少女の正体1
俺たちは廃墟を出て近くの路地裏にやってきた。
今からこいつが本当の幽霊か試しに来たのである。
だがしかし!
どう確かめればいい?
この人見えますか?って聞けばいいのか?
いやいやまてまて。
そんなことしたらどっちに転んでも恥ずかしいじゃないか!
見えたとしたら「何言ってるんですか?頭大丈夫ですか?病院行きますか?」みたいなことを言われだろう。
もし万が一見えないとしたら「何言ってるんですか?頭大丈夫ですか?病院行きますか?」と前者と同じことを言われるに決まっている。
さぁどうする!俺よ!
「あの~」
月下さんがまだかまだかと尋ねてくる。
「すいません月下さん、まだ試行錯誤中なので少々お待ちを」
「雫でいいよ」
いきなり呼び捨てですか・・・。
俺女の子と話すの苦手なんですよね。
だから名前なんかで呼んだことないし。
いや、あいつは呼んだことあるか。
「いや、そのまだ出会ったばっかなのに呼び捨てはちょっと・・・」
「あ、そういえば名前聞くの忘れてた!なんて言うの?」
無視ですか。さいですか。
「俺は―」
その瞬間聞き覚えのある声が聞こえた。
「おーい、夢宮 夕~」
正明である。
だからなんでこいつはこうタイミングが悪いんだ?
しかもフルネーム・・・。
なんか特殊能力でもあんのかコノヤロウ。
能力名オジャーマン、みたいな。
「なんだよコノヤロウ」
「何怒ってんだよ~」
「なんでもねーよ」
あ、そういえばこいつの反応を見ればわかんじゃね?
「夕って言うんだ~。良い名前だね」
雫さんが喋っている。
ナイスタイミング!
・・・・・・・。
だが正明はなんの反応もない。
死んではないけどね?
「なぁ正明」
「ん?」
「なんか変わったとこあるか?」
「なんだよ藪から棒に」
「いや、何もなければいいんだ」
マジか・・・。
明らかにおかしい・・・。
あの正明が女に反応しないなんて・・・。
「正明」
「だからなんなんだよ?」
「大丈夫か?」
「お前さんが大丈夫かっ!?」
俺は至って普通だ。
人が息をするぐらい普通だ。
なにもおかしいところはない・・・はずだ。
(あの~雫さん雫さん)
俺は小声で雫さんに話しかける。
「「さん」は余計だよ!」
雫は普通に喋る。
(本当に幽霊なのか?)
「何度も言ってるじゃない!私は正真正銘幽霊です!文句ありますか?」
・・・。
まじかよ。
「さっきからどうしたんだよ夕。頭でも打ったか?」
正明が話しかけてくる。
やべぇ、頭が働かねぇ。
混乱しすぎて今正明に構ってる余裕はない。
なのでとりあえず、
「わりぃ。ちょっと疲れてるみたいだ・・・。んじゃ!」
「え、ちょ、おいっ」
俺は正明を置いて全力で家に向かって走った。
その少女も一緒に・・・。