新体制
「あれから時間が経ったわね。」
私は10期生一人一人の写真を見ながら言った。
「社長、10期生の写真を見てどうしたの?」
ジェイのかつての教育担当のイザベラはゲーム推進部幹部の一人になった。採用担当からのかなり躍進だ。
「あなたの部下だいぶ変わったわね。」
「変わってなんかない。今まで実力の出し方をよく分かってなかったのよ。とは言えあのゲームの後、会社の社員として始末書を書いたり、ジェイを1カ月の停職にしたわ。それで結果を出せなかったら解雇にするつもりだったわ。」
「私は妥当な判断だと思うわ。」
「デイブ、来月から君も待望の独り立ちだ。」
「やっとこの時が来たな。やっとお前から離れられる。」
「俺を嫌いになるのは自由だが、お前の相談は上司として乗る。」
「それなら仕事の相談の時だけ話すよ。これからどこに向かうんだ?」
「これから下水処理場を管理してる社員のもとに行く。」
ジェイはサミュエルの元に行った。
「リック・ウィザースプーンの様子はどうだ?あれからだいぶ変わったんじゃないか?」
「最初から見てるわけじゃねーから全ては知らん。だけど確実に変わろとしてるな。」
下水処理場の管理はサミュエルなどの社員だが、不衛生な環境で働いてるのはゲームで更生できないと判断がくだされたプレイヤー達だ。他のプレイヤーは刑務所に移送や日常生活への復帰などをしたが、リックは唯一更生が見られなかったのでジェイは劣悪な労働環境に移送した。最初はものすごい抵抗した。1年間は脱走するようなことをして何回もトラブルを起こした。
「無理もないだろう。やっと俺が作った地獄から抜け出せたと思ったら新たな地獄が待っていたからな。」
「当然でしょ。大きな犯罪行為を何件も起こした人間だから。ジェイの判断は間違ってない。」
「お前にも通達が来て連絡しに来た。」
「直接連絡?暇なのか?」
「暇ではない。少し時間ができただけだ。」
「何だその言い方?成績と同じくらいプライドが高いようだな。」
「サミュエル、お前には第一工場に移ってもらう。」
「突然だな。」
「ちょうど左遷された社員がいるからな。お前もそろそろこの単調な監視係も飽きただろ?給料は低くて変わらないがもう少しマシな所に異動させる。」
「お前、良いところあるじゃん。このポジションにうんざりしてたんだよ。」
「それとリック・ウィザースプーンも第一工場に移す。」
「あいつとは腐れ縁ってことか。」
「左遷された社員にここのポジションについてもらう。業務の引き継ぎを軽くしておいてくれ。」
「分かったよ。それでその社員も俺のように成績が悪かったのか?」
「違う。例年にないことが起きたんだ。その社員はプレイヤーの女性と関係を持ったんだ。」
「何だと?」
我が社では社員とプレイヤーが関係を持ったら企業規約違反で左遷か解雇になる。
「前例のないことだ。」
「その社員はどんな奴だ。」
「9期生の社員だ。関係を持っただけじゃない一度そのプレイヤーを操作室に入れたんだ。成績が低かったお前が可愛く見えるもんだな。」
その社員の行為は論外だ。操作室には極秘資料や機密情報がたくさん保管されている。
「それでそのプレイヤーはどうなったんだ?」
「ゲーム会場で見た記憶を全て消した。そしてまた他の社員のもとでそのプレイヤーを管理させ、ゲームに参加させる。我々の企業の規則は別に人権侵害なんて思わない。」
「とはいっても恋なんてしたらそんなこと言ってられるのか?」
「人を裁くものに不正はあってはならない。人を裁く立場にあるものは感情なんかに心配されてはいけない。愛するものとはいえ教えてはいけない秘密だってたくさんある。それにプレイヤーの多くは犯罪歴があったりげんに悪行を行ってるものだ。冷静に考えれば簡単に信用してはいけないはずだ。前代未聞の事態だ。」
「何?恋の話かしら?」
同期のカミーユ・ベンシャトリが来た。
「いつの間にいたんだ?」
サミュエルが聞いた。
「さっきここに来たのよ。私にもその情報が届いたわ。9期生の男性社員と女性プレイヤーが関係を持った話ね。恋って禁断ね。昔も今も恋のことになると男も女もその世界しか見えなくなったり、一線を越えることだってあるのよ。」
カミーユの口は止まらなかった。
「カミーユ、静かにしてくれ。」
彼女は恋の話をすると止まらなくなる。愛に関する論文を彼女に書かせたらとんでもない量になる。
「あんた達は納得いかないだろうけど占い師を一人雇うのが良さそうね。」
「それが再発防止案になるのか?」
「保証は出来ないけど、この会社に占い師がいるのは面白いことよ。それにどうしようもない恋をした時、まさに占い師の出番だと思うわ。」
「占いなどくだらない。」
ジェイが言った。
「それで占いにはよく行ってるのか?」
「ここに入社してからほとんど行かなくなったわ。占い師がいるのは私としても良いことよ。」
「占いなんかでどうにかなったら世の中の戦争とか自然災害とか全て回避出来てるけどな。俺は確実じゃないものは信じない。カミーユ、君は頭がお花畑だな。」
彼女を見て笑った。
「馬鹿にして結構よ。ジェイに何を言われようと私は占いを楽しむから。」
カミーユはそう言って彼らのもとを去った。
「俺はカミーユの言うこともいちりあると思うけどな。」
サミュエルが言った。
「とにかく来週から引き継ぎと第一工場の勤務頼んだぞ。」
「分かったよ。」
それから臨時会議でカミーユがプレイヤーと社員の恋に関して言及し、彼女の案は通り我が社にも占い師が一人雇われた。
「ジェイが新部署設立?」
11期生のクロエ・デンゼル、入江太一とヘンリー・フォスターが話していた。
「調理研究部よ。」
「それってうちの会社の事業内容にあってるの?」
「確かによく社長が許したもんだな。」
「来月からジェイは新部署の部長になるんだ。他にも色んな部署から異動するらしい。」
「そうなると次は社員がたくさんが入社して来るわけね。私達も教育担当になる可能性高いわね。」
「俺もそろそろ。」
「あんたはまだはやいわ。自分の業務頑張りなさいよ。」
「クリスティーナと同じこと言うな。」
「14期生どんなの入ってくるか楽しみね。」
「話戻すが新部署は主にここに収監されてる元プレイヤーの更生プログラムだ。」
新部署では社員の為に食堂をつくり現場に向かってる社員にもさらに料理を届ける。今までゲーム推進部の社員の間には専属料理人がいる社員もいたがそれを廃止してその部署が全て受け持つ。主に第一工場と第二工場にいる元プレイヤー達が交代で調理をすることになり、料理の提供や配送は人工知能が行ったり、我が社高性能なテクノロジーできれいに届ける。もちろん専属の元プレイヤーも今後来る可能性がある。開発するメニューは全てジェイが考案したメニューだ。元プレイヤー達に調理や食材の知識を伝授する部署だ。調理を通してゲームで更生不可能だと思った元プレイヤーに更生するチャンスを与える。工場労働では過酷な環境だがそれと同時に調理研究部で元プレイヤー達に学びの場を与える予定だ。一度犯罪を起こしたものはどんなに社会復帰をもくろんでも一度ついたイメージの払拭は難しい。それが社会のあり方で抗えないことだから。だからこそこの新部署はゲーム推進部以外にプレイヤーと向き合う新しい機関になるに違いない。この会社が存在する限りはどんな犯罪者でも役に立つ。
「だけど恨みで何か食べ物に入れないか?」
「そんなことジェイがすでに答えだしてるわ。」
出来上がった料理はジェイと同じ知能を持ったロボットが正確に識別する。もちろん戦闘力もかなりあるので壊すことも不可能だ。そして故意の異物混入が発覚すれば工場よりも恐ろしい拷問が待っている。
「ペナルティの種類も多いな。」
「恐怖でプレイヤーをコントロールする所は私達の部署と変わりがないわね。」
ようやくジェイのやりたいことと直結した感じだ。
そしてさらに大きな出来事が起きる。
「ケイジ。」
「ジェイ、新部署の設立おめでとう。」
彼はケイジの作ったコーヒーを飲んだ。
「お前がいないゲーム推進部は想像できないもんだな。」
「俺がいなくて成り立たない部署ならどうしようもないだろ。」
「それと第二オフィスも出来るようだな。」
「そうだな。ケイジはどっちのオフィスに拠点を置くんだ?」
「俺はこの第一オフィスに拠点を置く。クリスティーナは第二オフィスに異動する。」
「ここ数年で会社もがらりと変わったな。」
「お前もな。」
「周りが変わらなすぎだ。」
「俺はそのうち幹部になるけどな。」
「そうか。一応期待しておくよ。」
「お前の期待がなくても幹部になるつもりだ。」
ジェイとケイジはお互い見て笑い合った。
「あんた達ここにいたのね!これから全部署の10期生で集まって会議よ。」
「今日もせわしなくなりそうだな。」
これからも我が社は成長し続ける。
最後まで見てくれてありがとうございます!
新感覚脱出ゲームシリーズですが、今まで読んでくれた方は比較して思うことがたくさんあるかもしれません。この作品を書いて楽しさも大変さもたくさんありましたが色々と新たな発見があったかなと思います。
次回作も頑張ります!




