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ジェイ・トンプソン1

ジェイ・トンプソンはここに入る前はパティシエを目指していた。小さい時はパティシエとは無縁の環境だった。彼はアメリカの黒人の両親のもとに生まれた。彼のいた地区はダウンタウンとは離れていて、とても貧しく地区の雰囲気がかなり淀んだ地域であった。そこは貧困、差別、殺人、薬物乱用が飛び交う地域であった。彼の両親が若い時に非行に走ったようにジェイもとても荒れていた。

「これから授業はじめるよ!皆、静かに!」

学校ではジェイは悪い仲間と一緒に授業の妨害をしていた。

「今日あいつから金奪ってやろうぜ!」

学校以外では悪い仲間と金を盗んだり、何も関係ない人に喧嘩を売ったりするのが彼の日課だった。

「今日も巻き上げた金でお菓子を買うか。」

彼はこの地区で生まれた以上逆転はないと思っていた。逆転などドラマの話。そのように感じていたいたんだろう。

「夕飯食べなさい。」

「分かったよ。」

彼の両親はジェイが生まれてから悪いことをすることはなくなった。それほど彼のことを愛してる両親だった。

「これまた食べた。」

「わがまま言わないの。」

彼には妹がいた。メアリーと言う妹だ。

「本当に美味しくない。」

彼らはどんなに働いても十分に食べることができない環境で両親は食料配給所で食料を得ていた。食べれたとしても栄養がかなり偏ったジャンクフードばかりだ。彼は小学生の時はちゃんとした食事に向き合う機会がなかった。パティシエとは本当にほど遠い環境だった。しかしあることが彼の人生の転機になる。

「今日は遠くに行くか。」

その日はたまたま悪い仲間とつるむことはなく一人で住んでるところから離れたダウンタウンに行った。そこには色んなものが充実しており、食べ物も美味しそうなものばかりだった。そこでケーキ屋さんに入った。しかしお金がなくてケーキが食べれないのは分かっていたので彼はすぐに置き引きすることを考えていた。この時のジェイは12歳。同い年くらいの少年が席を離れた時金を盗んでいた。その盗んだお金でダウンタウンのスーパーでお菓子を買っていた。

「ジェイ、ご飯よ。」

「お腹いっぱい。」

「まさかお菓子でも食べたの?人からお金を盗んだりするのはもうやめて。」

「母ちゃんだって、子供の時悪いことばかりしてただろ。それ母ちゃんが言えることか?」

「1つの悪いことをすればどんどん悪いことに対する罪の意識がなくなって手遅れになるの!お願いだからあなたには事件を起こすような人になって欲しくないの。」

「どうせこんな所で頑張っても金持ちになることはないだろ。世の中は金持ちの家系に生まれた人が有利になるだろ。だったら悪いことをしてでも俺は生きる。」

「待ちなさい!ジェイ。」

その次の日も同じケーキ屋さんに行った。何故そこに行ったのかは彼自身もよく分からなかった。

「何だあいつ。」

同い年くらいのまた同じ時間にいた。そして目が合い、彼に目で笑いかけた。最初は彼のことを警戒心のない馬鹿だとも思っていた。

「またあいつカバン置きっぱなしだ。こんな馬鹿がいるんだな。」

彼はまた彼の財布の中のお金を盗んだ。

「ジェイ、ご飯食べる量が減ってるじゃない。まさかまたお金を盗んでお菓子でも買ったんじゃないの?」

「落ち着け。何でそう言うふうに連想するんだ。お菓子なんて子供なら誰でも食べるだろ。」

「何か大きなことを犯してからじゃ不味いの。」

「俺が何しようが関係ないだろ。」

母親は寝る間をおしんで働いてちゃんと子供達とも向き合っていた。いつも厳しかったし、ジェイが悪い連中とつるんでるのは知っていた。

「お兄ちゃんは何か悪いことしたの?」

メアリーが聞く。

「悪いことをしないように教えてるのよ。」

そしてそれからも不思議と同じケーキ屋さんに行った。毎回その少年がバッグを置きっぱなしにしてはそのお金をジェイが盗むのが日課だった。そしてその少年と鉢合わせる日もいつのようにお金を盗もうとしていた。

「相変わらず都合良いカモだな。馬鹿は行動パターンも一緒か。」

そしてお金を手に取る。

「何してるの?」

その少年は声をかける。流石に不味いと思い立ち去ろうとしたが…

「君よくここに来るよね。ここのケーキ食べたいの?」

彼の方を見て振り向いた。その少年は身なりが整っていた。

「そうだ。僕が君の分を奢るよ。」

「それならこのうんこ色のケーキにしてくれ。」

「うんこ色?面白いこと言うね。」

彼は微笑んだ。

「これはモンブラン。あとフルーツタルトも頼もう。」

頼んだケーキがテーブルに並ぶ。さらにジュースも並んでいった。

「何だこれ?美味しい。これもケーキなのか。」

彼が今まで食べていたのは糖分がたっぷりのケーキだけだったので、彼は感動した。

「まだ頼みたい?それなら追加で注文するよ。」

ジェイはラッキーだと思った。警戒心が薄く、さらに理由もなく高級なケーキを奢ってくれる同年代の子がいるから。それにジェイにしたことを気がついていないような感じだった。

「そう言えば君って毎日僕の財布からお札を抜き取ってるよね。」

「俺はそんなこと!」

「良いんだ。僕がそうしたかったから。」

「は?」

彼は困惑していた。

「お前世の中鞄ごと盗むやつもいるんだぞ。馬鹿か。」

「口を開かなくても君が盗んだのは知ってる。だけど君のことを誰かに言うつもりはない。君と仲良くなりたかったから。僕、友達がいなくてさ友達が欲しくて毎日ここに来てたんだ。そう言えば、僕の名前はリアム。君は?」

「俺はジェイだ。」

今まで見たことのないタイプだった。

「僕はお菓子ならケーキとかシュークリームが好きなんだ。いつか食べ物で人を幸せにしたいんだ。どんな人も美味しいもの食べられた方が良いじゃん。」

「それでお前どうして友達がいないんだ?」

「何となく集団の和に馴染めなくてね。こうやって2人で話してる方が気が楽なのかもね。」

「何だそれ?馬鹿か。馬鹿すぎて友達がいないんだろ。俺帰る。」

「じゃあね。」

次の日もリアムは同じ場所にいた。ジェイは美味しいケーキが食べたいがためにそのケーキ屋に行った。

「また来てくれたんだ。何を食べる?」

「このガトーショコラってやつにする。」

2人はまたケーキを食べながら話す。 

「これ美味しいな。」

「君って大人になったら何がしたいの?」

「俺は夢なんてない。」

「僕はパティシエになりたいんだ。スイーツを作って人を幸せにしたい。」

「人を幸せに?金持ちだけだろ。このケーキも俺のような貧乏人は食べることは出来ないからな。」

「どんな人にも美味しいケーキを食べて貰いたい。僕の父さんはパティシエなんだ。父さんのケーキを食べた時感動したんだ。僕も父さんのように美味しいケーキやスイーツを作れるようになりたいって思ったんだ。」

「よく分からないけどせいぜい頑張れよ。明日もケーキ食べるから同じ時間に来てくれよ。」

ジェイは立ち去った。それからも2人は同じ時間に同じケーキ屋でケーキを食べるのが日課になっていた。

「ジェイ、今度うちに来てみない?」

「良いけど。」

「やったー。嬉しい。」

ジェイとリアムは経済的な格差があって関われるはずもなくお互い分かり合うのも難しいのにお互いにうち解けっていった。

「ここがお前のうち?」

「ここは僕の部屋だよ。」

「ここがお前の部屋とか広すぎだろ!」

ジェイは住んでる世界が違って驚いた。 

「隣の302号室で皆で食事するんだ。」

リアムの父親はパティシエで母親がプログラマー、妹もペットの猫もいてかなりお金持ちだった。

「リアムも妹がいるんだな。俺も同い年の妹がいる。」

本当に偶然だった。

「妹はキャサリンって言うんだ。」

「お兄ちゃん、名前は?」

「俺はジェイだ。」

彼は幸せだった。リアムが今まで経験したことないことを経験させてくれるから。

「ジェイ、その服どうしたの?」

「友達から貰った。」

「お兄ちゃん、嘘ついてるでしょ。ねえ、ママ、私にも服買って!」

「誰にそんなもの買って貰ったわけ?」

ダウンタウンから家のある地区に戻ると一気に現実に引き戻される。家にいる母親がうるさいと思う日々だった。リアムのいる環境はまさに夢の環境だった。

「今日は一緒にシュークリームを作るよ。」

リアムのいる家でスイーツを作る度に食べる喜びだけではなく作る楽しさも彼は覚えた。現実と理想が行き交う日々が毎日続いた。

「母ちゃん!」

「何?」

「俺、将来パティシエになりたいと思う。」

「本気なの?」

「うん。友達の姿見て俺もパティシエになりたいと思ったんだ。」

「相当厳しい道よ。もちろん私に出来ることは何かするけど。」

母親は子供の夢に関しては理解して応援した。

「パティシエ?そんなお金うちにはない。無理だ。夢なんて簡単に抱いても挫折するだけ。」

逆に父親は非協力的だった。貧困のカードを手にしたものが夢をかなえるなんて無理だと父親は思っていた。

「俺も前は父ちゃんのように夢がなくてこの希望のない現実にイライラしてた。それに夢なんて絵本とかの世界だと思ってた。だけど友達と関わってから変わった。」

「その友達は白人か?」

「そうだ。」

「そんな奴と二度とつるむな。あいつらは俺等を見下してる。現実を見ろ。世の中の金持ちも世の中を牛耳ってるのも白人だろ。そいつとは友達をやめろ。関わるな。関わるならお前はうちの子じゃない。」

この時父親も同じような差別主義だった。結局差別してる側がして欲しくないことをしてるだけの人間だとジェイは思った。

「あなたジェイの前でそんなこと言わないで!」

ジェイの母親は父親に言った。

「うるさい!」

父親は自分の家族だけ幸せなればあとはどうでも良いと考えていた。

「お兄ちゃん、パティシエって何?」

「パティシエは洋菓子を作る職人のことなんだ。」

「すごい。いつかお兄ちゃんのケーキとか食べてみたい。」

妹も母親と同じでジェイ夢を応援していた。

「ジェイ、前より作るのが上手くなったな。」

彼は夢に向かいリアムの父親にパティシエのことを教えてもらった。

「これ美味しいな。」

スイーツを作っては食べるのが日課だった。リアムとの間の絆はどんどん強くなった。

「そう言えばジェイはどこに住んでるの?」

彼は包み隠さず話したが、リアムは何も顔色変えない様子だった。

「今度僕がジェイの所に行くのはどうかな?」 

「お前馬鹿か。死にたいのか?」

「何で?」

「俺の地区はお前が住んでる所よりもっと危険だ。友達として言うが絶対にそれは駄目だ。分かったか?」

「そうなんだ。聞いてごめんね。このことは親には黙っておくよ。」

「お前の親も口うるさいのか?」

「そうかもね。口うるさいのはどこでも一緒かもね。」

彼は顔をあげた。

「お父さんは寛大だけど、お母さんが口うるさいかな。ちょっと心配性と言うか。ケーキ屋に行く時はすきを狙って行ってる。父さんはいつも見逃してくれるからさ。」

「そんなにうるさいのかよ。俺達外出や留守番が禁止の年齢でもないのにな。俺ところより面倒くさそうだな。恵まれてる馬鹿だとは思ったけど。」

「馬鹿は言い過ぎだ。君を家に呼べるのは父さんがいる時だけ。」

彼はリアムの父親にパティシエへの道のりをたくさん聞いた。貧乏くじを引いて絶望した彼も希望を持って前に進んでいる。しかしその希望もいつまでも続くわけでもない。

「続いてのニュースです。」

いつものようにジェイはニュースを聞き流しながらリアムから貰ったゲームで遊んでいた。

「12歳の少年が…」

その一言で瞬時にジェイはテレビを見た。すると衝撃的な内容だった。リアムが自分の地区に住んでいる高校生集団にかつあげされて殺されてしまったのだ。

「こんなの嘘だ。」

ジェイはかたまった。

「ここにもいない!」

もちろんケーキ屋さんに彼が現れることはなかった。その時彼の死を実感した。彼の父親がその時現れた。

「悪いがもう関わらないでくれ。こんなことを言いたくないけど。」

「何だよ!俺だってリアムが死ぬことなんて少しも望んでいなかった。」

「あんたがうちの息子を殺したのね!」

「落ち着け!やったのは彼じゃない!」

「だけどあんたが関わったから息子は死んだのよ!息子を返せ!」

リアムがジェイのいる地区にサプライズで誕生日プレゼントを渡そうとした。おそらく母親の過剰な心配性に反して危険を顧みなかったのかもしれない。

「お願いだからもうここには来ないでくれ!」

慕っていたリアムの父親にも言われ、スラム街に近い地区に生まれた自分の存在は何者なのか考えた。リアムがいなくなってからは虚無感にかられてさらに非行に走った。自分でも悪いことは分かっていたけど気持ちをどうにかすることはできなかった。しかししばらくしてジェイは答えを出す。

「パティシエになりたい。リアムのためにもな。」

ジェイはリアムのぶんも生きようとしたがさらなる苦難が彼に待ち受ける。

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