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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いと魔導杯【後編】
203/265

第3話 動き出す伝説の歴史。

本日短いです、すみません。


闘技場は騒然としていた。

最初は戸惑いの声が沢山あったが、次第に興奮した様子で待ち切れないと騒いでいる。


一つ目の内容は魔導杯の中止。

それこそ抗議の声がいくつも出たが、それよりも二つ目の内容に驚愕し夢なのかと現実を受けれずにいる者も多数いる。


SSランク冒険者、超越者と呼ばれた者たちの決闘。

表向きにはエキシビジョンの扱いとなるが、この説明に抗議の声など風に乗って消え去った。


どういうことなのかと茫然している者も多数いたが、詳しい内容は一切なく試合をする二人が誰なのかも分からない。

が、それでも推測はできると皆脳裏に想像した。


世界で四人しかいなかったSSランク冒険者だったが、今では三名しか居らず、内一人は姿を消して生きているのかも怪しい。

そう考えれば観客の者たちが予想する組み合わせは一つだけとなっていた。


聖国が誇る《天空界の掌握者(ファルコン)》ギルドレット・ワーカス。

中立国が誇る《無双》アヤメ・サクラ。


普通に考えてみれば、この二人の対決だと予想するだろう。

しかし、大会役員の紹介で試合場に登場した二名を見て、知っている者たち以外の会場に全員が驚愕し絶句する。


「来たな」


一人は予想通りの人物。対面する相手を見てボソリと呟きを漏らす。


清楚な印象のある長い黒髪と整った顔立ちをして、着物を羽織るようにした和風美人。

だが、知っている者からは息を呑み、恐怖から緊張する者も現れる。


紹介で中立国のSSランクのアヤメ・サクラだと知らされると観客からどよめきが起こる。

が、同時に予想が当たったと納得した様子で驚きながら頷く者もいた。


「ま、そういう約束だしな。やってやるよ」


しかし、その驚きも彼の登場で塗り替えられて、微かな呟きも届くほど静まり返る観戦席。


現れたのは白いローブをコートように身に付けた青年。

中は黒のシャツと腰に剣を差した軽装だが、観客が目を奪われたのはその青年の銀の髪。

遠目なので分からないが、瞳も銀色をしておりどこか前日の試合に出た学生と似ている。だが、その纏っている雰囲気はそんな偽者とは明らかに異なっていた。


その者もまた超越者だが、アヤメやギルドレットとはまた別の意味で伝説の存在だ。

観客の中に知っている者がいるとすれば、それは大戦に参加した者か彼の歴史を知っている者の二つに分けられる。


一時間前にサナが言っていたが、彼のことに関しては歴史書を読んだ方が早いのだ。

大戦そのものも歴史書として残っているが、大戦の英雄である彼の存在はもはや歴史そのもの。


もし出生や経歴がはっきりしていれば、それも含めた彼自身に関する本が出ていてもおかしくない。……似たものがないわけではないが。


それも今日で塗り替わるだろう。

試合場に現れたシルバー・アイズによって再び歴史が刻まれ、そして新たな歴史が生まれるのだから。


それを理解しているのか、観戦する四方の席に座っているシィーナを含めた関係者たちは重苦しい空気で二人を見つめている。


王族が控えている席でも緊張した様子で陛下や王女が見て、護衛として控えている同じSSランクの男も嫌そうに引き攣った顔をして見守っている。最悪の場合、彼らの間に自分が割り込むことになり兼ねない為に、男は修復が済んだ翼をいつでも動かせれるようにして待機していたのだ。


間違いなくただでは終わらない。荒れることになるだろう。

そう確信して仲間たちはシルバーの勝利を願い、そして……。


「行くぞ《魔導王》」

「ああ、来いよ《無双》」


周囲の静まる中、二人は剣を抜く。

業物の刀と銀の剣が輝きを放つ。


司会の者が開始の合図をしたその時、戦いが始まった。



◇◇◇



「すまないなギル。大変な時に無理を言って」

「いやいや、全然。それにオレがいないとマズイでしょ?」


場所は王族席へ移る。

国王陛下のローガンの後ろで控えるギルドレットが、王の謝罪になんでもないと答えて口にする。


弟子とカトリーナの件で当初は思い詰めはしたが、彼も超越者として修羅場を潜って来ている。

本当に気にしてない訳ではないが、思考を切り替えてギルドレットは控えていた。


「確かに助かるが、戦えるか? あの二人……恐らく《無双》と」

「万全とは言い難いですが、“天の羽衣(アマノハゴロモ)”はほぼ修復が済んでるんで、ま、彼と戦った後の彼女なら……なんとかなるでしょう」

「悪いな。だが、無茶なことを言うが、なんとかしてもらわないと、万が一の場合本当に困るんだ」


決闘を認めることは表向きにはできないが、こうして試合をする形であればとローガンはリグラの案を承諾した。断れば最悪街の中で大災害級の戦いが繰り広げられる恐れがあったから。


だが、それでも不安要素は多々存在する。

両者共にそうだが、いざその強大な力が暴走した際いったい誰がそれを止めるのか。

仮にアヤメが暴走を起こしてもシルバーが止めることができれば、それで一番良いが、彼だけで抑え切れなかった場合……被害を抑えるためにもギルドレットの力が必要となる。


「ま、やるだけやりますが、仮にシルバー(アイツ)が暴走した際は諦めてアイツの師に委ねてください。暴走中のアイツは《鬼神》のそれに近い怪物だか──」


ーーーーッ!!


風が土を擦れ合い、キーン!!という耳を塞ぎたくなる摩擦音が会場に響く。


「っ耳障りな……! 超音波か!?」

「く、ギル! なんだ今の音は!?」


不意の耳に突き刺さった不快な音に会話を中断して、ローガンとギルドレットは試合場へ視線を移す。

片方の耳を抑えて尋ねるローガンにギルドレットは魔眼も使用して試合場を目視する。

そして視える光景に目をつぶってしまう。


「最悪な展開だ。よりにもよって、それはないだろう(・・・・・・・・)シルバー」


嘆くように溜息を吐くギルドレット。

説明を求める王の声にも気付かず攻め合う二人の風を静かに目で追った。


もう少し慣らしていって戦闘を加速していきます。

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