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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いの出会いと再会。
103/265

第15話 【表】見つけた宝と歪な再会。

15話は表の話と裏の話に分けています。

捜索開始して十分ほど経過して、ジークの宝探しに進展があった。


「ん?」


思ったよりも時間を要したが、探索を続けて気になる箇所を発見した。

タンスの中や鍵が掛かったデスクの引き出しも怪しかったが、それらは全てフェイクである。


「この壁、魔法で隠蔽されているが、空間がある」


ジークの目に留まったのは、資料入れの棚の背後────────何も無い壁である。


「なるほど、表面は本物の壁で中が空洞か、他のトラップはこの魔法の隠すため二重に仕掛けか、数を増やして俺の眼を誤魔化していたのか」


かなりの高レベルの隠蔽が施されており、なにより使い方が巧い。

一流の魔法師でも短期では見破るのは不可能に近いとジークは理解できた。


(この魔眼がなかったら、ヘタしたら分からなかったか)


二つの魔眼と探知魔法で見極めてさせたが、そんなジークからしても中々の物であったのだ。

千夜魔天の瞳(シェラザード・アイ)』で確認できていたが、魔法の数の多さにその役割を見落としていた。


「仮にトラップに気付く奴が出ても周りのトラップに意識がズレてバレないな。学園で見破れるとしたら俺かガーデニアン(老師)だろうな」


学生の中では厳しいだろうが、ジークの魔力を見極めるほどの眼を持つガーデニアンであれば可能であろう。


「おっと、それよりも───『更正改訂(リビジョン)』」


オリジナル魔法で隠蔽の魔法術式の書き換えを行う。

なかなかの隠蔽が掛けられた壁だ。さりげなく一緒に警報も掛けられているようだが、ジークの魔眼と書き換えの魔法の前では意味はなかった。


壁に仕掛けれた魔法をオフからオンに切り替える。先ほど部屋に仕掛けられた魔法は全てオフにしていたので、


(警報をオフのままにして、壁に施された仕掛を動かして開ける。そりゃ……と!)


一工夫されたものである以上、やり方を変えれば良い。

オリジナル魔法で魔法式を書き換えるジーク。


すると─────


「……!」


壁の表面に複雑な羅列、魔法式が浮かび上がる。

そして自動で壁がズレ出し、中の空間がジークの視界に入った時。


「……これだ」


彼の目の前に錆び付いて先端に石の球体が付いた短い杖が。


台座に上でポツンと置かれてあった。



◇◇◇



「……」


王女達をガーデニアンに任せ急ぎ学長室に着いたリグラ。

ドアノブに手を当て防犯の為に仕掛けた防犯魔法を全て解除する。


「……!」


解除されたのを確認した後、勢いよく開けて中を見た。



◇◇◇



リグラが学長室に着いている時、残って王女達を特別観客席に案内しているガーデニアンだったが。


「え……?」


案内の最中にまた新たな問題が発生し始めていた。


「あ……あの人……!」

「ティア王女?」


先頭で案内をするガーデニアンは、不意に立ち止まってみせたティアに気付いて振り返った。


背後で付いていたリンやフウも不思議そうに足を止めて主人を見るが、ティアの視線はある一点を凝視していた。


「───!!」


そして驚愕の顔となって息を呑むティアは、突然地を蹴るとみんなを置いて慌てて駆け出した。


「姫様!?」

「ティア様!?」


突如駆け出したティアを追うようにリンもフウも遅れて続く。

フウの方はまさかシルバーでも見つけたのでは、と追いかけながらが考えたが、どうやら違うようだ。


案内していたガーデニアンや騎士団長達を置いて、ティアと護衛の二人はその場から駆け出していった。


「…………────ハッ、王女! 待ってくだされ!」


少々ポカンとして固まって数秒ほどの遅れであるが、正気に戻ったガーデニアンも追いかけるように彼女達が駆け出した方へ向かった。

理由はどうであれ、王女にもしものことがあってはエライことになる。


騒ぎにならない程度の身体強化を使用し、速歩で追いかけた。


「なんか、我々だけ余った感があるな」

「……」


ただ、残された側である団長と副団長の間には、何か妙な空気が流れていたが、他に近く誰もいないのでフォローの言葉は何処にもなかった。



◇◇◇



「すみません! そこのあなたっ!?」


駆け出したティアは周囲のビックリとした顔を無視して、ドンドン人混みの中へ進んでいく。


昼休みが終わりに近く、会場に徐々に人が増えていた。もし知り合いを見つけようと思うなら至難であろう。


「あ、あなたは……」


……が、ティアは違った。

遠くからであってもその人物に視線を定まって、走りながらも一切見失うことはなかった。


(あ、あれ? 違う人? けど、何か……)


その人物に追いついた時、彼女の瞳は大き揺らいだ。

夢でも見ているかのような、そんな顔で────────。


「え、と……、どうかしましたか?」


瞳に留まった女性、アイリス・フォーカスは戸惑った顔をして立ち尽くしていた。


(どうしたんだろう? こんなに慌てて……わたしの顔に何か付いてるのかなぁ?)


彼女は午前中の時のような白猫の仮面はもう付けてなかった。

慣れてきたのか、改めて自分の姿を思い浮かべて恥ずかしくなったアイリスは思い切って外したのだ。


ちなみにこの彼女の対応にはサナは感涙し、リナは苦笑気味で喜んでたが。


「あ、あの方は……!」

「うそっ……!?」


その二人は王女の正体に気付いたようだ。

突如の王女の登場にどう対応すべきか困惑してしまっていた。


「……」

「?」


だが、二人を置いてティアはアイリスに詰め寄る。

後ろから追いかけてきたリン、フウ、そして遅れてきたガーデニアンも困惑した様子で見ている。


立ち尽くす面々の中で最初に口を開いたのはティアであった。


「……どうして? 似てるけど少し違う。それどこか幼い気が……」

「え? え?」


大きく目を見開き、ティアは呟くように口にする。

間近で聞いているアイリスにはなにがなんなのか、さっぱりな様子だ。


「ティア様!? 一体どうしたと言うので──────な……っ!?」

「え───?」


唯一ティアの動揺を理解できた護衛のリンとフウだけであった。

彼女達もアイリスの顔を怪訝そうに見つめて、ティアが何に驚いているのか分かり、二人共目を見開いて驚愕していた。


そんな中もティアの自問自答のような呟きは続き……神妙な表情で彼女を観察し出した。


「やはり、似てます、瓜二つです」

「あ、あの……王女様ですよね?」


戸惑いながらもアイリスは口を開いて尋ねる。

彼女も一応、ティアの正体には気付いたようだが、無礼のない言葉を探りながらで中々話しをかけ難かった。


「っ……コホン! ティア様? そろそろ、よろしいですか?」

「へ? あ、あ……!?」


しかし、公衆の面前でこの主人の反応はよろしくないと感じたか、控えていたリンが咳払いして取り乱す主人を正気に戻した。少々強引であったが、思考の海に沈んでいたティアの目を覚まさせるには十分であった。


「急にすみません! 驚かせてしまいましたよね?」

「い、いえ、そんなことは」


色々と追いつかないものがあるが、取り敢えず姿勢を正してお辞儀をする。未だに取り乱している感があるが、頭を下げて詰め寄ってしまったアイリスへ謝罪した。


「「……」」


気まずい空気が二人の口を固める。別にコミュ症とかではないが、初対面の(・・・・)王女と貴族の娘では話を弾ませるのは非常に厳しかった。


「あの……初めまして(・・・・・)で、宜しいでしょうか?」

「そう、ですけど?」


よく分からないティアの言葉にアイリスは訝しげに答える。

質問の意図はイマイチ判断が付かなくて、言ってることはなんとなく分かっただけ。


「そうですか、…………大変失礼ですが、あなたのお名前を教えて頂けませんか?」

「え、えと……アイリス・フォーカスですが」

「アイリス……フォーカス……」


アイリスの返答を聞き、逡巡気味の様子のティア。

考え込み過ぎて、また思考の海に浸かってしまいそうなるが、同じミスを連続でしては本当に王女として色々とアレなので、なんとか堪える。


浮かんでいる疑問を解消する為、ある意味禁断の質問で探ってみようとしたが。


「一つ尋ねたいのですが、フォーカスさん。あなたはアティシア(・・・・・)という名の女性に心当たりはありませんか? もしくは親戚に似たような人は……」

「え? アティシ───」


彼女に疑問を問い掛けたティアの言葉にアイリスが怪訝そうになる。


(アティシア? 誰のこ──────)


脳裏で彼女が口にした名に該当する人物がいないか、割り振ってみようとしたが。


「────」


見た瞬間(・・・・)、アイリスの顔が一瞬で凍りついた。

まるで時の止まったように、少しの間、瞬きも止まってしまった。


「アリス?」

「アリスさん?」


サナとリナはすぐにアイリスの異変に気付く。

そして、血の気が引き真っ青となった視線の先に誰がいるのか、姉妹は首を傾げ視線を追うように顔を向けた途端。


「「────っ!?」」


その男を見て二人とも言葉を失った。

安心していたところで突如発生した不意打ち。対策をある程度練っていた筈の二人は、何も出来ず立ち尽くしてしまった。


「……? ────シ、シル……!?」


そして、凍り付いた三人の表情から遅れながら異変に気付くティア。何処を見ているのかと特に気にせず背後を振り返ったが、目にした彼を見て……ついもう一つの名を口にし掛けたが、寸前で口が紡ぎ踏み止めた。


いや、勝手に踏み止めた。

何故ななら口にしそうになるのを自分で堪えたからではない。


「あなたは少し喋り過ぎだと思うな。王女様」


彼が浮かべていた笑みの奥にある本気に近い威圧。

若干本気なのを感じ取った口元が強張ってしまったのだ。


「そっちもそうは思わないか? アイリス(・・・・)


この場にいる者達の共通の存在である男性、ジーク・スカルスが薄い笑みを作って、久々の再会を気持ちを込めてアイリスの名を口にした。


「……ジーくん」

「久しぶりだな……」


アイリス・フォーカスとジーク・スカルス


奇妙な因果の繋がりを持った二人が四ヶ月程の停滞を終え……。

再び巡り会った瞬間であった。


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