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オリジナルマスター   作者: ルド
オリジナルマスター外伝『神の魔法使いの弟子と時空を超えた空の塔(ダンジョン)』
232/265

第7話 迷う対応と敵か味方か。

今回は会話の回ですが、ほぼ主人の思考展開というオチ(汗)


ちょっとした魔法スキルの紹介その3。

風力操作(エア)

・風の初期魔法を利用した操作スキル。

・発生させた風を操作して変化させる。

・飛行も可能だが、速度は自転車より少し速い程度。

・発生させる規模によって巨大な竜巻なども起こせる。

・ただし、範囲は遠くなればなるほど操作が落ちてしまう。



俺……帰ってもいいかな? すっかり観戦気分で見てたけど。


これ完全に戦力外じゃねぇ俺?


「なんつぅ一撃だよ」


ハッと我に返った頃には戦いも終わって、炭焼きになった肉の塊が転がっていた。それが何のなのかは……言うまでもない。


「……」


顔を上げて視線を上に向ける。未だに神秘な炎の翼で飛行する男性が空に浮かぶ塔を見つめている。特に何かしている風には見えないが、やはり魔力は感じない。


代わりに溢れんばかりの精霊の力が漏れて、隠れるように気の力も流れているのが分かるが……。


「精霊と気って相性悪いんじゃなかったけ?」

「正確には精霊が苦手なんです。より魂に近い精霊にとって相性が良いのは霊力です。逆に気と相性が良いのは仙力を扱う仙獣。妖魔もなくはないですが、アレは妖気よりですから」

「ご説明どうも。ということで帰りたいんだけど、後はあの人と警務部隊の人達とまどかさんに任せてもいいかな?」

「さらっと私だけ置いていく時点で駄目です」


と、いつの間にか隣に立つまどかからジト目を受ける。

そうですよね。逃げちゃダメですよね。


「無事なようで安心しましたが、どうやらさらに面倒なことが起きているようですね」


そうなんだよ。助けて貰ったのは嬉しいけど、何あのチートキャラ?

師匠ほどじゃないけど関わるとロクなことにならなさそうだ。


「やっぱさぁ帰らない? 家に帰ってスイカ割りでも「臆すること許すまじ、です」……したら良かったのになぁ」


帰らせてもらえない。残念。

まぁ、被害が被害だし放置は無理か。


「念のため訊きますが、お知り合いですか?」

「いや、違う。まどか以外の精霊使いも知ってるが、俺が知ってるのは女性だけだ」


まったく覚えのない人です、はい。

もしかしたらジィちゃんか、まどかの知り合いかとも思ったが……反応を見る限り違うようだ。


「そうですか……てっきり刃の知り合いかと思ったんですが……」

「あんな知り合いが居たら真っ先に警告するって」


だいたい知り合いじゃなくても、あんな感じがするのが付近に居れば間違いなく気付いてる。


「あんな?」

「異質過ぎる。精霊の力もあの男自身も」


俺の体質上、あのタイプの人達に接触するのは危険だ。

もし師匠が知っていたのなら必ず連絡している筈。だが、メッセージにも含まれてなかったってことは、この件に師匠は関わっておらず、予想してなかったってことだ。


「確かに計り知れない力を持つ精霊が宿っているようですが……」

「仮に王クラスの精霊だったのなら俺も驚かない。……だが、あの男の感じには覚えがある」

「感じ?」

「ああ、気配、雰囲気とも言えるか、中の精霊が関係しているとは思うが」


言うべきか迷う。それ以上言えばまどかも無視できなくなる。

だが、空の塔も注意しないといけない現状。情報が遅れて後手に回るのは避けたい。


「刃?」

「……似てるんだ。存在感が俺の師匠とアイツに」

「────ッ、ということは……まさか?」


無感情なの瞳が大きく見開く。珍しく動揺しているが、それもすぐに潜めると殺気と共に体からドス黒いオーラが滲み出して……。




やめろ(・・・)




────霧散。

噴き出しかけたが、寸前で霧のように消失。

無表情のまま、まどかが睨み付けてきたが、俺が首を横に振って止める。



「似てるとは言ったが彼は人間だ」

「ですが、似てるのなら候補者の可能性が高いです。なら……私の敵」

「確証は持てないが、この世界の人間じゃない。仮に候補者でも別世界ならまどかの敵じゃないだろ?」

「確証はないんですよね?」

「ああ、ない。でも、やめてくれ」


しばらく見つめ合う。

睨むような視線ではなくなったが、こちらの思考を探る瞳。

嘘を付けば見抜く洞察眼が俺を捉えてくる。


寒気すら覚える冷たい殺気が俺の心臓の鼓動を跳ね上げさせる。

無意識に手首の時計に偽装した魔道具に触れる。大事な奥の手であるが、まどかが動くのなら使うしかなかった。





そして。





「嘘」

「……」






「だったら良かったんですが……残念です」

「残念がらないで欲しいな。さすがにビビった」

「ふふふ、すみません」


発していた空気と緊張が解ける。開きかけた瞳孔も戻っていつものまどかがその場にいた。

俺の緊張も解けて息が溢れると、また珍しくも微笑んで見せたまどかが手を伸ばして頭を撫でてくる。


「少し大人気なかったですね。それよりも怪我なくて本当に良かったです」


小さくて柔らかな手の感触は素晴らしいが、どうもリアクションが取りづらい。

まどかの容姿がアレな為、ここで頰を緩めたりしたら間違いなくロリコンな扱いを受けてしまう。同居のことを知ってる連中からなんか、何度そのネタでからかわれたことか。


避難させているので周囲に人はいないが、俺の後ろに降り立った人から見れば、誤解されてもおかしくない図だった。


「ああ……お取り込み中だったか? 話もしたいし降りて来たんだが」

「誰の所為だと思ってるのかなぁー? 神クラスの精霊使いさん」

「……」


ニヤニヤして訊いてきたので、お返しに俺もわざと強調して返した。

無言になる男性。撫でるのをやめたまどかも視線を向ける。


喧騒が止んで言葉もない沈黙された空間。

しばらく、1人と2人の視線がぶつかり合うと……。


「あー、おれの名はヴィットって言うんだ。君の予想通り神獣の精霊と契約している。気付いてるか知らないが、契約している精霊の力を借りて別世界からやって来た。突飛な話で信用してくれるか分からないが、敵対するつもりはこっちには一切ないんだ」

「……刃です。魔法使いで別世界の存在も知ってます。突飛な話ですが、別世界のことは信じます。……ただ、敵味方については少し困ってます」


とりあえず自己紹介されたので返したが、さてどうしたものか。

何せまどかの方は警戒してか無言だ。精霊使いの彼女には俺以上のモノが見えるのかもしれない。


「ははは……敵か味方か、その辺りはおれも困っているところなんだが」


その対応に苦笑する男性は纏った炎を解いている。降りた時点から解いていたが、こっちが警戒していた所為で妙な空気になってしまった。


「目的から話すとあの塔に潜む親玉に用があるんだ。奴らはおれの世界にもやって来てある物を盗んで行きやがった。非常に大事な物でおれはそれを取り返さないといけない。だから邪魔するなら君達にも容赦はしない」


「その盗まれた物とは?」

「悪いが答えられない」

「何故?」

「そういう指示だから。協力はオーケーだが詳細は言えない」

「……」


(どうしよう? 出来れば良好的に済ませて協力して欲しいが……)


空と地上で起きている面倒ごと2つ。俺の手に余りそうなに敵の存在と異世界からの新たな来訪者。

しかも、どちらも超強い。塔に潜む者がどれ程かは知らないが、少なくともあの巨漢と同じくらいだと考えるべきだ。


そして目の前の男……ヴィットは、それ以上の戦闘力を気と精霊使い。他にも何かありそうな雰囲気もあるチートキャラ。


仮に協力した場合、全て上手くいけば被害は最小限か無しで終わる。彼も元の世界に帰って終わり方としては最高だ。


だが、もし彼が裏切った場合、おれとまどか、或いはもうじき駆け着けるであろうトオルさんか親父の警務部隊が味方についても、果たしてこの男を倒せるかどうか。


(トオルさんも強いが師匠と同じ感じがするこの人に勝てるか正直分からない)


そのぐらい目の前の男が別次元に立っている気がしてしまう。……師匠やあの魔王と同じ絶対挑んだらダメな種類の人だ。


いよいよ頭が痛くなってきた。

くそ、本当にどうしたらいいだ? 誰か代わってくれよマジで。





なんて考えてるのがよくなかったか。

次の瞬間、予期せぬ展開でこの悩みが一旦保留になった。


『人間相手に何をしてるのですか、スモア』


声がしたと思えば、体の自由が利かなくなった。


「……ッ!? あっ!?」

「ッ……刃!?」


悩んでいたところで俺の体が横に飛ばされる。

寸前で何処からともなく男の声が聞こえたが、その声に反応している暇もなかった。


「ガハ……ァ!?」


体勢も戻せず建物の壁に叩きつけられ、壁が砕けるほどの衝撃に呻き声が漏れるが、それを無視するように別の声が聞こえてくる。


『単細胞なアナタに出来るのなんて特攻くらいなんだから、しっかり役目を果たして欲しいわね』


「っ……もう1人?」

「お、彼女はあの時の……」


色ぽく妖艶な女の声とやや鋭い声音のまどか。衝撃でクラクラした頭を振り、新たに出現した気配の方へ視線を向ける。


1人は宙に浮いている男らしき人外。老けたような見た目で全身が真っ赤な魔法使いの格好をしている。感じ取った魔力から俺を吹き飛ばしたのはこっちのようだが、どう飛ばしたのか不明だ。


2人目は『検索魔法』で識別が出来た。面識はないが、どうやら闇の妖精族らしい。ダークエルフとも言うべきか、焼けたような褐色肌。革製の服からでも分かる豊満な胸とスレンダーな脚。濃いグレーのローブを纏って呆れたように炭焼けた巨漢のスモアという男に吐き捨てる。


……あと何故かヴィットの方をスッゴい殺気を飛ばしており、視線を移すとヴィットの方もなんか女の方に手を振っている。知り合いなのか?


『にしてもスモアの鐡獄皮膚(アーマー)焼く程の炎とは……流石は『四神使い』と言うべきでしょうか?』

「褒めても何も出ないぞ? ツファーム。それにボインなエラちゃん」

『……』


どうやらあの2人のことを知っているらしい。何故か女の方にはボインと付けているのは不明だが。

女性の方の殺気が増して魔力と精霊力が溢れ出している。ヴィットをギロンとした目で睨み付けていつでも襲い掛かりそうな雰囲気を出していた。



あれ? 俺は壁と同化したまま放置ですか?


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