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オリジナルマスター   作者: ルド
オリジナルマスター外伝『神の魔法使いの弟子と時空を超えた空の塔(ダンジョン)』
231/265

第6話 四神使いと輝きの劫火球。

ちょっとした魔法スキルの紹介その2。

土石加工(クリエイト)

・土の初級魔法を利用した加工スキル。

・土と石が混ざった土石を圧縮加工して形状を変化させる。

・2種類の魔力を混ぜ合わせたことで耐久力が数段アップ。

・土石の量が多いほど耐久力が落ちるが、知っている武器全てに変化が可能。



刃の前に新たな侵入者が現れた瞬間。

その者の気配を塔の住人たちは察知していた。


『シャドウ様。たった今、巨大な精霊の力を感知しました』

『ほぉ、他所から追跡して来たか。何やら気使い者も現れたようだが、次は誰が来たんだ?』

『ふふふふふ、よぉぉく知ってるわぁ……!』


塔の操作に集中していたシャドウは気付くのに遅れたが、配下の者たちは感知してすぐさま主人に報告する。精霊と言われ多少気になったか、誰が来たのかと報告した者の確認を取るが、その返答を返したのは意外にも別の者であった。


メンバー唯一の女性が何故か怒りを込み上げたようで、キョトンと主人にも取り繕うとしなかった。


『エラ?』

『この感じ……あの変態に仕えてる焼き鳥と水蛇ねっ!』

『鳥と蛇だと? いったい何を言って……まさか』


報告していた方の配下が彼女が告げた2つの単語に聞き覚えがあった。

風の噂のようなものであるが、自然と口にしていた。


『『四神の継承者』だと言うのですか? だとすれば厳しいかもしれませんね。いくら耐久値が我々の中でも随一のスモアであっても、1人では分が悪い』

『ええ、ええ! そうね? そうよね!?』


何故か女性は力強く頷いた。普段は恭しくも気品ある彼女とは思えない。……見ていた主人が軽く引いて、顔を向けられると軽く慄いた。


『シャドウ様、私が行くわ! すぐにでも行くわ! 土地が違ってもこの塔が側にあるなら問題ない! 精霊使いが相手なら同じ精霊使いである私がベストでしょう!?』

『う、うむ、構わないが……なんでそんな荒ぶっとるんだエラは』


訊きながら心の中で地雷を踏んでないかと危惧するシャドウ。自分が知らないうちに燃え上がる彼女に油を注いでたら洒落ないならない。


『四神は確か【スティア】の……彼女が担当した世界の守護者だったかと。目的物は入手したようですが、その際に『継承者』と衝突したのでは?』


と、そこで戸惑う主人に気を遣ったか、もう1人の配下があることを思い出して説明しようとしたが……。


『ナァーニィーガ守護者ですってェ? あんな、あんな変態の変態の変態のヘンタイのヘンタイの…………何処が守護者ダァァアアアアアアッ!!』

『……』


寧ろそれが燃料の投下であった。

ブチっと何か大事な切れた音がした瞬間、妖艶で気品溢れる彼女が獣如く吠え上げた。


『人の胸も、人の胸をよくぅぅもォォォオ!! 殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスゥゥッ!! 絶対殺スッ!! あのエロ冒険者ァァァァガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』







『……私は人選を間違えたのか?』

『余程屈辱的な目にあったのでしょう。黒き妖精とも呼ばれたダークエルフとは思えない鬼の形相ですね』

『はぁ……念の為、貴様も付いて行け、ツファーム。スモアも不安だが、今のエラだけを向かわせるのも色々と不安になる』

『お任せを、不安分子を含め全て対処して見せましょう』


本人に聞こえない声でさりげなく伝えると、ツファームという配下は心苦しそうな顔で頷いた。……口にはしなくても少なからず不安はあるのだ。


『ああ、……だが、目的はあくまで器の確保だ。いいな?』

『グゥゥゥアアアアアアアアアアアアアアアア!! ユゥゥルゥサァアアアアアアアンンンッッ!!』

『……いざという時は、エラを抑えるのも貴様の仕事だぞ?』

『……………………努力します』


一抹の不安はどうにも解消されそうになかった。





(いったい、何がどうなった?)


巨漢の化け物に猛攻に対処することが出来ず、無防備な背中を晒してしまったが、一向に攻撃される気配がなかった。

背筋越しに突き刺さるほどの殺気を浴びているのに、嵐のような猛攻を続けていた敵が突然動きを止めた。


(そうだ。ここまでは合ってる。問題はその後だ)


聞き慣れない声が聞こえたのだ。

聞き慣れないのに自然と背筋に入っていた力が緩んだ気がした。呆然としたまま、ゆっくりと振り返った俺が目にしたのは……。


「来て早々、加勢が必要に見えたから間に入ったが……どうやら正解だったか」


(えーと……、どちら様? え、ホント誰なのでしょうか?)


押し潰そうと巨漢が振り下ろした巨大なハンマー。

それを片手のみで止めてこちらに顔を向けていたが、俺もどう答えるべきか返答に困ってしまった。なんか途中、妙な敬語口調になっちゃった。


「随分派手に飛ばされたが大丈夫か?」


気遣うように尋ねられても俺はぽかんとしているだけ。

暑いのに黒いジャケットを着ている変わった人だなぁ、と呑気に考えていたが……。



ドクンッ



「……!」



それも少しの間だけだった。胸の奥で静かに鳴り響いた心音とは違うアレの鼓動に(・・・・・・)俺は頰を引きつる。


(バカな……なんでこのタイミングで)


一見ただの一般人にも見えた目の前の男性であったが、何処か違っていた。


見た目はアジア系の日本人にも見えるが、雰囲気そのものが全く異なっている。

言葉も日本語なのに日本語じゃない感じがする。まるで翻訳されたような感じで……だが、翻訳されたにしてはしっかりと意思を感じ取れる言葉が伝わっていた。


(いや、それよりも気になることがある)


男の人の中にあるチカラ。

精霊の力と思われるが、普通とは明らかに違う。

まるで巨大な太陽と月。無限の近い輝きを発して体から漏れ出しているのが分かる。


異質の中でも異質。

気の所為かと思われたが、この独特な雰囲気に覚えがあった。

嫌な汗が出てくる。嘘と思いたいが常に感じているのを気のせいで済ませるほど、残念ながら俺もそこまで鈍くはなかった。


(この人の特異なチカラか? 種類は異なるが、この感じは師匠たちと同じ……)


「ん? やっぱりどこか痛むのか? なんなら治癒もしようか?」


なんて思考に深けていたら声をかけられた。

そこまで心配されている感じではないが、俺を味方として見てくれている。


「あ、ああ、いや大丈夫……です?」

「ああ、敬語はいい。気にしないし多分歳もそんなに離れてないだろう?」

「……とりあえず助かった。ありがとう」


いきなり敬語不要と言われても戸惑うんだが……。

距離感がイマイチ掴めないが、とりあえず礼を口にして遅れながら立ち上がった。


「それも気にしなくていい。……おれもコイツらに用があるんだ」

『ゴ、ゴ、ゴバァ……?』


軽く笑みを浮かべると前を向く男性。

するとそれまで止まっていた巨漢の怪物が呻くような声を漏らす。どうしてかハンマーを止められた状態で動かなくなっていた。


そういえばと、俺もそこで疑問を感じて目を向ける。魔力の気配が全然しなかったが、どうやって防いだんだ?


「ああ、悪いな放置して。不思議なくらい動けないだろう? 一応言っとくが魔法じゃない」


まるで見えない何かで五体を拘束されているみたいだ。

そう思ったところで男が首を傾けて言うと空いている手のひらを開く。



「おれは魔力無し(ゼロ)だから、使えるのはお前の耐性のない力ばかりなのさ────スモア」

『……!?!?』



そうして男は掌底を巨漢……スモアという怪物の腹を打つ。

何かしら強化されているようだが、それでも凄まじいと言えるような威力は感じられない。


しかし、見えない何かが巨漢の体を突き抜けたような気がした。


「どうして知ってるか、て顔だな。……今は違うが」

『〜〜〜ッッ!?』


衝撃も感じ取れなかったが、怪物にとっては違ったらしい。

今までとは違う声にはならない苦悶の呻きを漏らすと、立つことも出来ず膝をついてしまった。


意地からか両手の武器は手放さなかったが、男性にハンマーを掴まれて片腕のみが持ち上がった状態で巨体を震わせる。


「苦しいか? 痛みに強いお前でも魂を穿つ拳は効くか? ……なら次は魂も焼き尽くす灼熱の劫火は如何かな?」


何処からアレほどの力が出せるのか、不可思議な力を出して男はスモアを圧倒すると……。



【どうやら火耐性もあるみたいだし本気でいくわ。炭火焼き決定ねッ!】

「マズそうだから消し炭で頼むわ────“コロ”」



不敵に笑う男がブツブツと呟く。一瞬誰かと会話している気がしたが、それも一気に変貌した男の姿を見て意識が逸れた。同時に彼の中に流れている精霊の力が膨れ上がったのを感じた。


「精霊武装───【陽炎鼓譟(ようえんこそう)】」


体全体を真っ赤な豪炎が飲み込む。何処かに神秘さもある綺麗な炎で止むと、黒だった髪と瞳が真っ赤に変わる。

着ている黒のジャケットとズボンも赤く染まると、鳳凰のような翼の模様が付いていた。


「“神威(しんい)”全開だ。覚悟しろ筋肉ダルマ」


何気ない軽い蹴りで掴んでいたハンマーを弾き飛ばす。輝きを見せる神秘な炎に包まれた拳で顔をドンドンと鈍く重い音を鳴らして殴打し、残っている連接剣も弾き飛ばすと……。


「オラッ!」


腕を両手で掴むと自分の何倍もある巨体を背負うようにして投げ飛ばす。体を捻るようにすると全身の炎が漏れ出して膂力となっているように見えた。


「スゥゥーーハ!!」


倒れ込んだ巨体を背中から持ち上げると、背後に反り上げるように投げ飛ばす。若干パニックを起こす巨漢が地面にしがみ付こうとするのも、力任せに引き剥がして振り回していく。


「ラァァアアアアアア!!」


声を上げて巨大な丸太のような脚を抱える。横から抱え上げてコマのように回転しながら投げ飛ばす。


持ち上げては投げ技を繰り出す。

掴んでは異常な筋力で持ち上げる。

抱えては地面へ叩きつけて投げ続ける。



……若干引いた。なんという地獄の投げ技コースだよ。



なんて冗談混じりに思うが、俺の攻撃に耐えたあの巨漢ならただの投げ技程度なんでもないと思うのだが……。


『……っ』


倒れ込んだところで深い肘打ちをボディに受けたところ、なんか釣り上げられた魚みたいにピクピクして動かなくなった。


転がって起き上がる気配も見せなくなると、男は両手で怪物を背中から持ち自分の頭上まで掲げる。……いったいどんだけ痛め付けるの? こうも一方的だとだんだん可哀想に見えてくる中、今度はいったいどうするのかと目を向けると……。


何も出来ずフラフラした状態の巨漢を見上げた男が笑った。


「どうした? 自慢の怪力の出番はなしか?」


容赦ない挑発の言葉と共に背中から炎を膨らませる。

弾けるとそれが翼の形状をして振るわれると、男性と持ち上げていた巨漢を高く飛ばした。


そしてビル10階分くらい高くまで飛ぶと、その辺りで高度を固定したようだ。

巨体を持ち上げていた両腕を一度下げる。力を込めるように踏ん張ると、そこからさらに高々と放り投げた。


「ふぅぅぅぅぅっ!」


深く息を吸い込みような声を出して、両手を動かして何かの技の構えをする。胸の中心で弧を描くようにすると……次第に身体中の綺麗な炎が胸の中心に集まっていく。


そして胴体くらいの幅がある神秘な炎のボールが出来上がる。

体も輝くように燃え上がたところで、男性は両腕でエックスを作りボールを操り、放り投げられた巨漢へ向けて照準を定めて……。




「煌気術奥義────“王破(オウハ)”」




クロスした両腕を勢いよく開いた。

込められた炎のボールが回転して、放り投げられた巨漢へ撃ち出された。


敵キャラの紹介。

『スモア』

種 族:ゴブリンコング。

危険度:A〜S(冒険者ランク基準)

能 力:鐡獄皮膚(アーマー)(魔力耐性、物理耐性)

詳 細:思考は短気で猪突猛進な性格。武器の連接剣とハンマーは振り回し易いという理由から使用。


難しいことは一切考えないタイプである。




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