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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いと魔導杯【前編】。
125/265

第0話 もう一人の超越者と侵入した謎の魔法使い。

新章突入です。

辞典も更新しました。

今日もギルドレット・ワーカスは女性にフラれっぱなしであった。


見た目は二十代後半の茶髪の男性。整った顔立ちに合ったグレーのジャケットを着ているので、モテそうにも見えるが。


一人目。二十歳前後の旅の女性。


「そこのお嬢さん! オレと付き合ってください!」

「え、ムリです」

「ぎゃふん!?」


何の前ぶれもなく告白して見事に撃沈。


二人目。通りにあったカフェテラスで読書を楽しんでいた女性。


「ヘイ! 綺麗なお姉さん! 今からオレとお食事でも!?」

「お断りします」

「がはっ!?」


パラとページをめくって全く見向きされず撃沈する。


三人目。鍛え抜かれた冒険者の女性。


「お、お茶でもどうですか!?」

「嫌だな」

「ノォ!?」


自分より男らしく断れて撃沈。さらに他の女性に逆ナンしにいって、上手くいっているのを見て号泣。……そっち系の女性であったようだ。


四人目。街で見かけた───以下略。


「お、オハシデモ?」

「生理的に無理」

「ナアアア!?」


ゴミのようにあしらわれる。


五人、六人、七人、八人───────…………。



「グスグス……! チキショウォ……!」

「懲りねぇな旦那」

「うっせー」


酒場でヤケ酒するギドレットに、店の亭主のおじさんが苦笑いで対応する。


これはいつものことであった。


エリューシオンが誇るSSランクのギルドレットは、同じランクのシルバーと違い普段から皆にフレンドリーで、とても大物には見えないのだ。


接し易さではシルバーよりも上で、人としても信頼できる。……女性問題がなければ。


「それでも朝からずっとですぜ? 少しは控えたほうが……」

「これから忙しくなるんだよ。今のうちに飲んでないとしばらく、たらふく飲めねぇからな」


ギルドレットが言いたいのは、おそらくもう時期始まる学生の大会、魔導杯のことであろうと理解する店長。


沢山の人が集まる王都エイオンだが、このイベントある今の時期は通常の倍以上の人がこの都市に集まってくる。


常識外れの監視網を持つギルドレットであれば、たとえ本人が嫌がっても国王陛下直々の命令が毎年くるので動くしかないのだ。


「少しずつじゃダメなんですかい? というか以前、ああいう扱いも良いって言ってませんでしたか?」

「今は女性肌が恋しいんだよォォォォォ!!」

「知りませんって……。娼婦の店に行ったら────すんません失言でした」

「謝るなああああああ!! 余計に辛くなるわァアアアア!!」


心の奥にある嘆きを吐き出すように叫ぶギルドレット。


実は彼は王都だけでなく、聖国にある大半の娼婦────オトナなお店に出入り禁止されている。


理由は色々とあるが、禁止令を出したのは密かにギルドレットに恋している第一王女(・・・・)であるが、ギルドレット本人は自分の評判をこれ以上落とさないようにと国王陛下が指示したのだと思っている。


あと第一王女の好意についてまったく気づいていない。


そして側に居ずらく店長は、そろそろ昼であることを理由に、客も増えてくると調理の支度をしにキッチンのある奥へと逃げて行った。


「たくっあのオヤジは……────ん?」


と不貞腐れているギルドレットであったが、ふいに彼の全てを見渡す監視の瞳(レーダー)が何か反応を示した。


(なんだ? 今何か眼に映った気が……)


酒を飲みながらも思考は冷静なギルドレット。その場で眼を凝らして自身の魔眼(・・)能力で視野を広げて、反応があった街の一ヶ所に集中する。勿論他の監視も手を抜かず。


(……特に変わった様子はないな)


しかし、引っ掛かった範囲に眼を飛ばすが、学生達が歩いてるのが映るだけで、何か変わった様子もなく怪しい箇所も見当たらなかった。


(気の所為か……? ───?)


考え込んで集中監視を止めようとしたところで、視界に入る学生達が入る宿の中に興味深い人物を見かけた。


(《妖精魔女》……。珍しい、冒険者として引退して以降王都には立ち寄らず、ずっとギルドマスターとして一つの街で留まっていた彼女が……)


彼女を呼べれるとしたら陛下や総団長か彼が超・苦手とする騎士団長。王都ギルドマスターか総ギルドマスターぐらいである。


(けど、どうして彼女が学生が泊まる宿に……ん?)


そうして監視していると部屋の中へ学生らしき、男子生徒が一人入ってきた。


(まさか逢引じゃないだろうな?)


その光景を見て冷や汗を掻くギルドレットだが、ふとその学生の方を見ていると。


(ん? んん?)


何か引っ掛かる物を感じたギルドレット。だがそれが何なのか分からず、困惑した様子で観察を続けてみる。


(この学生……なにか変だ。というか、この妙な感じ……何処かで?)


記憶の中で引っ掛かる物を感じるギルドレットは、眉間を寄せて自身の記憶を手繰るが、なかなか思い出せない。


(何してんだろあの旦那は……)


ただその際、周りから見たら何かウンウン言っているのかと、変人を見るような目で見ていたが。……店の亭主が不審そうに目を向けていた。


(う〜〜ん? なんかモヤモヤする。───!)


悩んでいたギルドレットであったが、そんな彼の監視網の中でまた別の気配を────だが、今度のは先程とは明らかに違った。


ギルドレットは悩むこともなく立ち上がってみせた。


「え、も、もうお帰りですかい?」

「ああ、───ちょっとお呼び出しだ」


戸惑う亭主に早々に勘定を済ませるギルドレット。店を出てすぐ捉えた相手を逃さないかのように引っ掛かった方角を見上げて、眼を凝らしたまま飛び立った(・・・・・)



◇◇◇



「懐かしいですね。エイオン」


体を全体を覆う白いフードを身に着けた、その男性は人混みを避け王都エイオンを見渡せる程高い─────王城の頂上で懐かしむように街並みを見渡していた。


「四年ぶりだ。……ここに帰ってくるのも」


フードの隙間から見える白い髪を風になびかせて、男は真下の王城に視線を向けた後、少し離れた場所にある闘技場─────もうじき始まる魔導杯の決戦地を一瞥していた。


「これも何かの縁ですね。でももう止まりませんよ」


包帯で包まれた手を伸ばし、何かを掴み取るかのように握り締める男は


「フフフ、もう来ましたか(・・・・・・・)……。随分と早い到着ですね──────《天空界の掌握者(ファルコン)》」

「何者だ? お前」


いつの間にか背後で腕を組み立っていたギルドレットに男は体を向けようとはせず、横目で見据える。


すぐにでも仕掛けるかと思えば、動こうとしないギルドレット。彼の瞳に映るのは楽しげな目の前の男の眼。どこか楽しそうに嬉しそうなその瞳を見て、只者ではないと彼は直感し、不用意に動こうとはしなかったのだ。


だが、動こうとしなかった理由は他にもあった。というよりももう一方の理由が大きかったのだ。


「来るとは思ってましたが、予想以上に早かったので、少なからず驚きましたよ。流石は超越者(SSランク)の冒険者だ」

「いいから質問に答えろ。お前は何者だ。どこから出て来た?」

「質問が二つになりましたよ? フフフ、ただの旅人ですよ? 私は」

「それで納得すると思うのか? オレの監視網をすり抜けて、王城のてっぺんで街を眺めるとか何処に居るんだそんな旅人が」

「ここに?」


茶化すように自分を指す男に、眉間にシワを寄せて睨むギルドレット。


やはり只者はない、自分の殺気を浴びても平然とし飄々した態度でいる目の前の男に、ギルドレットはさらに警戒レベルを上げていつでも狙えるようにと、構えを取らないまま攻撃体勢に入った。


「ここで【翼】は出さない方がいいですよ? 唯でさえここは王城です。万が一王族に怪我人が出ては、貴方も困るでしょう?」

「……ちっ、気付いてたか」


手玉に取られた気分になり、言い返そうかと思うギルドレットだが、見破られた上、改めて場所が王城であることを認識し、舌打ちとともに攻撃体勢を解除してしまう。


場所が王城でなければ問答無用で、仕掛けてたと思われるギルドレットだが、やはり第一に護るべきは陛下を含む王族達だ。


一応王城には特別警護なる王城に付いている専属魔導師や総大将を含む団長、エイオン騎士団が警備している。


だが、それだけ警備が厳重である王城の上で目の前の男は平然と立っている。実力が未知数である以上、ここで相手をするにはリスクが大き過ぎた。


なによりもう一つの理由が彼に戦うなと、警告しているように思えてしまった。


「懸命な判断です。私もできれば王族とは敵対したくはありません。これで失礼しますね」

「待って! 一つ答えろ! ……その魔力(・・)……どこで手に入れた?」

「ほう? 分かるんですか、やはり視えるんですね」


フードから見える笑みにギルドレットは自分の考えが正しかったのだと、ここで踏み止まったことを安堵した。


「そうですね……。しいて言うなら四年前の(・・・・)……無意味な犠牲を生んだあの戦いで(・・・・・)

「────!」

「そう。罪人である彼が、英雄とまで呼ばれることとなった。……貴方たち超越者が死闘を繰り広げた、あの戦いの地ですよ」

「おまえ……いったい」

「では今日はこれで。また近いうちに」


告げられたことに茫然として立ち尽くすギルドレットに一礼すると、男は真下に出現した魔法陣に飲まれるようにして消えていった。


「どういうことだ? 何故あの少年と同じ」


消えていった男を完全に見失ってしまったギルドレットは、茫然と立ち尽くしたまま理解できないといった様子で、呟いているだけであった。


次回は来週の土曜日となります。

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