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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いは覚醒する。
198/265

第30話 終われない戦いに終止符を。

つ、疲れた。

色々と詰め込んでいってかれこれ数年経ちましたが、まさかここまで難問となるとは……。

ようやくシリアス展開?も終わりに進んでいくので、これからもよろしくお願いします。


(妙だ……)


そう感じたシルバーは転がっている魔石を、第二の魔眼『千夜魔天の瞳(シェラザード・アイ)』で覗き込む。


「ん? んん?」


すると脳裏に浮かぶ魔石の情報を見て、浮かんでいた疑問が余計に膨らんだ。


(術式の空白が多い? 神の鎧(ガイア)の為に少なくしたのか? いや、どちらかというと抜き取られたような)


何か変だと刻まれている魔法式を読んでみる。

しかし、分かるのはゴーレムの単純な起動手順や鎧そのものに刻まれていた魔法式との同調……。


「少しいいかな? 《魔導王》」

「ん、《知将》か」


などと思考に入っていたところで、近づいて来たリグラから声が掛かる。普段の敬語ではなく、噂で彼の性格を知っているのか、対等のように対話を求めた。

負傷して傷を押さえて寄って来たリグラを見て、シルバーは一度思考を止めようとしたが……。


「その魔石に儀式術式は入っているのか?」

「儀式術式? いや……」


ない。そう言いかけたが、抜け落ちた術式の羅列を見てもしかしてと、僅かに目を見開いた。

途中で押し黙ったシルバーの様子を見て、リグラは重苦しい表情で答えた。


「私は今回の殲滅作戦を行う前に敵の情報を可能な限り集めた」


深追いし過ぎて部下を一人操られてしまったが、その部下のお陰である程度の確信を得てこの場所に来ていたのだ。


「それとなく揺さぶりをかけたが、どうやら敵の狙いは王都の殲滅だけではないようだ」

「オレの魔力を支配下に置くことか?」


傀儡を使った実験体を思い出すシルバーだが、首を横に振ってリグラは否定する。


「それもあるが、それは表向きの計画だ。……信じたくはないが」


重苦しい表情のまま躊躇いがちに口にした。


「帝国最強の戦力である、あの男の復活が狙いのようだ」



◇◇◇



「やはりこうなったか」


消えていった銀のオーロラを見送った後。

仲間の少女が用意した特殊な台座とその上に置かれた巨大魔石。巨大な魔石は封印されているか、鎖が巻かれており台座から灯される火の光を浴びて、どこか異質なモノを感じさせていた。


『…………遅かったな』


そしてたった今、粉々に砕け散った巨大な魔石。

鎖も砕けて瞬間、殻の如く魔石の中から出て来たモノは(・・・・・・・)、台座を玉座のようにして胡座をかいて座り込む。


────轟ッ!!


「……!!」

「おぉぉーー!?」


すると激しい魔力の暴風を吹き荒らして、黒き風を周囲に撒き散らし、特に近くにいたガーデニアンたちにも激しい暴風が襲い来る。

ガーデニアンや男性学生は手元に障壁や剣を盾にガードしたが、少女と中年男は見事に吹き飛ばされてしまった。


が、誰も目を向けることはなく、台座に座り込んだそいつの動きに注意して警戒していると。


『……お前か』

「────ッ!」


向けられている視線にようやく気付いたか、そのモノは赤き眼光をガーデニアンへ向ける。

途端、強烈なプレッシャーがガーデニアンの老体に叩き付けらるが、眉間に皺を寄せて杖を持つ手を振る。


杖の先をカンッと地面に叩き付けて波動の魔力で押し返すと、サングラス越しで睨み返した。


「久しいな────《鬼神》。長い眠りから覚めた気分はどうだ?」

『ほぅ? 年老いたと思ったが堪えるか。……ま、悪くはない』


こんななりだがな……。と影────デア・イグスが呟くと実体化した腕を見て肩を竦める。

不完全で右腕のみが実体化しており、肉体は黒き影となってデアの赤き眼光が二つ、ガーデニアンを見ると気配を感じたか、銀オーロラが出現して消えた街の方を眺める。


『以前よりも魔力の質が変わったな。さらに進化……いや、『邪神化』して『神化』へ────ククッ……面白い方へ覚醒したか』

「笑いごとかまったく、いったい誰の所為であそこまで小僧が覚醒したと思っとるんだ。ぬしがあの小僧を追い詰めるような真似をしなければ、彼処まで行かんかったわ」


楽しげな赤き瞳にガーデニアンが鬱憤を吐くように口を開く。

後ろで見ていた学生から微かに息を呑む驚きの気配を感じたが、目の前の男に遠慮する気などないので、ジトとした目で睨んでいるとデアは、今度はこちらにも分かるように肩を竦めて見せた。


『あの時点でそこまで至るとは思わなかったからな。だから邪神化した聖剣(・・・・・・・)が出た時は心底驚いてその間に消し炭にされたが、そっちも相当苦労したようだな。寝返らせた蛇も使い捨てにしたようだしな』

「バイソンか……あの小僧を刺激させる為に用意したが、『神の盾(ウロボロス)』を扱い切れず代償ですっかり精神を喰われ尽くされておったわ。隠す為に無理矢理取り込ませたものだから仕方がないがのぉ」


始まりの原初『古代原初魔法(ロスト・オリジン)』。

そのどれもが魔力消費とは別に使い手に対価を求めて、扱い切れない者には大きな代償を求める。


帝国で保管されていた『神の盾(ウロボロス)』を蛇の異名を持った裏切り者のクルドル・バイソンが盗んだと思われているが、事実はただの生きた金庫番の役割だったのだ。


『そして“神の盾(ウロボロス)”までも使い捨てにするか……ハハッ! やることが相変わらずぶっ飛んでるな! オイ!』


しかし、こうして計画が達成した。

油断してやられてしまった手前、あまり文句を言うべきではないのはデアでも理解できる。


ただ、復活させて貰ったことは嬉しいことだが、こうも中途半端な姿で戻ることになると……。


『本来なら完全復活する筈だが…………あの小僧のチカラがそれだけ化け物クラスだったということか?』


文字通り塵にされた身なので実感も湧かないが。

と苦笑混じりに言ってデアは改めて、ガーデニアンと向き合うように台座から飛び降りる。


衝撃で再び黒き風が波動となって吹き出すが、ガーデニアンも学生も身構えていたので飛ばされず、向き合うデアへ視線を合わせた。


『歓迎するぞ《大賢者》。もしオレが世界を征服した時は、世界の半分をくれてやってもいい。また楽しい世界に帰してくれて感謝するぞ』


「フン、まさかこの年でお伽話に出てくる魔王の台詞を聞かされるとは……ま、考えておこう。わしはただ契約に従っただけだが、その言葉は有り難く受け取っておこう」


それまでワシが生きていればな。

誰にも聞こえない声音でそう呟くと、右腕のみ復活した黒き影と共に今度こそ王都から旅立つ。

そしてそっと胸元に触れて、年月が経つごとに弱々しくなる己の鼓動を感じながら、ガーデニアンは密かに嘆息したのだった。



◇◇◇



「は、はぁ……」


取り込んだ『古代原初魔法(ロスト・オリジン)』の反動に胸元を抑えるジーク。

以前もそうだが、連続で取り込むと反動も連続で襲い来るので堪えるのが大変だ。


(それに反動が最初に比べても大きくなってる。他の原初じゃそれ程もないが、やはり『古代原初魔法(ロスト・オリジン)』は衝撃が重い。取り込む度に異常に魔力が進化していく感じだ)


それに気のせいだろうか。

正気に戻ってから分身のシルバーを通して此処の戦闘に参加したが、魔力の質も量に対する操作に対しても違和感がほぼ消えている。


全力で戦ったわけではないが、暴走の気配が全然感じられないことにジークは、驚くべきか喜ぶべきかそれとも悔しがるべきか分からず、背筋にむず痒いものを感じていた。


「ま、まぁ、考えても、しょうがない、か?」


そしてどうにかシルバーの魔法を維持して息を整えると視線を向ける。

この場所に降りた際に気付いたが、驚くよりも困ったような苦笑した様子で見つめた。


「で、なんでお前がいるのかな。トオルよ」


うつ伏せて倒れる同級生に声を掛けつつ、異常がないか確認し終えたが。


「ちょっと待ってくれないか《無双》」

「……!」


今に斬り掛かりそうな、鋭利な気配を放つ女性に声を掛けて止める。

女性の視線はジークに向かってないが、その先の人物はジークが新たに身に付けた原初魔法『イリュージョン』で呼び出しているシルバー・アイズだ。


「彼とあなたの因縁については俺も少なからず知ってる。それに復讐を否定しようなんて思わないし止めようとも思わない。……だが、どうかここでは控えてもらえないか? あなたにとって長年のチャンスかもしれないが、どうか頼む」


姿は元々あるシルバー専用の武装術式(スタイル)をそのまま使用しており、本体がジークであること以外は、ほぼ本人同然の魔法だが、仮にやられてしまうと死ぬことはないが、その反動が本体にダメージとして返ってくるので、可能であれば止まってほしいのが本音だった。


だが。


「済まないが止めないでほしい。私も……この機会を逃したくない」


(師匠が必死に止めた理由がよく分かる。これは確かに厄介だ)


カチッと納めていた剣を僅かに抜き、凄まじい闘気を放ち返答をするアヤメにやはり無理なのかとジークは頭を悩ませる。

慌てて止めてきた師から助っ人がアヤメ・サクラだとは聞いていたが、実際ここまで恨まれていたのだと実感すると初めから交渉など難しいのか思い知らされるばかりだ。


(話には聞いていたが、王都にまで乗り込んだって話だし。やはり分身だけで行かせるべきだったか?)


直接の面識はなかったが、向こうからは相当恨まれていることは、風の噂や周囲の人間、特に倒れているトオルから聞かされていたので、可能ならこのまま会わずに過ごしたいと思っていたのだが。


(だが、戦闘になったらこっちには勝機はない。癒されたといっても、限界なんてとっくに超えてる。そんな状態でまだ慣れてない分身じゃ勝ち目がない上、下手したら術式を見破られて本体が俺であることもバレてしまう)


さすがに今の状態で勝てるなど思い上がっていないが、回避する方法も思い付かずいよいよ後がない。今さら彼を消しても彼女であれば見破ってしまう恐れがあり、余計に動くことが出来ずにいた。


「君が彼の知り合いなのか知らないが、私が見苦しく私怨で斬ると誓ったのは彼だけだ。邪魔さえしなければ君には何もしない」


抑え切れないと言わんばかりに目付きを尖られせて、闘気で揺らめく羽織をはためかせる。


「この時を待っていたんだ────止まれるものか……!」


そう告げるとジークが止めようと手を伸ばすよりも早く、背を向くシルバーに駆けて剣を抜いた刀身に死の風を纏わせようとした。








「ア、アヤメ……姉さん?」




が、そんな彼女の私怨は一人の青年によって見事に止まってしまう。

誰もが予期しない結果でこの場は収まることとなったが、まだ締め括れないのも事実。


『魔導杯』最終試合の前夜。

人々が眠りにつく中、長く長く続いた彼らの戦いは一時の休戦を挟んだ後。

中立な立場である《知将》の提案によって、事態は大きく変わる。



数時間後に行われる二人の超越者の決闘で決着を付けることとなった。


次回は1週休みで23日か土日更新の予定です。

シリアス展開から普通のバトル展開にする予定なので、少し楽な気持ちです。

なんか今まではあれこれ制限を加えてましたが、次は加減ほぼ無しです!

気持ちよく(忘れてた)試合を終わらせて、締めの章まで進みたいです。……ホント終われるかな(汗)


そんな感じで次週は休みとなりますが、次回の『オリマス』もよろしくお願いします。


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