第5話 玩具。
この前、日間ジャンル別を見たら………………10位でした(茫然)
普段だいたい50位から30位を行ったり来たりしていたのが………突然過ぎてどう感想を述べたらいいのか分かりません(汗)
と、とりあえずこれからも頑張っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
再修正。
「では俺はこれで。あと……いつも言ってることですが、もう少し周りの視線、気にした方がいいですよ?」
そう口にするとさっさと二階に続く階段へ向かっていたジーク。
「え……?」
最初は何を言われているか分からないといった反応するが、彼に言われて周囲を見渡すように顔を向けると。
『……』
すぐ近くにいたリナからの視線もそうだが、周囲からの視線の大半はキリアとジークの先程までのやり取りを、それはもう珍妙なものを見るかのような目つきで眺めていた。
「──っ!?」
やっと周囲の視線に気づいて顔を羞恥で赤くするキリアだが、そんな彼女に──さらなら強襲が……。
(うっ!)
呻く彼女の視界の隅からウェーブのかかったセミロングの黄色い髪。
ポヨン♪ポヨン♪
────あと無駄にデカイ脂肪の塊が見えた。
「キリアキリアっ!」
「……(イライラ)」
イライラする物体が目の前に現れる。お声が掛かってしまい余計にイライラしてしまうキリア。因みに声の主は、彼女と同じ受付嬢の同期で、おしゃべり好きの鬱陶しいメル。
「ねぇ〜キリアてば〜!?」
只今休憩中ではなく仕事中の筈なのに持ち場を離れて、キリアの窓口にやって来た。彼女がこういう時に来る場合は大抵面倒ごとしかなく、その度に頭痛に見舞われるのだが。
「ねぇねぇ! なにさっきのイケメン!? 知り合いなの!? キリアってジーク君以外にも男作っていたの!?」
どうやら最悪な分類の面倒ごとらしい。
彼女の余計な発言で一階のフロアが静寂に包まれる。それから数秒後、静寂から打って変わって騒然となるロビー。
『え? やっぱりイケメンだったの?』
『うん! フードで見えにくかったけど、超イケメンだったよ!』
『私チラリとしか見えなかったけど瞳が紅くて綺麗だった!』
『ジーク君の名もあったけど、もしかしてキリアさんって年下好き!?』
など、ジークの容姿について騒ぎ立つ女性冒険者や女性ギルド職員……。
『キリアさんの男!?』
『男がいらしたのですか!?』
『おのれぇ〜〜〜!! 何もんだあのガギャッ!』
『俺たちのマドンナに手ェ出しやがってッ!』
『ていうかジークってあのギルドマスターが言ってた戦友の!?』
『前々から怪しいとは思ってたが! まさか!?』
『赦すまじあの惰人が……!』
メルの言葉に戦慄し絶望の叫びを上げる男ども……。ついでにジークに対する増悪も増加した。
『あ、あ〜? なんだ? 急に騒がしいなぁ? 宴会でもあんのか?』
呑んだくれも混じっていたが、酔いが回って全然聞こえていなかった。
『ジークって……確か姉様とアリスさんが言ってた』
騒然とする中、メルが口にした名前を聞いて、何やらリナが思案するようにブツブツと呟いていたが。
(……うん、ジークさんの言う通り失敗したわね。これ以上迷惑かける前に済ませよう)
取り敢えずキリアは、彼のお願いを果たすことから移った。
既に色々と訂正したいことが山のようにあるが、そういったことは後回しにした。
「メル、急な仕事が入ったから受付任せるわ。……それとあとでお仕置きだから」
「エッ?」
告げると石のように固まるメルを置いて、窓口を出て茫然とするリナに話を掛けた。どうせ後で上司たちからも説教されるのだ。放置しても問題ない。
「リナ様ですよね? お話があるのでこちらに来ていただけますか?」
「え、あ……はい……」
今優先すべきはこちらである。
ギルドに入ってから戸惑うばかりのリナに促す。突然振られたか、悪意を感じなかったこともあり、自然と頷いていた。
「ではこちらへ」
「は、はい」
自身が先導すると、とくに抵抗なく付いて来てくれる彼女を見て、内心安堵するキリア。突然のことに戸惑いの反応が大きいようだが、パニックになっていないだけまだマシであった。
(まあ良いです。どうせあの人をご機嫌取りの方が大変ですし。ジークさん、頑張ってください)
リナを案内する彼女の脳裏では、彼女の長である者の不機嫌のお顔が浮かぶ。付き合いが長いので知っているが、あの状態の彼女は理不尽極まりない。
(例えるならグズってしまった子供でしょうか、アレはそれ以上に厄介ですけど)
置いてかれた感じであるが、キリアの中にはそんな死地に赴く彼への同情の気持ちしかなかった。
(な、なんだか凄いことになってる気がする。巻き込んじゃったのはボクだけど)
茫然としたままキリアに続いて歩くリナであるが、その心の内は一向に落ち着く気がしない。
(もしかして事情聴取とかするのかな? ど、どうしよう。家の事情とか話していいのかな? あ、ジョドが話てから問題のか? でも、『原初記録』のことを勝手に話たらマズいし。狙って来た相手が《魔境会》だから大事になって……。ああ〜なんて答えたら……)
そして、少しでも動揺を誤魔化そうとしたか、歩きながらアテもなく思考を巡らせていると、ふとさっきまで何について深く塾考したか思い出す。
(さっきジークって、やっぱりあのジーク・スカルス先輩だよね? 姉様とアリスさんと同じ高等部で、アリスさんが愛した……)
決して忘れていた訳でない。姉の親友であり、自分にとって大切な友達であるアイリスを傷付けた最低な人。
(……けど)
ただ、彼女はその件について直接関わった訳ではない。
事後、怒り狂う姉から話を聞いただけ。改めてその話を聞いた際も怒りしか覚えなかったが、しばらくして妙に不可解な点が頭に浮かび、思わず彼女は……。
「リナ様? どうかしましたか?」
「あっ、……いえ、なんでもありません」
だが、そんな疑問も既に意味などないのを彼女は知っている。
今はそれよりも、自分と姉の身に起きようとしている問題の打開であった。
◇◇◇
死線が彼の目の前で敷かれていた。
踏み込めばその瞬間殺られる。そんな感じの線が、彼の目の前で……と言ったら深刻に聞こえるが、結局全部ジークの自業自得であった。
「フ、フ、フフフフっ、随分と遅かったのう? 友よ?」
「あ、あはははは……」
背後に鬼が幻視させる不動のソレに、ジークは戦慄を覚えて薄っすら感じる寒気ともに、背筋から冷や汗を流していた。
(な、なんですか、この異様な圧迫感は……! この幼女のどこからこれ程の迫力が出せる!?)
小さい容姿から想像も出来ない威圧感を前に、つい身構えそうになっていた。……最強の魔法使いが戦慄する。
(あははは……これは結構ヤバいな。【八星】か【九星】クラスはあるぞこの幼女は!)
仁王立ちで待ち構えていたシャリア。そんな彼女から発せられる威圧感に、このままではマジで命が危ないと感じ取ったジーク。……幸運だったのは、たった今思いついた魔物基準の心の呟きが彼女の耳に届かなかったことだ。
さもなくば、彼の命は、ここまでであった。
有りとあらゆる汚名を背負わされて、この幼女魔女によって色々なモノまで絞り取られていたであろう。
「……友よ」
「な、なに?」
「何か、わたしに言うことがあるんじゃないか?」
仏頂面でシャリアが審判者の如く問いかける。
色々と思うところがあるようだが、どうやら彼には、まだ猶予が残されていたらしい。
(いや、残して頂けたってところだよな)
本来なら部屋に入った時点で、即鉄槌が降った筈だ。
学園の一室での攻防による部屋の破損。街中にある民家(敵の拠点)の中を滅茶苦茶にして建物内の内部崩壊。……後者は問題にされても困ると彼は思ったが。
この短い時間でそれだけのことをした。……やり過ぎである完全に。さらに言うなら前者よりも後者の方が問題であった。
校舎の破損の件は、潜入した敵の攻撃魔法が原因で、責任は相手にあるかもしれないが、後半の敵の拠点での暴れっぷりは、明らかに過剰攻撃であった。
因みに学園からは全責任者である学園長を通して、敵の拠点からは職員を捜査に向かわせて得た情報である。
もっと埃のように叩けば、さらに色々と出て来そうであるが、既に雷が落ちても可笑しくないくらい面倒処理が山のようにある。
(これでもし公園で暴れてたら……)
想像しただけで悪寒が走る。彼の選択はどうやら間違いではなかったようだ。……敵を見逃した時点で駄目な気がするが。
「しゃ、シャリア」
「なんだ……」
ならば後は、目の前で暴君となりかけている彼女を鎮めるだけ。既になっているようなものであるが。
(あ、ああ分かってるさ! 答えなんて最初から分かってるんだ! ……けど、もしそれを言ったら俺の未来は……!)
寸前で葛藤してしまう。最強の魔法使いが情けない、と言われても否定出来ないが、彼にも恐怖はあった。
(こ、怖くない、怖くない。怖────いですっ! ああああああっ! 普通に怖い! 言いたくない!)
告げてしまえば未来はない。けど、言わないとやはり未来がない。……どっちを選んでも地獄しかなかった。
(なんで地獄コースしかない!? そこはなんか救済処置的なものは!)
──無いのだ。震えながらゆっくりと動いてしまう自身の口に、焦りと恐怖が膨らんでいく。何か逃れられない絶対的な力に操れているのか、恐怖で動かない筈の己の意思に反して、口がゆっくりと禁断のワードを告げた。
「お、俺と、遊ぶ……か?」
「…………(キランッ)」
(あ、これは死ん──)
この後のことを彼はあまり覚えていない。
気がつけばすべてが終わり、ボロ雑巾のようにソファに倒れ込んでいたのだ。
(あ、なんか、大事な何かを失った気がする)
生気の喪われたその瞳に映るのは、火照り切り服の端からも見えるほどの大量の汗を流し、ダラシなくソファーの前のテーブルをベット代わりに寝そべっているシャリア。
「サイコーだ。これぞ至福の時」
心なしか妙に妖艶な息遣いと表情をしている気がするが、今のジークは特に気にしない。いや、気にしないほど魂が抜け切っていた。
(ま、いいか)
だが、そんな彼でもこれだけは覚えている。
誰も知られず、誰にも感謝されず、只々彼女の従順な玩具として、精一杯命を懸けご奉仕した。
(あぁ……眠いや)
そこまで考えると、疲れ切った為か凄い勢いで目蓋が眠気に襲われて閉じようとしていたので、とくに抵抗せず眠気に身を任せる。
ゆっくりと目を瞑り、深い眠りに入ったのだった。
END。
それから三十分ほどで目を覚ますが、目の前でシャリアの寝顔(柔らかそうな唇)が超至近距離にあり、慌て出すが、それはまた後日。
昔を思い出します。
中学時代、職場体験で幼稚園にお手伝いに行った時がありましたが………子供たち体力があり過ぎ!?
三日間だけの体験でしたが、正直超シンドかったです(苦笑)。
次回も今週中に出したいと考えています。
おそらく金曜日あたりになると思います。
それではまた次回で。




