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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いの出会いと再会。
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第11話 気迫の刀と異形な腕。

主人公の関係ない試合、やっと決着です。

『氷の柱槍』の応用魔法槍術である。

三つ又となった氷の槍を自身の槍術で駆使し、ガルダの強固ある鎧に向けて射抜き兼ねないほどの突きを浴びせた。


「ヤァァァーーーッッ!!」


渾身の突き五連続をガルダに叩き込む。


─────『一撃目』。


「ハァァァーーーッッ!!」


激突で表面が削れ霧の氷を散らせながらも、


─────『二撃目』、『三撃目』。


「シァァァーーーッッ!!」


突く度に速さを増したサナの槍は


─────『四撃目』、─────『五撃目』。


「なにっ!」


五連続目で遂にガルダの鎧の強度を僅かであるが、上回ってみせた。


「っ、ぐッ! しまった……!」

「やぁああぁああぁああぁあッ!!」


襲い掛かる三つ又の槍からくる五連続の突きに対し、硬化魔法を強めてなんとか防御しようとしたガルダだったが、突く度に威力を増していった突きの攻撃に鎧の層が徐々に軋んでしまい、最後の突きで鎧が貫かれそうになったのは、ガルダにとって計算外な事態であった。


目の前で槍を杖代わりにしてなんとか立って、汗だくで息切れのサナを見ながらガルダは冷や汗を流していた。


「ハァ……! ハァ……!」

「ぐ、……危なかった」


サナの『氷槍の三つ叉撃』はギリギリのところで惜しくもガルダの鎧を貫通できなかったのだ。


「も、もう少しだったのに……!」


鎧の表面が殆ど砕け、胸の辺りが剥き出しになっているが、渾身の五連続を撃った今のサナにはもうそこを突けるだけの体力はすぐには戻らなかった。


「だ、ダメージは……貫通したか」


ガルダの方も胸に貫かれそうな衝撃を受けて、その場で膝をついて動けずにいた。


自信のあるサナの突きであったが、ガルダの『純鉄の装鎧(メタルアーマ)』を破壊し切れなかった。



──────しかし、



「ミルル! 今よっ!」

「────!?」


これによってガルダは数秒は動くことができず、サナも逃げる時間をできた。


気力を振り絞ってサナはその場から飛び退いて、未だに舞う粉末の外────ミルルの射程外に逃れた。


「任せて、くださいな!」


待ちに待った好機である。

サナとトオルが離れたのを確認してミルルは持っていた魔方陣付きの魔法紙を空へ放り投げた。


目標は勿論、粉末が舞う中心へ。


「カルマラ!」


なんとか離脱か防御を……と思考するが、胸の痛みで苦しむ彼にはもうどうすることもできなかった。


どんな対策もミルルが奥の手が動くよりも後、数秒は時間が必要であった。


「『螺旋の炎幕(スパイラル・フレイム)・起動』!!」


魔方陣に書かれた魔法式が起動する。


火系統と風系統の混合系統。公式的に公開されてあるこの魔法式をミルルは、魔法紙に魔方陣として書き込んでおいたのである。


自分では発動が困難な混合系の魔法を魔方紙と使い発動させる。

手の内をなるべく晒せないようにする戦い、それがアサシン(彼女)のやり方なのだ。


「───ッッ!!」


その彼女の攻撃が綻ぶ鎧を纏ったガルダの魔法を易々と飲み込んでみせた。

竜巻のように巻き起こる爆炎の渦が試合場に舞う魔法薬と合わさって、激しく暴れ尽くした。


「ぐあああっっ!?」


渦の中心でガルダの叫びが会場を木霊した。



◇◇◇



『連携での賭けは……勝ったようだなミルルのヤツ』

『狙ってたってことですか?』


炎の渦が発生する試合場の見て呟くジークにカリアが、先ほどの戦況を思い返し口にする。


『ミルルはソレを狙っての行動だろうが、他の奴らは咄嗟の判断だな。まあ、そこらへんもあいつの狙いなんだろうけど』


喋る中、ジークはこれまでなぜミルルが動こうとしなかったのか、予想をしてみる。


(あいつはちゃんと分かってたんだ。一人でじゃあの先輩には勝てないことを)


だから隙を窺える遠くから様子を見て、さらにあの二人も危機感を実感させ危機に瀕したところで登場した。


無理矢理共闘戦へ持ち込む手口、ジークは呆れ三割であるが、素直に賞賛を述べたい気持ちは、七割はあった。


『良くやるなぁ……。けど』


────倒し切れなかったのは失敗だったが。と口にする前に試合が動いた。



◇◇◇



「かぁァァァ!」


炎に包まれていたガルダが魔力を最大まで上げ。


「『純鉄の装鎧(メタルアーマ)』────解放」


周囲の炎を吹き飛ばす要領で『純鉄の装鎧(メタルアーマ)』を解放してみせた。


「ハァハァ……」


吹き荒れるようにして消えていく炎の中から、火傷を負っているが、未だ健在のままガルダが鋭い目付きで彼らを睨みつけていた。


「うそ……!?」

「く……っ!!」

「あ、アレでもダメなのっ!?」


倒し切れたと思った相手の復帰に、三人共動揺を隠せずにいる。


「……、───ッ!」


そんな三人を見たあと、ガルダは制服の袖で炎の熱気でかいた汗を拭い一息吐く。息を整えたところで荒れていた魔力を調整し、自身の集中と共に一気に高めた。



ガルダから発せられる空気が重く試合場を圧迫した。


「「「───!」」」

「……『純黒の拳爪(グラファイト・クロー)』」

「「っ!?」」


三人もその気配を感じ臨戦態勢に入るが、ガルダは三名を無視し、未だに立ち尽くしている場違いな二名それぞれに目を向け、新たな硬化魔法を発動させた。


そこからはあまりにも早い流れでトントン拍子に戦況が進む。


両手に黒き大爪にも似た手甲を纏ったガルダは、身体強化で立ち尽くしていた三年男子に素早く接近した。


「ひっ!?」

「ふっ」


男子は突然、矛先がこちらへ移って狼狽するが、ガルダはそれを無視しその男子学生の頭部を掴み反対の手で殴り飛ばしてみせた。


「ガッ!?」


防御も受け身も取ることができなかった男子学生は、そのまま後ろの場外まで飛ばされていった。


地面に倒れた時には既に気絶していたが、ガルダは場外に叩き出されたの確認しただけで、すぐさま別の相手へ。男子学生と同じように立ち尽くすだけであった生徒会の男子に向かって跳躍して接近した。


「く、来るなっ!」


先ほど男子学生がやられたことで正気に戻ったようだ。跳躍し迫って来ているガルダ目掛けて魔法球を放って追い払おうと図る。


しかし、


「ふっ!」

「ガアアアあッ!?」


ガルダには意味をなさなかった。

飛んで来る魔法球を叩き潰し、そのまま至近距離まで近づいたガルダは、放つために手を突き出していた相手の腕を取り、逆関節で曲げてあっさりへし折ったのだ。


生徒会の男子は折られた激痛で絶叫し、ショックのあまり気を失ってしまった。


「情けない」


人形のようになった生徒会の男子学生をつまらないといった感じに踵返し、視線の先を自分を追い詰めた三名へ固定した。


「さぁ始めようか、本当の試合を」


ガルダが発せられる闘気が明らかに変化したのを、三人とも突き刺さるようにして肌にしっかり感じ取っていた。



◇◇◇



『ま、こうなるわな』

『……』


実況者であるカリアが茫然としてしまったので、代わりにジークが口を開く。


「ハァハァ……!」

「……」


試合場内では、ガルダに打ちのめされたミルル。サナも倒れ伏せており、唯一生き残っていたトオルも身体中ボロボロでいつやられてもおかしくなかった。


頭部に血を流した状態で片膝付いて息を切らし、無言のガルダを見上げていた。


その後の試合は、完全にガルダが支配していった。

さらに強化された身体能力と魔法を駆使し、臨戦態勢入り警戒していたミルルを最初に潰してみせたのだ。


トオルやサナもフォローに回ったが、ガルダは彼らを一瞬で蹴り飛ばしたりなどして遠ざけ、その間にミルルを腹に数発入れて体を持ち上げると、地面に向かってぶつけるように叩きつけた。


次にサナであった。

槍で牽制し、トオルから剣術による援護もあったが、雰囲気が代わり本気となったガルダには通用せず、全て叩き伏せられトオルを軽く放り遠ざけた後、先ほどと同じようにサナを沈めたのだ。


再度槍を魔法槍術で押し返そうとしたサナであったが、ガルダはその槍先を掴み折ってみせサナの頭部を硬化している拳で殴って意識を奪った。


サナも善戦したが、先ほどの攻撃で魔力も集中力もフルに使ってしまい疲労が困憊であったこともあり、避けることも防御もままならなかったのだ。


『二人とも頑張ったけど、レベル自体がそもそも違ったからな。唯一可能性があったトオルも奥の手が使えない以上……』


サナもやられ最後にトオルが残った時点で、一位二位は確定しているが、試合は最後の一人になるまで終わらない。


狙われたトオルは、妖気が使えない状態の剣術でどうにかガルダを仕留めようと刀を振るうが、ガルダの戦闘技術と硬化魔法には多少抗える程度であった。


何度も殴られ蹴られ、他にも背負い投げの要領で叩きつけられたりと、やられ放題であった。


「ガハァ!?」


そして今も同じ、二刀で攻めるが、ガルダは冷静に捌かれてカウンターで蹴りや拳が飛んでくる。


「ハァハァ……!」

「もう限界のようだな」


トオルの表情からそれを察したガルダ。決着を付けるべく、トオルに向かって駆け出した。


「トオル・ミヤモト、貴様の剣に敬意を評して、僕が出せる、最高の拳をくれてやろう」


灰色の魔力を右腕に集中させ、僅かに口元に笑みを浮かべガルダが口にする。

駆け出すガルダに合わせ、右腕にある灰色のオーラが続いていく。


「く……! マズい」


すぐにでも後退、あるいは回避すべきであるのは考えるまでもなかったが、ガルダが口にしたようにトオルは既に限界であった。体力、魔力の低下に他もダメージの蓄積が、彼の動きを重くしてしまっていた。


「ミヤモト流……『四式・堅牢』!」


ならばと、トオルは残った魔力を防御に回し、防御の型で防ごうと試みる。

土属性の茶色のオーラが彼を薄く覆い、刀からも揺らめくように出ていた。


(ちっ、やっぱりが足りない。この魔力でどこまで持ち堪えれるか……)


受け切るのは厳しい以上、次の手も考えるべきかもしれないが、今を乗り切らねば次も何もないと……集中力を極限まで上げる。


(諦めるか! ここまできて負けられるか!)


両手の刀を強く握り締めてガルダに意識を向けた。


「今更防御か!? なめるなミヤモト!」


失望の色を乗せガルダが叫ぶ。

散々自分の攻撃を受けてきた彼が、まさか守りに入るとは思ってなかったガルダ。僅かに生まれた失望による怒りも拳に込める。


「『純黒の拳撃(グラファイト・ブロー)』」


灰色のオーラが帯びたガルダ自慢の拳が、防御の型で踏ん張るトオルに打ち出された。


「がああああっ!」

「ふんーーー!」


茶色のオーラを帯びた二刀と灰色のオーラを纏った黒き大爪の籠手が激突した。


「ああああっ!!」


最後の交戦のつもりでトオルは力を振り絞る。

ガルダの拳で折れてしまいそうな二刀に神経を注ぎ、上手く攻撃の力を流すように刃を器用に操る。


少しずつズラすことで威力を外に流し威力を軽減を狙うトオル。


(いける!! このまま威力を外に!!)


僅かずつ威力が落ちているのを受けながら感じたトオル。


「くううう!」


────とにかく堪え切る、その一心でガルダにぶつかるトオルであった。


「……いいだろう」


だが、その気迫あるトオルの闘志が、


「貴様がまだ諦めてないのなら、僕もその意気に答えなければ、ならないな!」


失望感を覚えていたガルダの闘志にも火をつけさせてしまった。


「カァアアアアッ!」


拳をトオルの刀にぶつけながら、野生のような雄叫びを上げるガルダ。

すると、身体中からこれまでにない程の強大な灰色オーラが迸しらせて、ガルダが放つ右腕に変化を与えた。


「な、なんだ!? その腕は!?」


向けられている腕の変化にトオルが驚愕の声を上げ狼狽する。

狼狽の際、刀に集中していた神経を鈍らせなかった流石であったが、その表情からは焦りが色濃く出てしまい、ふとしたことで集中が切れしまいかねない状態であった。



「これが本当の『純黒の拳爪(グラファイト・クロー)』だ」



トオルの動揺を感じながらそこを突こうとしなかったのは、ガルダなりにトオルという剣士を認めたからである。


でなければ、いくら堪えているといえ僅かにも乱してしまってい防御の体勢をガルダが突っ込まない筈がないのだ。


しかし、それも仕方ないと言えるであろう。


「まるで魔物の腕のようだろう?」

「せ、先輩」


ガルダ自身、トオルに固定した視界の端で映る腕を見ると、つい苦笑を浮かべてしまいそうになってしまう。


「……楽しかったぞ」


一瞬だけ腕に移った意識を戻し、ガルダは楽しませてくれたトオルに対して、礼を述べると……。


「『純黒の拳撃(グラファイト・ブロー)』」

「────っ!?」


腕まで黒く魔物のような異形の腕に力を入れ、二刀で均衡していたトオルをパワーで地面に押し潰したのであった。



この試合での勝利をガルダが制し、二位をトオルなって幕を閉じたのだった。


次回は来週の土曜になります。


試合関係はこれで終わりとなります。

他にも続く試合も加えてみたかったのですが、そこまでいくと作者的に大変ややこしくなるのが目に見えてるので、申し訳ありません、やめておきます。


あと無駄に長々ですみません。

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