【第16話:蒼の分裂】
ふたりの足元、蒼の霧が二つに裂けた。
かたく結ばれた霧が、まるで刃のように縦に割れる。
げんじつは二つの空間に分かれ、
影だけが一本につながっている。
ユウタは驚いた。
「……蒼が、二つに……」
マリも同じ光景を見ていた。
「ねえ、ユウタ……ここ、どうなってるの?」
分かれた世界では、影だけが正確な座標を示す。
数字も二つに分かれ、順序が完全に同期していない。
ユウタの視界では数字が順に進む。
218 → 219 → 220
マリの視界では数字が止まったまま。
217 → 217 → 217
「止まってる……?」
ユウタは疑問を口にする。
影は二人を結ぶ一本の線として、
上の世界と下の世界を貫いている。
その線が、ゆっくりと光を帯びる。
霧の裂け目の奥で、影が動いた。
ユウタは手を伸ばしたが、届くのは霧の裂け目だけ。
マリも同じで、影に触れることはできない。
「影だけ……が本当の私たちの居場所……」
ユウタはつぶやいた。
「影が、世界の真実を知っている……」
蒼光の上層では、数字が刻一刻と変化する。
深蒼の下層では、数字は固定され、記憶のズレが累積する。
両者の世界は交わらない。
だが、影は一本の道として両者をつなぐ。
その瞬間、霧の裂け目がさらに広がり、
新たな数字が浮かび上がった。
221
数字は上下二重の蒼を照らし、
ふたりの視界に異なる速度で反映される。
蒼の分裂が完成した瞬間、
影だけが、ふたりの間に存在する唯一の真実として
静かに輝いていた。




