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目的地は変更だっ!!

本当に申し訳ないっ!文章がいつも以上にフワフワしています。





 またも大声で叫んでしまった私の声に反応したのか、部屋の外から猛スピードで駆け寄ってくる小型犬……改め、スフィー。


「ワフッ……キューン…ワフワフフ………」


 私の肩を掴んでいるイフラフトの股下をすり抜けると、私の足下にスリスリと擦り寄ってくる。


 くっ!あざと可愛い……。


 スフィーのこの可愛さには、イフラフトの驚きの行動を帳消しにする程の破壊力があるよ。


 私は尻尾をブンブンと振りまくっているスフィーを、抱っこするために、勢いよく下にしゃがみこんだ。


 そして悲劇は連鎖する。


 私は失念していた。勢いよくしゃがんだ私の両肩を、イフラフトが掴んでいた事を。


「おわっ……!」


「ぎゃっ!」


「ワフン?」


 体勢を崩したイフラフトが、私に向かって倒れ込んで来る。

 床にぶつかる瞬間に、私はこの後来るであろう衝撃に諦めて目を閉じた。



 ズダンッ………。



 …………………あれっ?大柄なイフラフトが倒れて来たのに痛くない。

 私は現在の自分の状況を確認するため、ゆっくりと閉じていた目を開けて驚いた。


 どうしてこうなったのかは不明だが、仰向けに倒れたイフラフトの上に私は、スフィーを抱っこしながらうつ伏せで倒れていたのであった。


 私とイフラフトの間で潰されたスフィーが、苦しそうに「ワンワン」と元気に吠えている。



「っ…痛てて……。あ~その、ヨル?スフィーが苦しがってるから、悪いけど退いてくれるかな?」


「あうっ……。ご…ごめんね、スフィー」


 私はそれだけ言うと、スフィーを離しながらイフラフトの上から退いた。


「ワフンワフン……ワッフーン」


 解放されて自由になったスフィーは、床に座り込んだ私の周りをグルグル回って居る。


 そんなスフィーを横目に、私は真剣に悩み始めていた。

 何故こんなにも少女漫画みたいな出来事が起こるのか?

 薬を飲ませるホニャララに始まり、手のひらを舐められたり、一緒に倒れ込んだりと、恋愛的なハプニングが満載だ。


 って、そんなの要りませんから。

 今後はこんなハプニングに見舞われないために、もっと気を引き締めて行動せねば……と、私は心に誓ったのであった。


「おいヨル?どうした?立てないのか?それなら手を貸そうか?」


 私は先程気を引き締めると心に誓ったので、イフラフトが差し出してきた手を借りずに、自分の力で立ち上がった。


「有り難うイフラフト。でも自分で立てるから大丈夫だよ」


 ニコリと微笑みながらイフラフトにお礼を言うと、本題に入ることにした。


「………それで……ハインツ帝国の王都までは、どれくらい掛かるの?」


「ええっ?それ、今確認することか?そんな事よりも、ヨルが異世界人って本当なの?」


 チッ。何だよ。そんなに異世界人って珍しいのか?

 しかし私なんてシオリのオマケで来たような者さ。大した人物では無いぞ?


「ふぅ…。本当だけど?それって珍しいの?」


 私が辟易しながら答えると、イフラフトは瞳を輝かせてウンウンうなずいた。


「どれくらい?」


「う~ん…そうだな。我が生まれてもう数百年経つが、それでも今回聞いたのが初めてだから、凄い珍しくはあるなっ!」


 うげっ!興味本意で聞いたら、その答えが数百年って……うは~マジかっ!!

 それと…イフラフト。お前もう数百年生きてんのか。人型時の外見が若いので、勝手に若いと思ってたけど、実はお爺さんな年齢なのだろうか?本人には聞けないけど。


「そうなんだ。今後は他の人に、異世界人って言うのは控える事にするよ」


「うん。その方が良いと思う」


 私はこちらの世界の常識をひとつ学んだ。

 こんな風にひとつひとつ知らないことを、学んで行こう。


「それで……ハインツ帝国の王都までは何日掛かるの?」


「あれっ?まだそれ諦めて無かったの?」


「もちろんだよっ!で、どれくらい掛かるの?」


 イフラフトに詰め寄ると、困ったように呟いた。


「うん…その……怒るなよ?」


 はっ?なにかしら怒るような事があるだろうか?

 私は無言で頷くと、イフラフトに続きを聞く。


「実は……俺達の暮らしてるこの集落があるのは、実は……ハインツ帝国領だったりして……」


「なっ!マジかっ!?じゃっ……じゃあ、私が居るここは……ハインツ帝国って…事か。ほえ~」


 気の抜けた声が出てしまうほど驚いた。あれほど行きたくないと言っていた侵略国家の領土に、既に居たとはね。


「まあ、厳密に言うと両国が領土だと主張している、いわばグレーゾーンなんだけどな?」


「そうなの?だったら紛らわしい言い方をしないで欲しいんですけど?」


「どっちかって言うと、ハインツ帝国の支配力の方が上だろうがな……」


「じゃあ……一応ハインツ帝国の領土って説明でもおかしくは無いか」


 フム……。困ったな。この状況では間違いなくハインツ帝国の王都を目指した方が速いな。

 町で働くのなら、エテルマーナでもハインツでもどっちでも良いかも。


 う~ん………よしっ!決めたっ!!


 ハインツ帝国の王都で働き口を探してみるかっ!


 王都ならば色んな人種が居て、私みたいにこっちの人と違う、いわゆる日本人特有の彫りの浅い醤油顔でも、そこまで目立たんだろうしな。


 決断したら、実行に移すのみだ。

 うっしゃあ~!!

 目指せ!ハインツ帝国の王都!!


 私は燃える決意を胸に、目的地をエテルマーナ王国の王都から、ハインツ帝国の王都に変更したのであった。





夜の目的地が変更になりました。理由は現在地から近いからという、安直な考えです。


ついでに、異世界の人々をが夜と紫織の名前を呼ぶときは、カタカナ表記にしておりますが、深い意味は御座いません。

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