再び大声で叫んでしまう
考えるな、感じろ。
ま…まさかとは思ったが、本当に昨日の大型犬だったとは…。
うっう~ん……流石は異世界だ。犬がイケメンになるとは、恐れ入ったよ。
「犬が……人になるとは………」
驚きすぎて、ポツリと呟いてしまった私の言葉に、大型犬は不思議そうに首を傾げた。
「うん?何でそんなに驚いてるんだい?我は昨日、魔獣だと教えただろう?人型になるのは簡単な事だし、気絶したお前を看病するのに人型の方が楽だからな」
えっ?何それ?魔獣=人型って、この世界では当たり前な事なのか?
つっても、私は知らんがな。
もうちょっと異世界人に優しくして欲しい。チュートリアルとか無いんかいっ!
「………看病…どうも有り難う。私はもう元気なので、そろそろ帰らせてもらいますね?」
「帰るって……どこにだい?昨日の場所では無いよね?」
昨日の場所………。あっ!あの誘拐犯の屋敷か?
もちろん違うよ。
「いっ…いえ、王都にですけど?」
「王都……。ここから近いのはハインツ帝国の王都だけど、昨日居た場所はエテルマーナ王国の領土だったから………エテルマーナの方かい?」
なぬっ!?ハインツ帝国?
確か王城の牢屋で、アゼルさんに教えてもらった様な。
えっと……私が居たのはエテルマーナ王国の方だったかな?
ハインツ帝国は、エテルマーナ王国の領土を狙う侵略国家だって、確か言ってたっけな。
うん。私が帰るべき王都は、エテルマーナ王国の方です。
「そうですっ!エテルマーナ王国の方に帰りたいんですが、道を教えてくれますか?」
「ん?まぁ、道を教えるのは良いが、人の足だと歩いて1週間位は掛かるよ?」
「うへぇ…」
マジか………。1週間も掛かるのか。そんなに遠くに来ていたとは。
一応確認の為に、ハインツ帝国の王都までは何日掛かるのかな?とりあえず聞いてみるか。
「えっと……魔獣…さん?」
あっ!やばっ…名前が分かんないから、つい口から出ちゃった。怒るかな?
私がドキドキしながら大型犬の表情を確認すると、大型犬は特に怒ってはいなかった。
そしておもむろに時分を指差しながら、こう言いはなった。
「ああ!そう言えば名前を名乗って無かったね?我はフェンリルという狼の魔獣で、名前をイフラフトと言う。因みに息子はスフィーだ」
うん。ご丁寧に有り難う御座います。では、私も名乗るのが筋ですよね?
「私は異世界人で、名前を夜って言います。年齢は15歳、好きな食べ物は肉類です」
こんな感じで大丈夫かな?まぁ、変なことなど言ってないから問題なかろう。
チラリと大型犬…改め、イフラフトの方を見ると、ポカーンとした表情をして固まっている。
何ですかね?もしや15歳には見えないってか?12歳じゃないかって?ハッハッハッ!確かに牢屋の仲間に散々言われたよ。年齢を詐称すんなってな。
いや、してないし。
確かにこの世界の15歳と比べると、若干……ほんの若干小さい気もせんでも無かったが、そこまで驚かれる程では決してない………筈だ。
私が一人ゴチャゴチャ考えて居ると、イフラフトが私の肩を掴んで、興奮したように喋ってくる。
「うわっ……本当に異世界人?凄いなぁ~!あっ!そうかっ!だから人間なのに俺たち魔獣を恐がらなかったのか!きっと異世界では魔獣と、人間が仲良く暮らしてるんだな?」
ぐおっ!興奮しているからなのか、イフラフトのワイルドなイケメン顔が近いっ!
そんなに近寄ると、忘れようとしていたあの……その……えっと…とにかく私の心臓に負担が掛かるので、早急に肩から手を放して頂きたいっ!
「ちょっ…まっ……待って!」
混乱した私は、イフラフトがこれ以上喋らない様に、彼の口元を両手で押さえてしまった。
イフラフトは喋るのを止めたのだが、怪訝そうな表情で首を傾げると、押さえていた私の手のひらをペロリと舐めた。
「うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!!」
またも大声で叫んでしまった私であった。
話は一行に進みません。寧ろ迷走してます。




