「地上と戦争のはなし」より
【前略】
私たちが、このティエラ・ゼムリャへとうつり住むより前、人々は「地上」とよばれる場所にみな住んでいました。みなさんの中には、むかし、くらしていた方もおらっしゃるかもしれません。
地上は、人間がくらすにはとてもきびしい環境でした。そこには、壁や、天井といったものがありませんでした。大気の温度は安定せず、ときには空から水がふってきたり、またそれが凍ったものまでふってくることもありました。私たちのおじいさんやおばあさん、さらにそのおじいさんやおばあさん、ご先祖さまたちはみな、その地上でくらしていたのです。
さて、その地上という場所はどこにあるのでしょうか。こたえは、私たちの真上にあります。私たちは地上から下へ下へとほりすすんだのです。
私たちは、今でこそ大地の中のティエラ・ゼムリャにくらしていますが、昔は人の住む場所といえば地上しかありませんでした。それが約50年ほど前のことです。人々が今の私たちのようにここにくらしはじめるようになったのは、みなさんも知っている蒸気機関が開発されるようになってからでした。
蒸気機関を手に入れたことによって、人間の力はとても大きな物となりました。大地をほりすすむ速さもどんどん速くなっていきました。
【中略】
地上の人々は、太陽と呼ばれる物をあがめていました。それは地上に熱と光をもたらし、人が生きるために必要なエネルギーを与えるものでした。私たちで言うところの、ノーヴァ巨炉がそれにあたります。昔の人は、太陽こそが人々をみちびく神さまであると信じていました。
しかし、太陽はそのエネルギー安定して地上に与えることはありませんでした。効率的なものではなかったのです。人々は不安定な太陽を捨て、地中に潜り、ノーヴァ巨炉をエネルギーとして用いたのです。
これにより、人々は安定した幸福とゆたかなくらしを手に入れました。そうして、技術は発展していき、ティエラ・ゼムリャはさらに大きくなっていきます。
【中略】
遠くの世界には、まだ地上に住む人々がたくさんいるのです。太陽を神さまであると信じている人々がたくさんいるのです。私たちはそれらの人々を地上から開放しなければなりません。そのためには、戦争に勝つために技術を発展させ、遠くまで足を伸ばすためにティエラ・ゼムリャをより巨大なものにしなければならないのです。
【後略】