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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いと魔導杯【後編】
212/265

第12話 旅たちの時。

大変遅くなりました。

なんとかまとめようとして手間取りました(汗)。

これで一応一区切りとなります。強引な感じではありますが、どうかご了承ください。

最後までどうか拙い文章ですが、お付き合いください。

──あなたはどうして魔法使いになったの?


彼女にそう聞かれた彼は、懐かしそうな顔で過去を振り返り、照れたような顔で苦笑しながら口にした。



◇◇◇



ジークは閉まっている馴染みの雑貨店に足を踏み入れる。

鍵は持っていないが魔法で開けて意図も容易く入ると、まず辺りを見回して居ないと分かっていながら、店の主人に声を掛けておく。


「ミーアちゃーん? ちょっとお邪魔するよ?」


寧ろ期待を裏切って欲しい気持ちもあったが、返事がなく留守だと分かるや奥へと進み、無数に置かれた品物を無視して、奥にある彼女の仕事部屋とも言える『魔道具』制作用の作業。


そこで束になった研究資料や素材、魔道具などに何か隠蔽が施されていないか、第二の魔眼などを含めた解析系の魔法を使う。


──何故、このようなことをするのか。

それは彼女もまたガーデニアンと共に王城を襲ったメンバーの一人だったからだ。


証言となったのは、王城で襲撃を受けた王女カトリーナだ。剣聖はガーデニアンのことで周りに目が入っておらず記憶してなかったが、顔を覚えていた彼女の記憶を頼りに似顔絵を描かせて判明した。


信じ難い話だったが、他にも驚くことがあった。

その話を聞かされ初めは困惑したジークだが、以降はこうして手掛かりを探しながら調べ物をしていた。


「なるほどな」


そして散らばった書き残しや何かの欠片、使用済みの薬品などを見ていって納得した顔で頷いてみせた。



◇◇◇



「おはようございま〜す。キリアさん」

「もう夕方ですけど、おはようございます。ジークさん」


適当な私服姿でギルド会館にやって来たジーク。

真っ直ぐ三つある受付席の一つに座る、受付嬢のキリアの元へ行くと、いつもの軽い感じで挨拶を交わす。


「どうぞ」


ちょうど手が空いていたキリアに彼が近付いてくる。後ろに常備してあるポットのお茶を用意し、同じく常備していたコップに注いで、タイミングよく着いた彼の前に置いた。


「この時間の訪問ということは、またサボりですか? いくら通い辛いといっても、さすがにそろそろマズくはありませんか?」

「まぁ、そうでしょうね」


置かれたお茶を(すす)るように飲むジークは、キリアの指摘にバツの悪そうな顔で視線を横に向けてしまう。確かに王都での騒動を終えてから、彼は一度も学園に通わず休学届けもせずに、今日まで休み続けていた。


異常なほど長く感じた王都での魔導杯を終えてから一週間。

ウルキアに戻ったジークは騒ぎ立つ学園事情など無視して、街をぶらぶらと回っていた。


詳しくは聞いていないが、どうやら王都で彼の活躍やガーデニアンの失踪の話が広がって、学園全体に大きな影響を与えてしまっているらしい。さらに当事者でもある彼が居ない所為か、拡散する情報も変化して沢山の憶測が広がっている。


「でも退学扱いになるなら、それも都合が良いで構いませんけど。……魔導杯に出た時点でもう普通の学園生活は諦めましたから」

「予定では身代わりにジョド()の身分を利用する筈でしたが、まさか超越者の弟子扱いとは……狙ってやりました?」

「まさか」


特に広まってしまった噂は、ジーク・スカルスがシルバー・アイズの弟子だと。

狙ったつもりなどなかったが、気付けばそういった話となって学園中に広まってしまっていた。


「同じ技法を扱っただけで。誤魔化そうにも館で学園長と《無双》、それに同級生のトオルにもたぶん見られました」

「……なるほど、情報の拡散はそれが原因ですか。《知将》と呼ばれたあの方に見られたのであれば、寧ろそれを利用するでしょうね」


──やはりそうか。

苦笑して口にするキリアに同意の顔を頷くジーク。


やってしまったことに後悔はないが、このままタダで済むとは考えていない。自分に都合が良いように情報を回したであろうリグラの考えも、嫌々ながら理解していたが、


「あわよくば戦力としてですか? 冗談。なら俺が取るべき選択は一つだけですよ」


最初からそれしかない気もしなかったが。

騒動が加速してやり辛くなるのは明らかである以上、ジークは前々から考えていた案を実行に移そうと準備を整えていた。


「……やはり学園を去ると?」


ただ、その案を知っている数少ない協力者のキリアは、少し寂しげな表情で呟いてしまう。彼の都合を考えるなら妥当なものであるとは思うが、それでも個人的な気持ちとしては、どうしても寂しいものを感じてしまった。


「……」


そんなキリアの問いかけに、ジークは深いため息を吐いて困ったような表情で、視線を二階の続く階段へと向けた。



◇◇◇



「調べ物は済んだのか? 彼女の店に何日も調べていたのだろ?」

「そもそも重量な情報は廃棄されてたから殆ど分からなかった。というか俺が知りたかったのはミーアの技量だ。あれならゴーレムに仕掛けを施すことができるし、その気になれば量産も可能だろう」

「奴らが国そのものを脅かす戦力を生むか……消えたバイクも話が本当ならCランク程度はないはずだ」

「あの酔っ払いには、今度じっくり話を聞かせてもらうさ。ギルさんの弟子にもな。……で本題だがシャリア」

「ああ……」


キリアとの会話を終えてジークはギルド長室に居る。

ギルドマスターであるシャリアと向かうようにソファーに座り、今後のことを改めて話すことにした。街に戻ってから一度話す機会があったが、この数日は調べ物や立ち去る為の準備、後始末をする必要があったので会いに来ていなかった。


「やはり街を去るか」

「ああ、村に戻って少しの間だけ村の為に時間を使おうと思う」


なので急な話となってしまったが、シャリアは彼の言葉に納得したように首肯する。キリアと同じで寂しいわけではないが、彼の今後負ってしまう苦労を考えれば、街に残るのはリスクが大き過ぎた。


なにより、あのチカラをものにしようと思っている、そんな彼の負担となってしまう可能性もある。シャリアの立場ではそこまでの協力は、守っている街への危険もあってどうしてもできなかった。


だが、故郷である村でなら彼の師も仲間もいる。彼の師もそれに応えようとするだろう。


「寂しくなるな……──っっ!」


だからこそ、ここはしっかりと彼を送り出すべきであるが、親しくなり過ぎたか、心が騒ついて寂しさが滲み出てくる。


「あ、いや……今のは違っ」


冗談混じりについ呟いてしまったが、あとになって情けなくなり彼の方へ視線を合わせづらくなってしまう。気まずそうに視線を逸らし、慌てて何か言い訳を──、と口を半開きになる中、ジークが首を傾げて何を言っているのだ、と言わんばかりの表情と声音で告げる。


「んー、去るとは言ったが、会おうと思えば簡単に会えるぞ?」





「…………は?」


あまりに予想外のセリフだったのだろうか、呆けたように声を漏らすシャリアを見て苦笑するジーク。


何をそんなに不意を突かれたような顔をするのか、疑問に思ったがすぐにそれが当たり前なのかと納得する。


(空間移動なんて超強力な魔道具レベルだからな)


冷静に考えれば街を出て行った者と簡単に会えないのが普通だ。もちろん隣街や付近の村なら別であるが、彼の故郷はこの街から遠い。だから簡単には会えないだろうと、大きな立場が立つシャリアは覚悟していたようだが、そういった常識が欠落──もしくは元から存在しないジークは思いもしなかったのだ。


(いっそ冒険者なんて辞めて、宅配業者にでもなろうかぁ? 色々あるし何でも屋に転職するのもありだな)


万能と言っていい数多く魔法を所持する彼からすれば、そんな障害などあってないものだった。


「この部屋から空間転移ができるようにするから、暇な時に来ればいい。下のキリアさんにも話したが、俺もバレない程度に顔を出す予定だから時間を──」

「おおおおお!! 友よぉぉぉぉ!!」

「ん──ッ!?」


バフっという音と共に彼の視界が黒く塗り潰された。

というか頭をホールドするように抱き締められた。小さなコアラか小動物が顔をボールのように扱い、体全体で感触を確かめるように、ぎゅーぎゅーと引っ付いてくる。


「っ、シャ、シャリ……!?」


──息が……と呼吸困難になり声が漏れるが、それよりも物凄く嬉しげで満面な笑みを浮かべる彼女の顔を間近で見て、引き剥がそうとした動いた思考が停止し掛ける。


(これは前もってちゃんと説明した方がよかったか? 息はどうにかなったが、この体勢は色々とマズいぞ!?)


幼女体型なので一切の凹凸などないが、服越しからでも感じ取る柔らかな感触がジークを困惑させた。


(戦闘モードのく、大人バージョンなら最高なに!! って何考えてんだ俺は!?)


だからだろう。おかしな思考が回って脳裏に大人状態の彼女の豊満な躰を想像したのは。



その後、受付嬢の勘でも働いたのか、颯爽と駆け付けたキリアの万力幼女締め(アイアンクロー)によって大人しくなったシャリアとキリアに別れを告げて、ジークはギルド会館を後にした。



◇◇◇



そしてギルドでの話からさらに三日後の朝。

まだ静かなウルキアの門の前でローブ姿のジークは、ある人物を待っていた。……因みに早起きが苦手な彼は寝っていない。

この三日は学園側(リグラ)との話で揉めて疲れていたが、さすがに今回の待ち合わせに遅れては色々とマズいと眠らずにやって来た。


「眠……くそ、あの頭でっかちな教員供め。こっちが辞めると言った途端あっさり手のひら返して、恥ずかしくないのか? 聞いていた学園長の結構呆れてのに……たぶん何人かは他所に飛ばされるだろうな」


本当はだた学園を辞めるだけで済む話だったが、散々辞めろ、と遠回しに言っていた学園側から、突如待ったの声が掛かってしまい、無駄に時間をかけてしまった。


原因は間違いなく彼の王都での活躍だろうが、恐らく学園同士で何かしらの揉め事があって、学園側の立場としては、ここで彼に辞められるのは良くないと思い慌てて声を掛けたというところか。


なんとも酷い手のひら返しかと、説得(言い訳)を聞かされたジークは呆れて白けたが、唯一リグラだけは別で、残すことには賛成していたが、その本当の狙いとしては、彼という特記戦力の確保が目的なのだと彼は予測した。


ま、当然であるが、彼はそんな学園側の考えに付き合うつもりなどない。


三日も粘られてしまったが、無事に退学届けが受理され去ることが出来た。……去り際に同じクラスメイトのトオルからは斬られそうになり、サナからは絶対零度の視線を浴びることとなったが、また会おうと言って何崩し的に和解した。


サナはだいぶ不承不承気味だったが、トオルとは強くなったらまた戦えと約束を交わされて、珍しく二人とは離れていた観察するミルルに、首を傾げつつ目で挨拶をしジークは学園を去っていた。


「不思議な気分だが、ま、この生活も悪くなかった」


馴染めたとは言い難い学園生活だったが、ジークは少し……ほんの少しだけ名残惜しい気持ちがあったが、こうしてきちんと街を去ることができる。


学生寮にあった荷物も別荘に置いたので問題ない。ただ別荘の(クー)からは少々不満が漏れてたが、大量の焼き魚を提供することで納得してもらった。意外なことに生よりも焼いた方は好きだったらしい。試しに塩焼きにしたのがお口に合ったようだ。


「そんな感じでやっと終われる……筈だったんだがなー」


やはりちゃんと終われないのが彼の呪い(人生)か。眩しい朝日を嘆息しながら眺めていた彼の前に、待ち合わせしていた主がやって来た。



◇◇◇



「なんでこうなるかな? 俺なりに上手くやった筈なのにさ」

「すっご〜い!? 空を飛んでるよ!!」

「はは……浮かれてるよこの子」


浮遊魔法で空を飛ぶ彼の隣で、手を重ねて空を飛んでいるアイリスを横目で見てため息を吐く。眩く光る朝日が綺麗だと、はしゃぐ子供のように感じた。


──なぜ彼女がここに? と疑問に思うが、理由は王都での《無双》との決闘後だった。

自分の変装をバルトに頼んだお陰で、辛うじて周囲に正体がバレることは避けられたが、彼女は違った。


姉妹(彼女たち)の繋がりを知らなかった、彼の致命的なミスだった。

治療を受けていたところで、隠していたことを洗いざらい吐かされた彼は、魂が抜けたような顔で彼女の提案に頷くしかなかった。


(ていうかアイツの片鱗が見えたよ!? アイリスと感情を共有した影響か知らないが……!)


具体的に言うとアティシアが眠っている彼の故郷に連れて行くこと。

その願いを聞いた時は、ただ彼女に会いに行きたいだけだと認識していた。だからジークもそんな彼女の願いを聞かないわけにはいかないと、二つ返事で了承したのだが……。


(いや、行動力が高過ぎ!! なんか戦争前のアティシアみたいじゃん!! 将来的になんか不安になる!!)


まさか学園を休学して一緒に長期で村で住もうと考えていたとは。

しかもその件については、村の重役の立場にいるシィーナから了承されており、両親にも説得済みだそうだ。


本当に根回しがいいと彼も、この時ばかりは完敗だと降参したのだった。


「はぁ……」

「前から思ってたけど、ジーくんってよくため息を吐いてるね。あんまりため息をしてると幸せが逃げるよ?」

「いや、元々あった幸せなんて砂時計くらいしかないと思うが──じゃなくて、なんで空なんて飛ぶ必要があるんだ? 寒くないが面倒じゃないか? 空間魔法を使えばあっという間だぞ?」


理解できないといった様子で彼はそう言う。彼の言う通り、やろうと思えば魔法で一瞬なのだ移動は。

なのにいざを出発しようとしたところで、彼女からどうせなら空を飛んでみたいをお願いされたのだ。


(いや、分からんって!? 空飛んでどうしろと!?)


荷物も空間魔法に入れて、彼女の服装も魔法使いらしいローブ姿なので寒くはないだろうが、困惑した彼は理由を聞かず、こうして飛んで移動することになった。


(まぁ、仮に聞いても理解なんてできる気がしないがな……)


彼女を飛ばすのに常に手を握る必要はないが、初めにした後からずっと離してもらえず、とりあえず鳥ぐらいの速度で飛行をしていた。


(────って最初は思ってたけどなぁ……)


何だかんだ我慢できず問いかけてしまったが、それに対しアイリスは指をさして強い口調で、それもと指摘するように告げた。


「その面倒って言葉もだよ。いつも面倒だって言うけど、それってもったいないと思うよ?」

「もったいない?」


何がもったいないのか、考えても分からず首を傾げて見せると、彼女は微笑んで子供を諭す母親のような表情となる。


「確かにジーくんの言う通り面倒なことかもしれない。大抵のことも魔法を使えば簡単にできると思うし、普通なら不可能なことも可能にできるよね」


──けど、そう言って自然と、彼と向き合うように飛行する。


ジークも流れるように彼女と向き合うと、そこで一度飛行が止まった。アイリスの言葉に肯定するように頷くと、彼女は彼の瞳を見つめて、心に届かせるような声音で話し出す。


「でもそれは人として得るべき経験を放棄していることと同じだよ。ジーくんはなんでも一人で熟してきたから分からないと思うけど、人は一人では進めない。他の人たちと一緒に成長してく存在だよ。ジーくんにはそれ分からない。全部魔法で済まそうとするから、他人なら思い付く考えも思い付かなくなっているんだよ」

「けど、魔法を使えば上手くいく。少なくとも俺はそれでこれまでやってきた」

「でもそれにも限界があったよね? 今回も、その前も」

「それは……」

「確かに上手くいったことも沢山あるんだよね? それで救われたことも沢山あるはず。けど一人でしか出来ないことばかり考えてたら絶対に無理が出ちゃう。それだけじゃ絶対に大事なものを取り零しちゃう。……きっとジーくんに足りないのは魔法の数でも技術でもなくて、人との付き合い方だよ。人としての当たり前なもの──常識かな(・・・・)?」


最後の部分のみ、少しだけイタズラぽい笑みで言うアイリスだが、的を射れられたような気持ちとなったジークにはそれが冗談に聞こえなかった。


(常識……常識かぁー)


心の何処かでその通りだと認めて、納得してしまった自分がいたからだ。


「そうか、そうだな。ク、ククク……! ハ、ハハ、アハハハハハハハハっ!! ハハハハハハハっ!!」


気付けば笑いが込み上げてきて、キョトンとするアイリスをよそに大笑いをしてしまっていた。


心底おかしそうに、これまでの作り笑いとは違う笑いだ。

そんな彼の様子に呆けたアイリスは何も言えず、しばらくの間笑い続ける彼のことを眺めて、数分かけて落ち着いたところで向こうから謝罪がきた。


「は、は、……いや、悪い悪い、だとしたらお手上げだなと思ってさ。つまりこうして無駄に空を飛んで移動するのも、普通の人ならやるってことだろ?」

「う、うん、空を飛べる魔法って扱いが難しいって聞くから、たぶん旅するなら空を飛んで見たいって思うよ?」


それはどうかな、と一瞬考えたが、でも自分なら飛んで旅をしてみたいと考えただろう。現に彼が飛べると知るや力強く飛んで行くことを望んだのだから。


「やっぱり分からないな。いや、分からないこともないが、やはり面倒と感じる。戦いの時もそうだが、俺はどうも面倒なことを嫌う傾向があるようだ」

「戦いのことは別だと思うけど、私生活や人との付き合い方とかは直した方がいいと思うよ? あのチカラをコントロールするなら絶対必要だと思うから」

「……その根拠は?」

「決まってるよ。──女の勘!!」


楽しそうに告げると、今度はジークを引っ張るように前へと進むアイリス。

照れ隠しか、それともただ楽しんでいるだけか分からないジークはただ面食らったように引っ張られて、彼女と共に朝日の向こうへ行く。


「ハハ、勘って……ふっ」


けど、ちょっとだけ面白いことを思い付いた。

仕返しとばかりに引っ張られていた手を引き寄せる。わっ!? と驚いた声を出した彼女を胸元に抱き寄せて見下ろすと、ニヤリと笑みを浮かべて空いた手から長細い銀色の杖を呼び出す。


「あ……杖?」

「新しい杖だ。特注のな」


全てが銀色に出来たそれは、持ち手の先端が丸い水晶のような銀色で出来ており、ちょっとしたステッキのような形状をしていた。


「芸術は得意じゃないが、これくらいは……」


何を始めるのか、といった顔で見つめるアイリスだったが、その杖をクルクル回して銀の粒子が集まるのを感じると、無意識にか、彼が何をしようとしているのか分かってしまい、おおおお!! といった驚愕した顔となった。


「さてと────行くか?」

「ん……ねぇ? ジーくん?」


ふと思い浮かんだのだろうか、不思議そうな様子で見つめていたアイリスは、杖に集中している彼に問いかけた。


「あなたは……あなたはどうして魔法使いになったの?」

「ん? ああ、それは────」


銀の杖を真っ直ぐに掲げると、彼らを包む光の放線が生まれる。

そして彼女の質問に対して、少しだけ懐かしく気持ちになりつつ、照れ臭そうにして彼は告げる。




「この世界の魔法に────憧れたから……かな?」




告げると二人は加速して、銀の光となった。

一線の軌跡となって朝日の向こうまで、流星の如く消えて行った。



こうしてジーク・スカルスの物語は、一度ここで終結を迎えたのだった。






それから数年後。

突如、暗黒の時代がやって来た。

再び彼らは手を取り合い、死の化身となった『魔王』に挑むこととなる。


────彼はもう一度世界を震撼させる。


なんだか完結のような流れになってしまいましたが、まだ完結ではありません。

これはもう作者の気分の問題ですが、最後はやはりバトって終わらせたい。


というわけで、最終章は一気に話が飛びます。具体的には年数は示しませんが、数年後の世界とします。

復活した《鬼神》改めて《魔王》となった怪物デア・イグスとの最後の戦いが始まります。

ようやくまともな常識を学んだジーク。そして《無双》の弟子となって成長したトオルと、シャリアの元で魔法を学び、魔導師と呼べる程まで成長を遂げたサナ。最後にジークのサポート役へと昇格して、婚約届けを無事に書かせたアイリスたちが《魔王》に挑む。


……という感じで現在執筆中の最終章ですが、全部出来てから出したいと思います。

ただ、現在少々忙しい身で出せても3月か、最悪4月まで延びるかもしれません。

すみませんが、ご理解の方はよろしくお願いします。


それとこれまで、こんな無駄に長く誤字脱字が酷く、文章が崩壊して、運良く続けることができた『オリマス』にお付き合い頂いた読者の皆さまには、本当に感謝の気持ちで一杯です。

本編も残りは予定では3話ですが、どうか今後もこの拙い物語にお付き合い頂けると嬉しいです。

しばらくお休みとなりますが、必ず完結できるように戻ってきますので、どうかよろしくお願いします。

それとまだ後になりますが、短編で昔書いた『こっそり守る苦労人』の改変版を出したいと考えてます。連載版は『オリマス』完結後となりますが、かなり設定を変える予定です。

こちらの物語とは全然違う。普段はふざけた感じでゆるーく進めたいと思います。ま、バトルは少々冷酷な感じになるかもですが(苦笑)


では皆さん、また3月か4月になると思いますが、お会いしましょう。






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