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…としての  作者: 蒼威月
4/4

その4

これで完結です



楽しんでいただけると嬉しいです!!

2週間たった

あれから私とかずさんは連絡をとっていない

夏音さんにも翔太さんにも迷惑をかけているのに




…私が悪いのに

恐怖のあまりかずさんを避けてしまったのは私

謝りたくても謝れないのは私

勇気のない自分がひどくいやで

かずさんに嫌われていないかただ不安で

…悲しくて




…寂しくて




かずさんに会えないのが

声が聞けないのが

こんなにも辛いなんて思わなかった




自覚した

…私はもう既にかずさんが好きだったんだ

…こんなにも好きになっていたんだ



「今頃気づいたの」

夏音さんが呆れ顔で私を見た

「…友乃ちゃんはどうしたいの?」

…どうしたい?

…そんなの決まってる

ぼろっとバカみたいに大粒の涙が溢れだした

「…会いたい…!!」

顔を手で覆う

嗚咽がこらえきれない

会いたい

会いたくて会いたくてたまらない

…かずさん…!!




一度思ってしまえばもう思わずにはいられない

一度会いたいと思ってしまえばその想いはもう止められはしない

夏音さんが翔太さんに聞いてくれたのを頼りに、私はかずさんのもとへ向かった




…ここにかずさんが

私がたどり着いたのは小さなスタジオだった

かずさん達は今日ここで練習をしているらしい

…入りづらい…

来たのはいいけども、少し怖じ気づいてしまった

…どうしよう

すると、賑やかな声と共にスタジオのドアが開いた




「あー!友乃ちゃん!!」

出てきたのは翔太さんを初めとしたメンバー達だった

あらかじめ夏音さんから連絡がいっていたのだろう

翔太さんは見透かしたように微笑んだ

「あ…」

翔太さんの後ろ

会いたくて会いたくてたまらなかった彼がそこにいた

かずさんは驚いたように目を見開いていて

かずさんを見た瞬間私の瞳から、ぼろぼろと再び涙が溢れだした



気づけば私の足は動いていて

勢いよくかずさんに抱きついていた

「と、友乃?」

慌てたようなかずさんの声に再び涙が溢れてくる

そんなに長くはなかったはずなのに、かずさんの声がひどく懐かしく聞こえる

翔太さんはにっこり微笑んで、他のメンバーを連れてスタジオの中に戻っていった




「友乃」

かずさんはぽつりと呟くと、優しく私の頭を撫でてくれた

「…っく…か、かずさっ…」

上手く喋れない

伝えたいことはたった1つなのに

かずさんは私が落ちつくように優しく背中を撫でてくれていた

その優しい手に安心して身体を預ける

…どうして私はこの手を怖いだなんて思ったんだろう

はりつめていた心がゆっくり溶けていく

…かずさん

…かずさん、私ね




「…好きです」

「!!」

かずさんが目を見開いて私を見る

「…私、かずさんが好きです。ファンとしてじゃない、私個人の感情です」

目をぎゅうっと瞑る

…怖い

…嫌われてたら、と考えるとひどく怖い

…でも言わなくちゃ

伝えたい

「私はかずさんが好きです」

「…」

怖くてかずさんの顔が見れない

かずさんは何も答えない

だんだんと不安がつのっていく

「か、かずさ…」



「あの時」

私の言葉を遮るようにかずさんが呟いた

「あのライヴの時…話しかけた時、俺楽しそうな人好きだって言ったけど…」

かずさんが少し押し黙ってから口を開く

「…友乃に話しかけた理由…それだけじゃなかったんだ」

「…?」

「あー…そのだな…」

そうっとかずさんの顔を見上げると

かずさんの顔は耳まで真っ赤で

私も赤かったけど、きっと同じくらい赤い

かずさんはしばらく目を泳がせていたけど、しばらくすると意を決したように口を開いた

「…はっきり言えば…一目惚れ…だったんだよ」

「!?」

驚いて目を見開く

目を見開いた瞬間、止まりかけていた涙が再び溢れ出す

カアアッと元から赤かった顔が更に赤くなるのを感じた



かずさんはしがみついたまんまだった私を、ぎゅうっと抱き締めた

「Kazuとしてじゃない、高梨和彦として言う」

かずがそっと私の耳元に顔を近づける

「…好きだ」

ぽつりと耳元で呟かれた言葉に、涙が止まらない

こらえきれずに嗚咽が漏れる

「やっと整理ついた」

かずさんは安心したように呟いて、私を強く抱き締めてくれた

…嬉しくて

…幸せで

私はかずさんにぎゅうっとしがみついた

「…愛してる」

かずさんが優しく囁いてくれた言葉に泣きながら返す

「…私も…ですッ…」

私の言葉にかずさんは嬉しそうに微笑んでくれて

私もかずさんに微笑み返した

おずおずとかずさんの顔が近づいてきて

私はゆっくり目を閉じた









あれから5年

私はぼんやりと窓の外を眺めていた

すると私のいる部屋のドアがノックされた

「どうぞ」

私が答えるとドアが開いて

翔太さんと夏音さん、祐哉さんが顔を覗かせた

「よ!!」

「友乃ちゃん!!すっごいきれい!!」

三人に向かって笑みをこぼす

「和彦さんの方は覗いたんだけど、まだ準備中だったわよ」

「涼は会場で待ってるってさ」

翔太さんがニヤニヤしながら続ける

「…にしても思ったより早かったな〜」

「ふふ、ほんと。友乃ちゃん、」

夏音さんが私を見る

「…結婚おめでと」

翔太さんと祐哉さんも同じ言葉を繰り返す




今日私とかずさんは結婚する

あれからいろいろあったけど、私達が離れることはなかった

翔太さんと夏音さんはもう結婚していて、夏音さんは今妊娠中

もうすぐ赤ちゃんが産まれる




「友乃ちゃんが幸せそうで何よりだわ。和彦は不器用だからいろいろ苦労すると思うけどな」

「ふふ」

「大丈夫です。私、何があっても和彦さんのそばにいますから」

「そ。…ん、早速」

「え?」

「ほら、新郎のお出ましだ」

廊下をばたばた走る音が近づいてくる

…そう言えばさっきから祐哉さんがいない

「…もう」

ドアがノックされる

「…どうぞ」



「友乃!」

ドアからかずさんが顔を覗かせた

「和彦、お前少し待ってろよ」

「だって祐哉のやつが…」

呆れたような翔太さんの声に、かずさんが少しぶすくれた顔をした

あー…祐哉さん…あなたって人は…

大方かずさんをからかってきたのだろう

「友乃」

「ん?」

「…きれいだ」

「あ、ありがとう」

急に言わないでほしい…

照れくさい

「あーはいはい、俺らは二人の邪魔にならねえようにそろそろ行くわ」

「会場で待ってるね」

そう言って翔太さんと夏音さんは部屋から出ていった




「…」

「いよいよ…だな」

「うん」

「…幸せにする」

「…うん」

ぽろっと涙がひとすじこぼれ落ちた

「化粧落ちるぞ」

「だって…嬉しくて」

かずさんはふうっと息をつくと、私の頬に手をあて

額にそっとキスをした

「!!」

「お、涙止まったな」

「し、式の前だよ…」

「だからおでこにしたんだろ」

「…もう」

「でも涙止まったろ」

「うん…」

かずさんは嬉しそうに笑って

真面目な顔をして私を見た

「?」

「式じゃ言えそうにないから言っとく」

「…」

「友乃に会えて良かった。…ありがとな」

「私もかずさんに会えて良かった。…ずっと一緒にいてね」

「もちろん」

どちらからともなく微笑みあう

かずさんがゆっくり立ち上がって私に向かって微笑んだ

「じゃ、先行ってるな。会場で待ってる」

「うん」





会場の外でヴェールをつけて準備をする

緊張と、嬉しさと、幸せがごちゃまぜになって

この道の先には彼が待っている

その先はずっと二人で歩いていく道だ

…彼が待っている

私は彼と歩む幸せな未来を願いながら、一歩、彼に向かって足を踏み出した


これで完結です



最後まで読んで下さってありがとうございました



これはがっつり続編や番外編を予定してあります

なので伏線はりまくってあります



そう言えばかずさん達のバンドのベーシストさんを1回も出してなかったので、最後にちらっと名前だけ出してます

涼さんです

Ryoさんです

イメージとしては名前のとおり爽やかな常識人さんです




楽しんでいただけたでしょうか?

続編、番外編も楽しみにしてていただけると嬉しいです

よろしくお願いします

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