今日、彼女と別れました。
今日、彼女と別れました。
約一年間付き合った彼女と別れました。
彼女との出会いは大学のサークルだった。
彼女は一年上の先輩だった。
第一印象は
「綺麗でかっこいい女性」
だった。
でも、すぐに彼女には恋人がいることを知った。
少しショックだった。
それからは先輩後輩として仲良くなった。
彼女は僕を弟みたいだといってた。
それが少し悔しかった。
彼女に恋人の愚痴を聞かされるのこともあった。
僕は適当に聞き流してた。
ちゃんと聞きたくなかった。
ある日彼女は言った。
「彼氏が浮気した! 」
僕はチャンスだと思った。
すぐに彼女は恋人と別れた。
いや、僕が別れるように誘導した。
彼女は僕の予想通りに僕を飲みに誘った。
僕をやけ酒に付き合わせる為に。
彼女は元カレの悪口を僕にいっぱい言ってきた。
僕はタイミングを見て言った。
「僕と付き合いませんか?」
心臓が張り裂けそうになった。
彼女は少し黙って考えてた。
僕はドキドキしながら答えを待った。
「そうね、あんたなら浮気しないだろうからいいかも」
僕は心の奥でガッツポーズした。
僕達は恋人同士になった。
それからは毎日が楽しかった。
彼女とショッピングに行き、彼女に僕の服を選んでもらった。
彼女と映画に行き、彼女と一緒に感動した。
彼女と始めてホテルに行ったときは、緊張で手汗が酷かった。
僕の生活が彼女中心に回っていった。
付き合って十ヶ月ぐらいしたら彼女からのメールが減った。
忙しいのだろうと思って僕は気にしなかった。
いや、気にしないようにした。
このころから彼女と会う回数は減っていった。
そして付き合って一年が過ぎた頃、クリスマスの二週間前に彼女に言われた。
「私と別れてよ」
最初何を言われたか分からなかった。
気力を振り絞って僕は聞いた。
「なんで?」
彼女は普通に言った。
「他に好きな人が出来たから」
僕は信じられなった。
いや、信じたくなかった。
信じたくなかったから彼女に言った。
「もう一度僕に、チャンスください」
でも彼女の返事は
「ごめん、それは無理。私のことは忘れてね」
僕は走り出した。
これ以上彼女の側に居たくないから。
これ以上彼女の声を聞きたくないから。
これ以上泣いてる顔を見られたくないから。
次の日、僕は大学に行かなかった。
彼女と顔を合わしたくないから。
その日は一日中、公園に居た。
不思議と冬の寒さが気にならなかった。
公園で彼女とのメールを一個づつ消していった。
彼女との写メも消していった。
彼女との着信履歴も消していった。
最後に彼女の電話番号とメアドを消した。
「……さようなら」
自然にその言葉が出た。
結局、そのまま大学は辞めた。
母はスゴく怒った。
父はなにも言わなかった。
父にそれを聞くと、
「俺にも似たようなことがあった」
父はやっぱり僕の父なんだなと思った。
あれから俺はそこそこ大きな会社に入った。
彼女を忘れるために必死で仕事した。
仕事は順調だった。
彼女と別れて五年がたった。
俺にも新しい彼女が出来た。
新しい彼女は会社の後輩で可愛らしく大人しい子だ。
多分、無意識のうちに元カノと逆のタイプの子を選んだようだ。
今の彼女とは順調だったがどうしても結婚には踏み切れなかった。
ある日、大学時代の友達からメール来た。
懐かしくて下らない話で盛り上がった。
ーそういれば、お前の元カノが結婚したんだってよー
友達はいきなりそんなメールを送ってきた。
心の奥がチクッと痛んだ。
次の日、俺は今の彼女にプロポーズした。
彼女は泣いて喜んでくれた。
俺が結婚に踏み切れなかったのは元カノを吹っ切ることが出来なかったからだったようだ。
今なら言える、元カノにおめでとうと。
今なら言える、元カノにありがとうと。
今なら言える、元カノにさよならと。
俺はやっと大人になったようだ。