四丁目の廃墟1
そんなこんなで俺が通う高校、虹彩学園に着いた。あ、そういえば俺の名前を紹介するのを忘れて―
「おーい、そこの夢宮 夕」
おいおいおい、大事なとこ持っていくなよ!
そこで俺の名前を呼んだのは夏野 正明である。
こいつとは中学からの付き合いでしょっちゅう絡んでいる。俗にいう親友と言うやつだ。
「何だよ朝っぱらからハイテンションで」
基本的にこいつは朝からテンションが高い。朝が弱い俺にしてみればいい迷惑だ。
だが女に振られたときはこれでもか!というぐらいテンションがローである。
その時はいつもフォローしている。一応親友だしな。
「いや、なんとなく呼んでみた(笑)」
なっ、そのなんとなくで俺の自己紹介が無くなったのか・・・。
何というか、せちがれぇ・・・。
「そういえば四丁目の廃墟の噂知ってるか?」
正明はそう言いだすと俺が言葉を返す前に話を始めた。
「なんかマンションの廃墟らしいんだがどうも出るらしいんだ」
「・・・何がだよ」
「幽霊だよ。ゆ・う・れ・い。」
「へー」
「おいおい、なんでそんなに興味なさそうにすんだよ~」
興味がなさそう?ふん、
めちゃくちゃ興味あるよ!!!
あるあるだよ!
どれくらいあるあるかって、学校の先生が「今日は6日だから、6番の榎本。前に出ろ~」ぐらいあるあるだよ!
「んなのいるわけねーよ」
とりあえず信じないようにする。
信じないようにして本当だったときの嬉しさのために我慢する。
これもあるあるじゃね?
「お前も普通そう思うだろ~?」
「・・・なんだよその知った風な口は」
「いや、それがさ~、隣のクラスの山田っているだろ?」
確か山田は霊感があるとかそんなことを聞いたことがある。
霊感あるとかいいなチクショー。
「山田がどうした?」
「見たらしいんだ、廃墟の幽霊を」
「見たって言ったって、そんなもん信じられるかよ」
「そりゃあ俺も最初は疑ったさ」
「でもあんな証拠を見せられたらなぁ・・・」
「証拠?」
「ああ。写真だよ写真」
「写真って、もしかしたら合成かもしれねーじゃねーか」
合成に決まっている。絶対そーだ。
「夕も見てみろよ。絶対認めるからよ」
「そこまで言うなら見てやろーじゃねーか」
そんなに言われたらめっちゃ気になるじゃねーか!
というわけで隣のクラスに行くことになった。