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【第1話:街に落ちた影】

あらすじの簡単な暗号は解けましたか?

ここから先は難しい暗号かもですが解きながら楽しんで下さい

午後四時の光は、まだ夏の名残を空に貼りつけているようだった。

ユウタは歩道をゆっくり進みながら、画面の通知を何度も確認した。

同じ文言が、たまに引っかかるように表示される。


街に隠されたものを探せ。


その一文は妙にじっとりしていて、読み返すたびに胸の奥側で重く沈む感じがした。

道の向こうを吹き抜ける風は熱を帯びながら、どこか乾いた匂いを伴っている。

コンビニの前に差しかかるころ、ユウタの足がぴたりと止まった。


掲示板に、赤い紙が一枚だけ貼られている。

ほかの貼り紙は色あせているのに、それだけは今日貼られたように鮮明だった。

近づくと、ほんのかすかに波打つような質感が指先に返ってくる。


印刷されているのは四つの文字と数字の組み合わせ。


L2 A1 B3 Y2


なにかの暗号のようだった。

しかし規則性がありそうで掴めない。

さらに紙の端に、目を凝らさないと見えないほど小さな凹みがある。

まるで鍵の刃を押しつけた痕のように歪んでいた。


「また変なの見つけたの?」


背後から声がしてユウタが振り返ると、マリがコンビニ袋を提げて立っていた。

ユウタの手元の紙を覗き込み、彼女は小さく眉を寄せる。


「昨日の通知のやつでしょ?」


思わずユウタは息を呑んだ。

昨日のことは話していなかったはずだ。


「…どうして知ってるの?」


「スマホずっと光ってたし。気づくよ、さすがに。」


その笑顔は柔らかいが、どこか影を落としたようだった。

ユウタは赤い紙に視線を戻す。

数字の位置を考え、二人で並べ替える。


A1 → A

L2 → L

B3 → B

Y2 → Y


それを順に置くと、LABY。

迷宮。地下街の別名として知られた呼び名だった。


マリは階段の方を指差す。

「行くしかないんじゃない?呼ばれてるみたいだし。」


ユウタが頷こうとした瞬間、スマホが震えた。

画面には、匿名メッセージ。


進め。だが、もう一度見ろ。


何を?

ユウタは紙をもう一度見る。

右下の小さな凹みが、さっきより深く見えた。

照明でも変わったのかと思ったが、違う。

紙自体が熱を帯びているように見えた。


「どうしたの?」

マリが覗く。


「いや…ちょっと、変な感じがして。」


説明できない。

ただ、紙が“見ている”ような気配だけが、皮膚の表面にまとわりつく。


ユウタは深呼吸し、地下街へ続く階段を見下ろした。

マリが隣に立ち、軽く息を吐く。


「行こ。」


階段は昼でも薄暗く、冷えた空気がゆっくりと上がってきていた。

一歩踏み出した瞬間、背中が重くなるような感覚が走る。

まるで誰かに目をつけられたみたいに。


二人が階段を降りると、地上とは別種の静寂が広がった。

天井の蛍光灯はところどころ切れていて、明暗が規則的に揺れている。

遠くで歩く誰かの足音が響き、しかし姿は見えない。


ユウタは振り返る。

階段の上、赤い紙がわずかに揺れた気がした。

風など吹いていないのに。


それはまるで、

「気づいているだろう?」

と問いかけてくるようだった。


ユウタは目を逸らし、マリと並んで地下の通路へ歩き出した。

歩くたび、足元が冷えていく。

湿った壁の匂い、古い換気扇の音、見えない誰かの視線。


迷宮は静かに動き始め、二人を迎え入れていた。


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