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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いと魔導杯前。
110/265

第4話 リベンジと変わった日常。

修正:ご指摘をいただいたので、いくつか修正を行いました。拙い文章で本当に申し訳ありません。

「『氷の柱槍(アイス・ランス)』! ───ヤァッ!」


氷の槍を持ったサナが怒りに任せて鋭い突きを入れてきた。


「『翠風の音盾(グリーン・シールド)』」


迫る攻撃にジークは右腕に防御の盾を張る。

突きが届く前に風属性の盾が張り出され、サナの突きを受けきった。


「くっ! 早い展開ね!」

「ま、複雑じゃないからな」

「大人しく串刺しになりなさい……!」

「理由が理由だけど、それだけは嫌だ」


槍と盾の攻防の中、二人は全く違う表情で呟いていた。


憎々しげなサナと苦笑気味のジーク。

先程の私怨云々で悩ませていたのにと言いたいが、原因が思っ切り自分にあるので口にせず防御に努める。


温度差の壁が盾を通して、表している気がしてならなかった。


「頑丈、ね!」


その盾の強度も中々のものであった。

複数回のサナの突きを受けても、保たせてジークを守っていたが……。


「けど……ふふ」

「?」


────ただしそれは、前方に限っての話である。


「『岩衝斬』ッ!」

「───お……?」


ジークの背中から衝撃が走る。それと一緒に彼の体が前のめりに飛ばされそうになる。どうやらサナの相手をしている中、トオルが背後から狙ってきたようだ。


(悪くない戦法だ。……だが)


「トオルか」

「───ん? ん!??」


土属性の斬撃を受けたのだと理解すると攻撃対象をトオルに移した。


視線の先に立つトオルの顔は、キョトンとした感じからウソと言いたげな、ギョッとした表情へと変貌していた。……見た限り全然ダメージがないからだ。


「『翠風の音弾(グリーン・シュート)』」


衝撃を受けて浮かんだ体を、地に足を踏み付けて押し留める。

そこから手を後ろに振って、背を向けたままジークは風属性の魔弾を放った。


一瞬で十数発を放ってみせたジークに対して、トオルはハッとした表情で慌てて刀を構えた。


「ダメージがねぇのか!? っ『颶風流し』!」


自身の斬撃が効かなかったことに驚きながらジークの魔弾を、風の太刀流し型を使用して逸らせてみせた。


咄嗟に受け流すことができたのは僥倖だった。

受け流し切ったトオルは、持った刀に魔力を込めながら僅かに視線を移した。


次の瞬間、サナとトオルは目線だけで合図を交わすと互いに素早く動いた。


「『氷の柱槍(アイス・ランス)』ッ」

「『岩衝斬』ッ!」


サナの氷の槍とトオルの土属性の斬撃が同時にジークを襲った。


前と後ろからの挟み撃ち。

だがジークは余裕の笑みを浮かべて、攻撃範囲に入った獲物(二人)を狩り取ってみせる。


「『翠風の音響壊グリーン・クラッシャー』」


その場でトンっと軽く地を蹴るジーク。


彼を中心に強烈な音響と大気を壊しかねないほどの強い振動が二人を飲み込んだ。


「ああああっっ!?」

「ちっっ!?」


二人共奇襲を狙おうとした所為で、防御も回避もできなかった。


強烈な音で耳がやられて平衡感覚が崩壊し、破壊の振動が体中に引き裂くような激痛を与えた。


「がっ……!?」

「ぐっ……! こんな」


余りにも呆気なく崩れて行く自身に信じられない気持ちだ。

だが、根性云々で耐えようとする自分らを嘲笑うかのような予想を超えたダメージに圧倒される。


「『翠風の音弾(グリーン・シュート)


追い討ちのように仕掛ける風の魔弾によって、サナもトオルも崩れるようにして地べたに伏してしまったのだった。


呆気ない決着に周囲からは戸惑の声が静かに広がるのであった。



◇◇◇



「まあ─────こんなもんか」

「何がこんもんかだっ!!」

「死ぬかと思ったわよっ!?」


試合が終わってジークが発した第一声に倒れたままの二人から痛みも忘れて叫び声が上げる。……その拍子で体の痛みが増したが、それもお構いなし。


「ちゃんとやれって言ったのはそっちだろう? なんで怒られないといかないんだ……」


「やり過ぎだわアホが!」

「限度ってものがあるでしょう!? 鼓膜が破けそうになって体が引き裂かされかけたわよっ!!」


不満そうなジークの言葉が許せず二人して異論を唱え続けた。ジークとしては大人しく休んでいればと思うところだが、本人達が黙っていれない様子だったので呆れた気持ちで二人の苦情を受けることにした。


「ていうか、一回確かに攻撃届いたよな? なんで平気なんだよ」

「サナと対峙していた時に背後から狙った岩衝斬(アレ)か?」


疑問符を浮かべて先の試合を思い返しながら呟くトオルにジークがなんでもない風に答えてみせる。


「あのなぁ。いくら一番隙がデカい箇所だからって何の対策もせず二対一で戦うわけないだろう?」


呆れた顔で一度背をトオルに向けるジーク。

その背中から微かにだが、魔力の膜のような物が彼の背中を覆っているのが見えた。


「まさか、その程度の障壁で?」

「当然それだけじゃないが、あとは体の魔力層とか色々とな」


そう締め括ると時間も時間だったので予定通り模擬戦を終わらせ、ジーク達は訓練場を去って行った。



だがこれは始まりでしかなかった。次の日から約二週間かけてジークは学園でも有名な者達と試合を行うことになるのだから。



◇◇◇



「随分しんどそうだなぁ。ジーク」

「トオルよ……見れば分かるだろ? いちいち言わないでくれ気が保たないから」


教室内でグッタリと自分の机の上で倒れているジークにトオルが呆れ顔で寄ってきた。


「今までも教室(此処)にいるのは苦痛だったが、この頃さらに増して嫌になったわ」

「ハハハ、アッチコッチから声がかかるもんなぁ」


予選会以降ジークの学園での評価は大きく揺らいでいた。


これまで通り『最低男』の称号に相応しいゴミのような扱いか。

もしくはまったく別の……予選会での結果が影響していた。


しかし、その評価がまだ定まらない中、学園の一部の生徒やクラスの者達から声がかかるようになった。


主な質問は『実は魔導師クラスの魔法師だったのか?』『試合で見せた魔法はいったい何?』『お前マジで何者なんだ?』『隠してた理由は?』『あの偽のカルマラは誰なんだ?』『知り合いなの?』『風紀委員や生徒会面々についてはどう思ってる?』『ぶっちゃけ楽勝なのか?』『二日目にフォーカスさんと話してたようだけど何を話した?』『アイリスちゃんとは仲直りしたの?』『実は前々から付き合っていたって本当か?』────────などなど。


数えたらキリがない。学園では結構凝ったキャラで通してきたジークだが、日に日にその仮面が剥がれてしまっていた。普段であれば笑顔で誤魔化すところだが、今ではグッタリとした感を隠さず机の上で倒れてしまっていた。


「オレとしてはそっちの方がいいと思うぞ? 前みたいな口調とか表情に比べて」


トオルからは珍しく高評価が返ってきたので、ジークも既に直すの面倒だとこのままで通すことに決めた。


彼も薄々だが実感していた。自分の変化を。

だがもし彼の師匠やその仲間、村で親しかった子達が聞けば寧ろ彼らしいと。以前までの彼の方が絶対おかしいと揃って言うであろう。


因みに沢山きた質問の数々に対し、ジークが取った手は。


「『翠風の音弾(グリーン・シュート)』!」

『『『ああああっっ!?』』』


質問攻めにウンザリしたのか、『俺に勝ったら全部答えてやる』と言ってまとめて相手していた。

好戦的な発言を聞いてトオルが飲み物を噴き出していたが。


(もう試合形式とか関係ないな。……気のせいかこいつらも少し楽しんでないか?)


場所は変わって学園内にある訓練場。

ジークは挑んできた者達にまとめて風属性の弾丸を浴びせた。


「く、かわせっ!」

「っっ、はっ!」

「障壁を……!」

「ふっ……!」

「っ……!」


全員が全員、無抵抗だった訳でない。

身体強化で避けたり、障壁など身を守る者もいった。


しかし、その場合後者を選んだ者については、無抵抗にやられた者と同じ運命が待っていた。


(その程度の障壁で防げると? 甘過ぎるわ)


「があああっ!?」

「くぉぉぉ!?」

「アアアっ!?」


ジークの魔弾は、咄嗟に張った障壁程度ならあさり貫通してしまう程の威力はあった。

風属性の特徴もあるが、障壁越しに魔弾を正面から受けた生徒から苦悶の叫びが上がっていた。


「オラァアァ!」

「ヤアアア!」

「っっ!」


相手をする生徒達の中には、大会に出ても良いレベルの実力の持ち主も混ざっている。大会参加者ではないが、それになりに良いレベルの者達数名は、攻撃を躱してジークに迫ってきていた。


「ま、こうなるか」


部分的な身体強化や武器を強化して襲ってくる生徒達を観察して、ジークは軽く構えた。


(意外と拒絶感はない。真剣勝負じゃないからか? 体が馴染むようで有り難いが)


予選会の時にあったガーデニアンとの対話やティアとの戦いの影響もあってか、人との戦いを嫌うジークの精神面に少しだけ変化生まれていた。


不一致だった心と体が合わさって、かつての戦いのコツというものが蘇り始めたのか、ジークの思考はいつになく冷静に働いていた。


「『瞬殺戦火バトル・コンビネーション』……発動」


誰にもバレないように応用タイプのオリジナル魔法を密かに使用した。大戦時によく使っていた対人専用のオリジナルの混合魔法である。


(まず左から崩す)


左側から来る男子生徒。騎士を目指しているのか剣と盾を持っていた。


(だいぶ機能しているようだな)


迫って来る相手に対し、ジークは自身のオリジナル魔法によって変化した視界に映る光景を見ていた。


視界には幾つ物の薄い光の線が視えるが、それは相手の攻撃の予測線。

敵ではなくその予測線の動きとそれに連動するように作動する、もう一つの効果に構えていた。


「覚悟しろっ!」

「───」


彼の剣の攻撃はジークの上体を右から左へ斬りにくる。


同時に動した『|バトル・コンビネーション《オリジナル魔法》』は彼が知覚するよりも先に彼の体に信号を送り、敵の攻撃の最短の攻略手順を知らせた。


─────ジークは半分人形のように操られる感覚で、剣を腕ごと払うように片手で弾くと空いた脇腹を。


翠風の音爆(グリーン・ボム)


風属性の爆弾でぶち込んだ。


「うおぉっ!?」


手では収まらない程の風の爆弾は脇に直撃してすぐ、相手の体を横に大きく飛ばすレベルの爆破を起こした。


(次)


吹き飛んだ相手が落ちたのを確認する間も無く、大きな盾と片手に鎖付きの棘鉄球モーニングスターを振るってくるが。


「うぇ!?」

「『翠風の音掌波(グリーン・ヒット)』」


跳ぶようにして振るってきた棘鉄球を躱し頭上から接近する。


「ちっ!」


咄嗟に盾で防ぐ男子だが、盾越しにジークは風属性の掌底を叩きつける。


「っごぉあ???」


瞬間、男子生徒は盾越しに謎の衝撃波で頭部を揺らされてしまう。


「シッ」

「ガっぼぉぉ!?」


そして流れるように膝蹴りが頭部を命中し、相手の男子は奇妙な呻きを上げて崩れていった。


「「「「……」」」」


その中、ジークに仕掛けようとした数名の生徒達が立ち止まり固まる。

目の前で起きた光景に呆然とした面持ちで立ち尽くしていた。


(少しだが勘も戻ってきた。だがまだまだか、このぐらいの戦闘じゃ)


ただ周囲の視線に気づいた様子もないジークは、発動した魔法の状態を確認に意識を向けている。特に不具合がないと安堵すると、すぐ他の相手をする者達に視線を向けた。



「さて─────次、いこうか」

「「「「ッッ!??」」」」


彼の呟きとともに彼らは理解し青ざめる。


────嗚呼、次って絶対自分達のことだ。

絶望に落ちた声が不思議と挑む面々の耳に届いた気がした。


最近ようやく忙しさが緩和してきました。最近本屋に行ったら小説内でよく知ってる人の本が出ていたので驚きました。時間が取れたら読んでみたいですね。

次回の更新は来週の土曜日です。




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