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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いは覚醒する。
186/265

第18話 絶望の道筋。

何故かまだ過去話……。

おかしい! 全然進んでない!

ドクンーーッッ!!!!


『うっ!?』


帝天王の雷槍(インドラ)』の爆発に飲まれるデアを眺めた突如。肩を震わせたシルバーが膝をついて吐血すると、苦しげに胸を押さえ出した。


『ぐぐっ……!』

『シルバー!? ──ッなんだそれは!?』


その様子を見てギルドレットが声を上げるが、次の瞬間、魔眼で捉えたことで気付いたシルバーの魔力の異常事態に絶句。


まるで破裂寸前の心臓のようだ。異常な振動を起こしている魔力体を視てギルドレットはそう感じ、同時に今までにない程の無茶な魔力行使をしているのだと察した。


『魔力を抑えろシルバー! このままだと反動で死ぬぞっ!』


腹部の傷の所為で吐血してしまう中、声を張り上げるギルドレット。自分も死にそうなほど重体であるが、下手すればその身を今にも吹き飛ばしかねない少年を見過ごすなど、彼にはとても了承できないことだった。


『ま、まだだ……!!』

『シルバー!!』


だが、そんな危機迫るギルドレットから警告を跳ね除けてシルバーは立ち上がる。全身から張り詰めた空気を発して、白雷に飲まれるデアへ鋭い視線をぶつけて魔力を爆発。


『この程度じゃ、まだ足りない!!』


増幅された魔力によって膨れ上がった“蒼炎の剣”を弧を描くように振るう。膨れ上がった蒼炎から分裂して無数の鋭い弾が生成された。


その数はおよそ五百以上。

シルバーの単純な魔力操作しかしていない。加減が一切されていない“蒼炎の散弾”が彼の周囲を覆うように出現する。


『“龍炎の轟々雨(スプラッシュ・レイン)”』


一斉に雨の如く降り出し白雷の渦へ。降り出された“蒼炎の散弾”が地面を穿ち、衝撃で土煙を上げながら未だに放出する白雷へ集中放火させる。地面に無数の穴を開け渦を貫通して中のモノへすべの散弾の雨を浴びせていく。


そして白雷の渦とも混ざり合い。蒼炎の渦と白雷の渦が重なって暴れ回り続ける。


『領域……拡大……圧縮……!』


全弾撃ち終えたシルバーは次の一手を打つ。両手の二刀を地面に刺して手を合わせ両手の中心に魔力の凝縮。両手を開き中心に高密度の無属性の魔力を圧縮させた小さな球体を生成させた。



対人使用禁止指定魔法──『時空決壊爆弾(クラッシュ・コア)』。



これまでの大戦でも対人使用はしてなかった。禁術と呼んでもいい禁忌の魔法球。

手のひらに浮かせ構えると、ボールを投げるように渦に向けて放る。


『っ、こいつはヤバい……!!』


その異様に凝縮された魔力球体を視たことで気付いたか。ギルドレットが焦った顔で退避する。片翼のみであるが、残った三枚羽を器用に操作して攻撃範囲から脱出した。


そして退避する二人と入れ替わって『時空決壊爆弾(クラッシュ・コア)』はデアを包んでいる二色の炎と雷の渦に。────接触。


『弾けろッ!!』


直撃と同時に眩く閃光が上がる。

凝縮された莫大な次元破壊の力が解き放たれ、二色の渦を破壊して無属性の球体が膨れ上がった。



◇◇◇



『いい加減治癒しないと本当に死ぬぞ!!』

『はぁ、はぁ、そういうあんたはどうなんだ? 腹の傷もほっといたら危険だぞ』


新たに発生した次元の球体に包まれるデアに警戒しつつ、シルバーとギルドレットはお互いの傷具合を見て忠告し合う。


『生憎と回復魔法は苦手でな。“一体化”すれば回復力も上がるんだが、この状態だとな……』


そう言うとギルドレットは穴が開いている腹部から漏れている黒き霧を覗き込む。

手刀で貫かれたことで受けた傷だが、その際に手刀を纏って派生属性の黒きオーラが含まれていた。

貫いた際に残った黒き霧は傷口を蝕んで自然治癒を弱らせていた。


『オレは元々回復系がダメだ。できないことはないが、魔力の所為であんまり使えない。この傷レベルだと大して効かないさ』


同じく理由は異なるが、シルバーも使えないと血を吐き捨てて肩で息をする。

何度も殴られ、蹴られて骨や内臓がいかれそうになるほど痛め付けられた為、もうまともに戦える余力も残っていなかった。




そう、もう全力戦える程の余力は残されていなかった。



『“魔王の死滅腕(デーモン・ハンド)”』



だからこそ、大きく広がる次元球の奥から低く響いたあの男の声に、シルバーもギルドレットも背筋を凍らせる。そして疲れ切った肩に乗し掛かった重圧に押し潰され掛けてしまう。


『っ……!!』

『まさか……!!』


あり得ないと否定しかった。

だが、現実はあまりにも残酷だ。


球体を突き破るように巨大な黒色の腕が伸びくる。

まるで魔獣のような巨大な黒き手が包んでいる球体を掴み取ると、高密度に生成された球体を削り落としていく。


包み込んでいる球体が徐々に黒く染まっていくと、黒き腕は黒く染まった部分から全体まで喰らい付くように吸収して、────飲み込んでしまったのだ。


『クク……、オレにこいつを使わせるとは大したものだァ』


そして全身を濃い黒き霧の姿をしたデア・イグスが現れる。顔色は一切窺うことできないが、獰猛そうに口を大きく開けて楽しげに笑っているのは理解できた。


闇属性とは異なる危険な黒き霧。シルバー……そして見ていたジークも何が起きたかすぐに察することができた。


『あ、あいつ……!!』


(──っ【死属性】との“一体化”ッ。負の属性系最強で最悪と言われた属性をあそこまで完璧に制御を……!!)


そう。あれこそデア・イグスが異形、最強の生物と呼ばれた由縁。

基本属性とは別の派生属性。中でも最強クラスと呼ばれた五つのうちの一つ。


無の象徴である【虚無】────。


光が集う原点【星】────。


生者の滅する【死】────。


光と闇を統べた【時空】────。


大自然の元素を扱う【天地】────。


この五つが派生属性の最強格であり、扱いが困難かつ命の危険も伴う属性でもあった。


特にデアが扱う【死属性】は呪属性よりも危険であるが、それ以上にいつ使い手が死んでおかしくない属性なのだ。


死属性はその名の通り死を象徴とした属性。属性魔力を引き出すだけで相手を死滅させてしまうほど強力であるが、扱いを間違えるとあっという間に宿主を殺してしまう為、呪属性以上に“不吉な属性”と呼ばれていた。


(アレは俺でも扱えない系統の一つだ。死属性の属性魔力を出せないことはないが、コントロールがまったく利かないからな)


本来であれば強過ぎる属性魔力に肉体を消失してもおかしくないのだ。だが、デアの強靭的な肉体と精神はそれの力を逆に支配する。魔力操作技術も高いだろうが、それよりも彼の支配力が自身の属性まで掌握していた。


『実際に貫通できたか分からないが、実に良い魔法だった。続いてきた魔法もこいつがなかったら本当にヤバかったかもしれん』


『全部受け流したのか!? 化け物め……!』


(どお)りですんなり貫通できたわけだ、とシルバーは悔しげに吐く。

帝天王の雷槍(インドラ)』はシルバーが扱う貫通系の中でも最強クラスだったが、原初の斬撃も通さないデアの肉体を貫けるかどうかは賭けであった。


どうにか槍が届き疑いながらも期待して畳み掛けたが、どうやら見込みが甘かったようだ。


『く……そ』


突き刺していた二刀を構えてシルバーは立ち。ギルドレットも腹の傷を押さえながら翼を広げて立つが、両者とも身体強化で立つのが精一杯だった。



◇◇◇



(限界だな)


その様子を見ていたジークだけはこの後の結末も知っていた。

何故今になってこの時の記憶が蘇っているのか分からないが、目を逸らすこともできない以上、見届けるしかない。



彼が終わるその時まで。

そしてその時は、もうすぐそこまで来ていた。


『“死滅させる牙(デス・ヴァイト)”』


“一体化”を維持したデアが両手を構える。

全身が黒き霧化している為、実体なく流体的に変化する。


両手を巨大化させて腕を伸ばす。凶悪的な魔物の腕に変化して二人へ襲いかかった。


『っ! 下がれシルバー!!』

『ギルさん!?』


すぐさま剣でガードしようとしたシルバーだったが、彼の前に出たギルドレットに遮られる。完全な“一体化”は難しい状態だが、どうにか魔力を練って一部分のみの“金鳥化(ガルーダ)”に成功。


天の羽衣(アマノハゴロモ)”と防御を強化し黄金の鉤爪……“天墜・圧爪(サテライト・クロー)”で迎え撃つが。


『邪魔だァアアアアアアア!!』

『──ッッグァ!?』


身体レベルが限界のギルドレットでは一秒も保つ筈もない。

天墜・圧爪(サテライト・クロー)”で受け止めようとするが、巨大な死の牙の『“死滅させる牙(デス・ヴァイト)”』は黄金の鉤爪ごとギルドレットを黒き霧で押し出す。


『アアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』


死属性の霧が彼を蝕む。身体が死滅していく激痛に“一体化”どころか、身体強化も維持することもできず腹部の傷から大量の血が漏れ出した。


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