偶然の一致
これは、彼が亡くなった後、数年が経った後、私が見つけた「最初で最後のメッセージ」の物語____。
私の、大切な大切な物語。
「そろそろ、この部屋も掃除しないと……」
とあるドアの前で、私は誰と話す訳でも無く呟く。
ここは彼の部屋。
………今はもう居ない、大事な思い出の部屋。
彼は亡くなった。重い病気に掛かって。
病気の内容は亡くなるまでずっと話してくれなかった。でも、重い病気なんだという事は話してくれた。
彼は本が好きで、何時も私をこの部屋に連れてきて、沢山の本を此処で一緒に読んだ。
……思い出すだけで、涙が溢れそうになる。
それでも、やはりこの部屋とも別れなくては行けない。
過去に囚われてたら、彼も悲しむだろうから。
私はゆっくりとドアを開けた。
中は昔と全く変わってなくて少し哀愁を感じる。
部屋の中は机とベッド以外は全て本棚で埋まっていて中は少し埃っぽかった。
掃除を始めようと思い、ふと机を見ると
真新しい紙に、多少の文が書かれた物が置いてあった。
怪訝に思って紙を見た私は、その内容を見て心底驚いた。
『deer you and he.(親愛なる貴方と彼へ
………僕の名前は明かせない。しかし、彼の事をとても良く知っている、1番近くに居たモノだと明記しておこう。
君がここに入って来た時、彼に話して欲しいと言われた事があるから、それを書いた物を机の1番上の引き出しに入れておく。
何卒、後はよろしく。
than irresponsibility(無責任より』
私は戸惑った。当然だろう。いきなりそんなことを言われても困る。
心の準備をする時間が短い。いや、たっぷりあるのだが、余りにもいきなりで無いと錯覚しているだけなのだろう。
……深く、何度か深呼吸をする。
そして、ゆっくりと、まるで高価な装飾品に触れるように引き出しに手を掛ける。
引き出しを引くと、そこには____
短編集程の分厚さの、本が入っていた。
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