特別版 夏のビーチと水着サービス その1。
思い付いたオリジナルマスターの海バージョン!
……なんて言ってますが、ただのサービス回な気しかしませんが。
学生のジーク・スカルス。久々に復活!
「く、太陽が憎い! なんでこんな暑い中、海に来ないといけないんだ!」
魔法使いのジーク・スカルスは海に来ていた。
と言っても自分の意思では断じて違う。夏休みを迎えたことで学園が長期連休となったので、家でゴロゴロと過ごしてやろうと、怠惰な彼は密かに計画していたくらいだ。
『ククク、待ちに待った夏休みだ。山のような本や娯楽グッズを用意して部屋に引きこもってやる! 絶対に仕事しない! 外にも出ない! 休み中はここが俺の楽園じゃ!』
日々いいようにコキ使われていたストレスでも溜まっていたか、後半キャラがブレブレな感があったが、彼の引きこもり計画は結構本気であった。
しかし、そんな怠惰な彼の計画を打ち破ったのは、彼が苦手とする学園のお嬢さん方とギルドのマスターであった。
何処で聞き付けたか知らないが、寮に引き込もうとした終業式の日になって女性陣が組んで来た。
「暑いなら海に入ればいいじゃない。水着にまで着替えたんだから」
「お前らがムリヤリ着替えさせたんだろうが! あと海に入ったら余計に疲れるわ! 俺はのんびりと部屋で過ごしたいんだよ! 別の世界で言うインドア派なんだよ!」
「いや、言っている意味が分からないんだけど。絶対まともなこと言ってないでしょうアンタ」
浜辺で項垂れる彼を呆れた顔で見ているのは長い金髪のサナ・ルールブ。
彼が住んでいる街どころか国の中でも、有名な貴族の娘である。家が騎士の家系だけあって魔法だけでなく騎士としてのスキルも高い学年でもトップクラスである実力者な彼女だが。
実は目の前で項垂れている怠惰な男に対して、密かにライバル意識を向けている。
理由は色々とあったと省いておくが、怠惰な性格と同じクラスだった為か衝突するのは時間の問題だった。
「せっかく別荘に誘ってあげたのになに黄昏てるのよ。少しは喜んで感謝したらどうなのよ?」
「強制的に拉致ったくせして何言ってんだよ。……たく、寮まで突撃しや、が……て……」
「ん? 何よ?」
上からの物言いに若干腹が立って、ようやく顔を上げたジーク。
すると彼女の白ビキニな水着姿が眼前に入る。学園でもスタイルが抜群なサナが上体を屈んだ姿勢で彼を見ている。
しかも、暑さ所為か海に入っていないのに露出している肌から汗が出ている。
普段はロングなストレートの髪型であるが、今は後ろに結んでおり汗で濡れた白い首元がよく見えていた。
本人は平気そうにしているが、この暑さは流石にキツいようだ。
最も見上げていたジークには、それどころではなかったが。
(ここは桃源郷か? なんだ、このリア充感は!?)
――結論として、彼の景色に真っ白でデカいのが二つあった。汗で濡れた感じが余計に刺激的であった。
いや、暑さで頭がおかしくなった可能性でもあるが、彼もお年頃な男子である。
色々とまともな経験をしてはいないが、男の子らしい反応に間違いはないのだが。
「どこを見てるのかな? ジーくん?」
「――ギクっ!? あ、アイリスさん?」
恋する乙女が側に居る中でその視線は自殺行為でしかなかった。
いつの間にか背後からしゃがんでいた彼女がそっと手を彼の肩に添えていた。
瞬間、暑苦しいと思っていたジークの体温が一瞬で下がった気がした。
「もう、ア・リ・スだよ。そろそろそっちで呼んでほしいなぁ」
「わ、悪い。と、とりあえず手を退けてもらえないでしょうか?」
ふんわりとした長めの水色の髪をした彼女は、アイリス・フォーカス。
サナと同じく貴族の娘であり彼女もまた学園ではクラスメイトある。サナのように卓越した魔法の際があるわけではないが、魔法家系だけあって技術力は学園でも上のクラスに立っている。
髪の色よりも濃い青い水着をしている。サナと違いワンピースであるが、中々のスタイルをしている。露出度が少なくサナ程ではないが、胸元の膨らみは十分引き寄せられるレベルがあった。
リーダー的で挑戦的な性格をしているサナとは逆に、性格は穏やかで戦闘を寧ろ苦手としている。
あと怠惰なジークのことを放って置けないのか、よくサボろうしている彼をサナと一緒に引っ張っている。私生活でもお世話をしたり、よく手料理を振る舞ったりしており、彼に好意があるのは明らかだったが。
「わたしの水着はどうかな? サナちゃんみたいに凝視したくなるかな?」
「お前……目が怖いぞ」
若干であるが、嫉妬深いのが困りどころであった。
その後ろからさらに二人。別荘で着替え終えた者たちがやって来た。
「あの友の背後を取るとはやるな。あの娘は」
「いつも割りと弱気なアリスさんだけど、ジーク君が関わってると限界を超えるんだよね」
オレンジのショートをした女子はミルル・カルマラ。
動き易い運動系の水着姿という色っぽさが少ない格好であるが、ピッチリとした生地の黒色のパンツが彼の目のやり場を少々困らせた。
ジークたち同じ学園のクラスメイトであり、サナやアイリスと組んでいるパーティーメンバーである。すらっとした足をしているが、二人と違って胸元は乏しかったりしている。
続けてやって来たのは、今回の自称保護者役のシャリア・インホード。
サナよりも濃い金髪をした幼女であるが、人外の妖精族という超が付く年長者である。具体的な年齢は考えただけで命が危ないので口外はしない。
彼らが住んでいる街の冒険者ギルドのギルドマスターも務めている。 冒険者の頃もベテランだったこともあり、立場的にも貴族に負けない偉い人物であるのだが……。
「ちょっとギルドマスター!? なんて格好してるんですか!?」
「む? 水着に決まってるだろ? ルールブの娘よ」
「刺激が強過ぎるよ! シャリアちゃん!」
「大人の色気だ。フォーカスの娘」
堂々と現れたシャリアの格好を見たサナとアイリスの顔が真っ赤になる。ミルルも若干頬を染めて照れているが、何も言わないところを見ると説得は諦めているようだ。
「シャリアよ。再開早々テンション上がるのは非常に分かるが、流石にほぼ紐の黒ビキニはアウトだ。この回自体がサービス回なのは薄々気付いていたが、幼女の紐ビキニは表現も許されない禁断の領域だから勘弁してくれ」
「む、そうか? 下も合わせて『ピーピーピー』にして――」
「はい、今すぐ着替えて来なさい。『ピーピーピーピー』は認められないから」
「いや、『ピーピーピーピー』はしてないぞ? 私のは『ピーピーピー』の方だ」
「いや、『ピーピーピー』も『ピーピーピーピー』もこの際関係ないから」
「さっきからピーピー煩い! ギルドマスターもさっさと着替えて来ないと帰ったら受付嬢にサボってたってバラしますよ?」
「ぬ!? そ、それだけは勘弁してくれ!? せっかく理由を付けて書類整理から解放されたんだ! 保護者役をサボっていたとバレたら書類量が地獄レベルに変わる!?」
「どっちにしても地獄なのは変わらない気がするが」
「地獄の具合が全然違うんだ! 同じ地獄でも待っているのは、『浸かって焼け死ぬ窯』と『浸かって死んで生き帰ってまた死ぬループ』の窯くらい違うんだぞ!?」
「全然分からないからとりあえず着替えて来なさい。どうせ話は一旦飛ぶんだから……」
「ぬ!? ど、どういう意味だ!? おいジークよ!?」
ガシガシと掴まれてシャリアに振られるジークであるが、もう諦めた顔で海の方ばかりを見ていた。
(ただの休暇で終わる気がしないな)
そう心の中で呟いている彼の瞳には、確かに海の中に潜んでいる何かを薄らであるが目撃した。
ジークの周りにいる美少女ばかりが集まった別荘付きの海。
明らかにサービス感がヒシヒシと感じる中、平穏を望んでいる彼は少しでも休めれることを願う。
「ぬああああああ!? ジィィーークよぉぉぉぉ!?」
いよいよ暑くなってきた引っ付いているシャリアを別荘の方へ放り投げると、彼は彼になりにバカンスを楽しむことにした。
――話は次回へ続く。
ジーク「続くかよ!? もう終わったんじゃないのか作者!?」
シャリア「ムフフフ! サービスサービスだ」
サナ「なんだか次回が不安になるわね。……何かしたらジークは氷漬けね」
ジーク「さり気なく俺を氷漬けにするな!」
アリス「そうだよサナちゃん! どうせ凍らすなら永久冷凍にして私に頂戴!」
ジーク「アイリスさん!?」
ミルル「ああ、こんな感じで進めていくんだ。……本当に先行きが不安になりそうだね」
次回は……そのうちやります!