第8話 尋ね人。
最近『ー』の種類を『─』に変えてみることにしました。
してみたらかなり小説ぽくなったので、今一章から修正も兼ねて直している最中です。いつ追いつくか分かりませんが、ゆっくり修正していきたいと思います。
再修正。
───翌朝、男子寮にて。
ピンポーン
ピンポーン
ジークの部屋の扉から鳴る呼び鈴の音。
外のドアに付けてある呼び鈴用の魔道具である。
「あ〜〜」
質素なベット。その上で毛布に包まり、うつ伏せで寝っている者がいる。……当然ジークであるが。
「なぁ〜〜?」
ジークの部屋は結構広い。
元々は二人〜三人くらいが共同で使える様に作られた間取りであるが、男子の中でも彼を嫌う者は沢山いる為、誰も彼と同じ部屋に住もうとは考えなかった。……三ヶ月前の一件以前に入学した時から、割と厄介者として扱われているが。
結果彼は一年の頃からこの広い部屋を一人で使っているが、本人曰く「こんなに広い部屋を自分一人で気兼ねなく使えるのなら寧ろこの扱われ方は大歓迎です!」と若干キモいセリフをトオルにしたことがあったほどポジティブであった。
因みに言った相手であるトオルにもジークとの相部屋の話があったが、「あいつと一緒だと常に厄介ごとに巻き込まれる気しかしないから同室など論外だ」と断固として相部屋拒否をし続けている。
───まあそれは置いといて
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
「……ふが?」
鳴り響く呼び鈴が部屋全体にまで届く。基本は温厚でも睡眠にはうるさいジークを起こすには……十分威力があった。
「……あ?」
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
「……(イラ)」
そして、目覚めた時点でご機嫌が悪かった。
昨日は昼の時から忙しい事柄ばかりで最終的に帰宅したのは夜遅く、普段の昼寝もせずに働き続けたジークにとって、この時間の睡眠は何にも勝る安らぎの一時なのだ。
そんな彼の貴重な一時を妨害する不届き者が現在、彼の部屋の前にいる。
微かであるが、イラついている。このままでは扉を開けた瞬間、二〜三発は殴りに行きかねない迫力が───。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
「あはははっ…………禁呪指定の拷問魔法でも使ってやろうか?」
───イラつき通り越して怒りを覚えつつあった。
まあ実際にはしないが。
「はぁ〜〜」
ベットから降りると未だに鳴り響く扉に向けて、歩み寄っていく。ドアの向こうにいる者の正体に気づいて苦虫を噛み潰したような表情をした。
「カンベンしてくれ……」
まだ起きたばかりだというのに既に疲れ切った声を出してしまう。
(……よし)
長い葛藤の末、諦めたような表情をしてドアに手を掛ける。
……ガチャ
少しだけ間を置きドアを開ける。……そこに居たのは金髪の美女。
「おはよう。遅いじゃないジーク、昨日は寝るのが遅かったのかしら?」
学園のお嬢様で妹愛で巨乳娘であるサナであった。
「おはようサナさんやぁ。確かに昨日は寝るのは遅かったが、普段はもっと遅く起きるんだよ俺は」
予想通り部屋の前にサナが居り彼は思う。
出来れば依頼が完遂するまで教室以外では会いたくなかった、と。
「……そう」
ジークの回答に特に興味を示した様子もなく、小さく呟くサナ、その瞳は少しだけ下を向いていたが、すぐに彼の顔に固定される。
(あ、思ったよりキツイわ)
輝きのある金髪ロングヘアに男性を惹きつける特定の部位。寝惚け眼のジークの眼にダイレクトに映し出す。
(ホント朝から勘弁してほしいんだが)
あと思ったより至近距離であった為、彼女から発する仄かな甘い香りに鼻腔が刺激され意識が徐々に覚醒されていく。
(はぁ〜〜金髪は眩しくて乳がデカくてしかもこの燻るような匂い。……危険だな色々な意味で)
まさに男殺しだと、睨むように見つめてくるサナを見てジークは嘆いた。……当然本人は言わないが、その女性の目標とも呼べる容姿にかつての友であったアイリスが何度泣きを見たかと、心中で悪態を吐くと思考を振りほどいてサナに向き合った。
「それで? どうしたよ?」
恐らく昨日のボディガード云々の話か、或いは集団脱衣の件であろうと、面倒くさそうな表情を隠してもせずサナに尋ねてみた。……もしくは妹が襲われた件の相談かもしれないが、そんな質問に不用意に答えたらあっさり正体がバレてしまうかもしれないので、絶対に惚ける予定である。
するとサナは仏頂面でジークを睨んだまま、少し歯切れの悪そうな口調でジークに言った。
「じ、実は妹の件で話があるの。……人目を隠したいから中に入れて」
「は?」
(───中に入れろ? どういう意味? 何言っての?)
意味が分からなかった。
「入るわよ」
「え」
返答など問答無用といった感じで立ち尽くすジークを退けて、堂々と部屋に入って行った。
そんなサナにジークは茫然と見送ることしか出来ず。
「俺まだ着替えてないんだけど」
未だに寝間着姿の自分を見下ろして苦笑して息を吐いた。
◇◇◇
「で、妹さんが何だって?」
結局寝間着のままサナと向かい合うように備えている椅子に座り両肘をテーブルに乗せ改めて質問してみた。
対するサナは仏頂面のまま黙ってしまっている。
「……」
「?」
どうしたことかとジークは首を傾げる。
「? お〜い? 何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
「……」
何か質問があって来たのではないのか?、とジークは思ったが、どうも言い難いことであるらしい。
どうしたものかと悩んだが、せっかく起きたのだ。
「なぁ? 朝ごはん食べても良いか?」
普段は寝過ごして食す時間がないが、サナの所為で今日は無駄に早く起きたのでこれを無駄にするのはもったいないと考えた。
「……別に良いわよ。貴方の食生活なのだからいちいち私に許可なんていらないでしょう?」
「いやぁ〜なんせここ最近この部屋に尋ね人なんて来てないからなぁ。それに相手が相手だし、俺としてもちょっと緊張しちゃう」
と、頭を掻きながら言うが、まあ実際は言うほど緊張している訳ではない。
といよりも美女を目の前にして戸惑うよな可愛い純情な少年みたいな心など、彼は持ち合わせてなどいない。
「それじゃ俺は何か食べるけど、……サナは?」
「もう部屋で済ませてるから結構よ。まあそれ以前に貴方から提供される食べ物なんて危険過ぎて手なんて出さないわ」
「……どんだけ信用ないのかなぁ俺は」
「言って欲しいのかしら?」
「いいえ結構です」
──聞いてしまったら自殺したくなっちゃいそうだ。即答で回答を遠慮してもらった。
そんな感じで朝食を用意して、ジークだけ食べ始める。その間サナは特に質問をせず、黙ったまま彼を見ていると。
「ねぇ? パンだけで良いの?」
「コーヒーもあるじゃん」
「それは飲み物でしょう? 私が聞いてるのは食べるパンは一つで大丈夫なのか、ってことよ」
サナの言った通り、ジークのテーブルの前にあるのは、コーヒーと皿に乗った焼いた丸いパンが一つだけ、野球ボールより少し小さめなサイズである。普通この年頃の男子ならたったコレだけでは身が保たないのではないかと、何気ない疑問をジークに向けたのだが。
「少食ってわけじゃないけど、一応足りてるよ」
実はこれも戦場を経験した彼の後遺症、というか癖、というか要は食スタイルなのだ。
別に三食全てではないが、彼は朝、寝起きで寝ぼけた時は昔の癖に戻り食う物を最小限に留めてしまうのだ。
戦場では何処でも何時でも戦いは起こっていた。
なので最小限の食事だけに留めることでいざという時に腹に持ち過ぎて動きが鈍るというのを防いでいたのだが、大戦後、師匠の居る所に戻った時もこの癖がよく出てしまい、師匠や仲間の皆に心配を掛けてしまった。
彼なりに治してきたのだが、偶に抜けているとこうなってしまう。
「ふ〜ん、あっそ」
ただ当のサナは興味がないようで本当に何気なく指摘しただけらしく、彼が答えると特に疑問を持たず再び黙した。
「……」
ジークも特に話をしようとはせず、さっさと朝食を終えようとパンに手を伸ばした。
話的には短めな感じになってしまいスミマセン。
次回で多分会話関係は終わる予定です(仮)……たぶん(汗)




