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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いと魔導杯【前編】。
128/265

第3話 違和感ある試合とその訳。

修正:報告をいただいたので、少し修正を行いました。・・・・脱字が多くてすみません

「最初の相手は帝国か」


試合の時間となってからしばらくして、ジークの初試合が行われる。

対戦相手は帝国のオータン学園の二年の生徒であった。


「勝ちなさいよジーク。アリスも見てるから、カッコ悪いところは見せないでよ」

「お前なら楽だろうが、……オレとやるまで負けんなよ」

「まあ、頑張ってね?」

「あははは……了解」


サナとトオル、ミルルからの激励の言葉を受けて取り、ジークは苦笑いしながらも対戦エリアへと移動していた。……さりげなくアイリスが来ている情報を耳にして、口ごもりそうになったのは内緒である。


「……ん?」


ふと視線を巡らせていると遠目ではあるが、観戦席方面から知っている顔がチラホラ窺える。


(やっぱ知り合いがいっぱい居るな……げ!)


特に目に映った光景にジークはしかめ面をして、つい素早く逸らしてしまう。


(ティアがいるのは分かっていたが、陛下と騎士団長のカトリーナ王女もか……改めて思うとやっぱりヤバイというか、知っている面子ばっかだ)


というか暇なのか、国王と騎士団長さん。とジークは心の中で呆れてしまう。

あの場にはティアもいるが、あの二人に比べればやや立場というか、肩書きが大きいのである。


国を導いていく国王陛下と王女であり、さらに王都の騎士団長である長女。……どれだけ多忙な日々を送っているのか、頭痛に見舞われそうなのでジークは考えることすらしないが。


(団長はマズいかもな。あの人の野生の勘は同じタイプのリンより厄介だ)


国王の方も決して油断ならないが、今更迷っている訳にもいかない。……昨日の深夜に起きたことが脳裏に浮かんでみせた。



◇◇◇



「聖国も落ちた者だな? こんな貧弱を大会に出させるとはな」

「……は?」


対戦エリアへに移動して審判の合図を待っている中、対戦相手である男子生徒から蔑みある声音で、そんなことを言われてしまったジーク。……うっかり半眼で睨んでしまった。


「魔力が全然感じない。とんだ期待外れだ」

「? ─────ああ、そいうことか」


言われてみて納得するジーク。

……どうやら魔力が感じ取れない所為で、全然無いのだと思われているようだ。ジークは納得顔で頷きながら、同時に相手の力量が把握できてしまった。


(これは意味ない試合になりそうだな……)


魔力に関しては二重の隠蔽をかけている為、普段よりもバレにくいかもしれないが、それでも全然感じ取れない時点で警戒すべきであろうと、ジークは呆れてしまう。


(……けど最初だしなぁ。昨日の件で若干神経質になってるから、肩慣らしがしたい……)


適当に片付けることも選択に入れていたジークであるが、昨日の夜の一件を思い出して普段より神経質になっていることを気にし出している。……その所為もあって朝盛大に寝坊してしまった。


(うん、闘技場の結界でダメージ変換されてるだろしな。……まあ死なないだろう)


怪我などに対するダメージを精神ダメージに変換する結界。

ジークは頭の中に結界のことも入れて、どうせ倒すのであればと、……ニンマリと笑みを浮かべて頷いてみせた。


「なんだその笑みは?」

「別にいいんじゃないか? さっさと始めようって」

「……では、そろそろ時間なので始めます」


睨みつけてくる相手に笑顔のまま応えていると、審判の男性が手を上げて合図を送る。……手を振り上げたことで互いに構えるジークと対戦相手。


「それでは……始め!」


審判が声を上げると開始し共に手を振り下ろされた。



◇◇◇



「……なんのつもりだ?」

「ん、なにが? 試合してるだけだが?」


試合が開始されてしばらく。……地面に倒れたジークに乗しかかる相手がいた。

試合の状況だけでいうと、対戦している相手の方が優勢であったが……。


「ふざけんなよ! 何が試合だ!」


だが、優勢であるはずの相手の方は顔を真っ赤にして、怒声と共に魔力が込められた拳をジークの顔面に振り下ろされるが……。


「ふっ!」

「っ! こいつ……!!」


相手の拳はジークの顔に直撃される前、ジークが体ごと地面を背にして滑るように右回転。その流れで手で相手の脇腹を、片足で足を持ち上げて乗っている相手を横倒しして、その隙に立ち上がってみせた。


「よっ……と」

「く! 貴様ァ……!!」


ジークに遅れて相手も立ち上がるが、その顔は先程以上に赤く憤怒で歪めていた。……だが、ジークの方はウムウムと頷いてみせ、コキと首を鳴らして小さく呟いてみせる。


「……もう十分かな」

「なに!?」

「悪いな付き合わせて─────よっ!」


激情の中、困惑した様子でいる相手を無視して、地を蹴り相手に向かって駆け抜ける。


「は、はやっ────」

「遅い『硬土の加重拳(ブラウン・クラーク)』」

「がバッァアアアアアアーーー!?」


間合いに入ったところでジークは敵のアゴに狙いをすませて、拳を振り上げてみせた。


土属性の専用技(スキル)の拳は、相手のアゴを射抜くと、ジークの運動エネルギーと全体重を拳に加わる。……金属をハンマーで打ったかのような激しい金属音と一緒に……相手の体は高々と大空へと飛んで行った。


……その後、飛ばされた相手は墜落するように降ってきたが、審判員の浮遊魔法で無事に降りてきた。……ただ相手の選手は失神して、盛大に漏らしていたようだが。



◇◇◇



「お前……」

「アハハハハハ、……反省はしない」

「いや、しろよ!!」


試合が終わってすぐ、早速トオルに捕まって拠点まで戻らされると、ジークは正座させられトオルに睨まれていた。……ついでにガーデニアンとミルルも来ている。サナの方は試合中でこの場にはいなかった。


「最後のアレは……まあ、お前らしいから特に言わないが、最初なんであんな戦い方したんだ?」


アレとは間違いなくジークがやられていたことだろう。

ミルルも同じ気持ちなのか、不思議そうな顔で頷いている。……ガーデニアンだけは理解しているのか、得心顔で彼を見ているが、何処か苦い顔をしていた。


「あ、あれは」


正直説明は不要な気もするが、このままでは納得できないといった顔をしている二人の相手をする方が面倒なので、さっさと話してしまうことにした。



◇◇◇



「練習?」

「そうだな。あの戦い方は見れば練習だと分かる」


貴族席の方でジークの試合を見ていたリナは、トオル達のように疑問符を浮かべていると、サナの父でもあるゼオが娘の疑問に答えてみせる。……少々理解に苦しむ表情をして。


「あのスカルスと名乗る青年、実は相当な使い手ではないか?」

「う、うん、そうだけど……どうして分かったのお父様?」

「戦い方さ。あれは相手を強者と認識して戦ってるんじゃない。無理矢理、相手を強敵として戦ってるんだ」


試合場から去っていくジークを眺めた後、ゼオはリナの方を目をやる。


「ワザと自分が不利なるように戦っている、相手の土俵の上で」

「それが練習? でもそれになんの意味が……」

「慣れる為、だろうな。……恐らくお前が思ってる以上に実力が違い過ぎるんだろう」


父の説明を聞いてリナも困惑しながらも、なるほどといった顔で頷く。

確かに大会前の模擬戦では、ジークは圧倒的な勝利を掴み取っていたが、劣勢に強いられてるところは見たことがない。……唯一シオンとの対決で危うかったそうだが、それ以外では一切なかった。


「……ねぇお父様、お父様から見て先輩ってどれくらい強いと思う?」

「……」


以前から気になっていた疑問だが、ジークはそのリナの想像を何度も超えていった。……なので元戦役者でもある父であれば、分かるかもしれないとリナは尋ねてみたが。


「今見た程度では想像出来んな。……だが確実にSランクはあるな。噂を聞いてみた限り」

「噂?」

「学園で行われた予選会さ。……聞いたぞ?」


父が聞いたという予選会とは、恐らくミルルに化けた例の謎の女子生徒の参戦であろう。


あの戦いで彼の学園でのイメージは、大きく崩壊したのだ。

そして衝撃の事実となって生徒を通して、街まで広がっていった。……その件をジークは知らないが、明らかに好奇かつ視線が増えている。


「……知ってたんだ」

「話だけだが、どちらにせよ。彼の力量は私でも正確には測れんよ」


現役時代は《金狼》と呼ばれた父であっても、答えることができないジークの底。好奇心旺盛なリナはますます興味をそそられたのだった。



◇◇◇



「……」

「ど、どうしたんですか姉上?」

「ティア、お前は何も感じなかったのか?」

「感じたって、何がでしょうか?」


一時とはいえ騒然となったジークの試合をヒヤヒヤとした様子で見守っていたティア。


そんな中、同じく観戦していた姉のカトリーナから訝しげに尋ねられて動揺してしまう。……控えているフウも心なしか眉を固まっている。


それよりも姉からの言葉である。

ティアは何か嫌な予感を感じてしまう中、カトリーナは父である国王に顔を向ける。


「……そうか、ならいい。─────父上」

「ん、なんだ?」


こちらも面白く見ていたようだが、カトリーナほど何かを感じたようには見えない。……単に先程のやりとりから復活できてないだけかもしれないが。


とにかくカトリーナは父に対して、ある許可を求め出した。


「ただいま試合をしたウルキア学園の生徒情報を調べたいのですが、構いませんか?」

「っ!」


予感が的中してしまった。

姉の言葉にティアは、息を呑んで身を縮めそうになる。


「ウルキア……リグラ殿の学園か。……構わんが、リグラ殿が許可すればだぞ?」

「はい、それで構いません」


この会話を聞いて、不覚にも頰を引きつらせるティアだが、その合間に厄介な話が進んでしまった。

……これは由々しき事態である。


(これはマズイです。姉上がジークを疑ってます)


勘の鋭い姉が動くとなれば、色々と露見してしまう可能性が非常に高い。

何故ならカトリーナは王都の騎士団長であり、総団長との繋がりを持っている上、ジークのかつての仲間の一人でもあるギルドマスターのガイとも知り合いであるのだ。


(それにガイ様もゼルダード様も試合を見ている筈。たまたま今の試合を見てなくても、このままトーナメントが進んでいけば……)


必然的にジークの正体が明らかになる。

ティアはそんな割とすぐ起こってしまいそうな未来を脳裏で浮かべて、自分に何かできないかと密かに頭を回転させて、必死に模索するのであった。



◇◇◇



「予想通り、やらかしたな」

「不謹慎のんバルト」


一般席で同じくジークの試合を試合を観戦していたバルトが呆れた口調で呟くと、カムが不機嫌そうに注意している。


しかし、内心はバルトの言葉を否定しきれないようだが。


「王族席あたりが騒がしい気がするな。……ギルド方面はまだのようだが」


視線を巡らせて王族席を見たあと、ギルド関係者が座っている席に視線を移して見るが、そちらの方はそれほど騒ぎにはなってない。

知り合いであるガイも特に気付いたようには、バルトには見えなかった。……あと幸いにも総ギルドマスターは来てないようである。


「時間の問題だな。マジで」

「……」


思ったことをただ口にするバルトに対して、ジークを心配しているカムの表情に焦りの色が浮き出していた。


(坊やはいつも無茶で無謀に見えるけど、何かしら必ず対策を打ってる筈のん。……けど、もしそれでも補れなかったら)


あまりに不利なこの会場というか街内では、無敵に近い彼でも万が一のリスクがあるのだと考えてしまうカム。


(最悪の場合は頼むのん、シィー!)


もし彼が窮地に立たされたら、助けられる人間がいるとすれば、それは彼を一番に知っている彼の師以外にいない。


普段は呑気で全然頼もしくない彼の師に、今回ばかりは期待せずにいられなかったカムであった。












────────そんな、様々な者達の意識が交錯する中、


「見つけたよ。シルバー」


彼の正体を見破ってみせた者が現われた。


次回の更新は来週の土曜日です。

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