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オリジナルマスター   作者: ルド
最終章【魔法使いの未来へ】。
214/265

第0話 大敗の可能性と勝利の可能性。

色々とありましたが、最終章始まりです。

本当はもっと早く出す予定で全部一気に出したかったのですが、まだ完結してません。ホントすみません。

とりあえず生存報告のついでに第0話のみ先に出すことにしました。残りも4月の終わりまでには出されると思うので平成の終わりまでには完結したいと思います。


そんな感じで平成も残り僅かですが、今後もよろしくお願いします!


────世界の終わりは余りにも呆気ないものだった。




暗黒の雲が空を覆う世界で、一つの大陸が今、死を迎えようとしている。

彼と《魔王》と呼ばれた怪物の戦いの終幕と共に。


(ぜ、全然効かない……こんなのどうしたら……)


『これで何度目だ? オレを倒せる決定的なチャンスを逃したのは?』


激戦の末で真っ先に滅びた帝都の中心地で、二人の戦士が死闘を繰り広げていた。


『もう諦めたらどうだ? 《魔導王》』

「ッ……!」


暗黒の死のオーラをコートのように纏う存在を前に、ジークは“死の毒”にやられた肉体を見下ろしながら男を睨む。


(体がまともに動かない。臓器もやられて魔力制御が……保てない)


体の至る部分が暗黒色の“死の毒”に染まっている。その箇所だけ魔力が通せず感覚も消えており、内臓部分が侵されている箇所は機能すら死んでいる。回復する兆しが以降になく、ジワジワと弱っていくジークは、それでも諦めるものかと自身を奮起させる。


(反発作用を引き起こす対象属性を打ち込めれば……! 使える部位のみで魔力を集中させる……!)


錆びれた荒野となった廃墟。

終わりを迎えた大陸と終わろうとしている残った大陸。

遥か遠くで勝利の雄叫びを上げる六体の王。


「……ッ!!」


滅亡が近づく星の脈動を感じながら、ジークは《魔王》に向かって駆ける。

属性魔力を付与させた手刀が《魔王》へ伸びようとするが……


『まだ分からんのかァ? 無駄ということが?』

「────多重障壁よ!!」


《魔王》から発せられる突風は、生物の歩みだけでなく命すら止めてしまう死滅の風。……属性魔力としての領域を完全に超えている。


展開された複数の七属性の障壁が……ガラスのように砕けて散っていく。


(進化した死属性の風……! ここまで拡大影響を及ぼすのか……!)


莫大な魔力を誇るジークであれば、ある程度は相殺が可能であった筈だが、《魔王》が扱う死の属性は、もはやジークの魔力であっても干渉困難レベルに達していた。


(魔力障壁でも全然防げれない……! このままじゃ……!!)


相殺し切れない突風が彼の体に叩き付けてくる。

痛みを通り越して打ち付ける度に身体そのものが衰弱していく。


「『短距離(ショート)……────っ!!」


逃れようと空間を移動しようとするが、発現される端から死の風で魔力を削られてしまい、魔法をキャンセルされると同時に吹き飛ばされてしまう。

いつもの彼であれば即座に立ち上がって見せただろうが、弱り切っていた肉体が彼の意思に付いていかない。


『ああ、遅いな』


フラついた状態で起き上がった彼の顔を……片手で鷲掴みして持ち上げる《魔王》。


『はぁ……こんなものか』


握力のない手をノロノロと動かし腕を掴むジークの姿を見て、哀れか呆れたような息を吐くと無防備な胸元に暗黒の死オーラが込められた拳を軽く打つ。


「ッ……ガハッ!」


軽いジャブのような打撃であったが、躰を回転させて吹き飛ばされるジーク。

そんな状態では受け身など取れるはずもなく、天も地も分からないまま地面に叩き付けられてしまう。


「ぐっ、くそ……!」


悪態を吐きながら、片膝を付いた状態で起き上げるが、そんな彼をつまらなそうに見ていた《魔王》がゆっくりとした歩みで近付いて来る。


(っ───来い!! 我が杖よ!!)


衰弱の影響か震える歯を噛んで原初魔法を発現させる。手元に白銀の杖を出現させて杖を振るった。


「これで決める!!」


白銀色の世界が生まれて彼らを包もうとするが……。


『……』


────無言で手のひらに集めた死のチカラを握り締めたことで解放。


《魔王》を中心に包もうとした白銀の世界が崩れるようにして消える。

振るわれた杖にも影響を及ぼし、杖の先端にヒビが入っていた。


『もういいか?』

「……」


ゆっくり歩を進める《魔王》へ、ジークは杖の先から白銀の光線を放つ。

高密度に凝縮された光線は属性最高位の一撃。存在その物も消し去るチカラが込めれているが……。


『フン』


片手に集めたオーラのみで凝縮された光線が溶かされるように消滅。

そのままジワジワと接近する《魔王》は、とうとう彼の真正面に立つ。


『……!』


ブンと重い風圧が乗せられた拳が繰り出され、ジークが杖から障壁を出し盾にするが、障壁は砕け散り杖も粉々に破壊される。衝撃で彼の上体が後ろへ傾く。

体勢を持ち直して魔力を込めた拳を繰り出すが、顔を狙った拳は《魔王》の手によって阻まれ……。


『よく粘るが、ここまでだな』


肘の辺りまで一瞬で死のオーラが飲むと、繰り出した拳の感覚が消える。

金属が砕けるような音と共に彼の腕が……飲まれた部分から砕け散った。


「……!!」


血飛沫が上がらないのは、ちぎれた先が暗黒色に塗り潰されているからだ。

そして、五体のほぼ全て汚染された状態となってしまい、その状態からの逆転は既になかったが……。


『まだ足掻くか』


腕を失くしても彼は鋭い眼光で《魔王》を捉えていた。

すばやく空いている手から白銀の剣を作り出すと、男の頭部を狙い突き刺そうとした。




『最後まで挑み続ける。その意気は良しだが……』

「ッ……!」




が、再び相手の手に阻まれ掴まれた衝撃で刃が砕ける。

気付けば自身の胸元に手刀が突き刺さり心臓を穿っていた。


「……」


なんとも呆気ない幕切れか。

懸命に抗い続けたというのに。

結局最後はこんな有り様なのだと、彼は不甲斐ない自分に憤りを感じずにはいられなかったが……。



『賞賛しよう。だが……終わりだ』



心臓を潰した死のオーラは全身を巡り彼を飲み込む。食すようにして彼を喰らい切った。本当に呆気ない終わりである。同じ超越者だった頃でも圧倒していたデア・イグスであったが、復活し《魔王》となったことで、さらにジークの存在の遥か先まで上り詰めていた。


『さらばだ。シルバーよ』


最後に聞こえたのは残念そうな男の声。

暗黒の闇に飲まれた彼は、抵抗することもできず、精神の全てまで飲み込まれてしまった。





そうしてジークは()が覚めた。



◇◇◇



「はぁ、はぁ……っー!?」


全身から衝撃が走り嫌な汗が出て痙攣を起こした。

呼吸も乱れて吐きそうになり口元を押さえる。どうにか吐くことはなかったが、最悪な目覚めに嘆きなくなるジーク。


「……何回やっても慣れないな」


いっそ寝直すかと意識を放棄しかけるが、感覚器官が正常に戻ったところで自分の状態に気付いて閉じていた瞼を開けた。


「負けたの?」

「……ああ」


目を開けた彼の視界に覗き込むようにして見つめるアイリスがいる。慣れた様子で冷汗をかいていた彼の頰を拭っている。ひんやりしたタオルに気持ち悪かった汗が拭われ荒れていた息が落ちていく。


「ほどほどね? 毎回うなされて酷い汗だよ?」

「あ、ああ悪い。……ありがとうな」

「ん、いいよ」


それはとくに気にしない。

故郷である田舎村に移り住むようになってから、同棲紛いな暮らしをしている。


(まぁ、料理関係で胃袋すっかり掴まれてるからしょうがないの……か?)


その際、村の人……主に師匠やその仲間に散々からかわれ、さらに馴染みの友人たちとアイリスが何故か睨み合う、なんて騒動も起きたが。とくに爆笑してからかっていたバルトはボコって、結界に閉じ込めて三日間放置したそうだ。


話は逸れたが、眠っていた彼がいる家の地下もアイリスも自由に入れる。設置している魔道具装置を利用した実験にも手伝ってもらっていた。

だから彼女がこの場にいることを気にはしないが……。


「ところで……なんで横に寝かされてるの? 瞑想気分で胡座かいてた筈なのに」

「うーん? なんだかこっくりこっくりして危ないなぁって思って寝かせてみた」


「膝枕で?」

「うん、膝枕で」


何故か瞑想に入る前と体勢が変わっており、そして何故か膝枕されていた。

目覚めた当初は目を開けず感覚器官が乱れていたため分からなかったが、感覚が戻って後頭部に当たる柔らかな膝の感触でようやく気が付いたのだ。


「で、どうするか決めたの?」

「……」


問われたジークは不貞腐れた様子でアイリスから視線を逸らす。

酷い目覚め方をした時点でシミュレーション結果がどうだったかなど言わなくても理解されるだろう。


(言わないと怖いけどな)


かれこれ千回以上は行ってきたが、勝利したのはただの一回もない。

つまり現状どう足掻いたとしても《魔王》デア・イグスを倒すことは限りなく、不可能だということだった。


「じゃあ、今度は私もやるからね?」


そしてそれは別の案を。

彼女が提示したもう一つの可能性を試すことになる。


「はぁ……」


ため息をついてジークは頭を掻き毟る。

嫌そうな顔で眉を潜めるが、他に手はないのも事実なので、諦め気分で彼女の案を試そうかと……。

……。

……。



「ところで傍に置いてあるそれはなに?」


ジトとした目で彼女の側に置いてあった紙に目がいく。

なんだかこの場で一番ありえない内容が刻まれた紙に見えたが、サッと素早いアイリスによって後ろへ隠された。


単にいうと婚姻届なるものだ。


「ただの事務書類だよ?」


しかも、一瞬だったが彼女の名前と一緒に彼の名前も……。


「ただの事務書類だよ?」

「書いた記憶もないが……」

「あ、そろそろご飯にしますか! あ! カグラさんの畑から頂いた野菜が沢山あるんで煮込み料理にしようかっ!」

「まぁ待ちなさいな! とりあえずその紙を置こうか!? あと野菜もいいが、肉も欲しいかな!? なんなら俺が狩ってくるからちょっと待とうか!?」


など、どうでもいいやり取りがあったが、ジークは再度瞑想に入り彼女の提案を加えた上で、新たな可能性を引き出そうとした。


……あとサインされた謎の事務書類の結末は秘密だそうだ。



◇◇◇



「やるしかないか」


アイリスが立ち去った後、ジークは地下室の一つの扉を開ける。

隠し扉ではなくアイリスも知っているが、反対するアイリスの前では不用意に開けるわけにはいかなかった。


「結局勝たないとこいつも試せないしな」


そして製作中でもある地下階段の底にある『大迷宮の魔法都市(ダンジョン)』。

再びバランスを崩し始めている世界の救済として彼が考えて用意した物だ。


「欠点が多過ぎて反対理由に反論も出来ないなぁ」


望みは薄いのはアイリスに言われなくも分かっていた。

だが、それでも成功した際の安定を思えば賭けてみたくなるのはしかなかった。


「上手くいけばアイツを封じれるんだ。これくらいの保険を作って置いてもバチは当たらんだろ。……失敗したら処分に困るどころじゃないけど」


だからなんとしても勝たねばならない。

勝算などないに等しい戦いだが、ジークは再び立ち上がろうとしていた。


なんやかんやあって敗北確率・大というのが現状でした。

そんなわけで次回のお知らせ。

とうとう《魔王》にまで昇格したデア・イグスが帝国を支配し、そこから聖国、中立国、妖精国へ総攻撃を仕掛けようとしていた。

さらに敵側には魔王幹部以外に六王の一角である《獣王》、《蛇王》に新王となった邪竜の《竜王》が魔物の軍勢と共に控えていた。


しかし、その総攻撃が行われる前にジーク率いる強襲部隊が《魔王》が居る帝都に攻撃を仕掛ける。だが、敵側には帝都を防衛するように六王の《海王》、《鳥王》、《幻王》が魔物の大群と共に控えている。


六王も巻き込む史上最大の大戦が今始まろうとしていた。

強襲を仕掛けるジークの策が帝都を混乱へと落とす。魔王幹部も現れ帝都は一層混沌と化していく。


『オリジナルマスター』最終章:魔法使いの未来へ。

平成の終わりにしっかりとやり遂げたいと思います! どうかよろしくお願いします。

まぁ、本編が終わってもおまけを出したいと考えているので、本当の終わりとは少し違う気もしますが(苦笑)


では、4月の終わり頃にまたお会いしましょう!

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