表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いと魔導杯前。
118/265

第12話 師と仲間達。

GW入りました!

最初の一回目です。

ある日のことであった。

エリューシオン内にある田舎村のラドラ。


とある女性の招集で仲間達が集まっていた。


「急に呼び出して済みませんでした。バルト、ホロウ、カム、デン、カグヤ」


呼び出した女性の家で彼らは酒や、食べ物を口にしながら話をしていた。

そんな彼らに改めて礼を口にするのは、家の主人である白銀髪の女性─────ジークの師であるシィーナ・ミスケル。


そして呼び出された人達は五名。


鍛え抜かれたムキムキの体格で暑苦しそうで片目に眼帯をし、鉢巻を付けた濃い茶色髪の男性─────バルト・ランサー


顔は凛々しいイケメン顔で長身、濃い青の長髪のローブ男性─────ホロウ・スタッフ


科学者のような白衣を身に付けメガネを掛けた、薄い黄色髪の女性─────カム・スパナ


上は侍のような兜を被り、顔は兜にあった青の仮面を付けて、首から下は分厚そうな青の鎧の騎士─────デン・ソード


和風巫女の姿をした二つに結んだ黒髪で、この中で一番若そうな女性─────カグヤ・シンドウ


この者達は全員、呼び出した女性の仲間であり皆、ジークを慕っている者達である。

大半はこの村に住んでいるが、ジークに関する話だと聞いて、遠くの田舎村までわざわざ駆けつけた者もいる。


「それでぇシィー? あっしらを呼び出した件だけど、ジーク坊やに何かあったのん?」


ジークのようなのほほんとした緩い表情で、カムが切り出す。


彼が持つ魔道具『神隠し』の製造者である彼女は、ジークのことを弟のように慕っている。緩い表情である彼女から想像もつかないが、昔から魔力に苦しんでいた彼をどうにかしたいと、いろんな魔道具を試し、魔眼のチカラをフルに使って解明しようと努力してきたのだ。


だから彼が戦場から帰ってきた際、心に深い傷を負って戻ってきた彼を見た時は、涙が溢れ嗚咽を漏らしそうになった。


のほほんとしているが、内心何があったのではと心配しているのだ。


「まあ落ち着けよカムよぉ。ジークももうガキじゃないんだ。昔は全然だったが、今ではもう立派に女の魅力もしっかり理解した雄の男に────ッギャバ!?」


カムの心情を察してバルトが笑顔でフォローを─────プラスして余計なことを口に仕掛け、背後に回った巫女のカグヤの棍棒で顔を叩かれてしまった。


「下品な男には死を! ジーク君はそんな子じゃない!」

「いやいや、あいつも結構─────」

「ハ?」

「なんでもありません……」


冷たい目で再び棍棒を構えたカグヤを見て、両手を上げて口にするのやめたバルト。


カグヤもまたジークのことを弟のように好いているが、それはカムと少し違い本当に義理の弟になるかもしれない、という気持ちが含まれていた。


ジークと年の差は四つのカグヤには妹が二人いて、以前ジークが上げた四人の女友達の内の二人である。……あと双子である。


姉のカグヤと同じで巫女としての修業をしている二人。

巫女とは妖精族やエルフ族と同じで精霊と繋がりを持つ存在だ。


少しでもジークに近付こうと日々修業を重ねているのだ。残りの二人も同じく。


「あの子達がここに居ないことを感謝しなさい。もし居たら、今頃血祭りよ?」

「く、それはカンベンだな……」


嫌そうな顔でバルトが言う。

子供らの本気度は彼も昔から知っている。

ヘタなことを言えば命が危ないのも、冷や汗を垂らしヒシヒシと理解していた。


「……(オロオロ)」

「バルト、カグヤさん、そのぐらいにしてください。ソードが先程から心配顔です」

「「いや、分んねぇよ(分かりませんよ)!?」」


さっきから無言で座っているデンを見ていた、イケメンのホロウが二人に割り込むと二人してツッコミを入れる。


「ははは、デンちゃん仮面だしね、あと無口だよん」


カムものほほんとしたまま二人に続く。


「そうですかね? 目を凝らすと案外分かりやすいですよ」

「「どこが?」」


微笑みながら二人に言うホロウだが、二人共『何言っているんだコイツは?』みたいな顔で呆然と見つめる。


「もんホロちゃん、そろそろ話をぉ」

「フフフ、そうですね。ではシィーナ、お待たせしましたが、本題の方を…………おや?」


カムに促されホロウがシィーナに説明を求めた。

が、そこで引っ掛かりを覚えたホロウ。


何かおかしい、そう思いホロウは何故かずっと黙り込んでいる、シィーナの顔色を伺ってみる。


他の四名もホロウの反応に気づいて視線をシィーナに移すと。




「zzzzzzz……」

「「「寝てるっ!?」」」


カム、バルト、カグヤから驚きの声が上がった。


なんと我らを呼び出した家の主人でもあるシィーナはいつからか分からないが、椅子に座ったまま静かに眠っていたのだ。


割と騒がしくなっていた場であるにも関わらず、シィーナまったく気にした様子もなく静かに眠っている。


「フフフフ、本当に困ったリーダーですね。……シィーナ、起きてください」

「……ふあ?」


そんな彼女にホロウは優しく呼び掛けて起こすのであった。



それから五分ほど……


「すみません、何故か無性に眠たくなって」

「フフフフ、待ちきれなかったのでしょうね」

「子供のんっ!?」


「フフフ、ほら口元にヨダレが付いてますよ?」

「え、どこですか?」

「ほらこちらですよ(ふきふき)」

「甘やかすなっ!」


「はい、目覚めのココアです」

「あ、ありがとうございます。すー……あつっ!」

「フフフ、ちゃんとフーフーしないと火傷しますよ? ……ふーふー」

「お母さんですかっ!」


カム、バルト、カグヤからの三連続のツッコミ入れる中、不思議そうな眼差しでココアを飲むシィーナと微笑みを浮かべて見守るホロウであった。




「それで? いったい何があったんだ?」


いい加減うんざりしてきたバルトが話を促した。他の二人も黙っているが同じ心境の様子だ。


「あ、あれ、すみません」


彼らのイラつきを鈍いながらも感じたのか、シィーナはコホンと咳払いをして皆に向け口を開いた。


「実は……」


「「「「「……」」」」」


口を閉じて彼女を見つめる五人、

いったいどんな話が飛んでくるのか、心なしか身構えている者さえいたが。


彼女から飛んできた言葉は彼らの予想の幅をかなり外であった。


「ジークが王都で開催される、魔導杯に出ることになったんです」


シィーナは困った顔で皆にそう切り出した。


「「「「「……」」」」」


シィーナの言葉に皆固まる。

まるで石像のように。


皆、今のジークの性格をよく知っている。

なので彼が公の場で姿を見せるような行為、リスクを犯すような真似は絶対しないと理解していた。


それになのに、シィーナからのきた言葉は彼らの知るジークから、大きくズレていたものなのだ。


「マ、マジなのん?」

「はい」


ギョッとした様子のカムが尋ねるとシィーナはコクリと、頷いて返答する。


「冗談とかじゃなくてか?」

「冗談なら私も言いませんよ」


まさかぁと言いたげな顔のバルトにシィーナは左右に首を振るう。


「なにか間違いとかは……」

「彼だけでなく、彼に会いに行った王女様からもそう返事がきたんです」


万が一の可能性を考慮してカグヤが言うが、シィーナから返ってくるのは余りに辛いものだけであった。


「……!?!?!?」

「すみませんデンさん、何を言いたいのか分かりません」


慌てた様子で手振りで質問してくるデンに対して、シィーナは申し訳なさそうにして謝罪する。


表情は見えないが、落ち込んだ様子でデンもガクリとしてしまった。


「「「「……」」」」


四人共、暗そうな面持ちでいる中、


「なるほど、遂に晴れ舞台というわけですね! 是非応援に行きたいものです!」

「その通りですホロウ! あなたは分かってますね!」

「いえいえ、私はただ思ったことを口にしてるだけですよ」


唯一ホロウからは前向きな言葉が投げられて、つい嬉しげに賛同してしまったシィーナ。

彼女も本心としては弟子の晴れ舞台が見られるかもしれない、とウキウキしていたのだ。


「「「いやいやいやっ!?」」」

「……」


まあ、当然三人からの激しい困惑と無口仮面からの無言の圧力には耐えきれず、シィーナの方も少し困った顔となっていた。


「マズくないか?」

「うむん、絶対バレるのん」

「王都には何度か行ってるからシルバーの姿でなくても、知り合いにあったらバレるかも」

「……」


ヤバそうな表情でバルト、カム、カグヤが口にしていきデンがコクコクと頷く。

この場にいる者達は全員ジークの正体を知っている。


だから彼が王都に行く際の危険度を、皆嫌でも理解できていた。


「あそこの騎士団長、副団長とかも会場の警備に当たると思うから、……あったら絶対バレるぞ」

「いや、騎士団長だけじゃない。王都にはSSランクの《天空界の掌握者(ファルコン)》もいるし総団長もいる。それに聖国の総ギルドマスターに王都ギルドマスター。シルバーのことを知っている者が多過ぎる」


各々が難しい顔で顔を合わせる。どう考慮してもジークにとってデメリットしかない王都行きである。何故ジークはそんな危険なリスクを犯してまで、大会に出ようなどと考えたのだろうかと、不思議そうに首を傾げる者たちがいるが。


「マズイのはそこではありませんよ皆さん。ですよね、シィーナ」


微笑みが苦笑に変わって、ホロウが口にする。

どうやら皆が話している中、彼だけはまったく別の可能性を考えていたらしく、神妙な顔となってシィーナに問い掛けていた。


「はい、本心では彼が大会に出るとなって師としては嬉しいです。みんなが言ったようにバレてしまうと大変です。でも……」


促されコクリと頷いて説明するシィーナ。嬉しそうな悲しそうな表情をして彼女は話していき、今回彼らを呼んだその理由を告げようとした。


「でも一番の問題それらではありません。彼の狙いは恐らく、参加者が所有している─────────原初魔法(オリジナル)です」

「「「「「……っ!」」」」」


シィーナから告げられた返答にその場にいる者、全員が息を呑んだ。


「ま、まさかアイツ」

「はい、彼は目的の為なら手段は問わないでしょう。願いの為、希望の為、彼は……」


未だ絶句する者たちから一足早く復帰したバルトが、信じられないといった様子で呟く中、


(ジーク……もう昔のあなたには戻る気はないのですね)


シィーナは思い詰めた顔で脳裏で、まだ楽しそうに笑みを浮かべていた愛しい弟子の姿を映していた。


師匠がついに出てきました、仲間の人達も。

周りの大人の影響を受けて子供は成長していきますが、この環境の中で育ったのが、今のジークだと思うとちょっと悲しくなっていくのが不思議です。……悪いことばかり吸収していった気がしてなりませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ