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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いの出会いと再会。
98/265

第10話 難攻不落な先輩とチャンス。

今年最初からすみません。

作者の都合でまた時間が変更することになりました。

更新時間は大体この時間で固定したいと思いますが、また変更するかもしれません。


色々と慌しいですが、今年も『オリジナルマスター』をどうかよろしくお願いします。


背後からガルダに火の剣術で斬りに掛かったトオル。

自分の戦いを邪魔したサナに意識を集中していたガルダは、トオルの奇襲に対して背中を晒したままであった。


「───ああ」


……だが、その表情には、


「勿論知っているぞ。後輩」


一切の動揺の色はなかった。


「ッ!!」


振り返ることもなく、ガルダは背後で斬りに来ているトオルに言ってみせた。

不意に耳に届いたその言葉に、トオルは振ろうとしていた刀の持つ腕の動きを一瞬だが、止めてしまった。


(な、なに止まってんだオレはっ!?)


非常に辛いミスに動揺の叫びを心の中で上げるトオル。


「───くっ! は、はぁぁぁっーー!!」


一瞬でも動きが止まってしまったことを悔やみながらも、動揺を拭い捨てるつもりで、すぐさま攻撃を再開させる。


が、それはガルダからしたら、肩透かしもいい酷いものに映っていた。


「当たるかそんなもの」


ガルダはサナに向けたままトオルの攻撃を気配だけで完全に把握していた。

横薙ぎの攻撃をしゃがむように躱して、その勢いで後ろを向くことなく下からトオルの顎に向け蹴りを上げてみせた。


「がふッーー!?」

「助言として言うが、気配を消すならもっと上手く消せ」


予想外のカウンターにトオルは回避もできず、もろに受けしまい宙へ吹き飛ぶ。


強化もされ、硬化してあるガルダの蹴りはまさに金属製のハンマーであった。ガルダがその気になれば、蹴りによって地面を穿つことも可能であろう。


「つ、強い……」


その光景を間近で見ていたサナは、驚愕の顔をして吹き飛ばされるトオルとそれを平然と行なったガルダを交互に見ているしかなかった。……次に自分が狙われることなど全く頭になかった。



◇◇◇



『ジル・ガルダ先輩は風紀委員の暴動鎮圧部隊のエースだ』


ガルダが場内を支配し始めている中、解説者のジークがような声で説明する。


『その仕事の影響もあってか格闘戦、特に近接戦での体術は風紀委員だけでなく、学園内でも一つ上をいく人だ。そしてあの派生魔法もある、戦闘スタイルの相性は抜群だろう』


風紀委員の中でも格闘戦のエキスパートで、さらにいうなら学園内でも一番の格闘戦術の使い手であるガルダ。

そんな彼相手では、近接戦に自信のあるトオルでもどうしても分が悪かった。


『俺が思うにあの先輩と正面から戦えれるとしたら、四年を除けば同じ風紀委員の委員長か副委員長ぐらいだろうな』


そう口にして、トオルの姉の顔と副委員長の男性の顔を思い浮かべるジーク。

どちらも一年次の頃にお世話になったことがあったので、何気なく目で力量を測ってみたことがあった。


(流石学園内の治安を守る風紀委員のトップ二人だ。アレはBランクかAランクに近いものがあったな)


どちらも学生レベルを十分に超えていると、観察眼だけで見極めたジークは、もし今戦っているガルダを止めるなら、この二人を置いて他にはいないと予想した。


四年を対象外にしたのは、もともと誰がいるのか余り知らないからであった。一年時に少しは当時の三年であった四年とも関わったこともなくはなかったが、進級して以降、滅多に顔を見ることもない。四年のほぼ全員が進路の為、外で活動している者達ばかりだから。



◇◇◇



『スカルス先輩ならどうですか? スカルス先輩なら勝てますか?』


ジークは説明を受けたカリアが不意に答えにくい質問を投げかけてきた。ジークは眉間をピクッと僅かに反応させるもとくに表情を変えず、ごく自然に答えてみせた。


『どうかなぁ。魔法が使えれば勝機はあるかもしれないが、あの動きと硬化だ。ガードされて接近を許して得意な格闘戦に入られたらやばいなぁ』


と困ったような表情で口にするが、内心ではそこまで苦戦しないと感じていた。

仮に今上げたように格闘戦に入ったとしても、師匠の仲間のバルトとの模擬戦に比べれば厄介であっても負けるとは思えない。……勿論口にはしないが。


『そのスカルス先輩と接戦だったミヤモト先輩でも厳しいんですか? あの時みせた、あの妙な技ならもしかしたら』

『さぁな、けどこれだけは言える。この試合で、アイツが妖気(アレ)を使うことはない』

『え? それは……』


────それは何故なのか。と聞きたそうな顔してカリアが見てくるが、ジークは答えようとしない。


カリアの言う通りここでトオルが妖気を使えば、確かにガルダに対抗できるかもしれないし、もしくは勝てるかもしれない。


だが、それをしてしまえば彼の予選会はそこで終わる。


前回の試合ではジークがフォローしたお陰もあり、どうにか処分を免れたトオルだ。


今度また妖気を頼るようなことがあれば、間違いなく失格となって重い処分を受けることとなるだろう。


『では、この試合で最初に勝ち上がるのは、ガルダ先輩で宜しいのでしょうか?』


ジークの言葉を側で聞いたカリアは、戦況を見ながら彼に訊く。確かにジークの言う通り、戦況は圧倒的にガルダに優勢であった。カリアとしては、ここで一日目で活躍したトオルや学園でも優等生で有名なサナであれば、と思っていた矢先にこの結果である。


流石にもう勝負が着いているのでは、と思わずにはいれない状況であった…………ところが。


『いや』


先程までガルダの優勢を口にしていたジークからまた、まったく違う言葉が飛んできた。


『それは少しばかり即決かもしれないな』


そう言うとジークはサナやガルダ、飛ばされたトオルを視界から外し─────密かに動き出している人物に視線を向け出した。



◇◇◇



「さて、今度こそ貴様だルールブ」

「っ! 『氷の柱槍(アイス・ランス)』」


標的を戻しサナの方を向いたガルダに、牽制のつもりでサナは氷の槍を発現させ、手に持ち構えた。


「それで抵抗のつもりか?」


つまらなそうに呟き、ガルダは拳に魔力を集め硬化の力を拳に込める。

つい先程のサナを蹴ろうとしたため説得力はないが、やはり女性を暴力をは少々やり難い。早々にケリをつけようとガルダはサナに迫る……その時であった。


「ん?」


色素の薄い粉末がガルダの周囲に舞ったのは。


「え」

「……これは」


雪でも降ったようなその光景に、槍を構えたままでいたサナは茫然とした声を出し、粉末が舞う中で見上げるようにしてガルダは呟きを漏らした。


なにやら見覚えのある、そこまで思考が回ったところでガルダは、初日に観戦したジークの試合を思い出した。


(魔法薬か!)


粉末の正体を看破したガルダは、急いで撒いたであろう彼女(・・)を探す。






「時間は十分にあったからね。仕込みは整えましたよ」


……探すのにそれ程時間は掛からなかった。コンマ数秒であるが、それでも既に遅かったのは言うまでもなかった。


「爆裂炎舞祭……かな? 名付けるなら」


粉末を撒いたであろう彼女─────ミルルは舞っている粉の範囲外で、魔法陣が描いている大きめの紙を広げて立っていた。


「サナさん退がって!」

「ミルル!」


魔方陣の用紙を持った体勢で退がるよう口にするミルルに、サナは戸惑いながらもこの粉末は彼女が原因なのかと理解して慌てて後方へ跳ぶ。────が、それよりも速くガルダが動く。


「潰す!」

「くっ!」


サナが近くにいたことが運が良かった。お陰でまだ攻撃されずにいたガルダはサナを狙った。


後方へ跳ぼうとしたサナに捕まえるべく追うように跳ぶ。宙に舞っている粉末を払うため、瞬時に魔法の準備に取り掛かった。


「やらせんぞ、カルマラ、ルールブ!」

「「────!」」


まず先にサナをガルダは魔法の準備を意識の隅で行いながら、サナに殴り掛かる。


「ふっ!」

「くっ!」


不意にきたガルダの攻撃に、サナは氷の槍でガードするが、強化し力あるその拳を完全に受け切ることできなかった。……衝撃で体が浮き地面へ叩きつけられた。


「サナさんっ!」


ガルダの攻撃で倒れてしまったサナに、遠くからミルルが叫ぶ。その表情にはハッキリとした焦りが窺える。すぐでもその場から離れてほしい、今が千載一遇のチャンスなのだ、と言ってるように見えた。


その証拠に構えてた魔方陣の紙を持った状態で立ち尽くしてしまった。


「終わりだ」

「くっ!」


まだダメージが残っているのか、動けずに倒れているサナに、ガルダはトドメとばかりに足を上げてその頭部めがけて踵落としを──────


「『断斬』っ!」


とその瞬間、僅かに生まれた一点を縫うようにしてトオルが突撃で風の剣術を出した。


風属性を帯びた刀が軌跡のようにガルダの腹部へ。


「───ぐッ!?」


ここでようやく、ガルダにまともな攻撃が入った。

風を纏ったトオルの長刀がガルダの脇から胴へ一太刀浴びせたのだ。


強化し硬化した体に少々の切り傷を浴びせるだけであったが、それでもその衝撃と風属性の攻撃は確かに彼の体に重く乗し掛かった。


「く、貴様……」

「アドバイス通り、今度は気配に注意して仕掛けました」


脇を抑え、苦しげに呻くガルダはいつの間にか、飛ばされたところから戻っていたトオルを苦しげな眼で睨む。トオルは不敵な笑みを浮かべてそれに答えると。


「次は失敗(しくじ)るなよ。《氷姫》」

「煩いわね。黙って退いてなさい」


そして、さらにできたチャンスをサナは見過ごさない。

軽口で言うトオルを鬱陶しげな口調で払ったサナは手に持つ槍を構えて、魔力を注いでガルダに意識を集中した。


「ルールブ……!」

「魔法槍術───」


魔力を流し始めで槍に変化が起きる。

一本状の槍であったサナの『氷の柱槍』は三つの刃に分かれ、三つ叉の槍へ変貌した。


「───ッ!」


その変化した槍にガルダは状況的に、そして本能的に危機感を覚える。が、避けたくてもトオルの攻撃のダメージで動きが鈍ってる状態では……回避は無理だと判断し硬化魔法で防御して受け切るしかない。


「『純鉄の装鎧(メタルアーマ)』ッ」


ガルダは三つ叉の槍が襲い掛かる寸前で硬化魔法に魔力を可能な限り注いで、硬化魔法の出力を上げたのだ。灰色のオーラが彼を強く覆った。


だが、そんな光景を見てもサナは引かない。

先ほどの未完成の魔法などと違う、彼女自身の切り札をお見舞いさせた。


「『氷槍の三つ叉撃アイス・ランス・トライデント』っ!!」

次回の更新は来週の土曜です。

活動報告がよく忘れがちなので、今回から更新予定はこちらに記載しておきたいと思います。

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