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オリジナルマスター   作者: ルド
オマケ編 その3
254/265

特別版 魔法使いの弟子(短編)。

ちょっと思い付いた弟子の話を短編にしました。

前回とは設定を少し変えてます。戦闘シーンも少ないですが、ちょっとしたお試しです。


この世界はジークがいる『魔法世界』と弟子の刃がいる『現代世界』が繋がっている話です。




「なんで毎回暑いんだ。夏日は」


 今年の夏は暑過ぎないか? こんな日に外出なんて正直しなくなかった。


 憎たらしい太陽を見上げてうんざりする俺は、龍崎(りゅうざき)(じん)

 この世界では低レベルだけど魔法使いの学生をしているが、ごく普通の高校1年生。……いや、全然普通じゃないと思うが、この現代世界では魔法が一般的なのだ。


 瞳がいつも死んだ魚だと言われているが、これは正常状態である。キラキラ輝く時だってあるんだ。

 好きなものは動物全般。嫌いなものは死んだ魚の目をした魚。……決して同族嫌悪とかありませんよ?


「何をモノローグで言い訳してるんですか刃」


「補足説明だよ。まどかだっていきなり物語が始まったらキョトンとするだろう? そんな人達のために丁寧な説明をしているわけだよ」


 隣で一緒に歩いている黒髪の少女の名はまどか。小学生と間違われてもおかしくない少女の姿をしているが、実は俺よりずっと年上で俺の学校の魔法教師している。……訳あって俺の家にホームステイしている外国(・・)の少女だ。


 料理洗濯が万能な彼女の要望で買い物に付き合っていたが、まさかこんな暑い日の買い物になるとは思わなかった。いつもお世話になってるから拒否しにくいが、出来るなら別の日にしてほしかった。……具体的には秋ぐらい辺りに。


「何ヶ月先の話ですか、季節まで移っているじゃないですか。……ま、せっかく外出したんですし、何処かで涼みますか?」


「うむ、大歓迎」


 こうしていると他の人からデートとか思われるかと一瞬は考えるが、少女なまどかと一緒に歩いている買い物袋を持った男性という絵面を想像すると。


「お願いだから知り合いに会いませんように」


「渋い顔で何言ってるんですか?」


 これ以上のロリコン疑惑は俺の学生生活に与える影響が大き過ぎる。既に手遅れ感もなくはないが、少女教師なまどかと一緒という絵面は色んな意味でアウト過ぎた。


 ていうか、いつの間にかフラグ展開じゃないか? ややこしくなる前に近場のお店にでも逃げ込――


「オイ、そこで何しているんだ刃?」


「兄さん? それはどういうことですか?」


「……何処から出て来たんだお前ら」


 おい、いったい何処からフラグが確定していた?

 知り合いどころか身内が混じっているぞ? しかも、もう片方は幼馴染じゃん。

 突然道端でバッタリと遭遇してしまった私服姿の幼馴染と妹を前に、俺は死んだ魚のようになったであろう瞳で憎たらしい太陽を睨んだ。


「質問している最中に何処見てる?」


「憎たらしい太陽とこの理不尽な世界を」


「しばらく会わないうちに頭でも壊れたんですか?」


「勘当扱いでも兄に言うセリフがそれなのか?」


 男らしい口調で話すのは、幼馴染の白坂(しらさか)桜香(おうか)。口調で分かりづらいが、立派な女性で色々と発達しています。あと女子と話す時はちゃんと女性らしい口調で話して、男口調は男子限定なのだ。


 俺が通う魔法学園の魔法科のエースにして、『魔法警務部隊』の期待の存在である。

 肩くらいまである明るい茶髪。動き易そうな私服の上からでも分かる豊満な膨らみ。下は短めのジーパンを付けて完全にオフな印象がある。


 階級は【魔法剣士】と言う大人クラスの資格を持っており、剣術と魔法の合わせ技でこの地区に出てくる魔物を次々と退治していた。


 敬語口調で毒舌を話すのは、妹の神崎(かんざき)緋奈(ひな)

 俺より一個下でありながら家の継承をほぼ全て引き継いだ才女。

 黒髪のポニテをした桜香よりまだ成長途中なスタイルをしているが、将来は色々と充分期待が出来る自慢の妹だ。


 その代わり勘当された俺には辛辣。まだ家にいた際も色々と言われて幼馴染から言われるよりも結構堪えた記憶がある。……何故か周囲からは隠れブラコン扱いになっているが、アレがブラコンとか絶対ないと俺は強く言いたい。


「それで? 私服のまどか先生(・・)と一緒にいるわけだ? お前、まさか本当にそっちの趣味があるのか?」


少女(・・)容姿な先生と一緒なんて……妹として兄の性癖を疑います」


「なんで『先生』と『少女』の部分を強調するかな?」


 あと2人とも機嫌悪くないですか? あ、俺の所為ですか? 確かに先生と休日に一緒なんて良くないと変な疑いを持たれるかもしれないが、教師のこと知っているんだから少女の部分は反論したい。


「ここに立派な少女がいるからではありませんか?」


 ってまどかまで胸を張って便乗するな。丘すらない真っ平らな癖に。

 横目で睨んでいると余計に機嫌を悪くした桜香から思わぬ言葉が飛んで来た。


「どうも暇そうだな。……これからちょっと付き合え。この暑さで腐っているその躰を叩き直してやろう」


「え、いや、暑いしさっさと帰りたいんだけ……いえ、了解しましたサー」


 鋭い眼光で睨むのは反則だと思うんだ。

 荷物をどうしようかと思ったが、幸か不幸か食材がないのでそこら辺のロッカーに仕舞うと、突然の幼馴染のお誘いに付き合うことになってしまった。





「し、しんどい……」


「だらしないぞ。それでも男かお前は」


「超人なお前と一緒にしないで」


 なんで休み中にわざわざ訓練場まで来て、バトルキャラな幼馴染に手揉みされないといけなんだ? 息切れてろくに声が出ない中、軽く汗をかいた幼馴染に見下ろされながら説教されていた。


 輪郭が浮き出ている黒のスポーツ姿に最初は目のやり場に困ったが、剛力無双よろしくな桜香にムラとするのは、途中から馬鹿らしく思えた。


 俺も着替えを借りれて動き易かったが、お陰で遠慮がなくなった桜香によって、俺は汗だくで床に倒れていた。……私服が汗だくにならずに済んで嬉しいが、この組み手は何も嬉しくなかった。


 訓練場(トレーニングルーム)は桜香が利用している街の施設だ。

 高校からこっちに引っ越して見つけた場所らしく、学校の訓練場が使えない時にはこっちを利用しているそうだ。


「モノローグはいいので水を飲んでください。このままだと脱水症状か熱中症かでダウンします?」


 ……なんてどうでもいい話をしていると、まどかから癒しの濡れタオルを掛けてくれた。あ、あなたは天使ですか? さりげなく膝枕までしてくれたよ!


「闇の妖精ですが? (ボソ)」


 でしたよねー。用意してくれたタオルで汗を拭う。

 いやー冷たいなぁー。


「っ……」


「ん? どうした緋奈?」


「な、なんでもありません。汗臭いんで近付かないでくださいっ」


「動けないんだけど……」


 何故か同じくタオルを用意していた緋奈がこちらを見て固まっている。

 不思議に思って声を掛けただけなのに、何故か焦った感で毒で返された。……ぐすん、俺だって傷付くんだよ?


「桜香姉さんこちらをどうぞ」


「ああ、ありがとう緋奈」


 結局用意していたタオルを桜香に渡す緋奈。なんでかその光景をまどかが呆れた感じで見ていたのが気になったが、ようやく解放されるのかと言う喜びに感動さえ覚えてすぐに忘れてしまった。


「刃……スマホが震えてますよ?」


 その感動もすぐに灰となってしまうが。

 嫌な予感をヒシヒシと感じる中、膝枕状態のままスマホ画面を見た。



―――――

【緊急の討伐ミッションのお知らせ】

・出現地点『――――』

・達成条件『敵の全滅と魔石の回収か破壊』

・達成報酬『――――』


いま君がいる近くで魔法世界の魔物が召喚される。

至急向かって討伐しなさい。


PS:幼馴染のくずれほぐれつ……楽しかったかい(笑)?

―――――



 なるほど、くずれほぐれつかぁー。


「刃、気持ちは分かりますが、スマホを砕くのやめましょう。高いんですから余計な出費は認めませんよ?」


 思わず砕きそうになるスマホを鮮やかな手捌きで俺の手から回収したまどか。

 呆れた感じで膝枕されている俺を見下ろしていると、チラリと話している幼馴染と妹の方を見た。……連絡が着てないところを見ると、まだ警務部隊は気付いていない。


「こっちは私がどうにかしますから行ってください」


「いいのか?」


「ご奉仕だけではありませんよ? こっちのサポートも私の務めですから」


 ……ありがとう。けど、『ご奉仕』って色っぽい感じで言わないでもらえませんか? まだ何もハッピーな経験なんてしてないんだから!


 まだ気付いていない2人を避けて、俺は訓練場をこっそり抜け出す。

 服装は借りているスポーツウェアのままであったが、靴だけ履き替えると近くで異世界の魔力が感じ始めた地点へ全力で駆けた。





『ギャァアアアアア!!』」


 街中で突然出現した魔法陣の中から出て来たのは、翼のないドラゴンのようなゴーレム体。

 偶然にも目にした周囲の一般の人達が逃げ惑う中、ドラゴンタイプのゴーレムは大きな顎門だけでなく、全身から飛び出た発射口から球のような光線を発射された。


 一瞬して周囲の街が壊れてしまうが、幸いなことに死傷者はいなかった。残っていた数人の魔法使いが張った障壁のお陰で被害を最小限に抑えられた。


 この現代世界を破壊しようと『魔法世界』から襲来した『機械仕掛けの己龍兵(キメラ・ドレイク)』は、目的の為に行動を開始しようとした。


――ガキッ!


『ギィッ!?』


 しかし、『機械仕掛けの己龍兵(キメラ・ドレイク)』の行く手を飛来した銀の刃が遮った。

 備わっている一部の大砲が鮮やかに斬られたところで、ゴーレムの顔が飛んで来た方向へ向いた。


「これ以上の進行は止めてもらうぞ」


 ブーメランのように戻って来た銀の刃をキャッチしたのは、先程まで幼馴染と組手していた刃である。組手直後だったので汗だくであるが、息を切らしつつも出現したドラゴンタイプのゴーレムに不敵な笑みを向けた。


「さぁ、行きますよ――師匠(・・)


 そのまま銀の刃を手首に付けている銀のブレスレットに収納すると、魔法世界のアイテムであるブレスレットに魔力を流し込んだ。


擬似・究極原初魔法フェイク・ウルティムス・オリジン』――起動。


 ブレスレットに書き込まれている原初の魔法式が発動された。俺では絶対に引き出せないレベルの膨大な量の魔力が膨れ上がるが、俺は慣れた感じで魔法操作に集中した。


 封じられている『黙示録の記した書庫アポカリプス・アーカイブ』が発現された。


『ギャァァァァァァアア!!』


 ゴーレムは俺を敵と認識したか、こちらへ無数の魔力砲弾を発射させるが、起動させたアイテムのブレスレットから銀の光が迸る。


 強烈な銀の光が俺を覆うと……発射された魔力砲弾を全て弾いた。

 そして、溢れ出ていた光が消えて、そこから現れた俺の服装は変化しており、白のローブと銀の瞳と髪になっていた。


 プッツンと肉体の操作が切れて、幽体離脱的な状態で背後から見ていた俺には、もう他人事のような気持ちでそんな俺を眺めていた。





『ギィ!?』


「【コード:魔導王】……ここからはオレ(・・)の時間だ」


 一瞬でゴーレムの背後に立ったオレ(・・)の手には、ゴーレムの左腕らしき物がある。機械のクセに驚いている様子のゴーレムに呆れるながら、鈍器代わりにしたそれでゴーレムを叩き付けた。


『ギィアアアアーー!?』


「うるさいな――『銀王の魔導煌(オーバー・ブレイブ)』」


 喧しい機械の鳴き声? を至近距離で聴いていると耳がおかしくなりそうだ。

 全身の発射口をこちらに向けてきたが、銀光の剣を出したオレの斬撃によって出ている発射口の全てをバラバラにした。


 ついでに脚の関節部位も破壊すると、動きを封じられたゴーレムが巨大な顎門から魔力砲弾を放とうとするが。


「『絶対切断(ジ・エンド)』」


 寸前で原初魔法(オリジナル)を使用して、その胴体を縦に真っ二つにした。

 溜め込まれた魔力によってゴーレムから爆発が巻き起こったが、大した被害はないと確認したところでオレは移動魔法でその場から姿を消した。




「で、理由は訊かせて貰えるんだろうな?」


「いきなり姿を消して何処に行ってたんですか兄さん!」


「え、ええと……男がいきなり消える事情なんて知らない方がいいよ? お2人とも年頃なんだから、その辺も気を遣わないとさ?」


「そのままお前の存在を消してやろうか?」


「誤魔化さないでください! また現場に行ったんですよね!」


 俺に戻ったところで、訓練場に戻った俺を待っていた緋奈と桜香からの尋問……みたいな質問の嵐だった。質問というかほぼ確認のような感じであるが。


 正直入学から色々とあったので、流石に勘付かれている節はあるが、『魔法世界』の師匠のことを話していないので、完全な真実を知るのはほぼ無理だと思う。


 『現代世界』と『魔法世界』

 ――その昔『魔法世界』で起きた大きな戦いが影響して、2つの世界が扉を通して繋がった。

 俺に力を貸してくれている師匠は、『魔法世界』で王や超越者と呼ばれているSSランクの魔法使いだ。


 とある事情から弟子となった俺は、『現代世界』に起きている事態の対処を任されている。具体的には『魔法世界』が関わっているさっきのような事態だ。


 まさか魔法の才能のない俺が選ばれるとは思わなかったが、魔法学園に入学した頃から俺の運命は大きく変わっていた。


「主人公のように強引ですが、上手く締めましたね。……けど、この状況は打開できるかどうかは話は別ですが」


「だったら助けに来てくれないかな? そろそろ正座が辛いんだけど」


 半笑いな様子のまどかに言われているが、本当にどうにかなりませんかね?

 睨んでくる幼馴染と妹に見下ろされる中、まだまだ家に帰れない残念な己の運命を呪ったのだった。


弟子の設定が少し変わってましたが、悪くない感じだと個人的には思いました。

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