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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いは巻き込まれる。
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第1話 寄り道。

修正。

───ジークがダハクを連れて『森の道』の奥地に来てから三十分が経過した。


「ぐっ、が……」


倒れ伏してるダハクをよそに自身の掌を見て魔力を流しているジーク。彼が見ているのは魔力から流れている『ある魔法』の特殊術式を見ていた。


「ふ〜ん、なるほど」


手に入れた『無力無価(オーダー・キャンセル)』の能力を把握する。

本来なら『原初(オリジナル)』に連なる魔法類は、第三者からは解析が不可能なレベルかつ複雑な固有術式で作られている。読み取る方法は使い手となって身に宿すしかない。


────が、彼は違う。

《魔導王》の彼に常識は通じない。


「術式は虚無の亜種かぁー。発動して無へと変化出来るのは、厳密には一つだが、使い手の腕によって変わる。範囲も磨ければ広がるようだし……まあ訓練次第か? 他で代用出来るからいつ使うかは分からないけど」


取り込んだ時点で、彼は『無力無価(オーダー・キャンセル)』の仕組みを理解して、まるで手足のように飼い慣らして掌握していた。


(そもそも必要性が薄い。この程度なら俺自身の魔力で十分補えれる。所詮は神無しか)


今後の使い道を検討した後、倒れ伏してるダハクに目を向けて呟く。


「とりあえず、この人をギルド会館に飛ばしてシャリアに……」


と、手をダハクに向けて空間移動の魔法を掛けようとしたが、少し思案するように顎を触っていると、静かにため息を吐いて苦笑顔を浮かべた。


「……今ギルド会館に行ったら間違いなくお説教コース行きだな」


ギルドマスターのシャリアと秘書兼受付嬢のキリア(特にシャリア)から継承当日まで暴れるなと注意を受けていた。……そんな次の日にコレだ。


(うん、もう泣いている可能性・大だな)


行ったらキリアはともかく、シャリアからは間違いなくキッツ〜イお灸を据えられる。ダハクを飛ばした後に飛ぼうと考えた思考を一旦止めて、考えを改めてみた。


「となると今行くのは無しだ。……そうだな、あっちにするか」


迷ったのはほんの少しの間のみ。

頷くとジークは空間移動の魔法を発動した。



◇◇◇




「で、ここに来たと? いうことですか?」

「アハハっ、まあーね」


店の中で店長であるピンク髪のちっちゃな子どもと対話をする。変装魔法は解いてローブも脱いで黒のジャケットを着ていた。


「はぁー」


ジト目で睨まれているので多少辛そうだ。

店長の名はミーア・ホーガ『雑貨ホーガ店』を一人で切り盛りしている少女である。


「ね? ではありませんよ。なに仕事放置して店に来てるんですか」


大層ご立腹のご様子である。困った顔でいるジークであるが、一方的な彼女の言葉には異議を唱える。仕事に関してはしっかり行ったのだから。


「いや、別に放置じゃないぞ? ちゃんと仕事はこなしたし、ただ面倒な後始末を彼女たちに任せただけ。決して放置したわけじゃない」

「面倒ごとを押し付けないであげてください。……あとでギルド会館に行ったらちゃんと報告してください」

「あはははっ、は〜い♪」

「ムカっ……!」


このような具合で気絶しているダハクを飛ばした後、ホーガ店に来ていた。……さっさと済ませたいこともあった。


「それよりミーア、頼んでいたものは出来たか?」

「それよりもって、ハァ、一応出来てますよ。ちょっと待ってください」


一切反省の色が見えない軽過ぎ口調のジークに、ミーアは眩暈(めまい)のような症状を覚えるも、用件を先に済まそうと店の奥の部屋へ行き、数分後ある物を取って戻って来た。


「はい、頼まれていた物になります。武器の類と製作依頼があった魔法式を書き込んだAランクBランクの魔石十個です」


軽々と持って来た自分よりも大きな箱。テーブルの上に置いて中を見せる。

入っていたのは短剣、長剣や槍などの加工された様々な武器。小さい箱も置いて中にある色取り取りの魔石をジークに見せるように配置した。


「中にあるのは火系統・水系統・風系統・土系統のAランクが一つずつ。雷系統のBランクが二つ。光系統がAランクBランクが二つ。闇系統のAランクBランクが一つずつ、最後に無系統のAランクが一つですが、……どうしました?」

「……いや、武器は以前頼んだから覚えがあるけど、魔石? いつ頼んだっけ?」

「あなたが店に顔を出さなくなる前に頼んだ物ですよ。前来た時は忘れてて渡しそびれましたが、見ての通りちゃんと出来てます!」


テーブルに置いてある魔石に手を向けて、どうだと言わんばかりに声音と表情で胸を張るミーア。

初めはキョトンとしたジークだったが、記憶を遡ると確かに頼んでいたと思い出す。


「あ〜あの時か……」


苦笑を浮かべて困ったような、それでいて申し訳なさそうな顔で謝罪を述べる。後ろめたい気持ちがある分、いつもの言い訳が思い付かなかった。


「いや、ホントごめん。頼んでたのに、完全に忘れてた」

「いえ別にいいですよ。こちらとして貴重な高ランクの魔石で、こんなことが出来たので……貴重な経験だといつも感謝しています」


ジークの謝罪に対して気にした様子もなく、ニコリとミーアが礼を口にする。


「ん、そうか?」


ジークも本人が謝罪を求めないのならと、これ以上は何も言わない。ヘタに言ってもミーアだと、気にし過ぎだと不満顔になる可能性が高かった。


なので、ここに来た、もう一つの頼みごとに用件を移した。


「そう言ってくれるなら、こっちとしても胸を痛まずに済んで助かるよ。……その手前、頼みづらいんだけど、魔法式用の魔石の追加を頼みたいんだが」

「追加ですか? どのようなタイプの?」


言いづらそうに口を開くジークだが、ミーアから特に気にしたような声音が聞こえないことに安堵して、胸ポケットから二〜三枚の魔法式が書かれた紙を手渡した。


「これは……」

「火系統の魔法なんだが、AランクBランクとあるが、その中にSランクの『超炎紅の大爆撃ハイエクス・プロージョン』がある」

「え、Sランク級ですか!? ……それはまた大物ですね」


実はジークが使用している魔道具『神隠し』に嵌めている魔法式用の魔石を製作しているのは、他でもないミーアである。


元々はジークの師匠の仲間、ミーアと同じ《匠の職人(マスタースミス)》に魔石を作ってもらっていたが、この街に来て以降は、交流のあるミーアに『神隠し』のことを教えて、術式魔石の製作を依頼していた。


当初は彼女もそれほど乗り気ではなかった。なにせ魔石に術式を込める作業は思った以上に難しく、使用する魔法のランクなどで難易度が高くなる。

仮に出来ても使い勝手が悪いので、長く色々な魔道具を作ったミーアであっても、あまり経験がなく自信がなかった。……そのためジークも彼女の説得には多少苦労した。


「あのー、ジークさんのおかげで多少は高ランクの魔法式の書き込みにも慣れましたが、魔石に魔法式を書き込む仕事を本格的に始めてから、まだ一年ぐらいしか経ってませんよ? 本当にいいんですか?」


最初の頃はジークが無償……というとミーアが怒っていたので、店にある物との物資交換ということで、魔法式の書き込み練習のための魔石を提供していた。


何度か失敗成功を繰り返した結果、二ヶ月ほどでBランク級の魔法式の書き込み依頼を引き受けてくれた。……Aランク級に関してはそこから更に二ヶ月ぐらい掛かった。


因みに一年程前に行ったシャリアとの模擬戦の際、使用したのは師匠の仲間が製作した魔石である。使う機会は少ないが、そこそこのストックは所持していた。


「まあまあ、そう気負いすることもないって、Sランクについては出来たらで良いから。残りの火系統も出来たら教えてほしい」

「ハァー、分かりましたよ。『超炎紅の大爆撃ハイエクス・プロージョン』については期限が無しで、残りの魔法式の書き込みは一ヶ月程で仕上げようと思いますので、一ヶ月ぐらいしたらもう一度来てください」

「了解だよ。ミーアならきっと出来るさ」

「信頼してくれるのは嬉しいですが、ハードルが高すぎですよぉ……」


それにどうせ拒否してもしょうがないと、ミーアはため息を吐きつつ、ジークにそう言って頭の中でこの問題をどうクリアするか、残りの魔法式の書き込み期限も気にしつつ検討し始めた。

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