少女の正体2
「ハァ・・・ハッ・・ハァ~・・」
家に着くころには俺はものすごく息が上がっていた。
そりゃそうだ。4丁目から俺んちまでの距離は結構ある。
それをノンストップで走ったら息も切れるだろう。
だがこの少女は息が切れていない。それどころか汗ひとつかいていない。
どこぞの波紋使いだ。
「お、おい・・・お前・・」
「雫です!」
「すまん・・・し、ずくさん・・・」
「「さん」はいりません。なんですか?」
俺は息を整えて、
「あなたは本当に幽霊なんですか?」
「はい」
雫さ・・・、雫はニコッと微笑んでそう言った。
「とりあえず中入るか?」
「うん!」
そういうと俺たちは俺の家に入った。
「お父さんとお母さんは?」
「実家」
「独り暮らしなの?」
「あぁ」
「へぇ~」
・・・・・・・・・。
会話が続かない。
無理もない。
いまだに雫が幽霊だということを信じられない。
「なぁ本当に幽霊なのか?」
「しつこいなぁ。人には見えないんだから幽霊以外ないじゃんかぁ」
「まぁ、そうなるけど・・・」
「だから私は幽霊。何者にも見えない孤独な者・・・」
寂しそうに雫が言った。
「もしかしてお前、寂しかったのか?」
「なっ、別にそんなことなかったもん!」
「じゃあなんで今寂しそうだったんだ?」
「それはっ・・!一人が、寂しかったから・・・」
やっぱりなぁ。
その気持ちわかるよ。
よし、突然だが、独り暮らしをすると分かることがある。
最初は独りは気楽でいいな~、などと思っていた。
が、いざ独り暮らしをすると料理、掃除、洗濯、買い出し、と色々なことを独りでやらないといけない。
それは知ってたし、ていうか当たり前なことだから覚悟はしていた。
だから家事とかはちゃんとこなしていた。
けど毎日独りで生活していると何か物足りなく感じてくる。
そう、それはいろんなことを分かち合える人、だ。
家事のしんどさ。ご飯のおいしさ。会話の楽しさ。
そういった感情を誰かと分かち合えないのは、なんというか、胸が詰まるような感じがする。
まぁ家族より彼女と分かち合う方が絶対にいいと思うけど!
この子は独りで誰にも気づかれずに生きてきたんだ・・・。
あ、生きてないか。
ん?
ここで一つ疑問が浮かんだ。
幽霊と言っても種類は様々だ。
その中でも死んでいない幽霊、つまり「生霊」というのがいる。
生霊は言わば、生きた人の感情の塊みたいなものだ。
もしかすると雫は生霊の類いで実は死んでいないのかもしれない。
本人も死んだことを覚えていないし、もしかしたら生霊の可能性があるかもしれない。
「雫。もしかしたら生霊っていう線もあるんじゃないか?」
「どうしたのいきなり?」
「いや、雫は実は生存していて、今いる雫は生霊なんじゃないかと思ってな」
「ん~それはどうだろ。私4年ぐらい幽霊やってるし。生霊ってそんなに長く居れるのかな?」
「4年っ・・!」
4年も幽霊やってるのか!?
寂しくなるのも無理はない。
「あの~、雫さん。お歳はいくつで?」
「16歳!んで4年前は12歳!幽霊なのに成長するんだよ~。すごいでしょっ」
しかも歳をとる幽霊・・・!
はたして幽霊は歳をとるのか?
そんなもん誰にもわからない。
だが現実にこの子は歳をとっている・・・。
幽霊とはなんなのだろうか・・・。
俺は頭の中でいろんな考えが混ざり合い、眠くなり、
そして、考えるのをやめた。