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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いと魔導杯前。
111/265

第5話 再度リベンジと得意な魔法と属性。

遅くなりました。

前日に憂さ晴らしの如く暴れたジークの前に、予想外の光景が映っていた。


「うわ……」

「凄いなこりゃあ」


本日の授業は午後からであったジークは、トオルと一緒に訓練場にやって来たところだったが。


「お、来たかスカルス」

「今度は負けないからね!」

「いくぞコラ!」


先日や先々日までにジークが倒した面々が、リベンジの為に集まっていた。


勿論全員ではない。前の模擬戦で恐れて参加しなかった者もいる。他にもまだジークと戦ってない者や勝ってやると意気込んでいるリベンジを誓う者達であった。


「あら、ジーク」

「……サナ、なんか人数増えてないか? どういうこと?」

「昨日までの模擬戦で感化されたのよ」


そんな光景に憂鬱気な表情を浮かべるジーク。若干気の毒そうにサナも苦笑気味にして、一応理由を口にした。


「貴方と戦うのは、トラウマに近いリスクがあるけど。それ以上に凄い経験が積めれるから、思い返してまた試してみたいって気持ちになったんだと思うわ。……私も含めてね」


不敵な笑みを浮かべてサナもまた、ジークに挑むつもりでこの場に立っていた。


「ハハハハ! 大変だなオイ」

「……」


他人事のように呟くトオルの隣で、ジークが死んだ目で遠くを見てた。


(どうしてこうなった?)


代表戦以降、学園でのジークの立ち位置はすっかり変わっていた。

数日前の落ちこぼれや問題児として、扱われてきた彼には想像もできない状況である。ついつい現実逃避をしたくなるのも仕方がなかったが、当然回避することなどできない。


兎にも角にもジークは、集まっていた二十名程の者達と模擬戦を行うこととなった。


「『翠風の音散弾(グリーン・マシンガン)』っ!」

『『『ギャアアアーーーーっっ!?』』』


風属性の散弾の雨が群がる者達へ一斉に襲っていた。


「シッ!」


群がる相手に飛び込み、手当たり次第体術で薙ぎ払っていく。


「狙い撃て!」

「「───っ!!」」


いつの間にか指揮を務めている者までいたが、それももうどうでもよかった


「『翠風の音響壊グリーン・クラッシャー』!」


魔法弾などが飛んでくる前に仕掛ける。

ジークが全方位を巻き込むように、風属性の超振動の破壊を引き起こす。


「ぐうう!」

「スカルス君!」


三年の先輩達か数名だけだが、障壁や身体強化で堪え闘志を燃やして、彼に向かって駆け出していた。


「「───水よ!」」

「「───火よ!」」

「「「───風よ!」」」

「「「『身体強化(ブースト)』ッ!!」」」

「「「────っ!!」」」


それぞれ武器などに属性付与や新たに魔法を使用しようとしているが。


「『翠風の音鎖繋(グリーン・チェーン)』」


それよりも早く、風属性の鎖を伸ばして飛ばし生徒達を巻き付けた。


気付いた時には緑色のオーラの鎖が、複数の試合場を伸びていた。


「な、なん───!?」

「ハッ!」


動きを封じられ戸惑う彼らを無視し、ジークはその場で高く跳躍をすると両手に持つ複数の鎖を鞭打つように、勢いよく地面に打ってみせた。


「───爆破」


そしてジークがパチンッと指を鳴らす。それが合図となって、相手達を巻き付けた鎖が一斉に破裂した。



◇◇◇



「く……! ホントにどうなってるのよ!?」

「ハァ……ハァ……魔力……バカじゃないのか?」


地面に手を付いて、サナとトオルが汗だくで倒れ込んでいた。


「お前らも大概失礼だと思うがな」


それに対してジークの方は汗こそは掻いているようだが、二人に比べるまでもなく平気そうな様子である。


対多数戦を終えた後、再び二人にタッグ戦で挑むこととなった。結果は見ての通りである。


以前の戦いのお陰で少しは粘ってみせた二人だが、前回と大差は殆どなかった。


「隠す必要がなくなったから言うが、俺だってそこそこ鍛えて体力を作ってる」


魔力に関しては無尽蔵に近いので今更であるが、体力の方は修業で付けられてきた上、大戦経験もあった。


体力の配分も考えてるが、それ以前に彼らに比べれば十分以上に体力を、持ち合わせているのである。


「どうする? ミルルはやらないのか?」

「や、やめとく」


今日は昨日いなかったミルルも側にいた。昨日は用事があったようで、今日は模擬戦をしに来たのではなく見に来ただけと言っていたが、滅多に見ない光景に顔から大量の冷汗を流している。……辞退しておいてよかったと心から思っていた。


彼女の場合、仕込みとナイフで戦うのであまり模擬戦などには向いてない。ナイフだけの戦闘もできなくはないが、少なくとも今は遠慮したかったのだ。


とそこへ、見学していた生徒達の中から一人が飛び出す。


「姉様大丈夫!?」


サナの妹のリナだ。

どうやら妹の方もジークの戦いに興味を持って見学していたようだ。


「え、ええ……コホっ」


心配そうに寄り添ってくる妹になんとか返事をするサナだが、未だ呼吸が落ち着かず咳き込んでしまう。


「姉様がここまでやられるところ、母様や父様を除いたら初めてだよ」

「前の模擬戦は見てないのか?」


唖然と様子で呟きを溢すリナにジークが不思議そうに尋ねる。

てっきり昨日の模擬戦も見られていたのかと、思ってたのでこの反応は少々違った。


「昨日はずっとアリスさんに付いていたから」

「なるほど」


休んで遅れた分の大量の補習を行なっているという、アイリスの話を思い出し納得するジーク。


サナがこちらに付いてたから、リナが代わりに付き添っていたようだ。


「ん? じゃ今日は?」

「今日はアリスは休みよ。……一度に大量の補習をし過ぎて知恵熱を出したわ」

「…………は?」


疑問符を浮かべるジークに対し崩れたまま、二人の会話を聞いていたサナが代わりに答えたが。


「……知恵熱」

「そう知恵熱よ」


とても信じられなかったのか、疑わしい眼差しとなってサナを見るジークだが、サナの方は素っ気ない感じであった。


「サナに比べればそんなに頭が良い方じゃないのは知ってるが」

「あの子頑張り過ぎるところあるから」


「「……」」


「ははは……」


リナの乾いた笑い声が、会話する二人の空気が少し緩和された気がした。


「そ、そういえばジーク先輩って風魔法も使えたんだね? 予選会の時は無属性しか使ってなかったから意外だったなあ」


場の空気がまだ重い中、話題を逸らす為リナが思い付いたように問い掛けてくる。


「というかジーク先輩ってどういう魔法が得意で使えるの? 隠す必要がなくなったのなら少しは教えてよ」


正直これについてはリナはずっと前から気になっていた。


だが予選会の時、彼女の視線が釘付けとなった彼の戦いがさらに心の内側を高ぶらせた。


秘密主義な姿勢であった彼がここまで開示しているのだ。せっかくなので内にある好奇心を少しでも解消したかった。


「ん? ……あーそうだな」


彼女の問い掛けにジークは渋い顔して、どう答えるか逡巡する。


サナの妹のリナとは今までそこそこあった。

最初は清廉そうな雰囲気のある女の子だとジークは思っていたが、実は全然お嬢様のような娘ではなく一般女性と変わらない雰囲気を持ち。魔法関連に好奇心が非常に旺盛で、趣味の為なら手段を問わない子であった。……踏み込み過ぎてジークに叱られてしまった程に。


(シルバーやジョドの時とは戦法が違うしな。まあいちいち誤魔化すのも面倒だしある程度は使えることにするかぁー)


原初魔法に触れさえしなければと、結論付けてリナや皆話すことにした。


「……まあアレだな。身体系の属性付与とか強化とか固体化させて遠距離攻撃にしたり……かなぁ?」

「そんな感じかと予想はついてたが……何故疑問形?」

「リナ、他に聞きたいことはあるか?」

「……無視かよ」


漸く呼吸が落ち着いたトオルが、座り込んだまま言ってくるが流すジーク。使う魔法などその場の状況でコロコロ変わるジークにとって、好んで使う魔法など原初魔法ばかりなのでここは流す以外選択はなかった。


「え、えーと、術式がない魔法を好むんだ? 詠唱とか術式がある魔法は使わないの?」

「別に使えない訳じゃないが……あんまり使わないなぁ。発現までの時間短縮の為にさっきのような独自の魔法技を使うな」


ここでは口にしないが、理由は他にあった。

やはり詠唱などを行う場合はコントロール重視で加減をしっかり行う為なので、威力をあれば消耗もコントロールもそれほど気にしなくて良い。

複雑な術式がなく工程もない専用の魔法技を使用している。


「使えない訳じゃないって言ったけど、どれくらい高ランクの魔法が使えるの?」

「んー」


さらに踏み込むリナの質問だが、ジークのそうだなと考え込む。


(大会で使うのは術式系じゃなくてさっきみたいなタイプでいくつもりだが)


だが、やはり念の為その辺りの質問については誤魔化すことにした。使わないかもしれないので、極力避けてもいいだろうと判断した。


「殆ど使わないからな。具体的にどういうのができるのか言われると困る。精々試合で見せた身体強化とかだろうか」

「……『一体化』も出来たりするの?」


リナが口にした『一体化』という単語に、サナとトオルから思い出したくもない悔しそうな気配が溢れ出したが、ジークはリナを見ながら少し考える。


(ガルダ先輩の戦いが原因なのは確かだが……)


『一体化』の技法はSランク相当であるが、それは全体的な難易度でありSランク魔法が使えない者ができない訳ではなく、要は素質の云々が重要なのだ。


だからできる者はできるし、できない者はできない。


ちなみにジークは前者。魔力操作が不器用であるが『一体化』との相性は悪くなかった。


「正直に言うなら……使える」

「「ッ!!」」

「ほ、ホントに!? 見てみたいなっ!」


キラキラした目でおねだりしてくるリナ。残り二人から息を呑むような驚きが伝わる。


「あ〜〜……めんどい」

「ええぇーー!?」

「疲れるんだよ『一体化』は。ガルダ先輩のようにはなぁ」

「本当にぃ?」


コクリと無言で頷くジークにリナは、少し納得がいかなそうな顔をするが、Sランク級の特殊技法だししょうがないかと不承不承気味に頷いた。


「属性とかどうなんだジーク。無属性とか風属性以外でもあるんだろう?」


リナの質問を乗り切ったところでトオル方からも質問がくる。トオルの方はどうせ今度も流されるだろうな、という軽い気持ちでの質問だったが。


「属性……か」


この問い掛けはジークにとって非常に返答し難い物であった。


「ん? どうした?」

「いや、一応闇と光を含む基本属性は全部使えるが、主に使うのは無属性だな。特に闇と光は大会で使うことはないと思うぞ」


後々のことも考慮して全属性が使用できることを伝えるジーク。


自身の異質な魔力によってありとあらゆる属性が使用できるジークにとって、基本属性どころか派生属性も容易い。……勿論そこはトップシークレットあるので彼も口にはしないが。



「そろそろ昼休みだ。午前はここまでにしようか」

「そうだな」

「そうね」

「はぁい」


ジークが切り出し休み時間に入ったが、……他の参加した生徒達の大半は未だに疲れからダウンしており終始グッタリしたまま睨んでいた。


その様子を見てジークもさすがにやり過ぎたか感じてしまうのだが、そんな彼の小さな反省も午後の模擬戦で相手をすることとなる小さな先輩によって忘れ去ってしまうのだった。


次回の更新は来週の土曜日です。


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