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オリジナルマスター   作者: ルド
オリジナルマスター外伝『神の魔法使いの弟子と時空を超えた空の塔(ダンジョン)』
244/265

第19話 死神の怒りと女神な精霊の加護。

まとまってきました!

もう少しで特別版の完結になります。

何処からともなく魔物の群れの間から現れた同年代くらいの男性。

よく見ると怯えた魔物たちが避けて道が出来てる。両端で馬鹿みたいな数がいる魔物の大群を無視して、のんびりとした歩きで近付いて来た。


「っ……もう限界か」


急展開に呆然としていたが、そこで“時間切れ(タイムアップ)”が来てしまった。


“魔力融合”していた2つの魔力を別れていく。元の2つの魔力に戻ると、ドッとした疲労感と魔力疲労が乗し掛かった。……魔力自体も結構消耗して半分はなくなっていた。


まぁ、まだマシな方だ。

第1と第2の封印した能力の副作用は、消耗か冷却時間だからな。

これが第3か第4辺りになると……考えたくない。今の段階じゃ使用可能になってもまだ1回目の解放のみしか使えないが、出来るようになってもなるべく使わないようにしよう。


「なぁ? そこの君? ……と隣のお嬢ちゃん」

「は、はい!」

「な、なんでしょうか?」


普通に呼び掛けられただけなのに、何故か背筋を伸ばして気を付けをしてしまう。

隣で着陸していたまどかもビクっとして気を付けしている。心なしかヴィットの時以上に青ざめている気がする。……いや、間違いなく青ざめてる? 白い肌が余計に白くなってる!?


ホントに新鮮な表情だが正直可哀想に見えてきた。たぶん俺には感じない何か恐ろしいモノがあの人から流れてるんだろう。


「念の為に訊くが敵対しているということでいいか? 君らの話は聞いたが、一応確認したい──君らは敵か?」

「い、いえ違います。わ、我々はあくまでこの塔の攻略がも、目的で……」

「そうか、ならちょっと頼みがある」

「っ、何でしょうかっ?」


怒気は全然ない問い掛けだが、まどかはビクビクしながら答えてる。

……というか若干過呼吸してない? そんな怖いの? 

彼女以上に無感情な瞳に俺も不気味だと思うが……このタイプは経験がないな。勘も上手く働かないが、なんかヤバい気もする。


『あ、ありえん、ありえん……! 確かに消えた筈……っまさか! 塔の不調は奴の仕業だったのか!?』


それなら俺が答えた方がとも思ったけど、目の前の冷汗出して固まる老人から目を離せない。たぶん何も出来ないと思うが、また空間破壊の攻撃されても堪らない。


それに“魔力融合”も解けて、あと1回分しかない。

しかも、【第二の封印】しか解放出来ないし使える時間は【第一の封印】の時よりも短い。

予定通り階層もだいぶ進めたから、可能ならボスまで取っておきたいが……。


など、こっそりと今後の戦闘について考えていた俺だが、まどかと話していた男性は思わぬ提案をしてきた。


「アイツにはオレも用があるんだ。割り込む形で悪いが、譲ってくれないか? 詫びに先に行けるように道を作るからさ」


そう言って近付いてくる男は片手で槍を回してる。

さっきまでの流れからもしかしたらと思ったが、まさか加勢どころか丸投げで良しとは。良い提案だ。どうやって魔物の群れを突破させてくれるか知れないが、……多分さっきみたいにモーゼの如く群れの真っ二つにするんだと思うが。


「──っ?」


あれ? というか、あの槍はなんだ? あんな槍さっきまであったか? いや、確かさっきまで両手とも空いてた筈。なのに急に黒い槍が握られていた。


見過ごした? 遮蔽物もないこの距離?


「で、どうかな? 出来れば早く決めて欲しいんだが」

「あ、あの、それなら……」


まったく気付かなかったことに密かに驚く中、青ざめながらも代わりにまどかが切り出そうとしたが。


「了解した」


代わりに返答したのは、俺の背後に立った者だった。


「問題ないからまだ暴れないでくれよ? 怖いからまだ抑えてくれ」

「これでも『威圧』は抑えてるほうだがなぁ、侍」

「……トオルさん?」

「……脳筋剣士」


いつの間にか背後から現れたザ・怖い人みたいなスーツ姿のトオルさん。

若干忘れて遅れに遅れてやっときた感があったが、普段以上に真面目な口調で男性に了承してくれた。お陰で助かったが、なんかいつになく真剣ていうか……焦ってないか?


「誰が脳筋だ、このロリ魔女が……と言いたいが、急ぐぞジン、マドカ」

「──え、おわ!?」

「何を……!?」


そして有無言わせず、俺たちを両脇で抱えると男性が開いた群れの間を潜る。

気で強化しているのか、風のように駆けて行く。


「頼むから塔を壊すなよ!? この中、色々とヤバいのがあるらしいからな!」

「お前じゃないんだ。安心しろ、約束は守る」


すれ違いざまにそんな言葉を交わす2人。知り合いのようだが、日本語と『翻訳語』で交わしているのを聴くと同じ世界の出身ではないみたいだ。

なんて抱えられていた俺は思ったが、後方で膨れ上がった魔力に遅れて気がついた。


『っ、行かせませんよ!?』

「……ただし」


固まっていたのが我に返ったか、老人が慌てて魔力操作して妨害する。

流れている真っ赤な金属を操ると何匹もの蛇を生み出して、怖がる魔物にも指示を送り一斉に襲わせようとした。




「地獄は見てもらうがな」




男性を中心に、地面から螺旋状の真っ黒な渦が噴き出す。

外側に広がるように螺旋を描くと、動こうとした魔物の群れを包囲した。


「【黒夜】よ、……包囲殲滅だ」

「なんだ? あの黒いのは……?」

「っ!? ヤベェ!?」


後ろから広がっている黒渦を眺めたが、抱えているトオルさんから焦ったような声が漏れる。

思い切り地面を蹴ったか、一瞬で爆発加速したトオルさんは、俺達を抱えて一気に包囲の遥か外側へ逃げた。




「【黑鉄ノ大窯(クロガネノオオガマ)】」




途端、景色が一瞬だけ変わった気がした。

次に染まっていた漆黒が晴れると、内側に居た大量の魔物が姿を消していたのを、俺は遠目であったが、確かに目にした。




それを眺めていた俺は、ふと駆けるトオルさんに質問してみた。


「……あのトオルさん、あの人って」

「そうだ、アイツは殺気を感じないほど危ない男なんだ。普通にキレることもあるが、アレはそれ以上にヤバい時のやつだ。前にオレもうっかり……うっ、悪寒がヤベェ……」


過去の過ち? を思い出したのか、ブルッと体を震わせてる。


「……」


あ、いつの間にか震えてたまどかが固まってる。

うーん、この娘ってあれだね。予想外なことと未知な存在に弱いなぁ。


「アレには殺傷能力がないらしいが、あったら間違いなく死んでるぞ」


何故怒り狂っているのか理解できないが、トオルさんは何か察しているらしい。

何とも言えない同情の目を背後に向けていた。




不可解な迷宮塔(ミスティック・タワー)】15層目──『精霊の森』

『四神使い』のヴィットとダークエルフのエラの戦いは、苛烈さを増して森全体に震撼させていた。


『逃サンゾ、女ノ敵メ』

「待って、まずは話し合うべきだ!」

『ナイ、ソノ記憶ヲヨコセ』

「君との思い出を忘れろというのか!? 断る!」

『ナラ、命ヲヨコセ』

「譲歩かと思ったら命を要求された!?」


完全にブチ切れたエラが切り札の『精霊武装』を使用した。

薔薇の魔精霊だった影響か、服装が変わると褐色の裸体を薔薇が巻き付いた格好だ。


能力を解放すると周りの森が騒めいていた。

周囲の森に干渉して武器へと変える。トレントのような怪物の姿や蔓の大蛇となって退避する彼に襲い掛かっていた。


ちなみにヴィットも補助付きであるが、『精霊武装』とも呼べる姿だ。

赤と青の異なる瞳をし、両手には両刃の赤き剣と青い薙刀が握られている。服装も変化して炎のように赤く海のような青いライン、鳳凰の翼と龍の模様が付いていた。



互いに本気の姿である。

それこそ頂上決戦に相応しいが。



『逃ガサナイ、ソノ命ヲ狩リ取ルマデハ』

「っ、なんて死んだ目だ。好みの体型してるのに勿体ない! そんな心の欠けた表情じゃなくて、羞恥の顔でいいから見せてくれよ!」

『ッッ死ネェエエエエエエエエエ!!』


刃達が消えてから僅か数分後には、その光景が出来上がっていた。

カッコ良くエラを挑発したヴィットだったが、憤怒のままに『精霊武装』をしたエラの雰囲気につい腰が引けていた。


異能で相手の感情が読み取れる分、彼女の怒り狂い具合が良く分かってしまっていた。


「おかしい、口説きテクが上手くいかない? 何故?」

【なんであんな言い方でイケると思ってるの、この男は】

【理解出来ませんね、本当にこの人は】


呆れたような女性の声が2つ重なり、彼の耳に響く。両手に持っている武器が眩く光り出すと消失した。


すると彼の背後を守るように2人の女性が光と共に出現。さっきまで彼が持っていた剣と薙刀を所持して、トレントの怪物たちと睨み合う。


「ははっ、手厳しいな。おれってそんなに駄目なの?」

【駄目じゃないわ、駄目駄目なだけよ?】

【駄目じゃないです、駄目駄目過ぎるだけですよ?】


1人は紅剣を持ち、短めの赤い甲冑と着物の女性。燃えるようなオレンジ髪をして、着崩れして露出する豊満な胸元や太腿部分からは、吸い寄せられるような色気が出ている。

燃え上がるような活気溢れる紅蓮の剣士だ。


もう1人の女性は青い薙刀を持ち、清楚な印象のある青い着物を着ている。水のような青い髪をして、きっちり着込んだ着物からで分かる膨らんだ魅惑的な部位が見える。

自然に流れる川の如く、静かな雰囲気のある薙刀の巫女だ。


2人共冷たい様子で主人である彼に視線を送っていた。


「ここは慰めるところじゃないか? ……その言い方はもう少しなんとかならないか?」

【間違ってないでしょう? けど、たとえ脳天気な根性なしだとしても】

【スケベでどうしようもない人だとしても】


全然慰めになってない2人の発言に、彼はガクリと肩を落とすが。


【アンタはにあたし達がいる】

【あなたに私たちがいます】

「……やる気が出てきた」


見慣れていても2人とも美少女だ。

向けられる微笑みにヴィットは笑みで返すと、迫ってくるエラに視線を送り。


「決着を付けようか」

『──っ、いいわ。叩き潰してみせるっ!』

「……“神威(シンイ)”全開だ」


両方の瞳が元に戻った彼は拳を握る。

体内に流れている気の一種『煌気』を燃やす。

ヴィットの体の内から静かに、気が炎となって溢れ出した。





『お、お待ちください! まずは話を!』

「……」

『っ、なんて目ですか、それは!?』


25層目──『武器庫・製造工場』

始まったばかりの零とツファームの戦いだったが、開始して早々一方的なモノとなっていた。


『貴方と敵対するつもりなど、我々にはありません! 連れて来てしまったことは謝ります。ですから、どうか拳を収めて……!』

「……」

『っ、やはり駄目ですか!』


無言で無関心な瞳がツファームを追い詰める。

空間を歪めるスキルを利用して必死に回避しているが、盾となっている魔物も彼からしたら紙切れ同然。


振られる槍で消滅するリザードマン。

呆気なく貫かれて散っていく騎士型ゴーレム。

投げられた槍を撃たれて落ちていくワイバーン。


抗うことも出来ず、次から次へと魔物は消えていった。



いや、それは必然であった。



“世の理から外れた存在を消す異能”──【黒夜】によって消されていく魔物の群れ。

『異能』のエネルギー源である『心力』による肉体強化で、隙間から迫って来る魔物も粉砕して行く。


完全に無双状態の零は、フロアに居るすべての敵を排除して行く。

止める術をツファームは持ち合わせていない。

蹂躙されていくのが自然だった。


「言っただろう。地獄を見せると」


そう言って近場の騎士型ゴーレムを黒く染まった蹴りで飛ばす。煙となって霧散する魔物に視線も送らず、ツファームに冷たい視線を向ける。


そう、彼を怒らせたくないのなら、彼の世界に来ること自体が間違いだった。


「この程度で済むと思うなよ、特に貴様にはより苦しんで消えてもらう」

『──っ!』


そして、時間が経ち過ぎた。

最愛の妹と長時間会っていない所為で、彼の怒りのパラメータが爆発的に上がっていた。


大好きな妹と会えない。

たったそれだけで彼は無になる程、怒り狂っていた。


『こ、このオオオオオオオオオオオオオっ!』


もはや自棄である。

ツファームは手当たり次第、武器を飛ばして牽制するが……。


(ぬる)い」


話にならないといった感じで、零は吐き捨てた。

すると彼の周囲から黒い霧が噴き出る。カーテンのように彼を隠すと飛んで来た武器類に触れる。


そして、こと切れたかのように地面に転がる。


『──っ! ハァアアアアア!!』


唯一通じるかもしれない物理攻撃が無効となる。

次第に押し寄せてくる黒い霧の何か、ツファームは無意識に魔力を限界まで高めると、渾身の破壊魔法を放った。


原形崩壊(ゲシュタルト・ダウン)』と【黒夜(コクヤ)


空間破壊の攻撃が黒い霧が激突する。

さらに先にいる零までも巻き込もうとした。


……だからか。


「気は済んだか?」

『……』


絶望するしかなかった。

大した均衡もなく消えていく、誇れる自慢の魔法を見てツファームは思考が真っ白になる。


「なら……終わりにするか」


もはや打つ手なしなのは明らかだった。

呆然とするツファームに零は戦いの終わりを告げた。


寒くて朝の起きる大変。

休日はうっかり寝過ぎて頭が痛くなりますね(苦笑)

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