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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いと魔導杯【中編】。
156/265

第16話 破壊者同士。

場所はまた代わり、会場内にある会議室。

いや、元会議室というべきか、入ってきた女騎士によって、崩落地へと変えられてしまった。


その女騎士は上から下まで甲冑に身を包んでいるが、その声、その汚れのない特注そうな白き鎧を見れば、誰なのかは顔を見なくても分かる。いや、分かってしまう。


「動くな貴様ら」

「いや、動けないから……」


と、部屋にいる者たちに警告する女騎士に小言を投げるのは、瓦礫に埋もれた状態でいたジークである。だが返事して早々、カトリーナの登場と目に入る瓦礫に顔を覆いたくなった。


(はぁ……俺の努力が)


室内を壊さないように加減をしていたのが、この結果である。

現れた女騎士のたったの一撃であっさり壊されてしまう。崩壊レベルでいうなら、ジークが『神隠し』での広範囲攻撃をした時と同じレベルである。ふと自身の破壊者の二つ名を思い出すが、その称号は彼女にこそ相応しいと言いたくなった。


「ん……お前がそうか」


カトリーナは一切驚きの顔を見せず、当たり前のように声をかける。埋もれている状態にはとくに触れず、ジークがシルバーであることを前提の顔で話しかけた。


「久しぶりだなシルバー。牙は研いでいたか?」

「牙って魔法ですか? それはそっちの方でしょう。再会早々、いきなり気圧の咆哮とか鬼ですか、室内で放つようなものじゃないでしょう。お陰で《淵天》が解けてしまった」


既に正体がバレているが、ジークも驚きはしない。

原因となる要素など深く考えなくとも多々ある。さっきの対戦が原因かもしれないし、ティアが話したかもしれない。


(ま、話したのはティアだと思うけどな。これまでの対戦の件や剣のこともあるし、もう誤魔化しきるのは無理だったんだろうな)


一々動揺せずジークも下らない疑問など流すことにした。


「エン、テン? なんだそれは? 融合属性か?」

「まぁそんな感じです」


たった今の気の衝撃波によって、融合も解けてしまった。

襲ってきた衝撃の為に障壁として張ったが、同時に解放しようとしていた所為で、すべて放出し霧散してしまったのだ。


「けど、これで敵も全滅したか……よっと」


改めて無属性の身体強化を発現させて、瓦礫から起き上がったジークが周囲を見る。


崩落した惨状に目を逸らしたくなったが、逸らした先も同じ光景なので意味がなかった。諦めて被害の状況を確認することにした。


「あの老害は別のようだけど、他の奴らは今ので倒れたようだ」


リヴォルトの配下の者達は今の攻撃で気絶しているか、瓦礫の下敷きとなって痛そうに動けずにいたのだ。


「いて……」

「く、くぅ……」

「う……」


どうやらカトリーナの一撃で死んでしまった者はいないようだ。

奇跡的に加減されたのか、それとも単にAランクに近い強さを持つ者たちだったからか。どちらにせよ良い結果であったと安堵するジーク。


(重傷者もいるようだが、すぐにくたばることはなさそうだ)


弱い者であれば確実に死亡していてもおかしくない一撃であったが、配下の者達に関しては戦闘不能にするだけで被害は済んだ。建物の損害は別としてだが。


ただ、それとは別に気になることがジークにはあった。


「外にも奴の部下が沢山いたけど、どうしたんです?」

「捻り潰した」

「…………なるほど」


即答するカトリーナに少し間を空けて納得するジーク。

よく考えたらこの人もSランク超えて、SSランクに近い実力の人だったと思い出したジーク。大戦時には王族の中でも最強の団長騎士として、他の国からも警戒されていたのだ。


(まぁ間近でよく見ていたから。あの覗き魔も懲りずに度々半殺しにあっていたな)


少々血生臭い過去を思い出すが、振り返ってもロクなものでもない。

思考を切り替えて瓦礫の所為でホコリ丸けになった服をはたきつつ、『透視眼(クレアボヤンス)』で外の様子を見渡してみる。


「外の守りは万全みたいですね」


倒れている者たちにはあまり構わず、控えている人たちの数と魔力体を見てみること理解するジーク。

分からない者も混じっているが、それ以外は魔力の感じからして知っている者たちのようだと口にする。


「ああ、ティアもいる。守りは万全だ」


カトリーナの言葉で改めて外にいるのがティアやフウ、リンなどであり彼女の指示で待機していることを認識する。

他にも沢山の残骸が転がっているようだが、そこに言及する必要はない。これで彼女たちがいることで誤魔化しもしやすくなったのだ。


(ここからは多少の無茶をしても大丈夫そうか。……もう壊れているし)


と、ジークは破壊者であるカトリーナを横目で見る。

破壊者は愛用の大剣を持って、猛々しい気のオーラを発している。威圧感もある雰囲気であるが、ジークとしてはできれば部屋から出て行って欲しい気持ちであった。


(ティアの奴ならまだ加減をして戦ってくれるが、こいつはな……)


また思い出したくもない記憶の扉が起きそうになるが、そこはしっかり押し留めておく。

正直不安しかないが、せっかくの増援だと思うことにしてカトリーナに並ぶジーク。


その時だった。


「ウッがああああああああああ!!!!」


ジークよりも深い場所に埋められていた男が、野生の雄叫びと共に出てきたのは。



◇◇◇



「ガァァァァァァァァ!!!!」


雄叫びを上げて『屈強猛烈(インテンシティ)』を纏い迫ってきたリヴォルト。

もはや大型の獣のそれに近い突進であるが、ジークもカトリーナも焦りはしない。


「出たなリヴォルト! 『撃滅』っ!!」

「老害はとっとと失せろ! 『硬土の加重弾(ブラウン・シェル)』!!」


その接近に対して袈裟斬りの気圧を放つカトリーナと、専用技の圧縮弾を打ちつけたジーク。

連続攻撃でも広範囲攻撃でもない手始めの一発であるが、それでもかなりの密度で込められた一撃。


「カッ!!」


だが、その二人の技にリヴォルトはまったく臆さず、守りに入ることもせず纏う無色のオーラのみで弾いた。

先程の攻撃で頭にきているのか、その勢いで血走った眼をカトリーナに合わせた。


「元々目障りだったんだ。消えてもらうぞカトリーナ!!」

「やってみろ!! 私は逃げんぞマスター・リヴォルト!!」


自身を砲弾にして再び駆けるリヴォルトに迎へ撃つカトリーナ。

先程のように無色のオーラを纏わせて襲いかかるリヴォルトに、カトリーナは構えた剣に気を込み攻撃準備を整える。


「ん? お、おいカトリーナ?」


彼女の様子を見ていたジークも気付いたのか、その剣を見て大きく目を見開く。

焦った様子で声をかけようとするが、その声は届かず彼女が纏う空気がより鋭くなっていった。


「来いリヴォルト!!」


両手で握る大剣にさらに莫大な気が注がれる。

気の使い手として最高レベルのコントロール技術と、気の保有量を誇るカトリーナ。使い手として技量は、同じ気使いでもあるシオンやトオルなどは当然。純粋な気使いであるリンであっても彼女には到底及ばない。


「くらえっ!」


その彼女が放つ巨大な一撃。

気を込めた大剣の刃から不透明な輝きが発して、一気に大きくなっていく。


そしてその光が最高レベルに達したところで、カトリーナは砲弾ように迫ってくるリヴォルトを真っ二つにしようとその大剣を、


「馬鹿が!」

「────っ!」


振り上げたところでジークの横蹴りが彼女に入った。

あくまで彼女を飛ばすつもりの蹴りであり、それほどダメージはないが、その結果、無理矢理リヴォルトの軌道から逸らされる。狙いを定めて地を蹴っていたリヴォルトはそのまま彼女が立っていた地点を通過して、少し離れた場所で止まった。


「『硬土の加重鎚(ブラウン・ハンマー)』!」


そこをジークが土属性の褐色のオーラでできたハンマーで仕掛ける。

止まったばかりでまだ動かないでいるリヴォルトを押し潰そうと叩きつけた。


「フッ!」


振り下ろされるハンマーにリヴォルトは拳を打ち上げる。

加減のないジークの攻撃であるが、強化された拳は簡単にハンマーを砕いてその衝撃までも押し返してみせた。


「頑丈だな」


衝撃を押し返されるが、ジークも身体強化で粘り追加攻撃で『硬土の加重弾(ブラウン・シェル)』を数発撃ち込む。少しでも動きを封じるものだった為、攻撃がすべて弾かれてしまったがどうにか押し留めた。


「何のつもりだシルバー。私達の敵は一緒だと思ったが、それは勘違いか?」


横腹を蹴られ一度は転がるカトリーナだが、すぐに上体を起こして蹴り飛ばした男を睨んだ。

返答次第ではタダでは済まさんぞ、と言いたげな顔で殺気を放っていた。


だが、


「何のつもりだとか勘違いかとか、それ以前に─────今何しようとした?」


殺気を向けられながら頰をヒクつかせ、ジトとした目でカトリーナを睨み返すジーク。

殺気を向けられたことにイラっとしたのか、声音に怒気が含まれているように聞こえた。


「は?」


まさか睨み返されるとは思ってなかったカトリーナ。

しかも声から少なからずジークが怒っているのが分かり、若干弱い声音で恐る恐る答えた。


「え、ええと……『大波』か、また『咆哮』でも放とうかと」

「こ・こ・会・場・をだッ!! さっきもそうだが、観客に死人出させる気か、この脳筋王女団長がッ!?」

「フグッ!?」


技名を口にしてすぐ、ジークからの拳骨がカトリーナの頭部に落ちた。


次回の更新は来週の土曜日です。

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