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オリジナルマスター   作者: ルド
オリジナルマスター外伝『神の魔法使いの弟子と時空を超えた空の塔(ダンジョン)』
230/265

第5話 彼の戦い方と魂を視る乱入者。

ちょっとした魔法スキルの紹介。

その1。

炎熱噴射(ブースター)

・刃の得意技で初級魔法を応用して編み出した。

・加熱率を上げることが出来て、瞬間的に鉄を溶かせるレベルまで上げることが可能。

・【天地属性】の操作技術によって攻撃以外にも飛行が可能であるが、小回りが利かず複雑な動きには向かない。



そいつが落ちたのは、何処にでもある交差点の中心。

幸い通った車が直撃してないようだが、避けて路肩にぶつかって並んでいる惨状が見える。


(いや、下敷きになってる人がいなかっただけ儲けものか。きっと何トンもの衝撃の筈)


轢かれた者もいないようだが、それでも怪我人はいるだろう。降り立つ前から悲鳴が木霊してその場は混乱の渦となっていた。


「まどか、周囲一帯を封鎖してくれ。精霊魔法と精神魔法で避難誘導も頼む」

「もうしてます。治療も避難も……情報操作も」


陥没して出来上がったクレーターの下も気になるが、まずは怪我人やパニックになってる人たちの避難が優先だ。

まどかもそれは分かっていた。俺が指示するよりも早く魔法を行使していた。


「出際がいいな。もうやってるのか」

「無理言って付いて来た身ですから、それに時間とも勝負です。……どうやら死者はいないみたいです」


闇系統の黒よりも薄い紫色で出来たオーラが、まどかを中心にして周囲に拡散する。パニックを起こしていた人たちが浴びると、次第に静かになり何か思い出したように離れて行く。


(ある程度はマスターしたと聞いていたが、まさかここまでとは……)


中には怪我して動けない人に手を貸し、抱えるなどして避難する者もいる。さっきまでの騒ぎが嘘だったかのように思える光景だった。


心理の入れ替えフィーリング・シャッフル


ジィちゃんと並ぶ【魔導師】の階級を持つまどかの『一級位魔法』。

闇系統の精神操作魔法だが操作とは少し違う。剥き出しになっている感情の一部と別の感情を入れ替える魔法。さらに魔法師に対しては効きにくい。


今回彼女が書き換えたのは“混乱”と“避難”。

魔法師には効き目は低いが、パニックになっていた大半が一般人だったようだ。


同時に彼女の命令で動いた精霊たちが動き出したのを感じた。

傷の癒しや回復向きな水の精霊たちが避難したくても動けない、怪我人に集まって治療しているのが分かる。細かな操作な得意な俺でもここまで周囲に気を配るのは無理だろう。


「雷の精霊に頼み周囲一帯を危険区域にしました。警務隊は止められませんが、一般人ならしばらくは大丈夫でしょう」

「本当に相変わらずの出際だよ。置いて行こうとしたことは謝るよ」


流石はまどかだ。一家に1人は絶対欲しい。

いつの間にか雷の精霊でネットワークに入り込んでいた。確かに監視している警務隊などは厳しいが、一般の情報メディア程度なら短時間なら騙すことも可能だ。


連れて行くときは少し困ったが、こうして見ると助かったと感謝するしかないな。


「ええ、盛大に感謝していいんですよ? ヘタレ朴念仁な貴方を骨抜きにすることに比べれば、この程度のことなど取るに足らない問題ですから」

「感謝して欲しいのか、感謝しなくていいのか、分かりにくい返答だが、その間にあったヘタレに朴念仁で骨抜きって何?」


なんか不名誉なお言葉と一緒に不穏なセリフが聞こえたんだが。

本気かどうか知らないが真顔なのが余計に怖い。




『────ッ!!』



だが、そこで痺れを切らしたか。

大きなクレーターの中心で震動が響く。

共に心身に響く強烈な気配に俺もまどかも押し黙る。


「……来ます」

「のようだ」


自然とまどかの隠すように前に出る。本人は参戦したそうな不満顔だが、俺が周囲に視線を向けると少し逡巡したのち、仕方なさそうに首を縦に振り離れる。まだ残っている怪我人や魔力持ちで少なからず耐性があった人たちの対応に移ってくれた。


「それじゃ……そろそろ出て来てくれないか?」


『ゴバァアアァァァァアアアァァァァアア!!』


返答は雄叫びと岩のような剛腕。手首に手錠のような物が付いて、千切れた長い鎖が揺れている。

クレーターの隙間から突き抜くように高く飛び出ると、俺の方へ向かって叩きつけてきた。


(容赦なしか。腕だけでこのデカさか)


振り下ろされた巨大な剛腕を俺は慌てず躱して後方へ飛ぶ。巨大な剛腕がアスファルトを叩き付けるとその一帯に地震でも起きたか、止まっていた車が跳ねて上がって揺れ、近くで放置された物などは高く跳ね上がり、反転して落ちてしまう物もあった。


『ッ!!』


さらに叩き付けた要領でクレーターの中に居たモノが飛び出てくる。

見た目はどうも見ても人間ではない。例えるなら巨漢の戦士だろうか、全身が焦げた茶色な岩のような肌と凶暴そうな顔。


「なぁまどか? アレってなんだと思う? 俺にはトロールかオークの親戚にしか見えないんだが」

「……とりあえず、魔族の分類では無さそうですが、種族の方は識別系の魔法で分からないんですか?」


ゴリラのような体格で守るように鋼色の鎧を身に纏っている。背中には同じく鋼色のハンマーと剣だろうか? 大剣のようで槍にも見える奇妙な形状をした2つの武器を取り出して両手で構えた。


「分かってたら訊かないよ。完全に識別不明(エラー)だ」

『ゴバッァァァァ!!!!』

「……やっぱ人語は話せないか」


どう考えても好戦的な反応にしか聞こえない雄叫び。殺気溢れる魔力も撒き散らして、今にも飛び掛かって来そうな雰囲気だった。


「雰囲気だけなら他の魔物よりも圧倒的だな」


オーガにも見えるが『検索魔法』で識別しても該当がない。正直魔物かどうかも分からないが、敵であることは間違いなさそうだ。


『ゴバァアアアアアアッ!!』

「刃」

「ああ、来るな」


予想通り突っ込んで来た。

一番近いからか、逃げ遅れてる人たちではなくこちらへ。

ゾウでも突進して来たかのような勢いで巨体を揺らして迫って来た。


「やれやれ、やる気満々だな」


クソ暑い日光と巨漢の戦士に嘆息しながら、2種類の魔力で混ぜ合わせる。


「少しは落ち着こうか」


初級魔法の『土石壁(アース)』を使用して、異世界の派生属性【天地】に特性である自然界の力を付与させる。地面から伸びるようにして、微かに丸まった半球体状の壁を出現させた。


ガキッ! という鈍い音と共に突進して来た巨漢の戦士を押し止める。


「ゴリラ君(仮)」

『ゴァ!?』


本来なら拳や蹴りを防ぐ程度の土と石が混ざった壁を、魔力量に合わせて高くするものだが、【天地】の魔力が付与されたことで密度の高い硬度な壁が作れた。


魔法名は土石となっているが、生み出されたそれはより精密に作られており、鋼のような壁となっていた。


「衝撃が大きい。かなりの突進力だ」


現代世界のの魔法に異世界の属性魔力を付与させる。

これが俺が編み出した特異な合成・融合魔法だ。

師匠は属性と属性を合わせるのが得意だったが、俺は別々の世界の魔法と属性を合わせるのに特化していた。


「ふっ!」


壁にしていた『土石壁(アース)』の形状を変化させる。

左右の腕を覆うように出来た巨大な鋼の拳を下から振り上げる。ハンマーでも打つような要領で身体強化も駆使して、巨漢の顎を打ち抜き上体を下げさせるともう一発。


『ゴ、バァ!?』


鐘で鳴らすような勢いで巨体の顔面を打ち鳴らした。

今度こそ後ろへと倒れる巨漢。そこへ俺は上へ飛ぶように跳躍すると、【天地属性】で両腕の鋼の腕の形状を変化させる。


「力任せは俺の分野じゃないんだけど?」


あっいう間に1つにし混ぜ合わせて、ゾッとしそうな巨大な鋼の大砲が出来上がった。


「これで倒れてくれたら嬉しいな」


苦悶する巨漢に向ける。大砲内に『火炎弾(ファイア)』の魔力を集めて、【天地属性】の魔力で熱度を増加させる。


「ほれ、消し炭だ」


しっかり狙いを定めて苦悶していた巨漢が跳躍した俺に気付いた時には、熱して準備が整った大砲の発射口から燃える柱が。


見ただけで眼球も焼けそうな高温の薄いオレンジ色のレーザーが発射された。


『ッッーーーー!?』


声にならない叫びが聞こえた気がした。

だが、極太なレーザーを受けた巨体は地面を抉り、レーザーによって引きずられて行く。柱のような燃えて、アスファルトも溶かして煙を上げていた。


衝撃で俺自身が吹き飛ばされそうになるが、同時に風を操作して衝撃を抑える。複数の属性の同時操作は難しいが、【天地属性】は自然界に干渉が許された万能属性。


「ロボット映画じゃないんだ。いくら強化しても体に来るんだよ!」


火属性に集中しながら風の操作もコツさえ掴めば可能だ。頑丈な為、時間は掛かりそうだが、確実に燃やして溶かしているのも手応えで感じていたので、倒すのも時間の問題であった。


「さっさとくたばってくれよ? 出ないと俺まで道路壊した責任を取らさr───」


ガキッ


「──ッ!?」


が、その直後、炎で赤く染まっていた視界の端から太い鞭のような物が飛び出る。

それが奇妙な形状をした大剣の正体だと分かったのは、咄嗟に受けて飛ばされた時だった。


「こいつ! 剣を伸ばして!?」


飛んできた際は分からなかったが、両手の硬化した発射砲で止めたが、見覚えのある形状と色を見て、それが連接剣なのだと理解した。


『ゴバァァアアアアアア!!』


足先から炎を噴射させて崩しかけたバランスを戻したが、雄叫びを上げた巨漢が再び身の丈程ある連接剣を振るってきた。


「ッ……器用任せか力任せなのかどっちかにしろよ!」


さらにデカい図体の割に攻撃速度が速い。体勢を戻した直後の俺は両手の硬化したで受けるしかなく、今度は受けた衝撃で地面に叩き付けられた。


「ぐっ……馬鹿力め!」


重い衝撃に思わず愚痴をこぼす中、1つにしていた発射砲を戻して、両手に籠手のような金属色のシールドを装着する。

不満を叫びたい衝動はあるが、それ以上に危険で凶暴そうな視線を背筋に感じ取ったからだ。


『ゴバァーー!!』


落ちてきた俺を見て駆けて来た巨漢が勢いよくハンマーを振り下ろした。

シールドを盾にガードするが、怒りでパワーが増したか、ただの身体強化のパワーだけは対抗出来ず盾越しに吹き飛ばされてしまう。


「げっ……ぐっ!」


地面を転がるようにして背後の電信棒に背中から激突。衝撃を背中の電信棒が受けてくれたお陰で助かったが、巨漢が距離を詰めて来る。


「がぁッ!?」


そこから重いハンマーによる横薙ぎ。

大振りでの一撃に横に飛ばされてしまい、受け身も取れず路上で激しく転がってしまう。


無防備な背中を晒してしまった。


『ゴバァアアアアァァァァ!!』


「──や、やばっ」

「……刃っ!」


さらに厄介な追撃が来る。同時に遠くから珍しくも鋭いまどかの叫びが聞こえたが、背後から急激に増していく殺気に背筋が凍り付いていた。

懐かしくも辛い、あの修業の日々が一瞬脳裏に過ぎった。




だからか。



「妙な魂の色だ。この世界の物なのに……この世界とは別の何かが混じった色をしてるな」



いつの間にか背後にいた男の存在に気付くのが遅れたのは。

聞き慣れない声に緊張で固まった背筋が緩んだ気がした。

とりあえず順調に週一ペースで出せれるようにしたいと思います。

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