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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いの出会いと再会。
86/265

第0話 対策と不満。

新章突入しました。


一日目の予選会が終わりに向かう中、ジークとティアの戦い後で騒然とする予選会場を出て、二人の教員が密かに会談をしていた。


「事前に教えて欲しかったですぞ学園長殿」

「申し訳ありません。なにぶん、こちらも急でしたので、あまり知らされておりませんでした。……それにしっかり把握していれば、試合の前の騒動も防げたはずですし」


ガーデニアンは学園長室でリグラに詰めていた。

僅かに苛立ちの顔を出しながら口にするガーデニアンにリグラは微笑を浮かべ謝罪する。


「いやぁ、それにしても大変でしたね」

「はぁ……ですな」


試合後、リグラは教員達に指示して事態の収拾に当たらせていた。

保健室で気絶していたミルルが気がついたので、そのケアを行い、騒然となった会場にいる観戦者達を落ち着かせて、残りの試合を続けさせた。


一番面倒であったのはジークが相手していた彼女─────ティアの正体に気づいた教員や生徒達を黙らせること。


流石に相手が一国の王女であるという事実は大きく、ガーデニアンもリグラも一苦労したようだ。


「一応、箝口令は敷いておきましたが……」

「ま、無理でしょうな」


ハッキリ言ってやり過ぎであった。あの二人は。


プロの魔法師すら軽く凌駕する魔法戦の数々。

しかも、それを一学生が行ったのだ。……しかも片方は学園一の問題児だ。

それに王女まで加わってしまったら……情報が広まらないなど、もはやありえなかった。


「第二王女とは明日の昼前、昼食を兼ねて会談を行う予定ですが、ガーデニアン先生もよかったら」

「そうじゃのぉ。久々に王女とも話をしてみるかのぉ」


国王陛下がまだ王子であった時から王宮で支えていたガーデニアン。

なので現国王とも面識あり、幼かったがティアとも会ったことがあった。


(見ない間に随分剣術や魔法を極めたようじゃし。会って話を聞いてみるもありかもしれん)


内心孫を褒めたい爺様のように呟くガーデニアンは当日、自分も参加する旨をリグラに伝えた。



ただ、話の終わりで。


「そうだ、面白そうですからスカルス君も出席させてはいかかでしょうか? なにやら知り合いのようですし、色々と事情があるようですから……聞いてみたいと思いませんか?」


普段浮かべている微笑みを一回りほど増した表情で言うリグラ。

そんなリグラにガーデニアンは眉間を歪めて、嫌そうな顔すると顔を横に振ってみせる。


「それは確かに面白く興味が注がれますがのぉ。スカルスだけならともかく王女相手には少々リスク高いですぞ」


ジークをからかってみたいという気持ちはなくもなかった。が、その相手が王女であることを考えると、やはり幾分か面倒になりそうだとガーデニアンは思ったのだ。


「ハハ、そうですね、言ってみただけですよ。────ただ」


冗談だと言って先ほどの発言を撤回するリグラであったが、一つ間を置いて困ったような苦笑を浮かべてガーデニアンに口にする。


「話は少し逸れますが、スカルス君の件で少し困ったことが」

「……明日の集団戦ですか?」


リグラが何を言いたいのか予想がついたので、言葉を終える前にガーデニアンが聞き返した。


「はい、試合前に行った試験で既に彼が学生並みの力量でないのは把握してましたが、まさかそれがSランク級の強さを持つ王女に匹敵するどころか、明らかに上の力を……」


リグラは今日発覚した事実を順序立てて説明していくが、途中でこれについてもリグラが何を問題視しているのか分かっていたガーデニアンが、言い終える前に待ったを掛けた。


「そこまで言わなくても分かっとります。……明日の予選会、スカルスは出させません」


本人もいない中、そう口にするガーデニアン。

その返答にリグラは少し左右の眉を寄せ、ガーデニアンに困った表情のまま尋ねる。


「私としてもそれが一番だと思いますが……宜しいのでしょうか? 今日の試合で彼の実力は十分学園に残れるだけの物であることは証明できましたが」


─────学園に残れるだけの物。

それは即ち、ジークの魔法使いとしての評価である。

元々は学園側に対するジークへの退学方針を変えさせるために、ガーデニアンが今回の大会の出場を彼に進めていた。


あと、その結果彼が隠していた力の一端を見てみたいという企みもあったが、どちらにせよ計画は成功。

ジークの退学を企てた教員や加担した生徒会の一部の生徒などは、夢でも見てるかのような茫然とした顔で終始観戦していた。


本日の試合でジークの人物像は大幅に塗り替えられた。

落ちこぼれ扱いであったジークは試験で三年相手に圧倒してみせ、同学年の相手に力の差を思い知らせ……非公式扱いとなるが、Sランク級の力量を持つ王女にも全く引かず劣らずで、かなりのところまで追い詰めた。


最後のところはもう勝ったといってもいいのだが、……今回はそれが問題なのだった。


ジークは強過ぎる。

このままいけば、残りの予選会も勝ち抜けて、大会でも活躍するとリグラもガーデニアンも確信しているが、その反面色々と不安要素があった。いや、有り過ぎた。


だからガーデニアンが言ったように、リグラも考えたのだ。

厄介ごとになるかもしれないなら、いっそのこと失格にしてしまおうか……と。


……だが。


「本人もそうですが、他の面々も……主に一部の生徒ですが、納得しない者も現れると思いますよ」


そう。リグラが危惧しているのは仮にジークを予選会から外した後に起こる正当な抗議である

理由が単に強過ぎるという点である以上、そのような理不尽な理由で彼を失格にしてしまえば、その後必ず厄介な事態へと発展してしまう。


「彼は大会に出たがっていたのですよね? ハッキリとした理由がないと後々マズイかと」


当の本人も大会に出たがっていたことはガーデニアンから聞いていた。

彼がどう抗議してくるか予想がつかないが、彼と戦いたがってる生徒達の対応も厄介である。


ジークを失格にした後のことを考え、リグラは一層困った表情になってしまう中、ガーデニアンは自分の意図が上手く伝わってないことに気づいて言い直した。


「いえ、それは少し違いますぞ学園長殿。確かに失格にして大会に出させないほうがいいかもしれませんが、そうすると間違いなく周囲から少なからず反発が起きる上、本人……スカルスがキレる可能性があります。あやつ、普段は実力を隠すために模擬戦などはサボってましたが、今回の件で露見してしまいました。……ま、授業自体よくサボっておりましたが」


話していく内にふと過去のことを思い出すガーデニアン。

もともと彼はやる気のないめんどくさがり屋であることもついでに思い出し、過去に何度も自身の授業や補習をサボられた苦い思い出も蘇ってしまう。腹の奥から吐き出すような疲れた息を出す。


「ガーデニアン先生?」


つい黙り込んでしまったガーデニアンをリグラは不思議そうな眼差しで声を掛けていた。


「おっと、話がズレてしまいましたのぉ。つまりですな学園長殿。もう隠す必要がなくなった以上、ヘタに強引に失格扱いにしますと……暴れるかもしれません。スカルスの奴がワシらに対して」


リグラが声を掛けたおかげで辛い過去の記憶から現在へ帰っきたガーデニアン。

リグラの質問に対して答えてる最中であることを思い出し、改めて説明をした。


「予選会の評価基準は基本が実力です。人格なども少しはありますが、彼の場合、その問題点がある中、周囲の目の前で参加資格を得るためのテストを行いました」


今更人格などの問題で失格扱いなどできない。

かといって他の要素では失格にするのは苦しい。


そこまで考えを述べるガーデニアンにリグラも考え込むようにして腕を組み出す。


「そうですね。……ですが、普通に参加させて、対戦相手である他校の生徒に万一の事態があっては流石に……」

「そうじゃのぉ。……なら妥協案を用意してはいかがではないか?」

「妥協案、ですか?」


何か思いついたのか、自身の案をリグラに告げるガーデニアン。


その案にリグラはなるほどと小さく頷いてみせ、明日の予選会、ジークの参加は無しとなるが、それでも彼が文句を口にしないであろう最善の手がまだあったことに、リグラは心の奥から安堵の息を吐いた。



◇◇◇



「───そんな感じで、予選会場が大騒ぎで、もう騒がしくて彼の試合に全然集中できなかったわ」

「うん、ホント姉様の言う通りだよ、もう!」


ルールブ姉妹が揃って不満そうな表情で目の前の人物に打ち明ける。

二人ともジークの試合を観戦し、彼の真価を見て心の底から驚愕した。

リナはもともと彼の実力見たさであったが、彼のことを嫌っているサナまでもが彼の戦いに刺激を受けて、試合にのめり込んでいた。


「へぇー、そんなことがあったんだぁ」


不満気な姉妹を苦笑顔で見る聞き手の女性。

フワッとした肩あたりまである水色の淡い髪、体型は普通でありサナのように飛び抜けている部分はないが、どこか和みそうなほわっと微笑顔が苛立ち相手の心を暖かく癒してみせそうだ。


「正直びっくりだよ。ジーくんって人前でちゃんと戦えたんだ……。なにか心境の変化かな」

「さぁね。彼の心の内になんて理解しようとするだけ無駄だと思うし、不用意に深読みしても損するだけよアリス」

「そうかなぁ?」


彼女の名はアイリス・フォーカス。

サナ姉妹と同じように貴族の人間でルールブ家、ガンダール家と同格の名家の人間でもある。


彼女達がいるのは女子寮の部屋である。

時刻は既に夕方で、夕飯時であったこともあり、部屋で姉妹はアイリスと共に彼女の手料理を召し上がっていた。


ジークとの一件で引き籠ってしまったアイリスは、以前から興味があった料理に時間を使うことが多くなり、今ではすっかりサナとの共同生活で料理担当を務めるようになっていた。


ちなみに相部屋であるサナの料理の腕は………………以下略。


「うううっ、美味いわ……」


用意された料理を手をつけていると……無性に悲しくなってしまうサナ。

決して酷いと言うわけではないが、アイリスの料理と比べてしまうと──────経験値や素質の差があるのが分かっていても、どうしても悲しくなる。


「どうしたのサナちゃん?」

「そっとしてあげてくださいアリスさん。姉様は今、絶賛落ち込み中なんです」


不思議そうな表情で項垂れてしまっているサナにアイリスが尋ねるが、そんな彼女をそっと止める妹のリナ。


今アイリスに気遣われるのは逆に辛い、そんな姉の心情を察した妹であった。


中途半端なところで終わってしまいすみません。


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