その3
頑張りました!!
今回はライン引きが難しかったので一応タグつけておきました
楽しんでいただけると嬉しいです!!
「……」
帰り道
かずさんはずうっと無言だった
…どうしたんだろ…
不安でたまらない
ちらりと隣を歩くかずさんを盗み見る
先程から眉根をよせて考え込んでいるみたい…
…なんか怒ってるのかな…?
ああ、もう家に着いちゃう
このまま離れたくない…
ぴたっと足を止めてかずさんの服の裾を掴んだ
かずさんが驚いたように目を見開いて振り返った
「どした?」
かずさんが私の顔を覗き込む
「…かずさん…なんか…怒ってる?」
「へ?」
かずさんがきょとんとした顔をする
ぼろっとバカみたいに大粒の涙が溢れだした
「だって…さっきっからずうっと…黙ってるから…」
涙がどんどん溢れてくる
止まらない
「なんか…怒ってるのかな…って…」
かずさんは初めはきょとんとしていたけど私が言葉を紡ぐにつれて、困った顔になった
私が言うだけ言うと、かずさんは困った顔のまんま私の頭に優しく触れた
「怒ってねえよ…ただ…」
そのまま頭をぽんぽんと軽く叩かれる
「何て言ったらいいんだろな…」
かずさんは苦笑すると、私の頭を撫でていた手を下ろして私の涙を指で拭った
「…?」
「怒ってねえから…友乃は気にすんな?ただ…自分の中で整理がつかないことがあるだけ」
だけど、とかずさんは前置きして私を見た
優しい目で
「もうちょっとで整理がつきそうなんだ。整理できたら友乃に聞いてほしい」
私に聞いてほしいと言ってくれたことが嬉しかった
例えその内容がどんなことであれ
「私で…いいんですか?」
「ん。友乃に聞いてもらわないと意味ないことだから」
かずさんは頷くと優しく微笑んだ
「…分かりました。待ってます」
「ん」
かずさんは満足そうに頷くと、今度は私の手をとって歩き出した
あれから3日がたった
その間、かずさんは毎日会いに来てくれた
休日を挟んだのでちょっと遠出をしたりもした
けど、さすがに部活を何日も休むわけにはいかないと思って、そのうち2日間は部活に行こうと思ったんだけど、行くと何故かいっつもOFFだった
不思議だったけど、それをいいことに私は毎日かずさんに会っていた
あれ以来かずさんはあの話をしない
整理できたら話してくれると言ってたし、私は聞かないようにしていた
それに私にも新たな悩みができていた
それは自分の気持ちについてだった
私は今まで無邪気にかずさんを慕っていた
好きだと思っていた
もちろん今も好きだ
でもその感情が変わった気がしていた
私の『好き』はどういう『好き』なの?
夏音さんの翔太さんに対する感情はきっと『Love』のほうの『好き』だ
じゃあ私は?
そう考えた時に分からなくなった
かずさんといると純粋に楽しい
もっと一緒にいたいとも思う
それは『好き』だから?
だとしたらその『好き』はどういう『好き』なの?
『Love』?それとも『Like』?
夏音さんに相談してみたら少し呆れた顔をされた
夏音さんに言わせるとこうだ
『端から見たら友乃ちゃんも和彦さんも分かりやすいのに、お互い分かってないの?…それは自分で理解しないと意味ないよ』
…自分で理解…
そう言われてからずうっと考えているのに…
…分からないよ
「わり、遅れた」
かずさんの声が私を現実に引き戻した
そうだった
私は今珍しく遅れたかずさんを校門で待っていたんだった
「いえ、大丈夫ですよ」
私は笑って返す
かずさんはほっとしたように笑うと私に向かって首を軽く傾げた
会ううちに分かってきた
これは『今日はどうする?』の意味
んー今日は…
そうだ
「かずさん今日はバイクですか?」
「ん?ああ今日はバイク」
「じゃあまた後ろに乗せて下さい!!ドライブ?したいです!!」
「おっけ、分かった」
かずさんはにっこり微笑んで頷いた
「おお〜!!かずさん、すごいすごい!!海がめっちゃきれいですよ!!」
「おお〜!!マヂだ、すげえ!!」
帰り道
私達は初めて二人で出かけた時の海沿いの道を走って帰っていた
夕焼けが染めた海は、淡くオレンジ色にきらめいていて、とても幻想的だった
「きれい…」
「だな…」
二人揃ってぽつりと呟く
海の明るいオレンジ色はかずさんの髪の毛みたいだった
「…かずさんの髪の毛みたいです」
「俺の?」
かずさんは不思議そうな顔をした
「はい。明るいオレンジ色です。かずさんの髪の毛はオレンジよりの茶色ですけど」
「ふーん…」
「かずさんの髪の毛もきれいです。私この色好きですよ」
「っ!!」
私がそう言った時のかずさんのほおは夕焼けのせいか、淡く染まって見えた
「…んなこと言うな……照れる」
少しぶすくれた返事が返ってきて
私はおもわず噴き出した
私の笑い声がバイクの生み出す風に乗って流れていく
私につられるようにかずさんも笑い出した
かずさんの笑い声も風に乗って流れていく
私達二人の笑い声が流れていった
その次の日
私はやることがあって、一人教室に残っていた
今日はかずさんもちょっと遅くなるって言ってたし…
部活もやっぱりOFFだったから教室でちょっとヒマを潰そう
そう思っていると、いきなり教室のドアが開いた
驚いてそちらを見ると、隣のクラスの男子が立っていた
彼を見た瞬間私の足が震えだした
だって彼は…
悪い噂の絶えない人だったから
噂じゃない
実際私の友達も彼の被害を受けかけた
彼は別に暴力をふるうわけではない
彼は強姦をすることで有名なのだ
彼の両親はとてもお金持ちの権力者で、先生すら彼には逆らえない
彼の整った顔の中央辺りにある目が私を捕らえた
彼の唇が妖しく弧を描いた
「あ…」
逃げなきゃ
そう思うのに足がすくんで動けない
彼がゆっくり近づいてくるのに
逃げなきゃ
逃げなきゃ
逃げなきゃ…!!
「ッ…!!」
「へえ…まだ残ってたんだ?」
低い声
普通に聞けば耳障りのいい声なんだろう
でも今の私には恐怖の対象でしかなかった
「遅くまで残ってると危ないよ?……俺みたいなのがいるから」
彼が私の顎を乱暴に掴み上げた
やだやだやだ!!
助けて!!
恐怖からか、涙が溢れてきた
ペロッ
「きゃっ!?」
溢れた涙を彼が舐めとった
そのまま彼の唇が私のそれに押しあてられた
「ッ!!」
やだ!!
やだよ!!
彼の手が私のブラウスのボタンに触れるのが分かった
同時に口がこじ開けられ、彼の舌が侵入してきた
やだやだやだやだ!!
気持ち悪い!!
やだ!!
誰か助けて!!
その時
机の上に置いておいたケータイが鳴り出した
…電話だ
この着メロは…
ディスプレイの表示は『高梨 和彦』
そうだよ
かずさんだけ他の人と着メロ別にしたんだもん
彼が私のケータイを取ろうと手を伸ばした
私は彼の力が緩んだ隙に、彼を思いきり突き飛ばした
彼が別の机に突っ込むと同時に私は机から鞄とケータイをひったくるように取って教室を飛び出した
「あ?友乃!どうしたんだ?珍しく電話出ない…から…し…ん…ぱい……」
かずさんの声が途中で途切れた
そりゃそうだ
今の私は髪を振り乱したまま泣いているし、ブラウスのボタンも外れかけている
「どうした!?誰かにやられたのか!?」
かずさんが驚いて駆け寄ってきた
そして私に手を伸ばした
「ッ!!」
私はその手を避けてしまった
「え…」
「あ…」
足が再びがたがたと震え出した
「友…乃…?」
「あ…」
かずさんを傷つけると分かっているのに
足は、心は、
言うことを聞いてくれない
「か、かず…さ…。ご、ごめんなさい…!わ、私…今日は…か、帰り…ます…!ごめんなさい…!!」
私はかずさんに背を向けると一目散に走り出した
後ろでかずさんの私を呼ぶ声が聞こえたけど、私は足を止めることができなかった
次の日
私は学校に行けなかった
ふと枕元のケータイを見ると、チカチカと光っていた
メールだ
重い指で画面を開くと、メールの差出人は翔太さんだった
件名:無題
本文:
やっほー( *・ω・)ノ
和彦のことなんだけど、なんかあったの( ・◇・)?
なんか昨日あいつ珍しくめっちゃ怒った顔で帰ってきてさー(´・ω・`)
友乃ちゃんなんか知らない?
P.S
俺ら今日から仕事再開だからまたしばらく和彦には会えないよ?
ケンカしたーとかなら早く仲直りしたほうがいいよ!!(o^-')b
かずさんとは真逆の絵文字いっぱいの賑やかなメールだ
…かずさん達今日から仕事なんだ…
…かずさんに謝らなくちゃ…
私はもそもそとベッドから身を起こし、かずさんにメールを打とうとした
途端、指が震え出した
……怖い…!!
怒って帰ってきたのが私のせいだったら?
昨日私が避けたことで怒ってたら?
昨日のせいで嫌われてたら?
……怖い!!やだ!…怖いよ…!!
私はケータイを放り投げると頭から毛布をかぶった
指だけじゃない
身体全体が震えて止まらない
昨日感じた恐怖よりはるかに怖い
……かずさんに嫌われるのが怖い…!!
前回あと1話ぐらいで完結するなんて言いましたけど…
ごめんなさい
思い付いたネタをどんどん詰め込んでたら収まりませんでした…
たぶんもうちょっと続きます
中編のつもりだったのに…
次回も頑張りますのでよろしくお願いします!!




