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オリジナルマスター   作者: ルド
オマケ編 その3
264/265

特別版 もし戦争がなかったら IFの先で待っていたのは……。

ちょっと暗い話です。

いつか出そうと思っている作品の序章のような物の一部です。

『ワールド・カタストロフィ』

『ワールド・オリジン』


 世界を大きく改変させる究極魔法が解放された。

 ……否、解放されようとする崩壊の力を調和の力で無効化しようとしたのだが。


「ジーくん逃げて! もう無理だよ!」

「グッッッ……!」


 時間は長くは保たなかった。負傷していたのもあり、少しの間だけ抑えるだけで精一杯であった。

 崩壊の力がやがて彼を飲み込む。そして世界を包み込んで、その全てを原型も分からないレベルで滅ぼそうとしたが……。


「ウォォォォォォォォォォォォォッッーー!!」


 全身から眩い白銀の光が迸る。

 空を埋める桁外れのデカさをした白銀の魔法陣が出現する。


「『究極魔導(ウルティムス)白銀王の強制執行(シルヴァー・ドライブ)』ッ!!」


 莫大の神属性の魔力を込めた大・改変魔法が発動した。

 魔神が解放した滅びの力を消し去って、崩壊していた世界を修復させる。

 世界への影響から控えていたが、遂に魔導神ジーク・スカルスの本気の中の本気。究極魔法が崩壊の力ごと世界を飲み込もうとした。


 しかし、崩壊の力は完全には消し切れていなかった

 修復まで一気に神の魔力を注ぎ込んだ為に、魔神に対する耐性力が弱まっていた。それが彼に運命の大きな分岐点となった。


「───ッ!?!?」

「ジーくん!?」


 その僅かな弱体化した状態で、彼は崩壊の力をまともに受けてしまう。

 世界を作り変える改変魔法の発動中で、彼自身の魂にまで影響を与えたしまい、その結果……。








 この世界はいくつもある可能性の一つ。

 戦争は起こらずジーク・スカルスが闇堕ちする可能性が消えた世界。

 拾ってくれた師匠の村を出て学園に入学。そこでアティシアとアイリスの姉妹と運命的な出会いを果たす。


「ジーくん! 私たちと付き合って!」

「私の側にいなさいジーク!」

「……拒否権なし? え、二人とも?」


 仲間たちとも出会って穏やかな学園生活を謳歌していた。



 ……筈だった。



 異変は学園にいた頃に起きた。

 夕方でもないのに、空が血のように真っ赤に染め上がっていた。


「こうするしか……ないのか」


 その空にローブを着けたジークが浮いている。

 哀しげな顔をして崩壊するウルキアの街、そして崩落した学園を眺めていた。……全て彼がやった。


「ジーク……! どうして!?」

「ジーくんダメだよ!」


 青髪のアティシアとアイリスが地上から必死に呼び掛ける。二人とも制服姿で血だらけで重傷だ。


 近くに片腕を斬り落とされたトオルが……。


 胸元に魔法の槍を突き刺さっているサナが……。


 友であったシャリアが力尽きて倒れていたが……。


「この世界は間違っていた。だからやり直すんだ」


 彼は見向きもしない。ただ哀しそうな顔で世界を眺めると、真っ赤に染まった空に赤黒い禍々しい魔法陣をいくつも生成。空へ手をかざすと魔力が溜め込まれていき……。



「滅びろ。偽りの世界よ」



 躊躇わず世界を破壊する魔法を解き放った。


「ジーク……」

「ジーくん……」


 地上の全ての命が散っていく。彼が愛したはずの人たちも桜のように散っていく。


「終わった。何もかも……」


 しかし、ジークの顔は哀しさよりも達成感の方が強かった。

 散っていく沢山の命を見つめても、彼は満足そうに頷いて静かに黙祷した。



『選択を間違えましたか』

「ッ!? ──誰だ!」



 と目を閉じていたところで、背後から女性の声が。

 気配もなく驚いた顔で振り返ると、そこには彼と同じように宙に浮く白いワンピース姿の女性が立つ。長い白髪をした女性で武器らしい物は一切身に付けておらず、無表情で世界を滅ぼした彼を見つめて……。


『貴方は生まれてはならなかった。私が責任を持って処理します』

「さっきから何を言ってる? 俺の邪魔をするなら誰であっても──」


 続きの言葉は出せなかった。

 気付いたら時には、彼の胸元を──心臓を潰すように白い槍が突き刺さっている。


 咄嗟に心臓の『ロスト・オリジン』が起動して、心臓を修復させようとしたが、白い槍がその機能を阻害して心臓内部にある『ロスト・オリジン』の術式を破壊した。


『永遠に眠りなさい我が子よ。せめて肉体だけは私が最後まで見守りましょう』


 そして声を出せず、彼の命は呆気なく終わりを迎えた。

 彼女の正体も動機も分からず、自分が最悪の選択をした事にすら気付くことはなかった。





 この世界はいくつもある可能性の一つ。

 戦争は起こらずジーク・スカルスが闇堕ちする可能性が消えた世界。

 師匠の村から旅立った彼は、やがてSSランクの冒険者となって王族に気に入られて王都に移り住んでいた。

 そして……。


(わたくし)と一緒にいて欲しいの」

「出来るかどうか分からないが、君の側で守らせてくれ」


 やがて王都の姫騎士と呼ばれた第二王女のティア・エリューシオンと結婚。

 誰もが認めるほどの相思相愛であり、健やかな暮らして永遠に愛し合う。



 ……筈だった。



「貴方はこの国にとって危険です。ジーク」

「ティア……? なぜ……?」


 不意を突かれる。唐突に彼女が持つ『月の聖剣』で首元を斬られた。

 なんとか首は完全に斬られていないが、出血が酷くて治療魔法が掛かりにくい。倒れて首元を押さえて困惑した顔でティアを見上げる。


「ごめんなさい。こうなってしまったのは、私が悪いの」


 返り血を浴びた彼女は血で染まった王家の聖剣を掲げる。完全に汚れている。少なくともこんな暗殺のような事に使っていい剣ではない筈だが……。


「悪いってなんだよ。二人で乗り切ろうって言ったじゃないか!」

「大丈夫。貴方は誰にも渡しません。ずっと二人で一緒にいましょう?」


 ティアは既に狂っていた。会話は全く成立していなかった。


「やめろティア! そんな事の為にその剣を使ったらダメだッ!」

「正しいですよ? 全てはこの国の為、貴方の存在はやがて世界を滅ぼす」


 上に掲げた剣を下に向ける。

 涙を流しながら動けずにいるジークへ伸びて……。


「ティ、ティ……ア……」

「だから──死んでください」


 血塗れの聖剣で心臓をひと突き。

 咄嗟に抜こうと暴れようとしたジークを強く抱き締める。

 次第に力が失われていって、彼の命が完全に途切れたところで、抱き締めていた力を緩めて彼女は彼の顔を見つめた。


「本当にごめんなさい。でも、こうするしかないんです」


 最後に力尽きた彼にキスすると、血塗れとなった聖剣の刃を自分の首に当てて……。


「大丈夫、私も一緒に行きますから」


 静かに刃を引いてその首を───





 この世界はいくつもある可能性の一つ。

 戦争は起こらずジーク・スカルスが闇堕ちする可能性が消えた世界。

 当てもなく旅をしていたところ、偶然出会ったルールブ家の当主に拾われた彼は居候となってその家で厄介になっていた。


「妹に近づいたら潰すわよ」

「もっとお話を聞きたいです!」


 全く対応の異なる姉妹と出会った。

 妹の方はともかく姉の方とは入学した学園でもギスギスして、父親の当主に申し訳ないが、仲良くなるのは無理だと思っていた。


「また、負けたのね……」

「ああ、今回も俺の勝ちだ」


 しかし、何度も続いた対決。それがジークの勝ちで百回を超えた頃だったか、サナの彼に対する意識が変わり始める。


 そして卒業間近……。


「もう一度だけ勝負して」


 気付いたら彼女との勝負が無くなって一年以上は経過したある日。彼女はそう言って彼に勝負を申し込んで……圧倒的な力差と精神力の強さで彼が勝利した。


「認めるわ。貴方は強い。ルールブ家に必要な人」

「まだ認めてくれてなかったのか?」

「心のどこかでは認めていたと思うわ。……ただ怖かったんだと思う。認めた事で貴方に対する隠していた気持ちが、今まで以上に大きくなりそうだったから」

「……大きくなったらどうなる?」


 そう彼が問いかけると返答は行動で示された。

 重なり合う唇。強引に彼の顔を寄せたサナの無理矢理なキス。

 ジークはしばし何をされているか、理解するまで結構な時間を要した。


 そして卒業後、彼らはルールブ家を引き継ぐ事になる。

 二人の関係には妹を含めて家の全員が驚愕していたが、それは本人たちも同様だと苦笑いで納得してしまう。少しばかり周りからイジられる事になったが、仕事の上なら二人の相性は抜群だったようで、ルールブ家の未来は二人が喧嘩して破局しない限りほぼ安泰であった。



 ……筈だった。



「あの時までの私の判断は間違ってなかったってこと?」

「どうだろうな? こうなるかどうかなんて、神しか知らないんじゃないか? 俺もお前もこんな事するなんて想像もしてなかったしな」


 燃え尽きているのは、ルールブ家の本家の館。

 中には父や妹を含めて何人もいたが、全員が館が燃える前に死んでいる。


「サナにしては思い切ったな。まさか実の妹まで手にかけるとは」

「私たちの計画を知って止めようとしたのよ。放置は出来なかったわ。まぁ、あの子は私が殺してくるとは少しも考えてなかったようだけど」


 話し合いがしたいと呼び出したが、まさか何も武器を持たずサナの前に現れたのだ。油断し過ぎだと内心失笑した。


「で、どうする?」

「方針に変更はないわ。王都を堕とすわ。上の三人の王族たちの始末を任せるわ」

「……見せ物の首は国王だけで足りるのか?」

「下の妹たちと王妃もよ。上の三人は厄介だから生捕りにしてもこっちが損する可能性が高い。手早く殺していいわ」


 あっさりそう言って彼女は冷たい笑みを浮かべる。


「もっとも二人の姉妹に限ってなら、手足を切り落として飢えた男たちの食い物にしてもいいけど」

「残忍だな」

「止めないでしょう?」


 小首を傾げて彼を見つめる。


「勿論」


 空間を移動した。王都の上空。

 面倒な仕事はさっさと済ませようと、彼は王都の侵略を開始した。



 




 これらは戦争がなかった場合、彼が辿ったであろうルートの一部。

 一体何処で失敗したか定かではないが、神のルールに反いたルートの全ては地獄と化していた。


「じ、地獄というかまさに悪夢だ。よりによってサナととか……あり得んだろう」


 悪夢と言っていい。最悪のシナリオであるが、魔神が放った崩壊の力を受けた彼はそれを偶然にも目にする事になった。

 彼が使用した改変魔法も影響しているようだが、それについて考えるよりも前に見せられた悪夢の内容の方が衝撃的過ぎた。


「なんだったんだ? 今のビジョンは……どうして俺が? あんな事を? 意味が分からん」


 意識が混濁していたが、膨大な情報量を受けて目が覚める。幻覚や夢にしてはリアル過ぎて幻とは思えなかった。


「魔神の攻撃の所為か? まったく……!」


 やや眩暈は残っているが、どうにか立ち上がると……その場所に目が点になった。


「は?」


 景色が一変しているどころではない。寧ろ滅んでいた方がまだわかりやすかった。そこは自然界の……ただの草原であるが、離れた場所に見える街は学生時代、彼がよく目にした景色と同じだった。


「此処って……まさか【ベーター】か? しかもウルキアの側なのか?」


 唖然としながらその世界の名と住んでいた街の名を口にする。


「本当にどうなってる? ……気の所為か、街の雰囲気がやや古い気がするが……」


 否、正確に言うなら学生の頃の風景と同じに見える。卒業後、何度か来ているが、その度に新しい建物が出来て街並みだって変わっていた。


「彼処ら辺って……改装してデカい塔がなかったか?」


 しかし、遠目からでも彼の視野ならハッキリと見えるそのウルキアの街並みは、かつてまだ彼が魔導神となる前の学生だった頃の街そのもの。


「時が違う? いや、飛んだ?」


 不可解な現象は他にもあるが、彼は気付いていない。

 万能以上となった筈の魔道神のジーク・スカルスの神の魔力。


 崩壊の力を受けたかそれとも彼の魔法が影響したか。


「マジか」


 彼は時を超えて過去へのルート。

 そして分かれた半身となって、その世界へ降り立ってしまった。



 物語は【???? オリジナルマスター編(仮)】へ続く。

 無事に書き終わったと思って見たら、何故か途中やりになっていたので直しました。保存ミスかも(汗)。


 そんな訳で少しアレンジを加え直したのを出してみました。

 続きは別作で……多分相当先ですが。

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