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“ヤンデレ乙女ゲーム”のサポートキャラの私。

一作目「ファンクラブ会長がヒロインを“呼び出し”してみた。」

二作目「私が“ヤンデレ乙女ゲーム”に転生したら……」


これにて、三部作完結です。


私は、乙女ゲームのサポートキャラ ――中藤愛(なかふじあい)である。

ヒロインに対象攻略者の好感度や誕生日などを教えるのがその役目。


そう、ここは『乙女ゲーム』の世界…しかも『ヤンデレ』しか攻略対象者がいないというマニアが泣いて喜ぶ『ヤンデレ乙女ゲーム』の世界である。



(俺様とか、腹黒とか、ツンデレはどうした!!)



いや、そんな事は今は問題ではない。

私の右手には、どういう原理か“攻略対象者”たちの好感度などが判る端末(タブレット)がある。


その端末が、最近おかしいのだ。



この由々しき自体に、朝からドキドキと心臓の鼓動がうるさくて、登校した足でヒロインを捜していた。



「葵!」



そして、このゲームの世界の『ヒロイン』――吉水葵(よしみずあおい)を見つけ思わず声をあげた。

彼女は廊下で、誰かと話していてる様子で、私に気付き満面の笑をこぼす。





「愛ちゃん、おはよー」

「おはよー! あのね! 葵……!!!」



ゲッ


朝から最悪な奴と葵が話していた。


壁の影に隠れて見えなかったが、葵の隣に居るのは『攻略対象者』であり、教師でもある――赤松純也(あかまつじゅんや)(26歳 古典担当)





私は、この赤松が大っキライなのだ。





この世界が『乙女ゲーム』の世界と知っているのには理由がある。

私はこのゲームの世界で二度目の人生を送っている転生者なのだ。


一度目の人生で()がやっていたこのゲームが気になり、娘には内緒で(娘のデーターで)やってみた。

娘はその時、丁度“赤松ルート”を攻略最中で……


ゲームの劇中、赤松は馴れ馴れしく(エロい声で)娘の名前で呼び、身体を(エロい仕草で)触り(エロい音を出して)キスをして、最後には娘を(エロい表情で)刺して殺した。




虫唾が走った。


(エロしかないんかい!)


思わず、ゲーム機を放り投げた。



なーーにが、キャッチコピーが『君と俺と…これが真実の愛の形』だ。

お前は、ロリコンだ!! ヒロイン(17歳)を狙うただのロリコンだ!! いくら無駄に色気があって、ホスト系だけど、細身でスーツが似合って、たまに見せる笑顔が可愛いイケメンでも!! お前は聖職者じゃなくて、()職者だ!



こっそりゲームをやっていた事が娘にバレて(ゲーム本体に傷をつけた)しばらく口を聞いてくれなかったのもお前のせいだ!



娘の機嫌を取るために、駅前のケーキを買いに行った帰りに、バスの事故で呆気なく私は死んだ。



前世の名前とか生い立ちとか旦那の名前すら覚えていないけれど、その事だけは“しっかり”と覚えている。


(すべては、赤松(ロリコン)のせい)


娘に怒られたのも、私がバス事故で死んだのも!!



つい、天敵の赤松(ロリコン)に対して、酷い態度をとっても大目に見ていただけるだろう。


「先生、葵になんの用ですか?」


そして、冷たい声を出して、葵を庇うように立ってしまうのも許してもらいたい。


(葵は私が守る)


前世の娘と(ヒロイン)をつい重ねてみてしまう。最後の記憶の娘も多分、今の私たちと同じ年だったから。

転生して葵の『サポートキャラ』になったのも、天が私に与えてくださった使命という事にしよう。




()は、俺が嫌いだよなー」

「はい。 それと、名前呼びはやめて下さいと何度も言っていますよね? ………このロリコン(ボソ)」

「お、おい。聞こえているっつーの。ちょっとはオブラートに包もうぜ。先生だって、傷付くんだから。まったく、俺に反抗的な生徒ってお前くらいだよな、吉水?」



赤松(ロリコン)は肩をすくめて(エロい顔で)ニヒルに笑って、葵に同意を求めた。



(悪ーございましたね! なーにが傷付くんだ。お前はすぐにヒロインを刺す人種(ヤンデレ)のくせに! 葵に近づくな!)


赤松(ロリコン)という攻略キャラは、暴力性ばっちりのヤンデレである。“ヒロイン”の全てを支配し、思いどうりにならないと、ヒロインを傷つけ、最終的には殺してしまう。 監禁するよりも先に()っちゃうのだ。

教師でありながら凶暴で獰猛で最悪な性質を持つ。危ない性格の奴で、顔以外は良いところ無しな奴なのだ。




「あーいー? あんまり反抗的な態度をとっちゃってくれてるとー。ヒドイ事するよ?」



ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ



その声に背筋が凍りそうになる。

え? なんで?

私、サポートキャラよ?




「赤松先生、ダメですよ! 愛ちゃんをいじめたら!!」

「いやいや、俺はいじめていないよ? むしろ可愛がっていると思うけど?」



葵と赤松(ロリコン)が、仲良く話しているのを見て、我に返った。


(あれ? この二人仲良くない? もしかしてルートに入った?)



慌てて、二人に隠れて端末で好感度をチェックする。



ここ、数日おかしな事が起こっている。

このゲームは高校二年生の新学期からスタートなのだが、その時点で一番好感度が高かったのは、生徒会長である、白兼聡(しろがねさとし)だった。

このままでは、白兼ルートにはいってしまうと思った矢先、白兼が自身のファンクラブ会長と付き合い出した。

そして、端末の白兼の欄には、赤字で『攻略不可』と書かれたのだ。


次に、清流の三つ子ルートに入りそうになった途端、別のクラスの……藤田さん? の周りを三つ子がウロウロしだし、彼女はある日突然、学園に来なくなった。

端末の清流、3人の欄にも、赤字で『攻略不可』という文字。


後は、同級生キャラの――緑川拓海(みどりかわたくみ)もいつの間にか、彼女を作って『攻略不可』になっていた。


そして、最後の攻略対象者…赤松純也。



(確か、前に見た時はゲージが半分弱位、埋まっていたはず…)



……


……


「え?」




赤松の欄には


――『攻略不可』の文字。




ガタガタガタガタ





なぜか、足元から身体中に震えがくる。

悪寒が走る。




いや、深く考えるのはよそう。

おめでたいことじゃないか。

これで上手くいけば 葵は私との『友情ルート』にはいる。

そして、彼女を傷つけずに高校生活を送れるのだ。


気持ち的には、好感度MAXだけど…

私の好感度はどうなっているのかな?



なぜか震える指で、端末を操作した。

そして、そこには……





中藤愛 



―――『攻略不可』







ガシャンッ






私が、端末を落とした音にびっくりして、二人が私の方を見る。



「大丈夫か?」



赤松に肩を支えられても、呆然としている私は振り払える元気はない。


「愛ちゃん、顔が真っ青だよ! 保健室に行かなきゃ!」


私の落とした端末を拾い、葵が心配そうに顔を覗き込んだ。



「俺が連れて行くから、吉水は教室に戻りなさい」

「…はい。愛ちゃん……頑張って(・・・・)ね」




……頑張って(・・・・)

お大事に(・・・・)』じゃなくて?







赤松に引きづられるように、保健室に連れて行かれる私には、幻聴の様に聞こえたその言葉の意味を考える余裕はなかった。





そして、保健室には養護教諭の姿はなく、赤松が後ろ手で鍵を締め…その顔は怪しく微笑んでいたのを―――私は見ていない。











****




赤松と愛の姿が見えなくなった後、葵は愛が持っていた端末を開いて、ある項目をチェックした。


各キャラクターのイラストが灰色になり、その上には『攻略不可』の烙印が赤く刻まれている。




そして画面に浮かぶ……



『ノーマルエンド』



つまり、誰とも結ばれずにゲーム終了を意味する。



(みんなゴメンネ? だって私の好きな男の子は別にいるんだもん)



葵の携帯の待ち受け画面には、3つ年上の義兄の写真。




そして、誰にきかせるでもなく、吉水葵(ヒロイン)は呟く。



三次元(・・・)でヤンデレとかないわー」











→おまけ「ヤンデレがいのない彼女。」に続く



*補足*


主人公 中藤愛(なかふじあい)

みんなのオカンと呼ばれるくらい世話好き

赤松にロックオンされているが、自分はサポートキャラなので、恋愛はないと思い込んでいる。 たまに悪寒が走るのも「風邪かな?」くらいにしか思っていない。


攻略対象者 赤松純也(あかまつじゅんや)

自分の思い通りにならないと狂暴化するが、順応だととてつもなく甘い。

自分の性癖に気付いているはずの、愛が反発的なのが命知らずで面白いと思っている。


ヒロイン 吉水葵(よしみずあおい)

転生者。

この“ヤンデレ乙女ゲーム”のコアなファンでもあった。

ヒロインには、ノーマルな好きな人がいるがため、攻略対象者たちに、彼らの好きそうなタイプの子を誘導しあてがう。


『ヤンデレは、二次元だからこそ萌える』というのが、彼女の座右の銘。

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