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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いは覚醒する。
175/265

おまけ編 過去の記憶と師の誓い。

お久しぶりです!

色々とありましたが、とりあえず生きてます。

急に休んでしまい本当にすみませんでした。



本編は6月からとさせていただきますが、その前のおまけ編となります。

まだまだ更新が遅いままになると思いますが、どうかこれからも『オリジナルマスター』をよろしくお願いします。


大戦が終結して約半年が経った聖国のラドラ村。


終結時は勝利の喜びと驚きからしばらく村全体で混乱していたが、今ではすっかり休戦時、いや、その頃よりも安心感に包まれている。


聖国全体でも戦争状態の緊張が収まり始めて、少しずつ他国との交流も増えていたそんな頃。


「たまには外に出ないと、やはり体に毒ですし損ですよ」


青き空と眩い太陽の光が射す林の中を歩き、横にある小さな川の眺める。

太陽の光と涼しい風を浴びながら、村の住人であるシィーナ・ミスケルが押している車椅子に乗る人物に優しく言うが。


「……そうですか」


茫然とした様子でジーク・スカルスは呟くだけ。


何もかも抜け切ったような脱力した躰で、車椅子に載っている彼の瞳は暗く光も失っている。


シィーナの言葉に返答はしたが、機械的な反応にしか見えない。


「はい、……」


その様子を見ていたシィーナの顔にも曇りが出る。

かつてはぎこちなくても笑みを浮かべていたが、それが僅か一年で出会った時以上に心を閉ざして────否、出会った頃以上に壊れていた。


彼が戻ってきたのは、一ヶ月ほど前。

大戦が終わってから半年ほど経ってからだった。


大戦終結後も連絡が一切なく、彼は空間魔法で帰還したが、突如帰って来た彼を待ちわびていた者たちが慌てて集まったところで、その様を気付き皆目を見開いて絶句した。


破れ切った白のローブを身に付けて、中の服もボロボロになっている。

さらに髪も顔も泥だらけで変装魔法でもなく、ジークは鎖が巻かれた大きな棺と共に帰還したのだ。



「師匠……」

「ええ、行きましょうか」


彼の小さな呟きにシィーナは頷いて車椅子を押して林の先で行く。


帰還した彼は今までにないほど酷く衰弱していた。魔力の影響で死にはしないが、肉体以上に心が弱り切った彼には、自力で立つ気力も無くなっていた。


「……」


車椅子で運ばれながら、彼は静かに目を閉じる。

その様子は後ろから押しているシィーナには横からでしか見えないが、横顔だけでもその疲れた様がよく分かる。


何も言うことが見付からず、シィーナは目的の場所までジークの椅子を押して行った。




「着きましたよ」

「ありがとうございます……」


着いた先にあったのは墓地である。

死んでいった村の住人たちは皆ここに眠っている。村から少し離れているが、それはスケルトンやアンデットの防止の為。精霊巫女のカグヤがいるので問題はないが。


そして複数ある墓地の一つ。新しく出来た墓の前にジークとシィーナは着く。


「……っ」

「……」


シィーナはさらに辛そうに目を細めて、茫然としたままのジークは視線を墓へと固定すると。


「……あ」

「っ、ジーク!」


手を伸ばして上体が前に出たところで倒れそうになった。

間の抜けた彼の声と焦ったシィーナの声が重なり、倒れる前にシィーナに抱き止められて難を逃れた。


「危ないですよ。まだ体の調子は戻ってないんですから無理に立っては」

「どうして、俺は……」


少しだけ叱るようにシィーナが言うが、グッタリとしてシィーナの腕で抱えられているジークは茫然と呟く。


「師匠」

「はい」

「俺は……」


後ろにいるシィーナを見ながら、掠れた声で尋ねる。

伸ばした手は墓に刻まれた名に触れて、まるでその者にも尋ねているようにジークは口にする。


「間違ってたんですか?」


そして石で出来た墓にはジークの大事な人物。

────アティシアの名が刻まれていた。



◇◇◇



「これ以外に、方法はないようですね」


村にある社へやって来たシィーナは禁忌に触れようとしていた。

精霊巫女であるカグヤに無理を言って、設置されている祭壇を利用しようとしている。


床に置かれた沢山の研究資料。そして用意した魔法紙に描かれた魔法陣の周りには触媒らしき物が複数あり、その中心には属性の色が一切ない無機質な魔石が置かれていた。


ジークの魔力が込められた魔石。

大戦の中心地でシィーナが()み上げた物だ。


本来は触れてはならないチカラ。

だが、深慮深く考えた結果、シィーナはこれを利用することを決めて、仲間にも内緒で独断で動くことにした。

祭壇を借りたカグヤにも上手く言い含めて、真意までは語らなかった。



「───『精霊界を超えて』『神界へ告げる』」


これは触れてはならない領域。

触れてはならない世界だ。


「『七つ王を結びて』『束ねし創造の神へ求める』」


失敗すればタダでは済まない。

最悪の場合、ここで死ぬかもしれない。


「『呼びかけに応えよ』」


魔法陣に置かれた魔石が発光する。

魔法陣も光り出して光の粒子となって社を満たす。


扱いがほぼ困難なジークの魔力だが、それは生身で行う場合だ。

長い研究の末、しっかりと機能された祭壇と適した魔法式が刻まれた魔法陣を介せば、ある程度の制御ができることは判明した。


「『神意を示せ』」


これはジークは知らないことだが、ジークが使用している魔道具『神隠し』には、放出される魔力を測定する機能も付いている。


そして帰還したジークから貰った『神隠し』の調べたことで、一年間の彼の魔力変化も測定することに成功。


シィーナはそのデータを元に可能性がもっとも高い祭壇を利用すること決めたのである。



「『神界神託(オラクル)』」


彼女は神の世界に続く扉を開ける。


体の力抜けて魂だけとなって世界を抜けて精霊界へ。

そして果てしない精霊界を超えて行き、その先へと進み。


押し返されそうになる波を掻い潜り────。

数え切れないほどの進入を拒むの大きな壁も抜けて────。








「ようこそ、神の世界へ」


辿り着いた先で彼女は出会う。


何もない白き世界。

どこまで先があるのか分からない、無限にも思える空間の中。


「あなたのことは視ていましたが、さすがにここまで来れるとは思ってませんでした」


まるで聖女のように佇む少女。

白のワンピース姿で自分や変装した弟子に似た銀の髪を肩まで伸ばしている。


「本当に何年振りのことですかね。いえ、私がここに住むことになって以来、人間の来客は皆無でしたが、こうして会話するのは家族を除いたらあなた一人だけです」


しかし、目立つ銀の髪も彼女の存在感か、それともこの白い空間の所為か、色素が薄く白く見えてくる。


表情も読み取れ切れない。

光がかかっているわけではない。ただ認識が霧がかかっているような感覚である。


微笑んでいるようにも見えるが、無表情にも見えなくもなかった。


だが、逆にその謎めいた存在感が彼女の正体を教えているようにも思えた。

シィーナは数々の試練を超えたことでの疲労で、意識が落ちそうになっていたが、シィーナは意味もなく乱れているような呼吸を整えて口を開いた。


「貴方が神なんですか?」


魂だけの存在となっているシィーナは汗をかくことはない。

だが、目の前の存在に上手く認識できず、幽霊と対話しているような感覚に冷汗が出てきそうになっていた。


本当に神であるのなら、知り合いの六王どころではない。

同じくらいに立つ精霊王たちすらも束ねた真の王。否、創造の神である。


「ええ、まず自己紹介からですね」


笑っているかも認識しづらい。

怒っているのかもしれない。そう警戒しつつシィーナは向き合う。




「初めまして私の名は───」



ここからシィーナ(彼女)(彼女)との対話が始まる。

そうして明らかとなる彼の秘密。


身寄りもなく最初から一人で生まれてきた意味。


血塗れの大戦の経験したことで彼が得たものと失ったもの。


壊れてしまった彼に何ができるか、何が守れるのかを。



彼の憎しみが世界を殺すのか、それとも彼が───。



あらゆる可能性をシィーナは神との対話でなんとしても導こうとする。たとえ無茶なことだとは分かっていても、彼女は諦めようとはしない。



弟子であり息子とも思っている彼の救いを、彼女は求め続けた。


その先で自分が死ぬことになったとしても。


次回の更新はまだ未定ですが、6月に出せれるようにしたいと思います。

進行ペースが本当に遅い作品ではありますが、なんとか無事に終わらせれるように努めたいと思います。

どうかこれからもよろしくお願いします。

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