですけども。
「う~ん……余りお勧めはしないけどなぁ」
「何で?」
「ハインツ帝国は皇帝至上主義だし、貴族が平民よりも圧倒的に立場がうえだ。エテルマーナ王国で通じた常識が一切まかり通らないぞ?貴族にイチャモン付けられたら、例えお前が悪くなくてもお前が悪いと言われて、牢屋にぶち込まれるだろうな」
うえっ。何それ?むちゃくちゃ理不尽!
でも貴族となんか係わらない下町とかで、暮らせば問題無くない?
ふっ……。一件落着だな。
「私は大丈夫だよ!貴族には係わらない下町とかで、暮らすから」
根拠の無い自信を私はイフラフトに話す。
イフラフトは怪訝そうな表情をしつつも、最後には納得してくれた。
「う…う~ん。まぁ、ヨルがそう言うのならば、大丈夫……か?」
「うん!きっと大丈夫さっ!何とかなるから」
「じゃあ帝国に入る準備をしなければな」
準備って……何だろう?ああ……旅装とか?
「準備って何するの?私…身一つ何だけど?」
私がそう言うと、イフラフトはニヤリと悪い笑みを浮かべながら、こう言った。
「帝国の王都に入る方法は主にみっつある」
「へぇ…」
「ひとつは帝国が発行する証文を持っていることだが、証文は基本的に貴族か、裕福な商人とかにしか発行されない」
パスポートみたいなものかね?上流階級しか手に出来ないか。私には無理だな。
「ほぉ…」
「ふたつ目は王都に入る壁門で、一定の金額を支払って入るか」
うげっ。金なんか持ってないし。一定の金額って……高額設定されてそうだよ。私には無理だな。
「ふぅ…」
「みっつ目は……壁門を飛び越える方法だな」
ええっ?そんな普通に言うけど、簡単に飛び越えれる位に低いのだろうか?それじゃあ壁門が意味をなさないのでは?
私が物凄い怪訝そうな表情をしたからなのか、イフラフトが補足してくれる。
「まぁ、飛び越えると言っても普通の奴等は壁に鉤爪付きのロープを引っ掻けて登ったりするだけどな……」
「そうなの?っていうか、そんなのが横行したら勝手に壁を越えて簡単に忍び込めちゃうんじゃないの?」
だってそうでしょ?お金を払わなくて良いならば、その方が全然良いし、壁を登るだけならば簡単に出来そうだけど?
「いや、そんなに甘くない。壁の上には城の兵士が巡回していて、発見され次第その場で殺される。選択肢が成功か死かの二択だからな、そんな危ない橋を渡る奴は少ない」
少ない……って事は、居ないわけじゃないんだな。
でも聞けば聞くほど私の選べる選択肢ってみっつ目の様な気がする。
証文とかいうのも発行してもらえなさそうだし、お金も無いし……。
何が何でも王都で生活をしたいって訳じゃ無いので、ここはひとつ穏便に近場の町にでも……。
「それにしても……ヨルの服装や顔は目立つな。ハインツではそんなに足を出した服装の者は、娼婦ぐらいだな」
私はイフラフトが放った一言に深くダメージを受けた。
私の高校の制服が、ハインツでは娼婦の格好だったとは……。
危ない所であった。お金で私の純潔が売買される所だったよ。
「イフラフト…悪いんだけど、何か目立たない服と、私の服を交換してくれない?」
私のお願いにイフラフトは、快く快諾してくれた。
「ああ、大丈夫だ。この間我々を討伐しようとやって来た人間の服が、確か一式残っていた筈だ。持ってきてやるからちょっと待ってろよ?」
そう言うと、イフラフトは部屋から出ていった。
何か……恐ろしい単語が出てきた様な?ううっ。イフラフトが持ってきてくれた服が、もし血だらけだったら、流石に着れないから謝ってお断りしようっと。
イフラフトが戻って来るまで、私は足元に丸まったスフィーの背中を撫で撫でしていたのであった。
中々目的地に向かわない……。
夜は何にも持ってないので準備が必要です。
にしても、話が進まない。
ご免なさいOrz




