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オリジナルマスター   作者: ルド
オマケ編 その3
261/265

特別版 オリマスと元勇者……そして魔神の。

コラボ再び!

ちょっとした魔神とジークとの話になります。

 調査の為に別世界に飛んでいたジーク・スカルス。

 人の気配どころか生き物の気配もない廃墟の都市に辿り着くと、白のローブに付けている埃除けのフードを取って、ゆっくりと周囲を見渡した。


「ここも酷い。まるで戦争の後のようだな」


 自分も似たような光景を作ったことがある為か、他人事には思えない部分がある中、死体すら残っていない地べたに触れて、そっと目を瞑って意識を探り出してみるが……。


「ダメだ。完全に『神力』が途絶えてる。生気も残ってない。もうこの星は……」


 悲しそうで悔しそうな表情で嘆くように呟く。

 何でこうなってしまったのかを知っているからか、内心憤りに近い感情が膨れ上がっているが、同時に間に合わなかった現実を前に、どうしようもないやり切れない気持ちが前に出てくるのだ。


「『リカバリー』には時間が掛かると思うが、何とか切っ掛け種だけでも───っ!?」


 拳を握り締めて、応急処置の為に力を込めようとした。その時。


(何か来る? 上かっ!)


 突如頭上より禍々しい気配が出現。

 咄嗟にその場から離れると、彼が立っていた場所に何かが落下した。


「この魔力の感じは……!」


 落下の所為で発生した土煙が視界を奪うが、感じ取れる魔力の気配からジークはそれが何かを察する。

 振るった片手から魔法陣が浮かぶ。愛用の銀剣が出現して手のひらに収まった。


『ジィィィィィィ』

「マジックゴーレム、カラクリ仕掛け……『魔法殺し』の機械兵───【滅亡の侵略者(ドレッド・レイダー)】か」


 二足歩行の猪のような外見のメタルゴーレム。両手の巨大な爪を構えて、いきなり攻撃姿勢なのを見て、明らかに彼を敵と認識しているのが分かる。

 ジークも銀剣に魔力を込める。身体強化の魔法も同時に発動させると、敵が何かして来る前に攻撃を仕掛けた。


「シッ! ラッ!」


 銀の一閃。二閃光の斬撃が猪のゴーレムを襲う。

 頑丈な作りと魔力耐性の効果の為に両断こそ出来ないが、ジークの鋭い斬撃は確実に敵の装甲にダメージを与えている。知り合いの剣士ほどではないが、彼の剣の技量は一流のそれと同等以上であった。


『ジィィィィィ!』

「っ!」


 反撃と繰り出して来たのは、太い腕と爪のロケット。

 腕の関節部が切り離せれるようで、火を噴いて発射される。切り離された部分から鎖が本体と繋がっており、発射した腕は戻せれるようだが……。


「『銀王の魔導極衣(オーバー・フォース)』」

『ッ!』


 発射された拳のロケットは、ジークが纏った銀色の身体強化によって止められる。髪と瞳、そしてローブも銀色に染まると、飛んで来た拳を片手で弾く。

 

「『術式重装』『銀極・鎖(オーバー・チェーン)』」

『ッ!?』


 ジークが唱える。地面から銀色に輝く極太の鎖が出現。動きの鈍い猪ゴーレムを拘束する。


「真っ二つだ。『銀極・(オーバー)……ッ!」


 トドメの一撃を───とした直後であった。


『ケェェェェッッ!』


 彼の後ろの方から闇の空間が開いて、暗黒騎士のようなスケルトンが魔剣を振り上げて暗黒の斬撃を解き放った。





「『緊急障壁』が間に合わなかったら……危なかった。」


 スケルトン・キングナイトの奇襲攻撃は驚いていたが、予想外ではなかったジーク。

 予め用意していた強力な障壁が背後の斬撃から彼を守った。一回切りの非常時用の魔法であるが、これのお陰で大ダメージは避けられた。


「ッ、二対一ってありか。少しは加減しろよ」


 増援の魔剣持ちのスケルトンが増えたことで状況は一変する。

 彼の攻撃を警戒するのを止めた猪ゴーレムの角による突進。それに加えてスケルトンの魔剣による剣戟の嵐がジークを追い詰めていく。


 ジークも負けじと魔法弾や魔法の槍を飛ばして牽制するが、二体とも普通の魔物よりも数段強化されており、彼クラスの通常魔法でも余裕で弾いてしまう。


『ジィィィィィ!』

「───ッ!」


 魔法の弾幕を吹き飛ばすように、猪ゴーレムの突進がジークを直撃。

 巨大な角には危険な赤黒いオーラが纏われて、身体強化の銀色のオーラを纏っているジークを貫いたように見えたが……。


「ふ、容赦ないな」


 銀色の魔力との───『一体化』。

 腹に太い角が貫通している。なのにジークは笑みを浮かべて猪の頭を捕まえる。

 

 反転して勢いを付けると相手の突進の力も利用して、猪を廃墟となった建物の方へ投げ込んだ。その勢いを殺せず、体勢も戻せれないまま、猪が弾丸のように建物の壁を打ち壊した。


「『銀龍王の咆哮(オーバー・ブレス)』」


 そこへジークは遠距離攻撃で畳み掛ける。

 銀剣を持ってない方の腕が変化して銀龍になると、顎門を開いて銀炎のブレスを吐いて、建物ごと猪を爆炎で飲み込んだ。



 しかし、その攻撃を仕掛けた瞬間、ジークでも……もう一体に対する警戒が僅かばかりに緩んでしまう。



『ケェェェェェェッ!』

「ッッ!? グゥッ!」


 咄嗟に避け切れず、上半身と下半身が魔剣の一閃で真っ二つにされる。

『一体化』の影響で血飛沫こそ起きなかったが、魔剣の効果かジークの表情に苦悶と激痛の色が混ざり合う。


 すぐに引っ付けて、仕掛けてくるスケルトンに向かって剣を振るうが、心なしか彼の表情に余裕どころか疲労の方が濃くなり出した。


「ハァハァ……!」

『ケェッ!』


 ギンギンッと互いの刃が打つかり合う。

 ジークも何とか持ち直そうとするが、剣技でもスケルトンは相当強いのか押し切れずにいる。

 さらにサブウェポンの斧まで使用した二刀流を披露し始めて、息を切らし始めるジークを追い詰めていき……。


「ッ……シァ!」


 銀の魔力を込めた渾身の蹴りが骸骨の顔に直撃。

 サッカーボールのように頭だけ遠くへ飛ばすと、頭を失って混乱している相手の胴体に剣を叩き込もうとするが……。


『シィィィィ!』

「───ッ! まだ動けッ」


 瓦礫の中から倒したと思われた猪ゴーレムが飛び出す。

 各部の噴射口からジェットエンジンを噴射させて加速。一気に背後からスケルトンに集中していたジークを貫こうとした。



「【爆龍我・脚舞】!」

『シィ、シィィィ!?』



 だが、飛んで来た真っ赤な炎の何かが……間に入って猪を弾き返した。


「大丈夫ですか? ジークさん」

「な、君は……」


 困惑している彼に格闘家のような格好の相手は振り返ってお辞儀する。

 こんな時にと少し思うが、それよりも思わぬ人物の登場の驚きが強かった。


大地(だいち)君、どうして此処に?」


『勇者』───幸村(ゆきむら)大地(だいち)

 ジークとは別の世界出身であり、さらに別の異世界で勇者となった帰還者でもある。元の世界でも能力者となっているが、今は少しだけジークの仕事を手伝っており、また別の世界で活動をしていた。


「ジークさんの……あ、隊長さん(・・・・)の部屋から不思議な魔力を感じ取って、マズイと思いつつ入ったら異次元のゲートが開いてて、つい、思わず……」

「あー、そうか……」


 申し訳なさそうに告げる大地に対して、ジークは頬を掻きつつ、内心失敗したと反省する。

 ちょうど加勢が欲しいと思っていたところだが、彼には別の重要な任務を任せている段階だ。あまり無理をさせたくはなかったので、黙って出て来たのだが……事前に言うべきだったかと、対応に反省している中。


「猪ゴーレムは君の世界にも出た魔神の機械兵だ。俺だとちょっとやり辛い」

「分かりました。イノシシはオレが。スケルトンの方はお願いします」


 当然だが、敵サイドは待ってはくれない。

 飛ばされた頭を回収したスケルトンが怒りのオーラを吹き出して、蹴り飛ばされた猪ゴーレムも怪獣のように唸って煙を漏らしていた。


 迷っている暇はない。

 ジークは剣を構えてスケルトンの方へ向く。

 背中を合わせるように大地も紅いガントレットを鳴らして、怪獣イノシシを捉えていた。


「さてと……行くか」

「はい!」


『魔導神』と『勇者』の共闘。

 最近になって一緒に組むことが増えているからか、二人の連携は中々のものであった。


 さらに鍛えていた大地は『勇者』の姿でもなく、拳闘士のジョブで猪ゴーレムを圧倒。休むことなく何度も拳を叩き込んで鋼のような装甲にヒビを入れていく。


 余裕が出来たジークもスケルトンに集中。魔法も組み合わせた剣技でスケルトンを翻弄して、得意なスキルで詰めて畳み込む。


「一気にケリをつけましょう! ジークさん!」

「ああ、行くぞ!」


 手元にカードを取り出した大地が先に動く。

 ガントレットにセットするようにカードを合わせた。


「『零さん』行きます!」


 かつての戦いで手に入った【泉零】のカードを起動させる。 

 カードを装着したガントレットが紅から黒色になって───。


「『銀極・斬(オーバー・ブレード)』ッ!」


 銀色のオーラが銀剣の刃に凝縮される。

 巨大な光の大剣となって、ジークが片手で振るうと───。



「【爆龍我・黒竜剣】ッ!」

「『絶対切断(ジ・エンド)』ッ!」



 そして大地の黒色の貫通拳撃と、ジークが放った切断の斬撃が相手を一撃で沈める。

 魔神の刺客と思われる二体は、暗黒の爆炎と共に散っていった。




「ハァァァァァ!」


 地面へジークは魔力を注ぎ込んだ拳を打ち付ける。

 すると透き通るように彼の魔力が光となって地面へ、そして内部へと浸透していくのが見える。


「ハァ、ハァ……」


 流し終えるとジークは両膝を付いた。

 先の戦いもあって消耗が激しい。元々全快の状態でもない不調のままが続いている為、寧ろ自業自得と言えるかもしれない。


「ジークさん、何としたい気持ちは痛いほど分かりますが、程々にしないと本当にヤバい時に取り返しがつきませんよ?」

「はははは……そうなんだよなぁ」


 心配されながら注意を受けるが、否定しようがない。

 彼からしたらいざとなったら頼りになる人が弱って、それをさらに弱体化させている状態。不安しかないのが正直な気持ちなのだろう。


「ハァー、今抱えている騒動が終われば、少しはマシになると思う」

「けど、今のところ動きは見えません。こんなことが続くと先にジークさんの方が……」

「分かってる。程々にするさ……一旦な」


 最後だけ小声なのはせめてもの抵抗である。

 見て見ぬ振りができる自信がない。そんな彼の心情を察してか、大地もそれ以上は強く言わず、ただ苦笑いして彼と同じように地面に手を付けた。







「おはようございまーす。って、あれ? 大地さんだけ? 銀さんは? 昨日一緒だったんじゃ……」

冬夜(とうや)か。あー……仮眠中、だな」

「えー、またサボりっすか?」

「ははは……一応理由はあるが、否定し切れない」


 特別に用意された建物の中の皆が集まるメインルーム。

 学校休日で朝からやって来た青年に、大地は困ったような素振りを見せる。

 あんまり強く否定すると、『だったら何を?』など厄介な質問が返ってきそうなので、ここでは言葉を慎重に選ばないといけない。


(それもこれもあの人が自重せず、あっちこっち飛んでる所為だよなぁー。人手が足りないからって全部カバーしようとしてたら、マジでそのうちボロが出るぞ)


 ───ま、そうなっても結局何とかなりそうだけどな。

 そんな風に内心僅かだが思いつつ、本日も監視対象である魔神の血を引く壱村(いちむら)冬夜(とうや)との無駄話に花を咲かせることにした。


 そして、最初に分かったことだが、彼も結構な苦労人で、あとキツイ女難の呪いに掛かっている可哀想なタイプだった。……他人事のように聞こえず、度々優しく接していたりしていた。



 物語は【世界を滅ぼした魔神の娘に取り憑かれた】へ続く。

 久々の投稿となりました! 完全に気分転換です!

 弟子の物語もよかったらどうぞ!



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