蛇口推測1
プレイヤー達はゲーム会場で朝を迎えていた。布団などない硬い床で雑魚寝をしていた。もちろん寝具がないので睡眠環境は決して良いとは言えない。
「おい、お前いびき煩いんだよ!寝れなかっただろ。」
ザック・マグワイアはスティーブン・ハンソンに言った。
「文句はあの理不尽なゲームマスターに言ってくれ。こっちもこんな所で寝かせられてムカつくんだよ。」
「お前はキレやすいやつだな。」
サーマン・ゴンザレスが言った。
「黙れ、クソ野郎。」
「ゲームマスター、ご飯とかないのか?」
ジョージはお腹が空いてイライラしていた。
「おはよう、プレイヤー諸君。朝ごはんはこれだ。」
ジェイはモニターに出てきた。人数分のパンがプレイヤーの目の前に落ちた。
「これだけか?」
「そうだ。何か問題でもあったか?」
「こんなんじゃ腹は満たされないんだよ!」
「そう、文句を言うならそのパンすら与えてやらないけどな。どうする?文句を言えば食べれなくて死ぬ。つまり全員死ぬことになる。それでも良ければ文句を受けつける。」
「食えば良いんだろ。俺達もそんな馬鹿じゃない。」
ウィル・ムーアが言った。
「何これ。全然味しない。何て物を食わすんだ!」
ディーン・スタスキーは抗議する。
「やめろ!少しは頭を使え。飢えで死ぬのは勘弁だ。」
ジョージがパンを食べながら言った。パンは味がほとんどなく後味がかなり良くなかった。
「どうやらこのパンが嫌いなようだな。だけど安心しろ。このパンは健康上全く問題はない。このパンを毎日食べれば飢えることもないし栄養バランスが崩れることもない。俺は君達のことをちゃんと保護してやってる。君達に犯罪者には高級ホテルなみの対応をしてる。」
「どこが高級ホテルだよ。」
「俺は犯罪者じゃないけどな。」
「俺もだ。動物を愛してるだけなのに犯罪者扱いされるなんてな。」
ジャクソン・ストレイスとロバート・バイロンは言った。
「自分達は潔白だと言ってるなんてくだない。」
リック・ウィザースプーンは2人を嘲笑った。
ゲームマスターはプレイヤーの手当てをしないのが原則だが毎日餌として味のパンを与えるのが義務だ。
「食事が終わったらまた俺から話がある。それではまた。」
ジェイが画面から消える。そして渋々とプレイヤー達は美味しくないパンを食べた。そして全員食べ終わる。
「どうやら食べ終わったようだな。それでは第1ゲームを開始する。」
「どんなゲームなんだ?」
サーマンが聞いた。
「第1ゲームは蛇口推測だ。」
「蛇口推測?何だそれ。」
「どんなゲームなんだ?」
ディーンが聞いた。
「ルールを説明する。この会場にはたくさん蛇口を登場させた。」
蛇口はどんどん現れる。
「この蛇口で何をするんだ?」
「最後までルールを聞けば分かる。蛇口にはそれぞれ番号が書いてある。計800個の蛇口がこの会場にある。その中から指定された6つの飲み物がどの蛇口から出るか当てろ。全部正解したら第1ゲームはクリア。ただし30分以内に答えなければ最初からやり直しだ。それと間違えたら最初からやり直しだ。指定した飲み物は1回しか説明しない。ゲームに関する質問があれば受けつける。」
「飲み物はお酒もあるのか?」
ディーンが聞いた。
「そうだ。」
「最高だな。」
「これ以上質問ないならゲームをはじめる。」
プレイヤー達の反応はなかった。
「指定の飲み物はミルクティー、コーラ、ココナッツジュース、カモミールティー、ダージリン、ウォッカだ。これらを当てろ。それではゲームスタートだ。」
プレイヤー達は蛇口に向かい走る。
「これか?」
プレイヤー達は蛇口をひねる。
「これか?何だオレンジジュースか。」
「そんなの色見れば分かるだろ。」
「牛乳だ。」
プレイヤー達はまだ答えにはたどり着かない。
「これはコーラか?」
ウィルが蛇口から出る茶色の飲み物を飲む。
「何だよこれ。不味すぎる。」
彼は飲んでた物を全て吐いた。
「ゲームマスター、こんな不味い飲み物は何だ!」
「おやおや、ゲーム中に質問か。お前に親切に教えてやろう。」
モニターからジェイが出て来た。
「これは土に水を混ぜた飲み物だ。」
「ふざけんな!人様に何飲ませてんだ!」
「そう騒ぐのではない。ちゃんと細菌は除去してある。安心したまえ。」
「そう言う問題じゃないんだよ!こんなゲームやってられるか!」
「君達にはぴったりな飲み物だけどね。」
「ふざけんな。俺はこのゲームやらない。」
「そう。それなら好きにすれば良い。だけどここを抜け出すことは君にはできない。このゲームをクリアしなければ脱出は不可能。一生この環境で過ごさなければならない。毎日支給するのは味気のないパンだ。それに寝る環境も充実してない。頭が悪い君でもどうしたらいいか分かるよな?」
「クソ!」
ここは暴動も起こせないような小さな独裁的な環境だ。
「これ美味しくない。不味い。」
「これミントティーだろ。指定されたのはカモミールティーだ。」
「コーラだ。何だこれしょっぱい!」
「これか。君達はそんなに味わったことないけど醤油だ。」
「醤油?ふざけんな!」
「こんなの飲んだら死ぬだろ!」
「文句はいくらでも言うが良い。その間で時間はどんどん流れていく。」
プレイヤー達はがむしゃらに飲んで行く。
「これレモネードだ。」
「これなんだ?」
「バルサミコ酢かよ!」
中には調味料とかも含まれていた。
「これも酢だ。」
「おい、俺の所に吐くな!」
「お前ら喧嘩するな!今はゲームの時間だろ!」
ディーンが喧嘩を止めようとした。
「やめろ!残り時間少なくなってるだぞ!こんな所で喧嘩してる暇はない。喧嘩ならあとにしろ。」
「お前もこっちを手伝ってくれ。」
そして制限時間が過ぎてしまった。
「時間だ。それではどの蛇口に何が入ってるか答えてもらおう。俺が指定したのはミルクティー、コーラ、ココナッツジュース、カモミールティー、ダージリン、ウォッカだ。誰でも良い。答えろ。」
「コーラは159番の蛇口だ。」
リックが答えた。
「ミルクティーは534番だ。」
他のプレイヤーは黙ったままだった。
「他は答えはないのか?」
ジェイに言われても黙ったままだ。
「リックが答えたコーラは正解だ。しかしミルクティーは不正解だ。ミルクティーは493番だ。」
「何でだ!確かにミルクティーだ。」
リックは大声で言った。
「お前が飲んだのはチャイだ。ただのミルクティーじゃない。良く飲んでみろ!」
「何だこれ!やめろ!」
プレイヤーたちのもとには大量のチャイの雨が降った。
「これで分かっただろ?次から気をつけろ。それと他の飲み物も答えられなかった。よってまたやり直しだ。次は2時間後に行う。」
ジェイはモニターから消えた。
「またやり直しか。面倒くさいな。」
「どう言う理由で俺達がこのメンバーで集められてんのかは知らないが一つ一つのゲームをクリアしなければここから抜け出すことは出来ない。」
ウィルが言った。
「お前の言う通りだ。戦略を練る必要があるな。」
リックが言った。
「具体的な戦略はあるのか?」
ディーンが聞いた。
「そんなものはない。だからこれから練る必要がある。まず分かってることは俺が飲んだコーラは159番だ。他に何か分かることはないか?」
「確かバルサミコ酢が256番だ。」
サーマンが言った。
「違う。バルサミコ酢は257番だ。」
スティーブンが反論した。
「どっちが正しいんだ?」
「そんなことはどうでも良い。とにかくバルサミコ酢は256番か257番だな。分かってる番号の物は覚えておこう。」
ウィルが言った。
「他に何か分かってることはあるのか?」
「何でお前が仕切ってるんだ?」
ジョージが言った。
「確かにリーダーでもないくせに。」
「俺は仕切ったつもりなどない。作戦を練ろうとしてるだけ。こんなゲームはやりたくない。しかしこの現状を打破するのには戦略を練らなければ何も進まない。だから他に分かることはあるか?」
「そんなものない。」
「それなら役割を決める。蛇口をひたすら開けるチーム、味見をするものチームに分ける。」
「どんな作戦だ?」
ディーンがリックとウィルに聞く。
「足が速いやつにひたすら蛇口を開けてもらう。味覚が正確なやつに蛇口の飲み物を飲んでもらう。そして1人記録係もつける。」
「俺が見た限りだとロバートが一番足が速い。あと4人はどうするか?」
ウィルが全員に言った。
「私が行く。私は足に自信がある。」
ジャクソンに言った。
「私は小さい頃愛犬とともに走ってた。陸上は得意だ。」
「良いだろう。」
「味はウィルとサーマンがした方が良い。それと俺は記録を取る。」
リックが言った。
「他の奴らはどうするんだ?」
サーマンが聞いた。
「ディーンとザックは飲み物を飲んでもらう。ジョージとスティーブンには蛇口をひねってもらう。」
「ただただ蛇口ひねっても非効率だ。蛇口は800個。さっきのセットではせいぜい200個の蛇口しか確認出来なかった。ペアを4つに分けて回るルートを考えたほうが良い。この会場は観客があるがそこには蛇口は一つもない。しかし出口付近にはたくさんの蛇口がある。一つのペアは時計回りに、もう一つのペアは反時計回りに出口を回る。そして今俺達がいる戦闘場はここをスタート地点にして各ペア時計回りと反時計回りに回ってもらう。その間は俺は記録してる。」
リックが言った。
「あいつ意外と頭キレてないか?」
「確かに。あいつ、ただ強姦犯のクズだと思ってたが、意外と頭が回るんだな。」
プレイヤー達はリックの頭の回転の速さに少し驚いていた。そして2時間経った。
「プレイヤー諸君、それではゲームを再開する。指定する飲み物はリンゴ酢、赤ワイン、コーヒー、コーンスープ、リンゴジュースだ。ゲームスタートだ。」
各ペアは分かれてそれぞれのルート走った。
「ロバートのやつはやいな。」
サーマンはロバートの後を追うように蛇口の飲み物の味を確認した。
「おい、ここの蛇口ひねられてないぞ。」
「うるせー。はやくやれば問題ないんだよ。文句あるなら自分でやれ!」
蛇口ひねる側による問題やミスなどが多少あった。
「何だこれ!臭い!」
「これか?これは誰のか知らない糞だ。」
「おえ、汚い!」
ザックは吐いた。
「気持ち悪い。こんなの家畜が飲むもんだろ!」
「また騒ぐのか。君達は相変わらず怒鳴って騒ぐのが好きなんだな。今蛇口から出てる糞はちゃんと殺菌してある。感染症の心配は何もない。臭いだけをちゃんと維持してる。」
「だからと言ってこんなもん飲みたいやつどこにいる!」
「ザック、口より手を動かせ!」
ペアになってるジャクソンが言った。
「役割を変えろ!俺が蛇口をひねる役割をする!」
「は?お前足遅いだろ。無理だ。」
「熱い!」
ディーンはかなり熱いクラムチャウダーをそのまま飲んでしまった。そして隣の飲み物でアイシングしようとした。
「苦い!なんだよこれ!」
彼が飲んだのはかなり苦いセンブリ茶だ。
「辛い!」
他のプレイヤーも蛇口から出る意外なもの飲んでは吐いていた。
「おい全然進んでないぞ。」
「制限時間が過ぎたから回答タイムとする。」
「赤ワインは246番だ。」
「コンスープは800番。」
「リンゴジュースは263番。」
「コーヒーは623番。」
「リンゴ酢は?」
ジェイがプレイヤー達に聞く。
「どれか分からなかった。」
「それがお前達の答えだな。」
彼は少し間をおいて話した。
「リンゴジュースは不正解だ。」
「どうしてだ!俺の味覚は正確だ。」
味覚に自信のあったザックは言った。
「確かに君の飲んでいた263番の蛇口には90%リンゴ果汁が含まれていた。」
「もしかして騙したのか!」
「騙してなんかいない。君の味覚が思っている以上にいい加減ということだ。」
「俺の味覚は間違ってない。不正だ。」
「最後まで話を聞こうか。残りの10%含まれていたのはザクロ果汁だ。」
「ザクロだと。」
「そんなに疑うなら飲んでみろ。」
ジュースの雨が降った。するとザクロの赤い小さな球が少しだけ転がっていた。
「これで分かっただろ?」
「何で俺までそんなジュースの雨あびなきゃいけないんだ?」
「リンゴジュースの蛇口は159番だ。」
「何だと?159番はコーラのはずだ!ゲームマスター、あんた間違ってる。」
「俺が第一セットでリンゴジュースだと言ってたら間違い。しかし第二セットではコーラをリンゴジュースに変更した。」
「そんなの聞いてない!ゲームマスターの不正だ!」
「そうだ!ゲームとして成り立ってない!」
「事前に説明しなかった俺の言う事が不正なら君達が何も知らせず傷つけたり殺したりしたお前らはもっと大きな不正をしたことになる。お前らがしたことと比べればさほど理不尽ではない。逆にそのレベルのことをするべき相手を俺はゲームの裏ルールを教えなかったレベルですんでるんだ。ゲームに異議申し立てがあるならもっと理不尽な目に合わせるがそれでも良いのか?」
「あー、あの時リックがコーラが159番と言わなかったらこんなことにならなかった。全てお前のせいだ!」
ザックはリックに言った。
「これはこいつのせいじゃない。お前は人のせいにするのが好きなんだな。」
ウィルが言った。
「だって最初そう言ったのはコイツだろ!」
ウィルとザックが取っ組み合いの喧嘩をした。
「おい、やめろ!」
「喧嘩してるようだが次のセットはまた2時間後だ。仲良くしてるように。」
プレイヤー達は理不尽な第一ゲームをまだ通過出来なかった。