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極寒耐久

プレイヤー達は最後のゲームで安心していた。

「やっとこのクソみたいな環境から抜けられるな。」

「だけど俺達はクソみたいな環境が似合うからここに入れられたんだ。たくさんのゲームを重ねて分かった。」

自分の罪に対して振り返るプレイヤーも中にはいた。

「プレイヤー諸君、これから第9ゲーム、最終ゲームをはじめる。今回のゲームはVRゴーグルをつけてもらう。」

イザベラ達は最終ゲームの様子を見た。

「VRゴーグル?そんなもの使うはずないのになぜ?」

イザベラは疑問に思った。

「最終ゲームは極寒耐久だ。VRゴーグルで寒さを体験してもらう。それだけではない。」

「他に何があると言うんだ?」

「極寒を体験して貰いながら君達に気持ちを踏みにじられた被害者達の声を聞きながら1時間耐久してもらう。もしゲームの途中でゴーグルを外せばゲームは最初からやり直しとする。1時間耐久できればゲームクリアだ。質問はあるか?」

全員ルールを理解した。

「ゲーム開始だ。」

プレイヤー達の前にはジャングルが広がっていた。

「ここが極寒なのか?あれ?隣にザックがいたはずだけど。」

ジョージは誰もいないことに焦りだした。

「寒い。ジャングルで凍えるなんてクレイジーだな。おい、ウィル、サーマン、どこにいるんだ!」

彼が叫んでも反応がない。

「何で生きてるの?」

「ジョージ・クレモンズだ。捕まえろ。」

「許さないよ。」

「あんたには一生苦しんでもらわないと。」

生い茂ってた木に不気味な顔がついていた。

「今度は私達があいつを思い通りにする番だ。」

「自分の思い通りにしないと気がすまないなら苦しんで死に絶えるまで様子を見届けないと。」

「とっとと苦しみなよ。ほらはやく。」

「やめろ!」

彼は叫んだ。彼に話しかけてるのは彼が暴力で支配してた女性達と暴力で殺した彼のかつての妻の声だった。不気味な木の顔、精神的に追い詰める言葉、そして身体全体を冷やす寒さが彼をどんどん襲う。実際には身体には影響がない。

「ゲームマスター、他にプレイヤーはいないのか?」

「いない。各プレイヤー見てる景色が違う。助け合うことなどこのゲームではできない。このゲームの必勝法はただ耐えることだ。」

精神的に苦しめられている状況にあるのは彼だけではなかった。

「やめてくれ!悪かった!本当に反省してるんだ…」

ジャクソンは暗くなったり明るくなったりを繰り返すジャングルで動物の唸り声を聞いた。彼を恨んでいるような声だった。もちろん寒さも同時に彼を襲って行く。

「ねえ、パパは僕をいとも簡単に殺したよね。死んでも恨んでる。僕はこんなにパパのこと好きだったのに。それならパパが極寒で苦しみ続ければ良いよね?」

ディーンの息子の声がヘビから聞こえた。

「私の浮気は気にするのに自分は浮気してたよね?それならこうするしかないかな?」

スティーブンにどんどん氷が飛んでいく。

「逃げるなよ!」

「ちゃんと責任持てよ。」

雹から彼の殺した妻の声が響き出した。

「今度はあなたが苦しみ番よ。」

「ハハハ。」

寒くて苦しむ彼の周りには喋る雹が笑っていた。

「やめろ!」

「ゲームをやり直しとする。」

スティーブンがVRゴーグルを外してしまった。

「VRゴーグル外したのは誰だよ!」

ウィルが問いかけても誰も反応がない状態だった。

「本当に誰なんだ!」

「そう言うお前なんじゃないか?」

「何だと?」

「お前が怪しいだろ。」

「やめろ!何で犯人探しなんてするんだよ。」

やっと協力する関係になったプレイヤー達も極寒耐久では犯人探しになりチームがバラバラになる。第2セットをやってもザックがVRゴーグルを外して全く進めるような状況ではなかった。

「何で俺達がこんな環境の悪い所で1時間と耐えなきゃいけないんだよ。」

「本当それだ。ゲームマスターがこんなことしなければ俺達だってこんな低レベルのことで争わなくてすんだ。」

「それならゲームマスターと交渉してみるか?」

「交渉?そんなことしてゲームがちょっとマシになると思うのか?」

「無理だ。」

「プレイヤー諸君、君達の会話は筒抜けだ。そんなことも分からなかったんだな。それとこのゲームを理不尽だと言ったな。」

プレイヤー達は無言でジェイを見た。

「確かに理不尽だ。それにわざと理不尽にしてる。それが何故か分かるか?」

無言で聞き続ける。

「どんなに被害者が現実に対応としてもそれを君達が妨害して台無しにするからだよ。だけど運が良かったな。たった1時間のゲームが終わればこの理不尽から解放されるから。それにVRゴーグルで体験した身体的な痛みは架空世界のもの。それに対して君達が人生をめちゃくちゃにした人達の痛みは本物。君達はVRゴーグルを外せば過酷な架空世界から逃げられるが、現実世界で人生を台無しにされた被害者はそうはいかない。それならこんな理不尽なゲームでも大したことはないよな?」

モニターからジェイが消えた。

「ゲームマスターの言うことは理にかなってる。ゲームマスターの言う通り寒さが襲おうと被害者から何されようと耐久するのがこのゲームの必勝法だ。取り返しのつかない俺達に出来ることはこの架空世界のゲームで現実世界と向き合うことだ。」

ディーンが言った。誰も何も言えなかった。


「第9ゲームだけ違うゲームに切り替わってる。」

イザベラは操作室を見ながら言った。

「こんなゲーム今まで誰もやったことがない。そこの2人確認して。このゲームが我が社で登録されてるか調べて。」

「何で俺達が。ジェイを連行する為に来たはずなのに。」

情報部の社員アーノルドが言った。

「分かった。その代わり手間賃をちょうだい。」

「分かったわ。私がタダ働きさせる人だと思う?」

「ありそうだと思ったけど。」

タブレットを見て調べた。

「イザベラが選んだゲームはこのゲームね。それと極寒耐久はどこにも登録されてないわ。」

「やっぱりジェイが作ったのね。」

監視カメラに映るジェイを見て言った。

「流石私の部下ね。」

「問題は登録もせずに勝手に新しいゲームを遂行したのはかなり不味い。」

「そうね。ここまで来たら上司としてジェイを庇えるのかしら?」

「それに関しては私からそれなりの処分を課すわ。」

「これからどんな風にゲームが進むか気になるところね。」

ジェイから目を離さなかった。


「耐久って本当にこれしか勝つ方法がないのか?」

サーマンが極寒と恨みのこもった声を聞いて言った。彼は憎悪がこもった言葉と寒さで精神的に追い詰められていたが耐えるしかなかった。VRゴーグルを外せばまた同じゲームの繰り返しだから。

「ゲームをやり直しとする。」

誰がどこまで進んだか何分経過してたか数えていたらこのゲームは乗り切ることが不可能だ。

「またやり直しか。何だこれ!」

足と手が氷でかたまって動けなくなった。

「ゲームマスター、これはどう言うことだ。」

リックがジェイに問いかけても何も反応がなかった。

「そんなに怖がらなくても良いのに。」

女性の声がする雪だるまに囲まれた。

「私達、食べ物をあげただけよ。」

食べ物ではなかった。彼が食べていたのは嘔吐物だった。

「ほら、残すなよ。」

「早く、食えよ!」

最初は抗っていたがだんだん彼は怒鳴り声をあげることも抵抗することもできなくなっていた。

「あれは!」

リックの目の前に見えたのは第8ゲームのリックだった。

「何あれ?」

氷人間が複数人で第8ゲームのジェイを殴っていた。そしてやむことない笑い声がずっと聞こえた。

「クソ!なんで俺がこんな目にあってんだよ。」

これからしたらものすごい屈辱だった。見下している対象から囲まれていじめられているから。

「ほら遅い。食べなよ。」

「痛い。」

全身の寒さと痛みが襲い、悪化する一方だった。

「ねえ、クイズを出すけど自分より立場の強い人間にはヘコヘコして、自分より下だと思った人には差別的で暴力的な人間は誰だ?答えないと鉄球を口の中に入れるよ。」 

ロバートの目の前には今まで彼が傷つけたアジア系の人達がたくさん立っていた。

「答えるわけないだろ。」

「この状況になってもまだ答えないのかよ?」

「ほら、早く答えろよ!」

「答えろよ。」

ロバートは嫌々と答えようとした。

「この俺…ロバート・バイロンだ!これで十分だろ!」

鉄球で目を火傷した。

「目が!熱い!死ぬ!」

「聞こえないんだよ!」

「ちゃんと答えろよ。このゴミ野郎。」

ロバートに投げた雹がどんどんぶつかる。

「分かった。答えるから…やめてくれ…」

「とっとと答えろよ。」

「ロバート・バイロンだ。」

ロバートは大声を出した。

「最初からそうしろよ。」

「それならこうしよう。」

全員カメラで彼が苦しんでいるところを撮影した。VRゴーグルの中でうつされる被害者達は悪魔のような行動をする。


「中々面白いゲーム感なえるものね。」

「見て!」

アメリアがイザベラに言った。

「同期のケイジ・パーカーと近いゲームを発案してる。」

「ジェイがケイジのゲームをパクったと言いたいわけ?言っておくけどどっちの社員も不正なんてしない。」

「違う。悔しいけど、今年入って来た10期生は情報部もゲーム推進部も優秀だってことよ。」

「当たり前よ。今年は例年より優秀な人材を採用したんだから。」

アメリアとアーノルドも任務を諦めてジェイに興味を示した。


「ジョージ…」

VRゴーグルで彼が殺した妻が立っていた。

「悪かった。本当にすまなかった。」

「そうやって思い通りになったらいきなり優しくしてまた暴力振るったりするんでしょ?信じろって言いたいわけ?そんな都合良いわけないでしょ。笑えるよね。」

「これからは心を入れ替える。」

「殺されてやっと分かった。いきなり優しくするのは本当に優しさなんかじゃないし私を愛してるわけじゃない。自分の思うように順従になったら優しくする。愛してたらそんなことできないよね?今さら信頼を取り戻そうとしても無駄よ。」

ジョージが謝ったのは自分の保身のためだった。だけどたくさん拷問された後に突き放されて後悔した。彼は自分の中でこれに耐久するしかないと思った。

「父さん。」

ディーンは氷の化け物に息子が変わっていく様子を見た。ディーンは寒さで言い返すことも出来なかった。

「すまなかった。父さんのことは、父さんのことは許さなくて良い。」

化け物になった息子を抱きしめた。すると息子は元の姿に戻った。

「すまなかった…」

はじめて息子の前で彼は泣いた。

「殺されて本当に痛かった。毎日僕はぶたれて苦しかった。パパのことは死んでも許さないよ。」

彼の息子は泣きながら透明になって消えた。

「なんてことをしてしまったんだ。」

ディーンの涙で地面が濡れていく。

「やめろ!何で俺がこんな目にあわなきゃならないんだ。」

ザックはVRゴーグルを外そうとしていた。

「まだ分からないようだな。そう言う待遇が値する人間なんだよ。殺人をしてないから罪が軽いと思ってるだろ?理不尽な理由で人を精神的に追い込んだ時点でお前はそれ相応の待遇になったんだよ。あと一つ言っておくが悪いことの行き着く先は殺人だ。今は大丈夫だと思ってるだろう。罪を重ねればどんな大きな事態も大した事ないと思う。だけど人間は弱い生き物だ。罪の正当化をやめない限り事態は悪化するだけだ。」 

操作室の様子を見ながらジェイの言葉について考えた。

「世の中ってそんな単純なもんだと思わん。ずるい奴は法というものを武器にして上手く逃げてる。」

「アーノルド、あんたの言うことは分かる。だけど嘘で塗り固めれば新たな罪で隠蔽することに必死になるだけ。ジェイの言うことは的を得てると思うわ。」

アメリアは言った。

「少しは成長したようね。」

イザベラは少し微笑みながら言った。


「ちょっとは分かったか?これで分からないなら君は本当の馬鹿なやつだな。」

「納得はいってないがこれくらい理解してる。」

プレイヤー達は何度かゲームを失敗した。そしてついに1時間ゲームを耐久した。

「これで第9ゲームを終了とする。これで全部のゲームを終了とする。」

「よし、やっと解放されるぞ!」

「やったぜ。」

中には喜んで歓喜を上げるプレイヤーもいた。

「しかしこのままでは返さない。反省文を書いたら、一人一人面談をする。俺の了承を得られれば全員もといた場所に戻す。」

さらに彼は犯罪行為を行おうとした場合大量の電流が走るようにした。

「リック、君だけはここに残れ。」

「何でだ?」

「俺の判断だ。君には適任の仕事がある。泊まる場所は俺の方で用意する。」

1つのゲームが終わった。

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