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オリジナルマスター   作者: ルド
魔法使いの出会いと再会。
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第12話 会談と午前終了。

次回の更新は来週の土曜です。

試合が開始して二〜三時間後、とある貴族の豪邸で大物達が集まっていた。


集まっている理由は魔道杯の説明についてであった。


「では以上で魔道杯の説明は宜しいでしょうか?」

「助かりましたぞリグラ殿」

「おう、こっちも問題ない」

「ええ、大体把握できました」


豪邸の主でもあるリグラが皆に確認を口にし、全員頷いたのを確認すると使用人達に昼食の用意をさせた。


集まっているのは学園長のリグラと老魔導師のガーデニアン、ウルキア騎士団長のフェイント・シルワにエリューシオンの第二王女ティア・エリューシオンである。

他にも大男である騎士団長の後ろに副団長の女性騎士とティア王女の後ろに魔法使いのフウと騎士のリンが控えていた。


リグラがまとめ役となって行われた説明会も問題なく終わり、昼食会へ移っていた現場で、皆に割と硬くなく緩い感じで、昼食を進めながら会話を楽しんでいた。


「お久しぶりですな、ティア王女。少し見ないうちにすっかり大きくなられて」

「もう、子供扱いしないでくださいガーデニアン様」


孫でも見る優しい眼(グラサン越し)で言うガーデニアンに、ティアが困った顔で不満を口にする。


「……予選会では驚きましたぞ? 流石にアレはやり過ぎですぞ姫君」

「ははは……、すみません……」


ガーデニアンに窘められ、頰を赤くして伏せてしまうティア。

本人としては軽く戦うつもりであった試合であったが、彼と戦っていく内につい火が付いてしまったのだ。


当時のことを思い出すとさらに顔を熱くなるのを感じたティア。慌てて思考を切り替えたが、ガーデニアンやそれを見ていたリグラにはぎこちなく見えてしまっていた。


「ハハッハ、なかなか面白そうな話をしていますな姫様」


とそんな感じで話している二人に大柄の男性が入ってきた。


「まさか、かの《老魔導師》が来てるとは、……機会があればお相手して頂きたいものだ」

「やめてください団長」


騎士団長のフェイントが大男に似合う獰猛そうな笑みで口にすると後方の副団長が呆れた顔で止めに入る。……こちらもこちらで色々とあるようだ。


「ホホホ、機会があればのぉ《竜剣》」


フェイントに言われ微笑で返事をするガーデニアンは、自身の食事に手を付けているリグラの方を向いた。


本来であれば、昼食を終えて解散となるが、ふと思いついたガーデニアンがリグラにとある提案を口にしてみようとした。



だが、


「リグラ殿、どうでしょう、まだ時間に余裕もありますし、学園の方の予選会────」

「是非、行きたいです!」

「おほッ!? 姫様?」


────ガーデニアンの行動がティアの本能的に動かしてしまった。


ガーデニアンが予選会の観戦でもどうかと提案しようとした瞬間、ティアが勢いよく立ち上がって賛同してきたのだ。


……突然の声にフェイントの方から素っ頓狂な声が上がったが、皆の視線はティアに移っていた。


「……───はっ」


視線が集まったことで、ようやく自分のミスに気づいたティア。

無意識にジークに会える、試合が見られるといった感情が王女という仮面を叩き割るほど浮き出てしまったのだ。


「「……」」

「「……」」

「「……」」


ふとして集まる視線は三種類に分けられる。


一つ目は昨日の騒動を知って、色々と知りたそうにしているリグラとガーデニア。


二つ目はいったい何がと、目を点にして不思議そうな顔で彼女を見るフェイントと副団長。


……ちなみに最後は、視線も正しくはリンとフウで二種類があった。

リンからくるのは戸惑いの気配、色々と把握できてない現状でなぜここまで過剰に反応したのか、……昨日自分がやられて以降、何があったかと様々な思考が入り混じっていた。あと主人の命令で詮索は一切なしと命じられている手前、昨日の件については一切聞けずにいた。


フウに関しては言わずもだが、一応翻訳すると「何ボロ出しかけてるんですか? 昨日私に散々口止めしておいて、自分からボロ出しそうになってどうするんですか?」といった憤りが含まれていた。


「あ、行ってみますか? 昼食後にでも向かえば午後からの試合には間に合いますが」

「……………………よろしいですか?」


恥ずかしげに口にするティア。

結局、やはりというかジークに会いたいと衝動の方が打ち勝ってしまった。


何か含みある微笑みを作るガーデニアンとリグラから視線を外して素早く食事を済ませることにした。


背後に控えていたフウは呆れたように息を吐いて、「あ、終わりましたね、シルバー様」といった表情で

学園にいるであろう英雄に向けて呟いたのであった。



◇◇◇



『何なんですか!? 何なんですかアレは!? スカルス先輩!!』


トオル達の試合の終わりを審判が告げてすぐに、隣で実況していたカリアが狼狽顔で叫び出す。

腕まで黒く異形な物へ変化を遂げたガルダの腕に指してジークに尋ねていた。


試合の結末はガルダの勝利で収まったが、見ていた者達からは戸惑いの声が上がっている。……唯一そういった声が上がってないのは、風紀委員の彼より上の位にいる副委員長やトオルの姉の風紀委員長であった。


『金剛属性で出来た腕だろうけど、おそらく表面だけでなく中も変化させてる』

『え、それって、まさか……!』


ジークの言葉を聞いたカリアが驚きの反応を見せる。マイクから彼らの話を聞いていた観客からも動揺が走っている。



……皆が驚く理由、それは────


『ああ、一部であるが属性との『一体化』が出来てる』

『っ!!』


『一体化』とは身に纏うタイプの『身体強化』、『属性付与』などの最上位で比べ物にならない。奥義とも呼べる物である。


普通の『身体強化』、『属性付与』は魔力を纏って、身体能力を上げたり効果を与えたりしているが─────『一体化』はその先にある。


魔法効果で身体能力を上げるのではなく、肉体そのものを変化させる。


表面的な変化ではない、ソレ自体を変えてしまう奥義。

通常の『身体強化』、『属性付与』などとは次元が違う、一流の魔法師であってもなかなか出来る物ではないと言われる技をガルダは学生でありながら使用してみせた。……それは驚きのことであった。


……しかし、カリアが驚いていたのはまったく別の理由であった


『で、ですが、『一体化』は、リスクが高くて、『魔導の使い手』とされてる資格技術じゃ……』

『……あ』


恐る恐る訊いてくるカリアの言葉に、ジークは思い出したみたいな間抜けな声を漏らし固まってしまった。


『一体化』はより高度な魔力技術を持つ者でないと使用が困難な上、属性や『一体化』の魔法対象との相性、適合率、他にも様々難問をクリアしてない使用できない。


……というか、一歩間違えれば、使い手を壊してしまい、最悪殺しかねない技術なのだ。


能力的には高いが、余りにリスクが高いことから『魔導の使い手』という資格が必要であるのだ。


(そういえばそうか、本気の《《|消し去る者》イレイザー》を表に出す時とか、『歌』のSランク魔法を使う時とかで平気でやってたからそっちの危険性とか忘れてたよ。……確か俺は修業時代にとったな。師匠に言われて)


それと一日目でトオルが使用した妖気も『気術の使い手』という、魔法技種と同じタイプの資格が必要である。


『……』

『……』


『『『……』』』


言ってみて地雷に気づいたハッとしたカリアと共に黙り込んでしまうジーク。

マイク越しに話をしたせいで、会場にいる全員の耳に届いてしまっている。……勿論

審判の耳にも。


失言に気付いて青ざめるカリア。しかし、その空気を晴らすように当本人が話に入ってきた。


「心配ない、資格は取ってある」


淡々とした口調で試合場にいたガルダが答えた。先刻の戦いの余韻が残っているのか、キリッとした顔立ちが少し崩れ笑みが溢れている。


『あ、そうなんですか?』

「ああ、……これだ」


ガルダが浮かべた笑みに薄ら寒いものを背筋に感じ、ブルッと肌を震わせるカリアを他所に隣のジークが尋ねる。


するとガルダは懐から資格証明カードを司会席にいる二人に掲げる。近くにいる審判にも見せた。やはり遠いので見せるにしても審判の方が適任である。


そして審判は見せてもらったカードが本物だと分かると、ジーク達の方を見て問題ないとサインを送ってきた。


『じゃあ大丈夫か』

『大丈夫なんですか!? 本当に!?』


いくら資格持ちであるからといっても……。不安がカリアを駆り立てるが、ジークが宥める。


『まあ、審判もとくに咎めなかったし……、そもそも資格があるのなら絶対最低限の条件は満たしてるってことだから、最悪の事態は起きないと思うぞ?』

『そ、そうでした……』


ジークの説明にカリアは立ち上がりかけた体を沈めて座り込む。

こういった分野に関する資格は、非常に取得が困難であるのだ。幾つもの難題をクリアすることで初めて認められ、資格を入手することができる。


厳しい条件を通っている以上、余程のことがない限り、暴走はありえない。


その厳しさを授業で習ったことを思い出したカリア。堂々とカードを提示して見せたガルダに申し訳なく感じ縮こまってしまった。


『次の試合の……解説しようか』

『……はい』


口元に苦笑を作り、フォローのつもりで口にするジークに、カリアは縮こまったままマイクでも聞き取れない程小さな声で返事をした。



◇◇◇



『いや〜凄かったですね!』


その後も続いていく試合を解説していく内に、すっかり調子も良くなったカリア。

元気溢れる彼女を見て、隣のジークは呆れたような苦笑いを浮かべるしかなかった。


(立ち直り早いなぁ。……これが理由か)


あのキリアの折檻を受けているのにその雰囲気をまったく出さなかった彼女を見て心底不思議であったが、一連の復活の流れを見て得心が得た。


これだけ立ち直りが早ければ、あの折檻を受けても数日で復活できるかもしれない。


『末恐ろしい子だ……』

『え、誰が恐ろしいんですか?』

『あ、ごめん。こっちの話』


つい気が緩んで、マイク付きであったことを忘れてしまったジーク。首を傾げて訊いてきたカリアに誤魔化しておく。


トオル達の試合以降、トントン拍子で試合は進行していった。

途中、生徒会の副会長(ジークを嵌めようとした男子生徒)や風紀委員の副委員長、生徒会長やトオルの姉でもある風紀委員長も出てきたが、先程のトオル達の試合に比べるとやや物足りない物があった。


『では午前の試合は以上になります。一時間の昼休憩後、組み合わせを変えて後半戦を行われますね』

『楽しみだな。……さて昼メシ昼メシ〜』

『……はぁ、マイクオフ』


早々と司会席から退散するジークを呆れた顔で見送った後、カリアはその場から立ち上がり、友人が待つ食堂へ移動していった。




「……さてと、やるか」



─────休憩時間である一時間……、ジークは目的の為、密かに行動を開始した。


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