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オリジナルマスター   作者: ルド
オリジナルマスター外伝『神の魔法使いの弟子と時空を超えた空の塔(ダンジョン)』
247/265

第22話 魔神のチカラと彼らのチカラと────のチカラ。

遅くなりました。

遂に決着です。

魔力残量……残り3割。

大体であるが、これは相当厳しい戦いになるな。

継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』も取り出したが、解放状態が1段階である以上出来ることも限られているし時間も……。


「トオルさん、いきなりですが限界近いです。剣を出したけど、ハッキリ言って時間がないです」

「だろうな。……あの龍人を正気に戻すのなら『魔神』のチカラが邪魔だ」

「『魔神』……《魔王》が言ってた理の外に潜む住人か」


師匠は殆ど言ってなかったが、俺をイジメテイル間(・・・・・・・)の暇潰しついでに《魔王》が言っていたのを思い出した。


『ハァ、ハァ……ま、魔神……?』

『地獄界に居た際に会った。どいつもこいつも性格がクズだが、はぐれでも神族の連中だったからなァ、結構楽しめたゼェ? クククッ! 懐かしいなァ、疼いてくるぞォ……!』

『うん、楽しかったのは分かったからとりあえず抑えて?』

『クククッ、知らないなァ!?』

『あ、ちょ──!?』


結局口元の極悪な笑みは消えなかったので、その後の組み手が地獄と化したが。


「ううう、嫌なこと思い出した」

「あ、あ〜悪い」


暗い俺を見て苦笑いするトオルさん。いや、苦笑いされても困るんだけど。


『ギィィィアアアアアアアアアアーーー!!』


あ、龍が黒い剣の拘束から出て来た。

そりゃそうだ、ギリギリの拘束だったからな。


「チ、喧しく喚きやがって……!」


苦笑いの表情のまま、トオルさんは暴れ出す龍を見据えると、そのまま泉さんの方へ視線を送った。


「助けるなら異物を吐き出させるしかない。『魔神』のチカラが肉体から無くなれば正気に戻る筈だ!」

「よし、ならオレが行こう」


視線を受け取った泉さんが黒炎に包まれると、雄叫びを上げる龍に向かって飛んだ。


『──ッ! ギィィイイイイアアアアアアッ!』


飛んで来る黒炎に反応した龍がブレスを吐く。、放たれた金色の炎と黒炎がぶつかり合うと、中心でガラスがヒビが入るような音が響いた。


「……!」

『ッ──!?』


だが、激突は一瞬のうちに砕け散る。

ぶつかっていた黒炎は金色の炎から避けるように、電光石火の如く龍の眼前へ急接近する。

予想外の動きに戸惑う龍がブレスを中断するが、懐に入っていた黒炎の鎧を纏った泉さんの突撃が……!


『──ギィィ!?』

「焼き尽くせ、【黑焔(クロホムラ)】」


握られていた黒炎の槍が龍の腹を貫く。

すると槍の黒炎が膨張。内部から龍のエネルギー全てを燃やし出した。


『ギィィィアアアアアアアアアアアアーーーーーッッ!?!?』


これには龍も絶叫だった。激痛に駆られて懐に入っている泉さん(元凶)を手のひらで潰そうとしたが。


「っ、させないわ!」


龍の真下の地中から木の蔓が伸びる。

地面に手を乗せたエラというダークエルフの精霊魔法だ。

龍の腕や脚、それに胴などに絡み付いて動きを封じようとする。


『ギィィイイイイッ!』

「あっ!」


口にも巻き付こうとしたが、首を動かして逃れて内部をチカラを焼く黒炎の激痛に耐えながらエラへ怒りのブレスを吐いた。


「撃てるのかよ!」


壁となったヴィットが両手に構えた剣と薙刀でクロスさせる。ブレスの砲弾を気の強化と両手の精霊武器で弾くと、青龍の薙刀を龍に向けた。


「浄化なら……どうだ!? 『静寂の癒し雫光(ヒーリング・レイ)』!!」


刃に纏った蒼いオーラが癒しの光となって龍に放たれる。

鎖で動きを封じられていた龍はその光を浴びると、外側の濁ったオーラや鱗が少しずつ浄化し始めた。


『拘束なら私もいけますよ!』


さらに老魔法使いのツファームが扱うスキル“空間固定”が龍を空間ごと拘束した。

しかし、俺も苦戦したツファームの空間干渉だが、『魔神』のチカラを宿す龍は違った。


『ギィィィアアアアアアアァァアアアアッ!!』


さらに鬱陶しい存在が増えたことに苛立ち暴れる龍。身体中から金色の雷光を全方位へと解放させて、フロアのすべてを破壊しようとする。


結果、浴びせられる『静寂の癒し雫光(ヒーリング・レイ)』の蒼い光と、内部から燃えている黒炎の槍が放つ【黑焔(クロホムラ)】と反発する。

本来ならヴィットの精霊魔法で浄化されて、泉さんの黒い異能でトドメとなるが、『魔神』のチカラが激しく抵抗して中心で衝撃を起こす。


「……っ!」

「のわっ!?」


瞬間、間合いに居た泉さんを吹き飛ばす。

爆発したように放出された電光がヴィットを襲った。


『ギィィィィアアアアアアアッ!!』


──っ来る!


『『──ッッ!?』』


さらに降り注がれる雷光。

エラの蔓とツファームの“空間固定”を破壊。

2人にも雷光を浴びせ来た。


「ジン、お前は右からだァ!」

「了解っ!」

「“夜影の魔弾よ”……!」


妖気を漂わせて左側から駆け出すトオルさんを一瞥して、『継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』を構えた俺も駆ける。

まどかも背後で詠唱を唱え出す。あの男と同じ【死属性】の精霊魔法を発動し始めた。


「──!」

「ふん!」


足に魔力を付与して脚力を強化。

残念ながら『身体強化魔法』は使えないが、加速した俺は龍の右側から白金の刃で斬り込んだ。

トオルさんも左側から魔力と妖気を帯びた刃を一閃させるが。


『ギィィィィ……!!』


膨れ上がった金色の雷光オーラが寸前で障壁のように遮ってきた!

俺の剣はともかくトオルさんの剣も防げるのか!?


「──っ!? マジか!」

「これは……想像以上──だッ!」


思わぬ唖然とする俺と逆に嬉しげなトオルさん。

やっぱりこの人も戦闘狂だよ。

唖然として固まってる俺を置いて、斬撃を繰り出すと……。


『ギィィイイイイアアアアアアアアアーーーァァアッ!』


トオルさんが斬ったのは、龍の左側の脚の部分。

大きな太股の辺りで血飛沫のように濁った闇のオーラが噴き出す。

すると、放出されていた雷光のオーラが弱まったのを感じた。


「ハーーーァッ!!」


トオルさんに続いて俺も斬り込む。

右腕に装着した『継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』を振るい脚を斬り裂く。

トオルさんと同じく血飛沫のように『魔神』のチカラが切り口から噴き出した。


「『通電撃(ヴォルト)』───“装填(チャージ)”!!」


【時空属性】の魔石を使用して魔法剣に雷魔法を取り込む。

ただの付与させる方法とは少し違う、“装填チャージ”は凝縮することで解放された時のチカラが一気に跳ね上がる。


───『雷鳴(ライメイ)狼牙(ロウガ)』!


振りかぶってトオルさんから教わった剣技から、自己流(カスタム)した横薙ぎの穿ち。

駆け巡る狼の如く雷の斬撃が腹の辺りの鱗を削り取った。

削られた箇所から『魔神』のチカラが漏れ出していく。


「ハハハハハハハァッ!! 悪くねぇ、悪くねぇぞーーぉ!!」


妖気の解放でいよいよ気分が乗ってきたか、風を付与させて振るった斬撃が鎌鼬のように無数の風の刃を出す。

龍の巨大な肉体にこれまで以上に切り傷を増やしていき、さらに振り絞った一閃が縦へ。

龍の上体から下へと大きな斬撃の傷を残した。


『ギィィイイイイアアアアアアアッーーー!!』

「──っ」


しかし、怒りの雄叫びを上げる龍も退かない。

手のひらに溜め込まれた雷光の弾を握り締めると、振り抜いたトオルさんへ殴るように打つけて行った。

剣でガードするトオルさんだが、力はあちらが上だったか吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。


「トオルさん! ───ッ!」

『ギィィィィアアアアアアアッ!!』


思わず視線を向けかけたが、龍の凶悪な鉤爪が襲い掛かって来る!

通常の強化状態でアレをまともに喰らうのは危険過ぎる!

振り下ろされた爪を横に跳んで躱して、攻撃がしにくい懐に入ろうとしたが……。


「が──!?」


横に1回転して龍が振るった半分の尻尾と激突してしまった。

半分でも強靭な巨大な鞭のような尻尾だ。

無意識に少ない魔力を防御に回して身体を守ったお陰で、最悪の事態は回避出来たが、衝撃で一瞬グラついた俺は、後方の地面へ振られた勢いで横転して叩き落とされた。



───っ! 頭が切れたか、頭部から血が流れてきたが。





「『地獄界へ招く死の女神(ヘラ・ジ・ワールド)』」





と、そこでまどかの詠唱が終わり魔法が発現。

龍を囲うように死のオーラが地面から噴き出し、結界となって包囲する。

それがやがて巨大な女の影を象ると、見下ろして漆黒に包まれる龍に抱き締めるように飛び込んだ。


『────ッッ!?!?』


極限まで濃縮された死の魔力塊である精霊の抱擁だ。

考えなくても恐ろしいそれがダイレクトに肉体に溶け込まれた瞬間、雄叫びを上げる暇もなく叫びにならない悲鳴を漏らす。


まぁ当然だ、生きてる生物ならすべて例外無く【死属性】は猛毒なのだ。

全身に死の魔力が侵食したことで、鱗が劣化したようにボロボロになる。


『ッッ! ──ギィィィァァアッ!』


拒絶反応か痙攣を起こすと、結界のように包んでいる死の女神を剥ぎ取ろうとする。

やはり『魔神』のチカラが大きい。

放出量を上げた金色のオーラを纏った鉤爪で、死の女神を剥ぎ取ることに成功した。


それでもだいぶ消耗したようだ。

口を開けて息切れを起こした龍が纏うオーラの濁りが薄くなっていた。


これは好機だ!


「おれの力は──絆は力だ。多くと繋がって強くなっていく」


疲労からフラフラしている龍を見上げたヴィットが体内の気を解放させる。

雷光の攻撃で倒れていたが、精霊の回復で持ち直したところで戻って来ていた。


「おれたちの底力見せようかっ!」


回復の所為で武器が消滅したようだが、瞳にはまだ朱雀の燃える炎色が宿っている。

腰に付けていた銀鎖を数個出すと形状を変化させる。

片手で持てるくらいの銀の大槌にして、大槌に朱雀の炎を纏わせた。


「らっ……だッ!」


勢い良く跳ぶと振り上げた大槌で龍の頭を打つ。

回避出来なかった龍は思いっきり頭が揺れて、姿勢が崩れたところでさらにもう一振りが来る。


崩れかけた体勢を戻すように反対側から頭を打つ。

その勢いのまま蹴りで大きな龍の顔を蹴り飛ばす。


気で強化された脚力だけでない、朱雀である火炎の精霊の力も付与された蹴りは炎を纏って、さらに空中で体を捻りもう片方の脚からも蹴りを加え叩き付けた。


『ギィ、ギィィイイイイアアアアアアッ!!』


しかし、ボロボロの状態でも龍は怯まない。

ヴィットが扱う気と精霊の強化された蹴りだが、もともと頑丈な龍は上体を揺らす程度で持ち直す。


1度目の蹴りで一気に吹き返したか、ゆっくりと着地する彼の頭上から押し潰す、鉤爪を振り下ろした。


獲物を狩るような俊敏な動きで。


ガッ────キンッッ!!!!


『ッ──!?』

「っ、痛いな……!」


が、振り下ろされた鉤爪はヴィットを押し潰すことはなかった。

直撃する寸前に腰から取り出した銀の鎖を数個。

大槌を握っている方とは違う手で握り締めると変化させた。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオォォォォッ!!」


両手に握り締めた大槌で燃え上げながら鉤爪へ連打。

相殺し切れず痛むようだが、同時に崩れる彼の足場を見れば衝撃は想像以上だろう。


「──っ、ここまでの巨体だと厳しいか!!」


(しか)めた顔で一撃を耐えると、両手の大槌の形状を鎖に戻す。

鎖が分裂して伸びていくと、眼前の龍へと絡ませ始めた。


『ギィィィィアア……──ッ!?』

「はぁ、はぁ……死の精霊は、簡単に消えません……よ?」


こんな鎖など、と引き千切ろうとした龍だが、まだ残っていたまどかの『地獄界へ招く死の女神(ヘラ・ジ・ワールド)』の女神が鎖を剥ぎ取ろうとした龍の腕を掴んだ。


既に魔力が限界のまどかは片膝をついているが、妖艶な微笑みを浮かべて【死属性】の魔力操作に集中していた。


「はぁあああああああッ! 『朱炎王の勇者(バーニング・ブレイブ)』ッ!!!!」


【陽炎鼓譟】の紅蓮の炎を纏ったヴィットが拳を燃やす。

背中から朱雀の翼が生み出すと、空高く────龍の顎を狙った。


「“滅裂(メツレツ)”ッ!!」


振り上げられた拳が爆炎を起こす。

火の鳥が幻視するほどの神秘の炎が龍の顎を爆発させる。

さらに胴体まで爆炎が膨れ上がり、龍の皮膚を燃やして苦しませていく。


「借りを返させてもらう」


そこを【黒炎煉鎧(コクエンレンガイ)】を纏った泉さんが仕掛けた。

兜の顔の部分から僅かに血が出ているが、死神の本性が漏れた冷たさが戻っていた。


『──ギィィィィアアッ!?』


黒炎の鎧を纏った泉さんの拳が龍の顔に食い込む。

黒炎の炎が顔を焼き、穿つ拳が龍の意識を激痛で満たす。

断末魔のように痛みで首を激しく振るうが、目の前の泉さんの存在まで頭から抜け落ちていた。


「……」


無様に顔を押さえる龍を一瞥し構える泉さん。

すっかり混乱している様子の龍へと、黒炎を纏った手を掲げた。


「【異能術式(カードアンサー)】────起動」


慈悲などない声音が俺の背筋を震わせる。


「【黒炎天空(コクエンテンクウ)】【黒炎大地(コクエンダイチ)】」


上空と地上より黒き炎が生まれる。

巨体の龍の頭上高くで、黒き炎の雲が出現する。

真下からは黒き炎が沼渦のように出現した。

これまでとは違うのは、感じれなくてもその雰囲気だけで分かった。


『ギィァァ……!』


気のせいか龍が小さく見える。

いや、存在感だ。

黒き異能が龍の存在を凌駕していた。

狙いは分からないが、巨大な2つの黒炎が地上と上空から龍に仕掛けようとした。


「【術式融合(カードフュージョン)】────起動」


干渉し合わせたのか、2つの黒炎が共鳴したように揺れた。

そして────。



アウトだ(・・・・)────【ー終炎(シュウエン)黒炎拝火(ゾロアスター)】」



天と地の黒炎同士が繋がった。

瞬間、巨大な黒炎の柱が龍を貫くように生まれる。

すべてを灰燼に帰すかのように存在を燃やし尽くす。

致命傷にはならないようだが、徹底的に『魔神』のチカラを灰へと変えた。


「“二刀”────『神斬リ(カミキリ)……」


そして、すかさず妖気を纏ったトオルさんも駆け出す。

何処からともなく出した二刀目を構えた妖刀式の二刀流。

《無双》のお姉さんしか使えなかった、神を斬る為の太刀が────。


「───神殺シ(カミゴロシ)』ッ!!」


巨大な黒炎の柱に焼かれて、弱り切った龍のトドメとなる。

ただの袈裟斬りであったが、その一閃は『魔神』のチカラのみを斬り裂く。


『──ッッ!?!?』


驚愕の形相となった龍は一瞬固まる。

これまでにない量の濁ったオーラを吐き出す。

そして、こと切れたようにゆっくりと倒れて止まった。





「お……終わったか?」

「その、ようです……ね」

「大丈夫かまどか」

「え、ええ……ちょっと無理をしました」


あまり活躍できた気がしなかったが、少女の姿に戻ったまどか同様俺もギリギリだった。

前のめりに倒れ込んだ龍を見送ると、すっかり魔力を使い切ったかまどかが真っ青な顔して座り込む中、俺も出していた『継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』を時空間に戻そうとした。


トオルさんも妖気を解き、黒炎を消した泉さんも、ヴィットの方も精霊の力を解除しようとした。









【ふふふんっ、────いいねぇ(・・・・)









が。

その直後。

俺は。

……否。



全員の表情が凍り付いた。


「──っ!? まだだぁあああああああああッ!」


「──!」


ハッとした顔で声を上げるトオルさんと。

咄嗟に黒い槍を投げようとした泉さんだったが。


僅かだが、……遅かった。


『ギィィィィィイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッーーーー!!!!』


最大級の絶叫だった。

倒れ込んだ龍が目を大きく見開いた。

全身から瞑りたくなるほどの激しい雷光が発生する。



しかし、雷光の色はこれまでとは明らかに違っていた。



世界を侵食する暗黒の闇色。

汚れ切った濁った血色。

2色が混ざり切った地獄の雷が全方位へ放出される。


「っ──!」


最大まで凝縮された濃度の高い『魔神』のチカラ。

絶対に受けたら駄目だ。

トオルさん、泉さん、ヴィットはすぐさま回避行動を取る。

幸いフロア全体まで広がる攻撃ではないようだ。

一定範囲内の物を一掃する、破壊だけに特化した雷だ。

避けるだけなら難しくなかった。


「あ……」


そう、まどかを除けば(・・・・・・・)

魔力を空になり動けなくなっていた彼女だけは、回避するだけの余力も残されていなかった。


だから、仕方なかった。

保ってくれよ、相棒。


「──刃っ!?」

「『永遠の終焉へ(ザ・ラスト)』ッッ!!」


迫り来る無茶苦茶な破壊の雷嵐と、まどかの間に間一髪で割り込んだ。

残った魔力全部を『継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』に注いで盾にする。


2種類の魔力の活性を利用した魔力防御と『継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』の最大攻撃を重ねて相殺、防ぎ切ろうとするが……。


「───!!」


僅かに雷の波動を白金の十字斬撃で、受けただけで確信してしまった。


「ああ、足りない……!」


10秒どころか、5秒も保たない。

受け切る前に残量魔力が……先に尽きる。


継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』の『永遠の終焉へ(ザ・ラスト)』は3つのSランクの魔石に溜め込まれた魔力を利用するものだ。


僅かな欠片でも師匠の聖剣だった、魔法剣の本来の性能を引き出すスキル。

だから絶大なチカラであるが、困ったことに発動出来る時間は僅か数秒なのだ。


「駄目だ、防ぎ切れない……!」


最悪なことに今回は5秒も保ちそうにない。

相殺しているのが『魔神』のチカラだからか。

それとも龍人族の膨大な魔力が影響しているのか。

どちらにせよ、俺にはもう後がなく……。


「……ッ!」


永遠の終焉へ(ザ・ラスト)』の効果が切れた瞬間、白金の刃から輝きが消えて『継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』も効力を失い────。


「──」


絞り切った残った魔力も空になった。

俺の意識はそこで一気にブラックアウトした。





空腹を満たす為、【────】が目の前の魔力を喰らう(・・・・・・)



『魔神』のチカラが混ざっているソレを。

破壊の根源であり世界を拒絶するチカラを。

触れるだけでも絶対危険な魔力を。


「……」


──ガブリッ!


次の瞬間、刃の体内に異物と言ってもいい魔力が満たされる。

拒絶反応か身体の至るところから血が噴き出すが、いつものことだと気にせず食す。


「──ッ!!」

「……」


背後のまどかが何か焦ったような声が聞こえたが、振り返らず、盾にしていた『継承された神ノ刃(イクス・セイバー)』に魔力を込める。


すると、白金色だったそれが、ドス黒く赤黒い物へと変貌する。

濁ったような黒い刃に血管のような赤色が何本も浮き出ると……。




「『継承された魔神ノ刃デヴィル・イクスセイバー』」




それが大きな光の刃となって、刃が振るうと莫大なエネルギーの塊だった雷光を両断。

さらに稲妻の如く斬撃の奔流となると、呆気なく暴走したチカラがフロアを駆け巡る。


トオル達はすぐさま回避して無事であったが、最上階は完全に破壊された。


そして、エネルギーは留まることを知らず、そのまま塔の内部を破壊し尽くしたのだった。


まとめるのが難しかったです。やり過ぎ感はありますが。

このあとはエピローグとあと2つ、今年中に出す予定です。

大掃除の合間ですが(汗)

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